《Ride On The City》-硝子色の夕空- part44
「よみがえる感情と生まれ行く情熱が
交差するワガママな rainy in the blue
I KNOW 記憶の中に YOU KNOW
乱雑に散らばる回答拒否の匿名希望者は
I WANT 傷付く事に YOU WANT
背中を向けながら道を探してる僕の答えを
Maybe 凍えそうな Story 天使の声
そして過去からの手紙さえ」

ブルーとビアンカは、シロガネやまに居る!
重大な情報が判明した以上、遊んでいる時間はない。
アリス「ゆん、行くぞ!」
ゆん「よくってよ!」
ボクは急ぎ足でゆんに乗って埃だらけの廃墟からおさらばしようと
モンスメグ「ちょっちまっち☆」
6号「ここはオーレですよ。海を渡って飛んでいくつもりですか?」
仲間から真っ当に引き止められてしまった。こういう時に限って団結しおってからになんなんじゃい、一刻を争う千載一遇のチャンスをふいにするつもりか?
ゆん「飛行には誰よりも自信があってよ」
カルマ「阿呆、夜が明けちまうじゃんよ」
グレアット「霊峰シロガネでしたらテレポーテーションさせてあげられますっ!鳥居が建てられている入り口付近にはなってしまいますけどもっ」
アリス「おぉ、さすがは本職。ちゃっちゃと頼んだ」
みかんとの修行もあってかますます巫女としての能力に目覚めていくグレアたん、おっぱいぎゅーもさせてくれたし本日1のMVP間違いなしだ。
シロ「待ちなさいーーー」
アリス「えーいシロまでなんなんだ!ブルーとの対面が怖くて引き腰になったのか?」
シロ「乗せられているのではないでしょうかーーー
ブルーの探索を以てすればアリスの情報など筒抜けーーー
まるで誘われているように思えますーーー」
アリス「分かってるわ。それでも乗るんだよ」
モンスメグ「このビッグウェーブに!」
まるでタイミングを見計らったかのようにシロガネ山に訪れている、決して偶然では無かろう。確実にブルーはボクを認知している。それもわざわざこちら側の支度が揃うまで待っているようにすら思える。おそらくブルーは策略家に違いない。
だからこそいま会いに行くしかない。相手にとって不足無しということは裏を返せばこのタイミングで返り討ちにしてやればこちらの完全勝利なのだ。
ギンノのポリシーじゃないけど、準備不足の相手を倒したところで準備をされなかった分のツケは返ってくるのだよ。
ビアンカを指定して奪ってきたということは今この時ブルーにとってもビアンカが必要な時ということ。この機を逃せばブルーと会ってもビアンカは帰ってこない可能性が高い。ボクの目的はブルーを脅かすことじゃなくてビアンカを返してもらうだけ。
ブルーの処遇に関しては……ボクが決めることじゃないからな。
アリス「よいか、ビアンカさえ奪還できればそれでミッション達成だ。深追いはするな、ボクはもう仲間を失うのは御免だからな」
6号「合点承知です」
グレアット「神託として聞き入れますっ」
ゆん「いつでも準備はできていてよ」
モンスメグ「愛と勇気の大作戦!スタート☆彡」
シロ「良いお友達を持ちましたねーーー」
カルマ「ふんっ、ぼくは付き合ってやってるだけじゃんね」
シロ「一生の付き合い、でしょうーーー」
カルマ「知らね知らねしねしね」
グレアは火の鳥柄の千早を羽織ると懐から取り出した袙扇を持って、御神楽を舞い踊った。一挙手一投足のたびに火の粉が散り、霊力が強まるのを感じ取れる。
奉っている神様そのものを魅入っているためもあってか、普段とは比にならない速度であやかしいオーラが高まって実体化していく……!
グレアット「領域展開っ!夢想亜空穴っ!」

シロ「見事な舞でしたーーー
毎日の神道、わたしは見ていますよーーー」
グレアット「より一層修行に励みますっ!」
こうしてボクたちはブルーの待つシロガネへと向かった……。
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-シロガネ山-
ジョウトとカントーの間に聳える聖なる霊山
モンスメグ「のえたんのお山☆」
6号「立ってつまさき見える?」
シロ「くっ!……うぅぅっーーー」
グレアット「ダメージ先が想定外ですけどっ!?」
ゆん「ふふ~ん」
6号「張り合わなくていいですから……」
カルマ(帰りてぇ)
取り巻きの漫才など山谷風に吹き流し、山道に生い茂るナゾノクサにもよく似た原っぱを踏みしめながら、天高くギャロップ肥ゆるシロガネの山頂を見上げて眺めた。

この地に自身が祀られているグレアットに視線を移し、ちくりと胸が刺さる。
図鑑やタマムシ大学で読んだデータにも記されているように、渡り鳥……巫女に喩えるならば梓巫女であるグレアットには決まった住処は無く、カントー地方で発見例があったセキエイのチャンピオンロード、ナナシマのおくりびやま、そして此処シロガネやまと言い伝えられているのは名高いことだろう。
だけどボクには記憶が無い。
きみと出会った記憶も無い。
気がついたら、物心ついたときには、側にいて微笑んでくれていた。
グレアに限った話じゃない。メグとも、アークとも、カルマとも……、
そして―――
ゆん「もう、飛び出しちゃ危ないでしょう?いろんな萌えもんが暮らしてるから気になっちゃうのは分かるけど……ほら、みんな待っているわよ」
アリス「……ゆんっ」
ぽふっ。
ゆん「きゃ、ハグしなくたってちゃんと乗せてあげるわよ。小さな女の子にはハードな登山なんだから……」
ぎゅっ。
ゆん「ちょっと、やだ、……もう……泣いてるの?」
アリス「大好き」
ゆん「私もよ。アリスちゃん。私だけじゃないわ、グレアちゃんだって、メグちゃんだって、ろくちゃんだって、かるちゃんだって、ここには居ないけどビアちゃんと、うゅちゃんだって……それにシロさんも。みんなみんな……あなたが大好きで、あなたを愛しているわ」
涙と気持ちがどんどんこぼれてって、止まらない。
ゆん「……ふたりっきりに、なりましょうか」
ゆんはボクの手を引いてみんながいる方へと矢継ぎ早に告げると、まるで親鳥が雛鳥を守るようにして両腕でボクを抱きかかえたまま、浪漫飛行に連れていってくれた。
-21ばんすいどう-
ゆん「ここの茂みだったら誰もいないわね。そのままぎゅーってしてていいわよ、安心できるでしょう?」
夕焼け空の風に吹かれてボクの涙は乾かされてしまった。でも、泣き止んだのがバレたくなくってボクはゆんの谷間に顔を埋めてぎゅって抱きしめた。
ゆん「アリスちゃん、今日は甘えん坊さんね。朝はニッタさんにとっても良いことを言っていたのに、それからずっとシロさんとグレアちゃんにくっつきっぱなしで……くすくすっ。私の次はメグちゃんかしら?……なんて」
悪戯そうに喋るたび息継ぎする音に心臓を鼓動する音、密着した身体が揺れて、ゆんの声と薫り、それと生きている証を肌で直接感じる。
ボクはゆんにだけ通じるふたりだけの合言葉を指先で背中になぞった。
ゆん「えっ?……ほんとに甘えん坊なのね。どうして急に甘えたくなったのか分からないけれど……しょうがない子ね……。アリスちゃんがしてほしいこと、全部してあげるわ。お互いにとって、かけがえのないパートナーですもの」
ゆんはいつもボクが欲しい言葉を掛けてくれる。だからこそボクもゆんが欲しい言葉を掛けてあげたい。ゆんはボクのためだけに本当にすべてを捨ててでも守ってくれた。それなのにボクはゆんのためにだったら、どんなことだってしてあげたいのに……どうして……。
ゆん「抱え込んでいるのかしら」
ボクはずるい子だ。ゆんに全部言わせちゃうから。ゆんはボクの気持ちが分かってしまうから、その優しさに甘えてしまう。優しさに甘えていたくないなどと豪語してここまでこうしてやってきた癖に、ゆんの……いや、グレア達にも甘えっぱなしなままなんだから。
ゆん「アリスちゃんは凄いわ。愛情と勇気だけじゃなくて、実力もあるし悪知恵を働いたりしちゃえる。でもね、あなたはまだ9歳の女の子なのよ。普通だったらあんな無茶なんかできっこないしさせたりしない。私が人間の姉妹だったら、絶対にアリスちゃんを旅に出させたりしないわ、大人になるまでね。あなたを失うなんて、つらいもの……」
その言葉でエリカお姉様の姿形と声が脳裏に浮かんでくる。ボクは自由を手に入れたくて思い出とお別れをした。でも、あの世界に取り残されたエリカお姉様はどうなる?そんな当たり前のことに気付けなかった、ボクはまだまだ子供だ……自分のことばかりで勝手に行動をし続けてきて……いったい何が残るんだ?
結果的にこうして再会できたものの、もしもボタンを取り違えていたら……こうやってゆんとも二度と
ゆん「アリスちゃん」
ゆんは暖かい声で名前を呼んで、しがみついているボクの顔をそっと包んで持ち上げられると、目の前にはゆんの笑顔が輝いていた。夕焼けと相まってそれはとても、幻想的に映って……。
ゆん「おめめ真っ赤じゃないの……ほんとうに、私がついていないといけない子なんだから……どうせアリスちゃんのことだから、もし私と再会できなかったら……とか、ずっと住んでいた世界のみんなはどう思ってる……とか
私とはじめて出会った日が思い出せない、なんて。
どうしようもないことばかり考えているんでしょう?」
さっきまで含んでいた液体が、瞳孔から、そして口許から零れ落ちていった。
ゆんも、同じことを考えていてくれていたから。
ふたりには、どうしようもできないことだから。
アリス「ゆ」
ゆん「ちゅ……っ」
アリス「ん……ぅ」
ゆん「私もね、思っていたのよ。うゅちゃんと話し終わる直前まで。私の手はもう清くないわ、こんな手であなたを抱けるのかって。いっそあのまま消え去ってしまおう、風みたいに……でもずるいのは私の方。あなたのその、お人形みたいにあどけない笑顔が私の心を掴んで離してくれなかったわ。ううん、こんな言い方だったらあなたに責任を押しつけちゃうわね、あのときに思い浮かんだのは全部私の都合のいい妄想。私が勝手にあなたを想ってただけ。そんな時だったわ。
うゅちゃんは、私にすべてを教えてくれたの。それはね、世界の数だけあなたを愛した記憶が……まるで夢を見ているみたいにね」
アリス「うゅみ……」
ゆん「だからね、アリスちゃん。全部終わったら私じゃなくて、うゅちゃんに”ありがとう”って言いなさい」
アリス「……ゆん。ゆんにとって、ボクは何回目のアリスなんだ?」
直後、風がぴたりと止まって凪が訪れた。
ふたりのあいだを遮るものは、何もなくなった。
たったの数刻が、何分にも感じられた。
ゆんは、微笑み返してくれた。
ゆん「おバカさんね。あなただけが私にとって唯一のアリスちゃんよ。言ったじゃない、夢みたいだったって。こないだいきなりそんな夢を流されてきたんだもの、私はそんなのどうだっていいわよ。
私は、いま目の前にいるあなたが大好きなのよ。」
その微笑みは、その一言一言の紡ぎは、その樺色に華やぐ翼は……。
さながら、天使のようだった。
ゆん「……また泣いちゃったのかしら?いいのよ、いくらでも甘えて。私もアリスちゃんに甘えるから…………ね?」
昼と夜のあいだで時が止まる。
終わりのない永遠の夕暮れ時。
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-星色夜空-
グレアット「あっ!迎えに行こうかって思っていましたよっ」
ゆん「お心遣いありがとう。ふふ、グレアちゃんにももう一回好き好きする?」
アリス「……ん」
ゆん「素直でよくってよ。ほら、グレアちゃんパスっ」
グレアット「おいでっ……よーしよしいい子ですっ」
アリス「ちゅー」
グレアット「えぇっ?ゆんちゃんの前ですよっ?」
ゆん「してあげてちょうだい。お空でキスなんてロマンチックじゃない」
グレアット「でしたらっ……ゆんちゃんっ」
ゆん「うふふ、ロ~~~~~~~マンティックね」
アリス「え、ふぇ……わっ」
星空をバックにして、ボクはゆんに抱きかかえられて宙ぶらりんになったところにグレアが前から熱いハグをしてくれて、空中で川の字の形になると、そのままグレアのほうから唇を重ね合わせてくれていた。
グレアット「……大丈夫ですよっ。私もいなくなったりしませんからっ」
アリス「約束」
グレアット「でしたらっ……これを差し上げますっ」
ボクの上半身を両腕から片腕で抱きかかえ直すと、もう片方の手を緋袴へ入れてごそごそと何かを取り出し、大切そうにボクの首へとペンダントのように架けた。
それは巫女にとって神楽道具でもある、鈴のついたペンダントだった。
アリス「このデザイン、やすらぎのすず……」
グレアット「その鈴には長年に渡るわたしの巫力が備わっていますっ。もしアリスちゃんとはぐれちゃっても、それですぐに探しに行きますからっ。私の分身だと思って肌身離さずつけておいてくださいねっ」
アリス「グレア……さんきゅ」
グレアット「どういたしましてっ!皆さんお待ちになっていますよっ、集合しましょうっ」
ゆんとグレアの四枚の翼が羽ばたく音と同時に、鈴の音がシロガネの星空へと鳴り響いていった……。
-シロガネやま-
ゆん「ただいま」
グレアット「ご無事で帰りましたっ」
カルマ「おせぇ。もう夜じゃんよ」
モンスメグ「今夜は寝かさないZE☆」
6号「本当に眠れない夜になりそうです」
いつだって変わらない3人の微笑ましいやり取りでつい涙ぐみそうになっちゃったけれど、わざマシン34を心の中で起動してぐっとがまんをした。
ボクはゆんとグレアに片方ずつ手を引かれてみんなの中央に入った。
シロ「準備は出来ましたか、アリスーーー」
透き通った、透明感、そんな比喩的な表現じゃなく透明そのものの声色でボクに問いかけるシロ。彼女の纏う白色よりも真っ白な純白のローブが風下に仰がれてミルキーウェイのような粒子を散らしていた。
アリス「……まだ」
シロ「でしたらあちらのセンターへ入って整えましょうかーーー
一時的ですが簡易的な回復もーーー」
6号「やっと許可が下りましたね、早く入りましょう」
カルマ「さむすぎんよ」
グレアット「あ、私も暖を取りたいですっ」
ゆん「グレアちゃんが暖じゃないの。……先に中で待ってるわね」
モンスメグ「キャンプコーデにお色直し☆」
気温がぐっと下がる山のふもとで待ってくれていたためか、スタスタと足早に萌えもんセンターへと入っていく一行たち。これから大事な局面だっていうのに、相も変わらず緊張感のないメンバーに妙な安心感を覚えていた。
メグもアークもカルマも、ボクの為にわざわざ寒くなる中でも動かずに帰りを待ってくれていたことと、万全を期すためにコンディションを整えてくれている、言葉で伝えるまでもないその優しさと信頼が伝わってきたからかもしれない。
シロ「お入りにならないですかーーー」
アリス「シロ」
シロ「はいーーーシロですよーーー」
ボクはベッドよりも柔らかなふわふわの生地で編まれたローブ越しにシロへ抱きついた。バニラアイスの香りが漂い幸福感に包まれる。
アリス「シロはボクのパーティだ。だから、離さない」
彼女に対しては複雑な一面もあったから冗長な前置きをつけたい気持ちもあったけど、伝えたいことはこれだけで充分だから。
シロ「貴女のその願いが純粋な心からのものなのでしたらーーー」
彼女はしゃがんで目線を合わせると、出会ってからはじめて表情を見せてくれた。全然慣れてなさそうな、ぎこちない笑顔で見つめてくれた。
シロ「わたしは貴女のパーティになりましょうーーー
道標としてではなくーーー仲間としてですーーー」
はじめて聴くことが叶った。普段のように事務的でも打算的でもない……
運命でも、預言でも、道標でもない。導なき言葉。
嘘偽りのない純白で真心からの告白を。
アリス「ありがと」
シロ(わたしもーーー変わりましたねーーー
ブルー……あなたは変われましたか?ーーー)
-シロガネやま洞窟-

アリス「すぴぃ……zzZ」
シロ「眠ってしまっていますねーーー」
意気揚々と出陣したはいいものの、アリスちゃんはシロ様のローブのなかをベッド代わりにして、シロ様の尊顔の真下から、9歳年相応のあどけない幼い寝顔を出してすやすやと眠っちゃっていました。
グレアット「もう夜8時を回っていますからねっ……」
6号「早朝から動き回りっぱなしでしたもんね」
仕方ありません、普通は9歳の人間の女子があれだけの体験をすれば、気絶したり昏睡に陥ったり……最悪精神的に一生治らないトラウマを感じておかしくないんです。こんなお人形さんみたいな身体のどこにそんな強さが秘められているんでしょうか。
……いいえ、私たちはシロ様から伺っておりますからね。もうそういうことにしておきましょう、神様からの思し召しは不変の理ですから。
アリスちゃんが寝ていることもあってか、メグちゃんはまた一人で考え込むモードに入っていますし、カルマさんは静かだからか機嫌良さそうに宙へ浮かんでいます。
ゆんちゃんはアリスちゃんを寝取られたせいかどことなくシロ様をにらみつけているようなご様子ですが、いまは諦めて私と6号ちゃんの3人で談笑に興じていました。
霊峰シロガネは長く険しい道のりということもありますが、私たち萌えもんだけだったらいざ知らず、アリスちゃんが一緒……それも心地よさそうに眠っていますので、起こさない程度のスピードで進み続けています。
ブルーさんもアリスちゃんとおんなじ年齢らしいですので、こんな夜であっても活動を続けているなんてとんでもないフィジカルの子かもしれませんね。もし休憩していらっしゃっても、大切なビアンカちゃんを奪っていった事実は変わりませんから容赦いたしませんけどねっ。
シロ「ナナとワダツミもーーー
ジョウトややぶれたせかいだけでなくーーー
偶にはここにも帰ってきてほしいものですーーー」
へそのいわと呼称される細道との分岐点に差しかかったあたりでシロ様がぼやきました。鳳凰神様とは波長も合ってか何回かお会いしたことがありますけど、海神様とは1度しか対面したことがありませんので少々寂しいお気持ちも分かります。
6号「ここで爆裂すれば来ますかね?」
グレアット「やらせませんよっ?」
ゆん「やりかねないから末恐ろしいわね」
6号「グレアの古巣を壊す真似なんてしませんって。あ、そろそろ最奥部ですよ。アリスさん起こしますか?」
ダイアモンドダストが降り始めたら山頂の目印です。
山頂といってもドーム形状の青空型バトルフィールドとスタジオが設置されていて、年に一度ジョウト地方の凄腕トレーナーを決めるトーナメント施設になっているんです。
きっとブルーさんがいるのはそこ……目の前の洞穴を抜ければすぐの位置。
シロ様からのお話を聞く限りでは、ブルーさんは恐らく元々善良で優秀なトレーナーなのでしょう……ビアンカちゃんを攫うような真似さえしていなければ、このような出会い方じゃなくって……アリスちゃんとおんなじ9歳のエリートトレーナー同士、お友達になれたかもしれないのに。
でも、それは叶わないお話。やぶれたせかいが存在する箱庭と違って、ここはシロ様オリジナルの原初の箱庭。そしてお二人とも導なき存在である以上、そのような世界線はやぶれたせかいに用意されることは金輪際ありません。
せめて……ご祝福がありますように……
Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,
benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria mater Dei,
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.
アリス「……着いたか」
福音をお祈りしている間にアリスちゃんは自分から起きたようでした。
グレアット「おはようございますっ」
6号「まだ寝ぼけてませんか?」
カルマ「永眠しないよーにな」
シロ「もう少し寝ていてもいいのですよーーー」
ゆん「お戯れを」
アリス「シロ。もう自分で立てる」
ゆりかご代わりに低空飛行していたシロ様は、そのまま着陸しておしゃがみなされると、ローブからもぞもぞとアリスちゃんが脱皮のように出てきます。
そこへメグちゃんがアリスちゃんの目の前にジャンプし、普段の如くハイテンションではなく、心配する姉のように接してアリスちゃんに話しかけました。
モンスメグ「アリスちゃん。カノンたんと……闘える?」
メグちゃんは、いつもゆんちゃんから個別で特別に焼いてもらってるクッキーみたいに甘くて優しくて幼い、そんなアリスちゃんが果たして立ち向かえるんでしょうか……?
アリス「……正直なところ、わからない」
きっとメグちゃんに対して、はじめての弱音を見せた瞬間でした。
アリスちゃんにとっては普段からやる気のない返事や、流されるままに返事もろくにしなかったシーンばかりでしたから。
正式にこうやって心構えを聞かれたのは、今日が初機会だったのかもしれませんね。目を丸くしながらもメグちゃんは答えを待ちました。
アリス「例えばさ、敵がすっげえ悪い奴だとわかればバトルにも弾みがつくだろ?でも実際はお互いが善い奴だと思っている、善い奴VS悪い奴なんてわかりやすい構図はお芝居の中だけであって、敵は敵でしかないんだよ。ボクの旅はその連続だった。
思い返しても見ろ。今までバトルしてきた相手を……。
ギンノ、サトミ、みかん、スイ、ダークルギア、ヒガナ、シロナ、ギラティナ……。
悪い奴なんてどこにいる?ボクは誰とも戦いたくなかった。でも、敵として立ちはだかってきたから戦うしかなかっただけで。
今から戦うブルーもそうだ。こちらからすれば確かにビアンカを攫われたように思える。だが話を聞けば結果的にだが道標を振り回したボクたちが悪い。ブルーは決して悪い奴には思えないし、もしビアンカがブルーと旅をしたいんだったら止める理由はない。そもそも元を正せばギンノの仲間なんだから、ビアンカはギンノを選ばなかっただけで、ボク達は……」
モンスメグ「だからなに?」
アリス「……は?」
モンスメグ「アリスちゃんはカノンたんが好き、カノンたんはリースお姉ちゃんが好き。それ以上、なにか必要?」
アリス「あのな……そんなシンプルに片づけられる問題でも」
モンスメグ「友達を助けるのに、理由なんている?」
残念ながらアリスちゃんの問答負けですね。
今まで……いいえ、ずっとメグちゃんが電波キャラとしてエキセントリックに振る舞い続けているのは、私たちのマスターであるアリスちゃんに華を持たせて立ててあげるためなんでしょう。この一件で、とってもよく分かっちゃいました。
グレアット「アリスちゃんっ!お友達を助けに行きましょうっ!」
ゆん「そうよ。それにこれまでも敵だった方と仲良くしてこれたじゃないの、敵とか悪い奴とか、そんなのは大人に任せておけばいいのよ」
6号「カッコ悪いですよ、アリスさん。ビアンカさんを助けるために今日1日頑張ってきたんですから。過程を経ずして結果は得られぬ、あなたの言葉ですよ」
カルマ「ほら、朝になる前にとっとと行くじゃんよ」
アリス「……やれやれ。上手いこと言いくるめて、結局はお前らのわがままを聞いてあげるのはこっちじゃねぇか」
モンスメグ「だってメグたち仲間だもんげ☆」
私たちはアリスちゃんを先頭にして、ブルーさんが迎え撃つ霊峰シロガネの頂上へと繋がる道を渡りました。
大切なお友達を、助けるためにっ!
シロ「そうなのですね。これが絆ーーー」
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