Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》-硝子色の夕空- part41

「足下に風、光が舞った
日常にだけ積もった分の奇跡が
見上げれば雲遠くへの帰路
幼い日の自分よりも速く
雪解けを待っていた子供のように
走る、光る、滴、飛び跳ねてる
明日の出会いさえ気づかずにいる季節たちの中で輝いているよ
世界中にはどんな想いも叶う日がくる
ずっと旅をしてゆく僕らに
小さな精たち舞い降りる……」

エラー!エラー!エラー!
エラー!エラー!エラー!


-こううんのもり-

メグが何者かに連れ去られていくビアンカを見かけたという場所まで、SYSTEM-座標まで神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの-の応用とやらでワープされると、そこは鬱蒼とした森のなかであった。

モンスメグ「こっちこっち!」
どこから持ちだしたのか観光ツアーガイドよろしく旗をぱたぱたと振り回しながら、ズンズンと足場の悪い湿地草原を前進していくメグ。
なぜかシャンデラのシルエット状に灯されているライトを目印にしてボクたちはメグの後ろをついていく。

ゆん「お洋服よごれちゃうから飛び降りちゃだめよ」
アリス「そんなわんぱくちゃうわい」
6号「興味を惹かれたら後先考えずに飛びこむじゃないですか」
グレアット「そのおかげでどれだけ苦労しましたことやらっ」
『ねーっ』
アリス「ぐぬぬ、棚に上げやがってぇ……!」

いっそこのまま草原へとダイブしてやろうかと思ったが大量発生しているハピナスの大群がチラ見えしたので踏みとどまった。卵の養分にされちまう。

などと談笑しつつメグについていくうちに、目の前の湖を超えた先にそびえ立つなにやら怪しげな研究所のような施設が目に入った。

モンスメグ「明日をのぼってせーのっで飛び出した☆」

数メートルはある湖をひょいっと一本足でジャンプして飛び越えていくメグ……などいつものことだから放っておくとして、王道ファンタジーのような展開にみな一様にワクワクしている様子だった。
ゆん「いかにもって感じね」
アリス「エラーイ博士が居そう」
6号「好きですねそれ……」
グレアット「あそこに囚われているんでしょうかっ……一刻も早く助けにいきましょっ!」
こっちに身体ごと振り向いたメグがおーいおーいと手を振りながら急かしてくる。あやつはガイドの癖にメンバーを待てないのか。

ボクを乗せたゆんとアークを乗せたグレアが湖の上を飛ぼうとした矢先!
のんきに手を振るメグの背後に敵意を持った影が近寄ってきたのだ!

アリス「メグ!」

「不法侵入だぜ。その図々しい実力、このナガタ様が確かめてやる」


ナガタは ウインディを くりだした!

どうやら通常の試合形式を取ったようだ、だったらルール違反で反則負け扱いされてダダをこねられないように上空からメグのバトルを観戦することにした。
見たところナガタと名乗るスーツ衣装の研究員は普通のトレーナーのようだった。
ただ普通じゃない点があるとすれば、繰り出したウインディは普段見かけるような四足歩行スタイルではなくて、両脚で自立したうえで闘気のエネルギーを纏っている様子に見えることくらいか。

モンスメグ「その疾風、拳闘フォルムだね☆」

どうやらウインディのアナザーVerを知っているようなので、そのお手並み拝見がてら果たしてメグのスピードにもついてこれるかどうか見定めよう。

ナガタ「へっ、知ってやがるか。ウインディマッハパンチ👊」
命令されたウインディは目にも止まらない速度でメグのどてっ腹めがけて突進してきた!先手は頂かれる形となるが、メグにとっちゃかすり傷にもならないはず。
モンスメグ「おー☆見込みあるパンチ!年収1億ありそう☆」

6号「感想が支離滅裂ですが」
ゆん「ターン制ならこの後のメグちゃんの一撃でイチコロね」
アリス「やれやれ~」
ナガタ「ケッ、お前さんのマスターはお空の上かよ。ガキのくせにいい趣味してんな」

モンスメグの エレキテル☆エレクトリック!
モンスメグ「……ッッッッ!!???????」
しかし モンスメグは ひるんでうごけなかった

グレアット「嘘っ!?いけない、あの血の量っ……」
目を疑ってしまった。メグの口からゴボリ、とおびただしい液体を吐血していたのだから。離れてみているとはいえ、ちょっと目が眩んでしまい顔を伏せてしまう。
ゆん「子供が見ちゃショッキングよ」
アリス「……言ってられる場合か。なんなのだあの威力は、マッハパンチのレベルではない」

日ごろから虫の居所が悪いのか生まれついての三白眼なのか、不機嫌そうな顔のまま解説をはじめる研究員ナガタ。
ナガタ「こいつぁうちのケミカルで、ストロングエネルギーと呼ばれる極めて精度の高い格闘エネルギーの結晶体を遺伝子に組み込んだウインディでな、あらゆる伝統武術における流派の道を仕込んでいるのさ」

6号「道理で一見低威力の先制技たるマッハパンチすらも致命傷となり得ると……」
グレアット「立ち上がって、メグちゃんっ」

モンスメグ「あはぁ……血を流してるメグもなんだかセクシー★」
ゆん「うん、まだ余裕ありそうね」
うーん、強がっているようにしか見えんが。

ナガタ「ウインディ、ファイトアクセル!」
メグがひるんでいる隙を見逃さずに立て続けに追撃を行うウインディ
ここでメグは一度血を流したおかげで頭がスッキリしたのか袖で口元を勢いよく拭うと、態勢を立て直してウインディの格闘技を回避した!
モンスメグ「当たるも八卦当たらぬも八卦ってね☆」
上空に控えているこちら側にもびりびりと伝わってくるほどの強大な電気エネルギーがメグの周囲に凝縮されていく!あいつの十八番・エレエレの構えだ!

モンスメグの エレキテル☆エレクトリック
あいての ウインディは きあいのタスキでもちこたえた!

ゆん「なかなかやるじゃない」
6号「小癪ですね」

ボクのやり方であっては意味をなさないが通常のもえもんバトルにおいて、きあいのタスキには様々な用途と戦術が存在している。シンプルに紙耐久をカバーするだけの用途からつるぎのまいのようにエネルギーを蓄える時間を設ける戦法、そして研究員ナガタにとってのタスキの意味は、水平にした全身をバネにして地面へと姿勢を低く低く足を深く沈みこませる、虎を彷彿とさせるあの構え方にあった!

ナガタ「遊びは終わりだ」
あいての ウインディの きしかいせい!

不死鳥の化身であるグレアが感じ取ったのか洞察による説明を加える。
グレアット「ただの起死回生じゃありませんっ!持ち前の炎を利用してアクセルにすることで倍率ドン!になってますっ!」

ナガタ「力みなくして、解放のカタルシスはありえねぇ・・・」

ウインディの伝説にも語り継がれている1秒と経たない音速によって、瀕死のメグめがけて起死回生のグラップラーが解き放たれる……!

放て!心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして
限界など知らない意味無い!

---0.01秒---

モンスメグ(マルチプル・コンストラクション・アーマー展開!)

この"能力"-チカラ-が光散らす
その先に遥かな想いを

---0.03秒---

モンスメグ(タイムアルターダブルアクセル☆)

歩いてきたこの道を振り返ることしか
出来ないなら……今ここで全てを壊せる

---0.18秒---

モンスメグ(さァ行こう!フェアリー・ヴァースへ☆)

暗闇に堕ちる街並み人はどこまで立ち向かえるの?
加速するその痛みから誰かをきっと守れるよ

---0.72秒---

モンスメグ(ドラマチーック☆エスティーック★ファンタスティックランディ~ング!)

Looking!
The blitz loop this
planet to search
way.
Only my RAILGUN can shoot it.
今すぐ

---1.00秒---

身体中を 光の速さで
駆け巡った 確かな予感


ウインディの拳が、メグの身体へ衝撃する刹那ーー


モンスメグ「サンダーランス」

メグの稲妻一発で、背後の湖が焦げた。湖が焦げたのだ。
ウインディが疾風の音速なら、メグは肩書きすら必要のない光速。
目にも止まらないどころじゃない。目にも映らない。

ウインディの 戦闘不能を検知しました~

アリス・ゆん・6号・グレアット(ぽか~ん)

ナガタ「ケッ、やるじゃねえか」
モンスメグ「クリーニング代よろ★」
ナガタ「……来い、嬢ちゃんら。ニッタさんに会わせてやる」

……何が起きたのかイマイチわからなかったが、とにかく今の一戦で実力を見切ったのか、研究員ナガタはウインディをボールへ戻すと首を見上げてボクに向かって手招きをする。
なにはともあれ、不法侵入した件は見逃してくれそうだ。
招かれるまま怪しげな研究所ことナガタケミカル(と書かれている寂れた看板が茂みに転がっていた)へとボク達は入っていったのだった。

-ナガタケミカル-


研究所へ入るとさっそく仰々しい実験装置や研究資料がびっちりと詰められており、重苦しい空気に包まれる。
壁に架けられている額縁の社訓には生命研究といのちをだいじという文字が見え、なにか秘密裏に大掛かりな企画を進めていそうな妙な怪しさも感じられた。

6号「腕が疼いてきますね……」
モンスメグ「エネルギー充電だって☆」
ナガタ「おい勝手に触んじゃねえよ」
ゆん「おいたはだめよ」
グレアット「ふむむっ、せいめい……ですかっ」

ナガタ「いいか、ぜってえに大人しくしとけよ!」
声を荒げて注意を促した研究員ナガタは地下へ続く階段を下りて行った。これほど規模のある施設であれば研究員が何人いてもおかしくないのだが、見たところナガタ以外に人物の気配は無く不気味なくらいに静まり返っていた。森林の奥にひっそりと佇んでいるのもあるためか、怪しさに拍車をかけている……余計な面倒ごとにならないようこりゃ本当に大人しくした方が身のためだな。

ゆん「そういえばメグちゃんが言っていた悪い方って、さっきの方なのかしら?」
モンスメグ「ぶっぶー!ばかはずれです」
ゆん「なんですってぇ!」
6号「手がかり得られずですか……」

グレアット「メグちゃんお身体は大丈夫なんですかっ?相当ナカをやられていそうですけどっ……」
モンスメグ「こんなの電気ショックでよゆー☆」イリョク40
6号「いやいや心臓の治療じゃないんですから」
モンスメグ「わっとと……★」ポチ
グレアット「ふらついちゃってるじゃないですかっ、ほら今ガー……ぜ……」
6号「…………ポチ?」

アリス「ぽちーじゃねえんだわ」

大きくよろめいたメグの指先が角っこにある装置のボタンをガラスケースごと貫通して押されてしまった……本人にとっちゃ軽く体重をのしかけた程度かもしれないが、お前は並みの奴らよりも遥かに身体能力が超越していることを忘れちゃあるまいか?
おそらくそうそう簡単に割れない材質のガラスで施錠付きのボタンを守っていたくらいだ、もしかしたらもしかしなくてもやべーことになるかも……。
ゆん「こうなる気がしてたわ」

メグが誤押したボタンの先に設置されている長方形のカプセル型の水槽に仕込まれているエレベーターのような機械が回り出し、カラで壁のクロスが透けて見えていた部分が赤いランプのような照明で光り出したかと思えば、瞬く間に下方から何かを乗せてこちら側へと運ばれてきたではないか。

なんだろう、とてもとてもイヤな予感がする。危険を察知したゆんはボクを抱きかかえると翼を織って身を守ってくれた。その一瞬の流れからしてもう不穏は的中しそうな訳でして?

6号「…………来る!」

Δリザードンが おそいかかってきた!

硬質そうなガラスで厳重に幾重にも保管されているカプセルをかぎ爪一裂きでぶち破ってリザードンらしき実験体がお出ましになりやがった。
アリス「ギンノのメガリザとも違うフォルムをしているな……このケミカルで実験された新種のリザードンか?」

6号「分析は後回しにしましょう!動きを止めます!」
勇んで前に出たアークが呪術を唱えて実験体の伝達神経に細工を施す。

アークは かなしばりをつかった!
Δリザードンの メタルクローを ふうじこめた!

グレアット「ここでは炎は舞えませんねっ、だったら!」
グレアは早口で福音の一節を唱え、選ばれし神仏の領域者だけが使えるとされる人智を超えた不思議なオーラを射出した。

グレアットの じんつうりき!
Δリザードンは ひるんだ!

アリス「よし、効いている!」
ゆん「それでも建物のなかじゃ武器を活かせないから防戦一方ね」

モンスメグ「がんばえ~~~」
どこから持ち込んできたのか医療ベッドの上から患者着を羽織って応援をしやがるメグ、ご丁寧に点滴まで打っている。誰かお見舞いしてやれ、物理的に。
アリス「ええい気が散る。グレア、アーク、足止めに専念せよ!」

暴走しているとはいえ研究員ナガタにとっては大切なもえもんのはずだろう、丁重におもてなししてやらねば後から何を請求されるか分からん。それに力量差からしてグレアが本気になってしまったらアーメン不可避だからな、この騒ぎを見れば戻ってきた時になんらかの手立てを打ってくれるだろう、この場は時間稼ぎが得策とみた。

「ばぎゅあ!!」
あっちで寝ている患者よろしく、実験体は体内で自己発電を促して電磁波を生成させて2人めがけてワイルドに突撃してきた!

グレアット「自在式:封絶結界っ!」
巫女の霊力で陽炎を舞わせると、ボクたち4人がすっぽりと包まれるほど巨大なドーム状に広がった赤みを帯びし半透明の壁を作り、外界から隔離された空間を張ることで実験体の攻撃を遮断した。
ゆん「このバリアの中なら安全かしら」
グレアット「持って数分、でしょうねっ」
6号「私のエクプロとほこたてしませんか」
グレアット「6号ちゃんだけ結界から出してもいいんですよっ?」

親友同士軽口を叩ける余裕が生まれるくらいには効果てきめんなバリアーなのだと実感できたはいいが、巫女のわりにグレアは攻撃一辺倒だったのもあって"イメージらしい"術式の登場に少々面食らっている。
アリス「しかしいつの間にこんな防御わざを覚えたんだ?使えんだったらもっと早く使ってほしかったもんだが」
グレアット「守ってもらったお返しっ、ですよっ♡」
アリス「ふ、それだったら今度ミズキにでも見せてやれ。恩返し代わりにな」
グレアット「はいっ!」

会話の間にも実験体は鋼鉄のエネルギーと電気エネルギーを用いてバリアーの突破を試みていたものの、ヒビすら割れておらず次第にスタミナ切れを起こしていった。
アリス(妙だな……いくらグレアの結界がそれだけ硬いとはいえあれだけ早く体力を消耗するもんか?)

ナガタ「ニッタさんこいつらっす……ってなにしとんのじゃおのれぇ!?」

あ。帰ってきた。どうしよ。
モンスメグ「しゃちくん後はおまかせ~☆」

ふと後ろに目をやると、モモンの実のシロップ漬け缶詰を食べてすっかり病人気取りのメグが研究員ナガタを満面の笑みで逆撫でしていやがった。
しゃちくんこと研究員ナガタは、怒髪天といわんばかりに険しい表情で地団駄を踏み続け、彼の背後にはニッタと呼ばれた白衣のメガネ系優男が不敵に様子を眺めている。

ニッタ「よせナガタ。見ろ、あの凶暴なデルタ種のリザードンが圧し負けているなんて……それも一切の傷を受けてもいないのに!サンプル資料としてこのまま観戦しておこうじゃないか」

アリス「話が通じるような通じんような……」
研究者って人種はみんなああなのだろうか、なにはともあれデルタ種のリザードンだという情報が発覚しただけでも儲けだ。
だから口から何百度もの炎を吐く生態を持つリザードンが炎の代わりに鋼鉄と電気玉を複合させたような弾を放ってきたってことね。

ゆん「でるた?」
もふもふとボクを包む翼の先っちょをねこじゃらしのように扱って、ボクのあごしたをこしょこしょしながらとぼけるゆん。
アリス「んんぅっ……ギンノと初対面の対戦のときに聞いただろ、ホロンの磁場で育成されると体内のタイプエネルギーが変化することがあるんだよ……あっ、はなしぇっ」
ゆん「よくわからないわ~」
アリス「ああーくぅ……説明役だろぉ」
6号「……ごく……その前に口元のよだれをすくってもいいですか」
アリス「拭くのききまちがいよね?ん……みゃあ~っ!」

いてもたっても居られずばたばたと抵抗するも、ゆんとアークのフィジカルに勝てるわけもなく悲痛な叫びがこだまするだけだった。なぜだ……なぜこの場にツッコミもストッパーもおらぬ!?ビアンカ早く帰ってきてこいつらを止めろ。
グレアット「おやっ?……デルタリザードンさんの動きが止まりましたねっ」
アリス「ふあぁ……ハァ……見せろ」
グレアット「お姉ちゃんの膝の上で見ましょうかっ♪」
封絶結界とやらの規模を2人分に縮めることによって結界内から押し出す形でゆんとアークを外界へと弾くと、グレアはボクを紅袴の上にちょこんと乗せてバリアー越しに疲弊しきった実験体の姿を間近で観察した。

アリス「闘いはじめてまだ5分と経っていない……いくらなんでも息切れには早すぎないか?」
グレアット「やっぱりそう感じますかっ」
事態は収拾できたものの浮かび上がった奇妙な不自然さに戸惑っていると、ニッタがパチパチとまばらな拍手をしながら近づいてくる。
ニッタ「素晴らしい!戦わずしてこのリザードンを懐柔するなんてね……キミたちからはもえもんへの愛情と温もりを感じるよ」
ナガタ「ったく……おい、てめえの着替えだ」
モンスメグ「ウェイクアーップ☆」

アリス「ニッタ……って言ったな。こいつの飼育はお前がしてるのか?」
治癒効果の高いヒールボールへと実験体を収納してクイッとメガネを寄せるニッタ。その行動からするに決して悪い人間ではないのだろうが、いささか疑問点が残る。
研究者のサガなのか彼は聞いてもいない部分から饒舌に語り出した。

ニッタ「その通りさMsアリス、ヒトカゲのタマゴの頃からホロンの磁場の中だけで育て上げたらどこまで純粋なデルタのパワーを秘めるのか試してみたくてね……ここでホロンヴェールと名付けた疑似的なホロンの磁場を開発してその中で何年間も育成し続けているんだ。その甲斐あって、両親ともに通常種のリザードン系統でありながら遺伝子的にも完全なデルタ種のリザードンまで出来上がったのさ」

ゆん「すごいのね~」
6号「分かってます?」
ナガタ「ニッタさんは今や絶滅危惧種に指定されているデルタ種のもえもんを保護する活動の第一人者だぜ。俺様みてえな変わり者だってグループの一員に入れてくれる懐の広さだってあんだよ」

グレアット「なんと尊いのでしょうっ……ご慈悲がありますようにっ」
ボクを膝に乗せたまんま祈祷するな、こっから出れないだろ。……それが狙いか。字面を額面通りに受け取ってのほほんとしてるパーティはさておき、話を切り出す。
アリス「お前らの研究に文句をつけるつもりはない。ただ、その実験体……デルタリザードンだったか。そいつの意思は考えた事あるのか?」

ニッタ「意思?ああ、ぼくはこいつの好きな食べ物を知っているから毎日食事に出してあげているし、たまには放電させてやらないとストレスも蓄電されるから専用の施設に移して……」

確かに毎日の食事もストレス発散も大事だしぐっすり睡眠もとれることだろう。だが、悲しいことに、トレーナーである彼の発言ひとつひとつには真心も愛情も込められていなかった。

 

アリス「もえもんはペットじゃない」

 

ゆん「……確かに、私が野生のスズメちゃんにしてあげてることと大差ないわ。でも、それは一期一会の他人だからそれだけでいいのよ、ね」
6号「優しさなんてエゴですから」
グレアット「そうですっ!私たちには、自由に羽ばたく翼がありますっ!信心はあくまで心の支え……決めるのは、自分の意思なんですっ!」

なるほどなんとなく理解した気がする、ポケモンポケモンだ、もえもんというヒト型の見た目であってもポケモンには変わりはない。
姿かたちがどうであろうと、トレーナーの資格を持つ人間たちが愛情と自由を与えてあげない限り、決してその間に絆は生まれないんだよ。

モンスメグ「ちょっとしゃちくん~いまどき原宿コーデなんてダサ~い」
ナガタ「うるせえ。俺様の時代でイケイケなんだよ」

ニッタ「……そうか。ぼくの研究に足りていなかったのは、そうなのかもしれない。遡ってみれば全国に生息していたデルタ種が絶滅寸前まで追い込まれたのもひとえにトレーナーのエゴ……ぼくはそんな奴等から救うためにこの研究を始めたというのに……思い出させてくれてありがとう」
アリス「あー……とりまそいつ運動不足なんじゃないか?そんなせまっ苦しいカプセルで一日過ごしてちゃすぐバテるぞ、たまには大空でも飛ばせてやれよ。翼の上から眺める景色は最高だよ、それだけは保証してやる」

ボクの言葉に触発されたのか影響されやすいのか、ニッタは素直にヒールボールから実験体を繰り出すと、かつて保護した際に名付けたのだろうニックネームらしき名前で優しく問いかけた。

ニッタ「……ライメイ、空を飛んでみたいか?」
ライメイ「ギャオー!!」
ニッタ「ははは!そうか!よし、久しぶりに外の景色を見せてやろう!」

ナガタ「アリスって幼女ぱねえな。あのニッタさんがまるではじめてもえもんと会った子供みてえに、心から笑ってやがる。」
モンスメグ「自慢の妹☆」

それから間もなくして、ウォーミングアップも兼ねてこううんのもりの中だけとはいえひとしきり木々が囲む場所で遊びはしゃいだ実験体とニッタ。そんなつもりなんて毛頭なかったんだけど結果的に人助け……もといポケモン助けをしちまった。

アリス「さて、邪魔したな」
ゆん「おいとましますわ」
ニッタ「ありがとう。アレは派手に壊れちゃったけど……今のぼくたちにはもう必要なくなったからね。ぼくのホームで引き取りにでも出してもらうさ」
6号「ホーム?ここは自宅じゃないんですか」
ニッタ「まさか。この森から遥か遠くにぼくのホームでありジムリーダーも務めている地区があるんだ。今度紹介してあげよう」
グレアット「楽しみにしていますっ!」
モンスメグ「また遊ぼうねしゃちくん☆」
ナガタ「塩振りまいとく」

アリス「おっと、そうだった。実は今あるもえもんを探してるんだが、ラティアスってもえもんを見なかったか?メグいわくこの近くで何者かに攫われた姿を見かけたらしくってな」
ニッタ「攫われたのかい……?ぼくが窓越しに見かけたときは誰か女の子と仲良くおしゃべりしているように見えたんだけどな」

アリス「!」
6号「その女の子ってどんな子だったか思い出せますか」
グレアット「例えば青い髪を二つ結びにしていたりとかっ」
ニッタ「青い?あぁ、髪の毛の色は茶色だった気がするんだけど、不審者防止用に玄関に仕掛けてある拡張スピーカーで話し声はぶつぶつと聴こえてね……確か、

ブルーと名乗っていた覚えがある。

ちょうどアリスと変わらない背格好の女の子だったよ」

アリス「ビンゴだったか……どこに行ったまで分かるか?」
ニッタ「さすがにそこまではね……でも、ラティアスらしき子を連れてどこかへ行ったのは本当だよ。なんなら監視カメラをみても」
アリス「ゆん、行くぞ!」
ゆん「よくってよ!」

グレアット「何処かも分からないじゃないですかっ……もうっ」
6号「しょうがありませんね」
モンスメグ「夢のツアーへの片道切符だよ☆彡」

ボクたちはナガタケミカルを後にすると、深い森を形成する樹木よりも高く高く空を飛んでビアンカを探す旅へのパスポートを手にしたのだった。
目指すはブルーっていうトレーナーのもとへ!

ニッタ「伝え忘れていたな……ここ、カントー地方じゃないってことに」
ナガタ「もう遅いっすよ」

 Part42へつづく!



























アルトマーレ

ギンノ「変ねぇ……私ったら今まで何をしていたのかしら?」
クオーレ「俺にもさっぱり分からないな……まるで霞がかかったようだ」
オルディナ「コワイヨ……」

ギンノ「アスフィアと出会ったら何か分かるかもしれないわね」
ネクロシア「ブーーーーーーーーーーーーン」