※この記事で使用させてもらっている表は《細々と》様からお借りしています。
《ポケットモンスター赤・緑》
発売された製品版こそ1995年ですが、当時からゲームというものは製品版をリリースする前に、一度ベータ版を出してテストプレイを行います
ユーザーの公に出すかどうかは開発元と販売会社の匙加減ですが、このタイトルは公ではなく内々だけで行っていたものと思われます
推測ですがEDのスタッフロールで登場するデバッカー、スペシャルサンクスの方と思われます
さて、なぜそのような話から始めたかというと実はベータ版のデータがゲームフリーク公式から流出されたからでございます(巷では嘘か真か審議されていますがファミ通からの言及があったため、ありすは全て本物であると仮定して進めます)
その中でもありすはトレーナーの手持ちに注目し、ここから見えてくるものを推測しようという記事になっております
その前にまずは注釈をば
ベータ版には開発初期段階と後期段階が存在します
初期段階をβ1、後期段階をβ2と便宜してこの記事では紹介をしていきます
表1:肩書きだけのトレーナー
β1
1匹しか手持ちがいない割にレベルが低めのエンカウントテーブルに関しては製品版でいう『けつばん』、要は没となったポケモンがいるのではないかと思われます
注目すべきは
製品版以上に数の多い、でんきやのオヤジ・でんきグループですね
恐らくはむじんはつでんしょでも登場する予定だったのかもしれません
また、おとなのおねえさんのルージュラ率が凄まじいです
製品版ではカンナ以外使用してこないため一層目立ちます
表2:ジムリーダー
β1・β2・比較用の製品版
↓サカキ様
β2と製品版での差異を黄色く囲ってあります
こうしてみるとレベル帯から使用ポケモンまでの変移が色濃いです
タケシ:β1ではディグダを使っていますが、β2以降はイシツブテに変更されディグダはジムトレーナーのボーイスカウトに引き継がれました
カスミ:β1ではトサキント・シードラを使っていますが、β2以降はヒトデマン系統に変更されトサキントはジムトレーナーのガールスカウト、シードラはかいパンやろうのタッツーとして引き継がれました
マチス:β版ではエレブーを使っていますが製品版にてライチュウに変更
このためか、ライチュウを使用するエリートトレーナーは没データとなったのですが、15ばんどうろのガールスカウトのライチュウはそのまま残ってしまいました
エリカ:唯一、製品版とβ版で全く異なる手持ちとなっています
β1ではナッシーを使い、また彼女の立ち絵からエスパータイプ使いだった形跡がありますがβ2ではラフレシア系統になったことで製品版のジムトレーナーにはウツボット系統の名残があります
キョウ:β1ではゴーストを用いることと、ナツメとのレベル差から当初きとうしはこのジムのトレーナーだった可能性があります
この場合、β2になるにあたって差し替えられ製品版と変わらない構成になったのでしょう
ナツメ:実は最も謎が多い女の子です。まずレベルがβ2まで低く設定されており、40台になったのは製品版。また、ジム自体にバグがあり(あなをほるで脱出可能、敗北してももう一度ジムに入るとその瞬間に勝利扱いとなりバッジがもらえるの2点)このことからもβ段階から製品版になるまでにデータ変更の跡が取れます
また、このジムにきとうしを入れることになった際セキチクジムとそのままトレーナー情報を入れ替えてしまった可能性もあります(セキチクジムはどくタイプなのにジムトレーナーは全員エスパータイプ)
カツラ:β版ではブーバーを使っていましたが製品版でウインディに変更されます
また、β1,2ともに全くガーディ系統を使っていなかったのに急に揃えたことから開発中にほのおタイプポケモンの格差が変更されたものと思われます
サカキ:彼に関してはデータ変更が多いです
1⇒ピクシーを使用しますがこれについての考察に関して後述します
2⇒ストライク・カイロスを用いますはこれについても後述します
3⇒全く毛色の異なるとりポケモンばかりのβ1。β2以降はじめんタイプで統一されているので、これはサカキではない別のデータの可能性が高いです。やはり後述
サカキ様について、後述のコーナー
まず、なぜピクシーやストライクといったポケモンを用いていたのか?
という疑問の前にまずはサカキの内部番号を見てみましょう。
229ですね
ここで思い出してほしいのは、サカキが登場する場所および設定についてです
タマムシスロット地下のアジト、シルフカンパニー11Fで戦うことになり、彼はロケット団という悪の組織のリーダーですね
さて、タマムシシティでは南方面のある場所でこんなメッセージが見れます
『チーフ!
きょうも スロットの うりあげで しいれた ポケモン 2000
ひき しゅっか しやした!』
ロケット団員のセリフですが、ここでチーフという名義が初登場します
さらに、サファリゾーンに行くとある小屋の中で
『シルフのチーフが サファリゾーンの
どこかに かくれてるんだって!』
というメッセージを誰もいないイスに話しかけると見ることができます
さて、シルフのチーフといえばさきほどの内部番号表でも居ましたね?
227に位置付けられています
ですがゲーム中で戦うことは絶対にありません
データ自体が没となっており、彼には立ち絵すら残っていないからです
※任意コード実行等でバトルすると226はぐれけんきゅういんのデータを読み込みます
ここで謎が生まれました
どうしてシルフのチーフは没となったのか、また没となった形跡がある場所にはサカキが絡んできます。そしてトレーナー内部番号も非常に近く、サカキはチーフの後ろに居ます
では、シルフのチーフについて考察してみましょう
手持ちデータも立ち絵データもなく完全なるNullデータとなっているわけですが
実は最近になって彼には立ち絵があったことが判明しました
それはなんと製品版のカツラのグラフィックです
つまり、β以前。開発段階では彼は優遇されていた可能性が出てきたのです
では、手がかりとなりそうなマップ内部コードから彼について考えてみましょう
①ポケモンやしき1F 内部コード:165
直前のトレーナーデータである、はぐれけんきゅういんが開発で初出するのはβ1におけるポケモンやしき1Fです。ということは、シルフのチーフはセキチク~グレンあたりの開発時期には考案されていたのでしょう
また、ポケモンやしきは2Fがコード:214と非常に離れており先にこのダンジョンだけ作っておいたものとみられます
②グレンジム 内部コード:166
まだカツラのデータはありません
ですが、この時はまだチーフも立ち絵はありません。彼に現在のカツラの立ち絵が用意されるのは既にポケモンやしきのマップ完成後となります。そのためチーフのイベントがあったであろう名残としてひみつのカギといったギミックを後付けしたと思います
③シルフカンパニー2F~8F 内部コード:207~213
実はシルフカンパニーのマップコードは9F以降と以前で分かれています
察するに当初はチーフが登場予定で、サカキをボスとして据えるようになった際に9F以降を追加したと思われます。
ここでサカキの手持ちについての疑問が解消できます
シルフとは、妖精の意味を持ち、昆虫がモチーフとなったギリシャ名が由来となっています
ピクシー・カイロス・ストライクに関してはここに当てはまるのではないでしょうか
つまり、サカキの手持ちとは元々はシルフのチーフのものだったデータを流用しただけだった説があります
ちなみに、ガルーラやニドクインに関してもシルフの女性イメージに当てはまります
④ポケモンやしき2F~B1F 内部コード:214~216
なぜか後から追加され、それもシルフカンパニーの直後に来ています
また、シルフにおけるはぐれけんきゅういんのデータが一気に増えているのもこの時期になっております。このマップが完成されたあとの出来事なのでチーフ関連のイベントをやしき内から消したものと推測できます
⑤サファリゾーン 内部コード:217~225
製品版で消し忘れたであろうメッセージがある場所です。ここもやしきから連続して作られたマップであり、チーフ関連のイベントに対しての製作と思われます
⑥ななしのどうくつ 内部コード:226~228
ミュウツーが存在し、ポケモンやしきと関連するミュウにも関係する場所ですが内部コードが連続している点に着目しました
罪を償うフジに対して、禁忌の力を使ってでも対抗するチーフのイベントが用意されていた可能性もあります
⑦せいめいはんだんしの家 内部コード:229
シオンタウンなのですが、ここだけが後に作られた場所でありななしのどうくつに連続して製作されています
実はせいめいはんだんしのグラフィックはカンパニーの社長グラフィックなのです
ここから推測するに、社長自体はシルフカンパニーのマップコード的にまだこの段階では存在しておらず、社長のグラフィックがシルフのチーフのものだったと思われます
そして、チーフの存在が没案となった時点で彼のグラフィックをせいめいはんだんしに割り当てられ製品版に続いたのでしょう
⑧シルフカンパニー9F~11F 内部コード:233~236
ここで社長が製作され、チーフは完全に没案になったのでしょう。サカキもこの場所に配置されています
そして、β版における1,2の手持ちデータだけが流用されて残り、今の手持ちになったものと思われます
表3:してんのう
β1、β2、比較用の製品版
カンナ:彼女に関しても謎が多く残ります
手持ちがβ版に関しては一般トレーナーも多く利用するポケモンであり、結果的にトレーナーとは被らないようになりましたが開発段階では没にされる可能性もあったのではないでしょうか?
恐らくは製品版でも皆様知っての通りこおりタイプが非常に強力であるため、ゲームバランスを考慮して調整していくうちにこおりタイプを使うトレーナーを彼女に集約させたのかもしれません
シバ:当初はオコリザルを使用していましたが、一般トレーナーも数多く用い、またオコリザル自体がかくとうタイプの中でもヒエラルキーの下位であったためか製品版ではイワークが採用されています
なぜかくとうタイプではないイワークがいるかについてですが、してんのうの手持ち構成自体がタイプ単一ではなく異なるタイプのポケモンもいることから一貫性を持たせないことでゲーム難易度を調整したのだと考えられます
キクコ:データ変更が最も行われたトレーナーだと思います
彼女のセリフにもある通り、オーキドのライバルであったためブイズPTとして構想されたのでしょう。モンジャラはブイズの進化形であった可能性も示唆されます
β2ではオーキドせんせいの手持ちでも確認できるケンタロスが追加され、一層ライバル感を引き立たせていますがシャワーズがなぜか居ないことから仮データになってしまったのでしょう
その後、キョウの手持ちが変更されたことからゴースト使いがいなくなったため、後付けでマップチップでも最後のほうにある墓地のチップが使われた部屋となりゴースト使いとなって現在に至るものと推測できます
ただ、残るゴルバット・アーボックは一般トレーナーも多く用いるため納期に追い込まれて急遽付け加えた設定とも取れるため悲しいことですね
ワタル:ギャラドスを当初は用いていませんでしたが、ライバルがカメックスを用いた場合トレーナーが誰も繰り出してこないため追加したものと考えられます
高LVのミニリュウが目立ちますがパワーバランスの関係で削除されたのでしょう、そのためミニリュウを使うトレーナーが製品版にいなくなっています
恐らく、あえて出さないことでハクリュー・カイリューの入手方法を隠し条件っぽくしたものだと思われます
表4:ライバル
β1、β2、比較用の製品版
オーキドけんきゅうじょ、22ばんどうろに関しては全く変化していません
β1版では、御三家によって異なる手持ちが24ばんどうろで構成され始めます
ただ、当初はライバルがルビー・サファイアのように序盤でフェードアウトされる構想であったためLVが低く設定されていましたが結局早期の段階で続投することとなったようです
以下、場所ごとの考察
サントアンヌごう:β1では御三家と同じタイプの代替を捕まえています
このことから当初は選んだ御三家のタイプに特化される予定だったのでしょう、最終的な手持ちからも窺えます
結局製品版では、代替枠をラッタに譲っておりポケモンタワーまで続投されます
ポケモンタワー:前提として、この場所でライバルは元々登場しなかった可能性が高いです。理由は歩いてくるモーションがないこととメッセージのやっつけ感が強く、ゲームバランスの都合で出すこととなったと思われます
β1では代替ともう一匹、人型御三家のいずれかが追加されています。しかしエレブーはおらず、モンジャラとなっています。また、コイキング含めLVが異様に高くこれが本来別の場所で登場させる予定だった裏付けにもなります
ちなみに製品版ではラッタがここでフェードアウトしていますが、代替となるタイプポケモンの入手タイミングをゲームデザイン的に遅らせたかったことと6匹手持ちに持たせることを終盤まで嫌がったのではないかという推測でラッタがいなくなっただけだと思われます
シルフカンパニー:β1では御三家と代替以外が最終進化していますが、ここまで来てそれでは難易度低下に繋がると見かねたのかβ2ではギャラドスになっています
恐らく、ギャラドス自体がインフレしたパワーであるため結果的にはポケモンタワーから登場しますがこの段階では強力すぎると判断したのでしょう。対戦環境でも最強クラスですからね
22ばんどうろ:製品版のみとなっています。サイホーンの追加による顔見せと思われますが、完全なる後付けなのでセキエイこうげんから逆走してしまっており設定的にはやや破綻気味になってしまった印象があります
恐らく、最序盤でのここのバトルをラスト直前の今再現することで臨場感を演出したかったのが主な理由でしょう
セキエイこうげん:β1では御三家全員が入っており、最後の一匹は代替となるポケモンが控えています。もうこれ誰がエースかわかりませんね
憶測ですが、オーキドせんせいがトレーナーとして設定されていた時の手持ちを踏襲したものと思われるのでこの段階では彼とバトルできないようになったのでしょう
ただ参考としてのデータなのか製品版でも任意コード実行でバトルできるようになっています
β2は製品版からサイドンを抜いた構成となっています
最終的にLVが調整され、不足していた物理アタッカーのサイドンを入れることでバランスを取ったものと思われます
容量およびに法則の都合上仕方なかったのでしょうが、ラストバトルくらいライバルの手持ちポケモンのわざ構成はガチ構成にしてほしかったですね・・・
最後に
この表は製品版になるにあたって様々な理由から実質的な没トレーナーとなってしまい
手持ちが変更されたにも関わらず登場自体せずメモリの海に沈んでいるリストです
~消えたトレーナーと推測される理由~
7ばんどうろ
たんパン、むしとり、スカウト♂、スカウト♀
7ばんどうろにトレーナーを配置する案が没になったため
(実際にトレーナーの姿はありません)
クチバジム
でんきや
ジムトレーナーを減らすため
8ばんどうろ
りかけい1 マタドガスLV22の放つヘドロこうげきが強力なため
りかけい2 りかけい1とりかけい3が消えたため
りかけい3 ビリリダマLV24の素早さから放つじばくが強力なため
ギャンブラー じばく持ち2匹が凶悪なため
ポケモンタワー
2Fのきとうし3人はライバルが登場することになったため
きとうし4~8 似たデータが並ぶため仕切り用のダミーデータと思われる
ただし1人のみミスでダミーデータを登場させてしまっている(ゴースト1匹構成)
ロケットだんいん 4人は多すぎることと、うち1人と手持ちが全く同じであるため
14ばんどうろ・15ばんどうろ
ジャグラー、かじば1~3
この2箇所は開発中に何度も作り直されており、その途中の被害者である
19ばんすいどう
おとなのおねえさん 離れ小島に設置していたが没案となったため
ポケモンやしき
はぐれけんきゅういん ミスでシルフのけんきゅういん1人のデータを登場させたため
エリートトレーナー♀1 ラフレシアがエリカの使用となったため
エリートトレーナー♀2 フシギバナが御三家最終進化のため
エリートトレーナー♀3 ニドクインがサカキ(シルフのチーフ)の使用となったため
エリートトレーナー♀4 ライチュウがマチスの使用となったため
エリートトレーナー♂1 化石を使わせないように変更された。変更されるも再度没に
エリートトレーナー♂2 β2時点でのマチス・カツラの使用だったため。名残である
エリートトレーナー♂3 ニドキングがサカキの使用となったため
エリートトレーナー♂4 化石を使わせないように変更された。やはり没になる
とりつかい1 チャンピオンロードでの配置トレーナーが多いことによる修正の際、プログラムミスによるヒューマンエラーが発生したため
とりつかい2 チャンピオンロードでの配置トレーナーが多いことによる修正の際、プログラムミスによるヒューマンエラーが発生したため
もうじゅうつかい チャンピオンロードのマップ変更による弊害のため
ジェントルマン チャンピオンロードのマップ変更による弊害のため
※チャンピオンロードにおける修正・弊害とはこのゲームでは1つの表示されてある画面上におけるマップに10人以上のNPCを配置できないシステムのためです
ここまでが、β版での名前のついているトレーナーの手持ちデータおよびに没となったトレーナーの考察となります
どうでしょうか、トレーナーデータだけでも開発途中におけるさまざまな意図や修正による方向性の変更が見て取れると思います
実際の真偽のほどはどうだったのかは定かではありませんが、こういった紆余曲折の末に出来上がっているゲームなのだと痛感させられます
今回はここまでになります、ありがとうございました