Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part40

Would you call if you need my love?
どこにいたって聞こえる
君がくれるAgape
力のかぎりDive

みつめる触れ合うその時
愛は二人を試している
Time is now
Time is now(Are you ready?)
この世の果てまで

Would you call me if you need my love
どこにいたって聞こえる
君がくれるAgape
力のかぎりDive

信じる応えるその瞬間
愛が僕らをひとつにする
Time is now
Time is now
どこまでも生きて

Would you call me if you need my love?
どこにいたって聞こえる
君がくれるAgape
力のかぎりDive


凪の快晴、朝日も登りきらないうちからボクたちは、次の目的としてグレアットを求めて大空を渡っていた。真白よりも純白に輝くローブの背中に乗って。

シロ「アリス、今日の暁天は清々しいほどお綺麗ですよーーー」
アリス「んぅ~……まだ眠ぃ……」
シロ「うふふーーーその絹糸のように美しい金髪が乱れぬようにして飛びますねーーー」

翼を持つゆんとグレアは五更天の時刻から活動を始めるんだろうけど、まだ普通は眠っている時間だ。昨日一昨日と超展開に巻き込まれていたこともあって、午後8時からベッドに入ったというのに全然寝足りない。ボクはウトウトとまどろむ意識のなかシロにぎゅっと捕まったまま、お空での二度寝を決め込んだ。

ゆん「なんで私に乗ってるのがろくちゃんなんでしょうね」
6号「しーっ……シロさんに聞こえたら羽根を毟られますよ」
ゆん「はぁぁ……よくなくってよ」
6号(はやく着かないでしょうか……)

シロ(~~~♬)

ーーーーーーーーーーーー



ーーーここで時を少し遡って、アリスが道標を外れたあたりからユリと出会うまでの幕間のことーーー

-原初の星・カントー地方某所-

モンスメグ「飛びこみダイナミック☆彡」

道標ちゃん?かわいくないな~、真っ白だったからWhiteからとって、ほわちゃんと命名!ほわちゃんのしわざか分からないけども、いきなりウルトラホールみたいな空間に急降下していったかと思ってたのもつかの間。気がついたらメグはなんだか見覚えがある場所へと、チャリで来た

720度まわりをメグちゃんレーダーでキャッチしてみたところ、此処はカントーっぽいんだけどメグの馴染んでるカントーっぽくはなかった。
でもどうしてだか実家のような安心感。

SYSTEM-神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの-としての直感は、この世界がほわちゃんとうゅたんの原点なんだってビビッと告げている気がした!
それだけじゃなくって……アリスちゃんにとっても。

きっとあの子のことだから、ほわちゃんとなんやかんやイチャラブハートげっちゅしてこっちに訪れるはず。だとしたらメグは今のうちにパーティーの準備をしておかないとね!

音速でロトムフォンを操作してみるけど、どうやらこの世界だとまともに使えないっぽい?どうせここに永住しそうな予感がしたし、跡形も一切残らないまでに木端微塵にエレキテル☆エレクトリックで爆破させた。
よし!まずは配信手段を手に入れなきゃ!

メグは根拠のない淡い期待を支えにして、あちこちを駆け巡ったのであーる。

-ヤマブキシティ-

モンスメグ「並ぶ必要はない☆メグの爆速ファンサでキラキラをあげるよ☆」
『メグちゃーん!』

結論から言っちゃうとメグはアイドルでした☆
びっくりしちゃったよね、だってアリスちゃんは本来この世界線のスターだったなんて!どうしてああなったかは神のみぞ知るんだけども、とにかくアリスちゃんといつメン達は紆余曲折あって、魂がさっきまで居た世界に運ばれて軌跡を辿ってたみたいなんだ。こないだムゲンダイナを帰してあげたのと似た原理カモ?

なにはともあれメグは帰りを待ってるだけでよくなっちゃったから、いまは暇潰しにリアルエゴサしてアイドル活動の一環としてゲリラサイン会を決行していた。

もちろんメグが楽しいからっていうのもあるけれど、真の目的は人を集めて目立つことで情報と動きをサーチすること。
だってほわちゃんとか七英雄がナンセンスにアリスちゃんを翻弄してるわけないじゃない?在るべき世界に戻ってきたのだって絶対に必要とされてるから。
今日を頑張らなかった者に明日は来ないのさ☆

モンスメグ「キミはなんていう素敵なお名前なのかな★」
電撃のペースでサインをお届けしていると、サイン色紙を差し出してこない子供の姿を見つけたから屈んで目線を合わせてあげた。引っ込み思案な子、多いもんね。もじもじしているからきっと後ろに隠しているのかも。

「えと、あの。その……」
モンスメグ「人が多くて緊張しちゃってる?よしっ、メグちゃんがキミだけのためにワンマントークをしたげよ~!」
その子のちいさな手を引っ張ってあげたら、メグはひと気が少ない東へと連れて走ってシオンへと続く道路にある草原へ向かった。
『いやーんいまきたとこなのに~!』『ふっ、浅いな』
モンスメグ「きょうのイベントはおしまい☆アイドルのプライベートはトップシークレットをきちんと守ってね☆彡」

-7ばんどうろ-

「わわ……あ」
モンスメグ「落ち着いてしゃべれそう?」
緑豊かな草原へと腰かけてその子を宥めてあげると同時に観察をしてみる。背格好はアリスちゃんと変わらないかちょっと低いくらいで、実年齢も見た目相応っぽそうに映った。一個だけ気にかかることがあるとしたら~……。

モンスメグ「クエスチョンタ~イム!キミはなんのもえもん?」
「ひゃ、ば、バレてた……あわわ」
モンスメグ「伝説の聖獣たるメグの虹彩はなんでもお見通し☆」
「あ……お、お姉さんも?」
モンスメグ「わけあってアイドルやってます!」
キラッ☆
両目の瞳に星マークを作ってダブルピースサインで決めポーズ。

「くす……へ、変な、お姉さん……あはははっ!」
モンスメグ「やっと笑ってくれた。子どもは笑顔が一番のプロモーション☆」
「え……こ、こここ、子どもじゃないもん!」
モンスメグ「よしよし~♡」
「うぅぅ~……」

引っ込み思案な子どもの、手のひらでおさまるくらいちいさな頭を、お姉さんムーヴしながらナデナデすることでしか、得られない栄養素があるのだ☆
アリスちゃんだってお風呂で髪を洗ってあげてる時みたいに普段から素直なロリータだったらキューティクルなんだけど、チッチッチッ、アリスちゃんはあの生意気幼女だからメロいのよ……。
なんて浸っているとシャイガールはこのメグちゃんを出し抜いて、いつの間にか丘のほうへと立ち上がっていた。原っぱを靡かせる風も強くなってきてる。

「め、メグ……お姉さん。えと、その……」
モンスメグ「なぁに?」

「あ……ありがとう!」
幼い感謝の言葉が聞こえてくると同時にブワッって強風が吹いて、反射的に目を閉じちゃう。後ろからハグしてあげようとまばたきをしたときには、もうあの子の姿は消えてどこにも居なくなっていた。

モンスメグ「ファンからの応援がサイコーのブースト☆彡」

こうしてメグの不思議な出会いと別れはハッピーエンドで締めくくられたのでした。
あ。お名前聞きそびれちゃった。

脳裏に浮かび上がってくるのは、あのチャームなボディだけ……。



ーーーーーーーーーーーー


-セキエイ山脈-


寝て起きたら見知らぬ山脈が広がっていた。
とはいっても完全に知らない土地というわけでもなく、山岳をひとつ超えた先にポケモンリーグ本部および全寮制のトレーナースクール・セキエイ学園のシルエットが見晴らせるためここはセキエイの一角なのだろう、こうして実際に足を踏み入れたのは本日がはじめてだが。
もともと険しい山岳地帯でしかなかった土地を切り崩して建てられたのがポケモンリーグ本部とセキエイ学園なのであり、チャンピオンロードと称されている洞窟はそれ用に整備こそされてあるものの名残である。そしてシロに連れられて来たこの山脈こそが元来の姿、雄大な自然に育まれたセキエイ山脈って塩梅だ。
以上、タマムシ大学で学んだ知識より。

6号「どことなくナナシマを思い出しますね」
アリス「グレアが好みそうなとこだよな」
ゆん「そうね」
アリス「どうした?機嫌悪いのか?」
ゆん「べー、だ」

シロ「あの洞穴からグレアットの神託力を感じますーーー
お気をつけてお進みくださいーーー」
アリス「よし、行くぞ」

意を決してほとりにポツンと浮かぶ洞穴へと足を運んだ。

6号「あれ?誰もいませんよ」
シロ「確かに彼女のエネルギーを感じたのですがーーー」

グレアットはおろか人っ子ひとり気配を感じず途方に暮れるかと思いきや、人数倍視力の効くゆんが何かを見つけ出したようだった。

ゆん「あ!あっちを見てちょうだい!」
アリス「しかしなにもなかった」
6号「どっちーにょです」
ゆん「もう、ふたりとも目と耳が悪いのね!連れていくわ!」
アリス「いやお前の動体視力がアホウみたいにずば抜けてるだけだろ」

流されるがままゆんの翼で冷たい空気が張りつめる洞窟を飛んでいくと、入った時とは一転してきゃあきゃあはしゃぎあう声が聞こえてきた。

??「待て~!伝説のもえもん~!」
グレアット「ですから私はもうトレーナーのものなんですってば~っ!?」

ゆん「ほら!追いかけっこしてるわよ」
6号「慌てふためくグレアは珍しいですね」
アリス「帰ろう」
6号「非情!?」

グレアのやつは礼拝していた隙を突かれたのからしくもなく、遠くからでも目立つ八重歯がきらりと光る少女に追いかけまわされていた。
たぶんファイヤーが渡り鳥という特性を学んだ学園の生徒あたりにラッキーチャレンジだと思われて捕獲されようとしてるんだろう、少女の手にはプレミアボールがかざされているのがその根拠だ。

ゆん「グレアさーん!助けに来たわよ!」
グレアット「あっ!ゆんちゃんちょうどいいところにっ!」
??「なーんだオニドリルか」
ゆん「なんですって!?」
6号「ゆんさんもムキにならないで下さい!」

なんだ扱いされたのが気にくわなかったのか、大人げもなくトレーナー相手にクロスエッジをお見舞いしようと風を集め出したので、ボクはぺちっと樺色の後ろ髪を引っ張って制した。
アリス「ほら、回収しにいくぞ」
ゆん「むっ……そうね。私がリーグ制覇のMVPだって分かったらきっと膝をついて謝ってくれるわ」
6号「それはないです」
シロ「……いつもこうして微笑ましいコミュをなさっているのですねーーー」


ゆんの背中越しに巫女装束の裾を引いて追いかけっこを止めさせた。その一連の流れでようやくグレアが野生ではないことに気付いてくれて、少女は活発に自己紹介を始める。
アン「ごめんなさーい!私思い立ったが吉日それ以外の日は凶のポリシーで動いてるからついつい!私はアンって言います!ミジュマルといっしょにあのセキエイ学園の生徒をやってます!」
お団子頭をぴょこぴょことさせながら深々と頭を下げてはにかむアン。ボクたちも各自自己紹介を済ませると、キラキラとお目目を輝かせた。
アン「すっごーい!アリスってこっちじゃ有名なトレーナーなんだよ!会えてよかった!リコにもあとで自慢しちゃお」

ゆん「ほら、クチバで言った通りでしょう?」
アリス「ま、悪くないかな」
6号「それにしても修行場にうってつけですね」
グレアット「ダメよっ!?」
後ろで取り巻く漫才コンビはさておき、同年代からこうして尊敬のまなざしを向けられるのはとても気分がいい、かつてタマムシお姉さんたちからチヤホヤしてもらっていたころを思い出す。

アリス「学園はフィールドワークでもしているのか?」
アン「うちはスパルタ教育だからね~、虎穴に入らずんば虎子を得ずをモットーに日々たゆまぬ授業を受けてるんだ」
ゆん「あまあまなアリスちゃんとは大違いね。入学手続きしてきたら?」
アリス「タマムシ大学主席がそんなはしたない真似できるか」
6号「さりげなくセキエイをDisりましたね……」
アン「それで今もフィールドワークの最中なんだけど、まさかこんなところでファイヤーに会えるなんて!って浮かれちゃって。だってもしも持って帰ってきたら私クラスの人気者よ!」
グレアット「危ない所でしたっ……」
アリス「しかしグレア、お前ともあろうものがこんな発展途上の駆け出しに見つかるなんて気が抜けてたんじゃないか?」

茶化したつもりで軽口を叩いてやったんだが、グレアは軽快にコメントを返すと思いきや赤き眉をつりあげて真剣な表情で見つめ返してきた。

6号「なにかあったんですか、グレア」
グレアット「心頭滅却したくもなりますよっ……だってスズランさんの御姿があったんですからっ」
ゆん「スズちゃんも来ていたのね!」
アリス「…………場所を移してティータイムにしようか」

あいつのことはずっと気にかけていた。ちょうど小腹の空く時間帯でもあるし、おやつも兼ねてグレアから話を聞くことにした。
アン「なんかシリアスな予感!あ、リコから連絡来てるしじゃあ私はこれで!」
ゆん「ええ、気をつけて帰りなさい」

グレアット「……この地下道を抜けていくとトキワに出ますっ、そこの施設をお借りしてお話しましょうっ」

かくしてトキワへと向かう一行。そういえばアンだけじゃなくて気がつけばシロの姿も消えていた。まぁシロは特別忙しい身だろう、グレアはアークを乗せ、ボクはゆんの特等席へと乗ってセキエイ山脈から脱出をした。

シロ(来たるべき時のためーーー蛇蝎の如くーーー)

-トキワシティ-

カントー地方の西に位置する木々豊かな緑の街。自然が作り出した道が数多くあり、北にはニビへと続く昆虫の王国になっている森があり、南には唯一陸路で隣接しているマサラに繋がるほか、さらに西へ向かえばセキエイ高原と天然の要塞たるシロガネ山がそびえ立っている。それゆえにカントーの一般的なトレーナーは最終的に必ずこの街を経由する必要があるため、初心者向けの施設とエキスパートな施設が両立しており、万全を期して迎えるべく民泊・旅館型も含めたホテルもいくつか建てられている。

そのホテルの一室を借りてスウィートルームで会談と洒落込もうとトキワを見渡したのだが、クチバデパートやニビ遊園地よろしくこの街にも例外なく見慣れない空間が点在していた……。

アリス「あんなところに草むらがあったかな……下水道の川なんて通ってたかな……ジムの向こうに祠なんて祀られてたかな……」
ゆん「ぶつぶつ言ってないで早く降りなさい」

急かされるようにして大地へ降り立って、さも当然のように街一番のホテルへ入店し4人分のチェックインを済ませた。
その間にゆんとグレアはティータイムに必要な一式もろもろを調達しに大空へ飛んでいき、久しぶりにアークと二人の時間が訪れた。

6号「アリスさんとこうしてゆっくりするのはいつ振りですかね」
アリス「さぁな。ここ最近バカみたいに切羽詰まってたし」
6号「いまでも現実味が帯びませんね……」
アリス「お、ここベッドに折り鶴置いてんじゃん」

アメニティの充実さがホテルの居心地に直結するので躊躇なくサービスは全て利用しているのだが、折り鶴はポイントが高い。お客を優しくいたわり癒すおもてなしの心として百点満点。

6号「バルコニーに出ませんか」
促されるままアークと並んでバルコニーに出ると正午に差しかかろうとしている太陽が眩しく大地を照らして、さながらナナことホウオウの「予の好む晴天よの」なんて声が聞こえてくるようだった。

トキワを展望してみれば、さっき目についた草むらにはフシギダネなどのカントー御三家のほかにアークがたまにコスプレをしているハクリューの姿に、まさかのミミッキュらしき姿までもが潜んでいた。あんな化けの皮を持ち込まれちゃジムリーダーもたまったもんじゃなさそうだ、ふとエリカお姉様の尊顔も浮かんできてエモーショナルに打ちひしがれた。

6号「思い出をどんなに振り返っても、未来は付いてきませんよ」
アリス「ええい、人の心を読むな」
ヒスイのゾロアークが生き残っていく渦中で手に入れた読心術でボクの心情を見透かされてしまい不貞腐れる。
ただ……アークのその何気ないひとことは、さながらルチアのライブ会場で連呼されるシュプレヒコールのように何度も頭の中を駆け巡って離さなかった。

6号「私には、振り返るにはつらい思い出ばかりでしたから……仲間からの裏切りにロックさんとの別れ、逃げ延びるためだけに必死で喰らいついた知識だけが支えでしたもの」
アリス「アーク」
6号「私にとってはじめての良い思い出はグレアとの出逢いです。太陽のグレアがいなかったら、きっと私の世界は暗い真夜中のままだったでしょうから。それから、あなたと出会ってからもっと楽しく……あれ……出会って……出会い……」
アリス「アーク!」
6号「お、おかしいです……!あなたとの思い出はかけがえのない極光のはずなのに、それなのに……あなたと、あなたと出会った」
アリス「……んっ」

零れ落ちて止まらないアークにめがけて思いっきり背伸びをして、その言葉をくちづけで紡ぐ。瞳を丸くしながらも、アークはボクを抱きしめて三角帽子で外から見えないように気配りをする。帽子で視界が遮られ、目の前に居るアークしか見えなくなって、2人だけの世界に落ちた感覚を覚えた。

アーク「ぷぁ……ふふ。いきなりびっくりするじゃないですか」
アリス「ボクはいまここにいる。それだけで、いいだろう?」
アーク「…………そうですね。私は果報者です」

グレアット「きゃーっ!ロマンスドラマですっ!」
ゆん「アリスちゃん……女の子と二人きりになったらすぐそれなのかしら?」

アリス・6号「ぴゃ!?」

いつの間にやら帰ってきていたふたりの声がして思わずアークと同時に飛び跳ねてしまった。アークは慌てて帽子を深く被り直し、ボクもリボンを結び直す。

ゆん「もう……ほら、クッキーを焼いてあげるからいい子にして待っていなさいな」
グレアット「ダージリンも淹れてあげますねっ」
軽く諫めた程度でチャッチャとティータイムの支度を進めていく翼ふたり。
ボクはアークへ笑ってやるとアークも自信ありげに微笑み返してくれた。

そう、思い出は振り返ったところで未来は生まれないのだ。

グレアット「さてとっ……」
2つ向かい合わせに置かれたソファーで挟む形に設置されているテーブルに並べられたティーカップとお皿のなかもまばらになり、ボクの左隣に座るゆんとゆんの向かいに座るアークが遠慮のかたまりのクッキー1枚ずつを口にしたタイミングだった。

いっときの幸せもそこそこに、ボクの対面に座るグレアが本題を切り出してきた。
グレアはティーカップをカチャリとソーサーに置くと、ボクに質問を投げかける。
甘いクッキーを頬張っていたつい先ほどまでとはうって変わって、真摯でありながらも柔らかさの残った邪気の無い、赤い赤い眼差しを向けて。

 

 

グレアット「アリスさんはどこまでご存じでしょうかっ」

彼女が何を聞きたがっているかなんて、文脈を辿るまでもなく肌で分かっている。

アリス「……いまいるこの世界がボク達の在るべき世界、くらいは」
グレアット「はいっ、その前提さえご理解の程いただければ充分ですっ」

6号「昨晩に聞いたときは驚愕してしまいましたけどね」
ゆん「いいえ、私のびっくりアクションのほうが上よ」

グレアット「道標様とアリスちゃんが見えなくなってすぐに此処へ飛ばされたときには私もなにがなんだかでしたが、星を覆ってらっしゃる霊感の微妙な違いからほどなくして理解をしましたっ。そしてある重大性に気づいたんですよっ」
アリス「というと?」

グレアット「私たちはかつてこの星に生まれついてからアリスちゃんたちと旅をしていた経歴が残っているにも関わらずっ、その肝心な記憶と体験がごっそりと消えているんですっ!」
6号「っ!……矢張りそうだったんですか!」
ゆん(・・・)

気づかないようにしていた。だからこそついさっき強引にでもアークを引き止めたくらい。しかし神様っていうのはいじわるでそこを通らずにはいられなかったようで……その神様もこういう場面に限って居合わせちゃいないし、マジでいじわる。

うゅみがある種の贖罪のためにゆんに関する記憶を一時的に消していたのはまだ分かる、そしてそれと似たプロセスでいうのであれば、ボク達が本来在るここの世界……シロの言い方で表わすならば、原初の箱庭の記憶が無いことも理由があるはず。
もちろんすぐに考えられるのは、今まで人生を歩んできた箱庭のなかにおいていわば前世に近い記憶を有していては不都合でしかなりえないからに決まっている。
ただしそれならば、シロがボク達をこっちに送り返した段階で記憶を呼びこしてやればいいじゃないか?それだったら、やれクチバデパートだの地下都市だのセキエイ山脈だのといちいちシロがエスコートしてくれる必要も無かったわけ……で…………。

そこまで思考を巡らせて気づいてしまった。
まだ憶測の域は出ない。しかしこの奇妙な符号の数々……。

グレアット「私は急いで各地を飛び回りましたっ、でも思い出せるきっかけは何ひとつして見つからないまま……」
6号「そのまま途方に暮れてお祈りをしている最中で、アンさんに捕まったと」
グレアット「そうなりますね……お力に添えず申し訳ございませんっ」
ゆん「いいのよ、畏まらなくとも」
グレアット「そうだ、それとスズランさんについてっ……」

グワァラゴワガキィーン☆

モンスメグ「話は全て聞かせてもらった☆
誰かを照らせるスターいつかなれますように……一番星を宿している最強で無敵の国民的アイドル・メグちゃん!ここに見参☆彡」

なんか来た。


アリス「で、続きなんだけど」
グレアット「えーっとですねっ」
6号「あ、ミルク継ぎ足していいですか」

ゆん「メグちゃんおかえりなさい。何か進展はあったかしら?」
モンスメグ「よくぞ聞いてくれましたゆんゆん★」

アリス「ゆん、そいつに律儀に付き合うことないんだぞ」
ふだんから自分が思うがまま動く神出鬼没なメグと感動の再会ムードなんて無いし、それに付けくわえてSYSTEM*1なんて能力まで持っている、どうせロクなトラブルしか出てこないのがオチだよ。

モンスメグ「カノンたんわるーいやつに捕まってるYO★」
アリス「んなっ……!」

Part41へつづく!

*1:神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの