Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part24

「あなたに会えたそれだけでよかった、世界に光が満ちた。 
夢で会えるだけでよかったのに……。
愛されたいと願ってしまった、世界が表情を変えた。
夜の果てでは空と海が混じる……。」

縄で縛りし大陸曳きて、ヒスイの地造りしとの伝説あり。疑義あれど真理一片あるやも知れず。自身のプレートを用いて、鉱石からレジロックを、氷山からレジアイスを、溶岩からレジスチルを造り、来たるべき時に備えたという。
そして千年前の戦争によってレジロックを失った際、稲妻と古龍からレジエレキとレジドラゴを人知れず製したとされている。
その実、普段幾年ものあいだ眠っているのは天変地異が発生した有事に万全を期せるよう、莫大なタイプエネルギーを溜めているためと思われる。

アリス「レポートに全部書いてあったぜ、ゴッドマザー」
ボクはゆんの上からギィことレジギガスを見下ろしながら不敵に笑ってみせた。創造神が相手だろうとカラクリが分かってしまえばなんてことはない。
それに今回は無理やり起こされたタチだ、今の状態なら充分抑え込めるだろう。
ギィ「天空神の羽根……そうか、貴様が大団円を……」
アリス「何もしてないっちゅーに」
重苦しい空気のなかふと目をやると、ビアンカは地上に降りてギンノとなにか立ちこんだ話をしている様子が見えた。なるほどアークをここまで連れてきたのはギンノだったか、だとすればヒガナの心配もなさそうだ。

ソライシ「ひゃあ!本当にレジギガスが目覚めてるじゃないか?!」
グレアに乗せて付き添わせたソライシは、腰を引いて怖気づいていた。そういや立証人として連れてきたんだったわ、すっかり忘れていた。
ソライシを見たアークがメグを振り切ってまで、なにか手を振って訴えかけているように見えたので、グレアに指示してふたりを立ち会わせてやった。すると驚いた様子でリアクションを取り幾分かするとソライシを地上に降ろし代わりにレジロックの欠片を手にしたアークがグレアに乗ってこっちまで近づいてきた。

6号「ちょっとちょっとアリスさん!なに平然とロストメディアを発掘してきてるんですかあ!」
グレアット「6号ちゃん落ち着いてっ」
興奮冷めやらぬ様子でずんずんと全身を揺らしてグレアを困らせて登場してきた。
アリス「なに平然とボクの前から消えやがったてめえ」
6号「その節は申し訳ございませんでした」
ゆん「まぁまぁ、元気で何よりじゃないの……それにしてもいつもより増して大胆な格好ね?」
6号「こ、これにはダイビングよりも深いわけが」
どういう深いわけがあったらグラビア撮影並みに際どい格好を着る羽目になるのかは知らないが、とにかく無事が確認できて良かった。ギィの娘たちも全員集まっているし、どうやらキャストは出揃ったか?……いや、あと一名足りないか。
アリス「まぁいい、ヒガナはどうした?」
ギンノ「壊れちゃってるわよ」
マダームに乗りながら颯爽と現れるギンノ。一見飄々としているが、ギィ相手に思わぬ苦戦を強いられたのかその手は震えており、悔しそうな感情が隠しきれていなかったようだ。こやつであっても時間稼ぎにしかならないとは、ギィの底力は大したものだ。
アリス「壊れてる?」
ギンノ「キッサキでうずくまってるわ」
アリス「そうか……メグー!ひとっ走り頼む!!」
モンスメグ「イエスマム☆」

ギィ「再会の時間は済んだか?あたくしはこれからやらねばならんことがあるのでな、これ以上付き合ってるいとまなど……」
先を急ごうとするギィにたいして、おもむろにラルースから受け取ったオリジンを見せつけてやった。そいつを目にした彼女は、ここにきて初めて感情らしい感情を表に出したのだ。


アリス「やんなきゃいけないってのは、コレ絡みか?」
ギィ「貴様……どこでそれを」
アリス「問答には問答で返せよ、スイに詰られるぞ?」
大団円側の英傑の名を口にすると、ギィは息を呑んで藪から棒に真相を吐き出してくれた。
ギィ「只者ではあらぬな……良かろう、貴様のポテンシャルを買ってこれより起こる天変地異について教えてやろう」
6号「やっぱりそれがあるから起きてきたんですね」
アイス「……ママは……何もないと悪戯しても起きない……」
スチル「おいたしちゃダメじゃないッ?!」
タイミングよく実娘のふたりもビアンカに乗って接近してきた。ここまで長いミッションだったが、ようやく実態が掴めそうな段階まで進みそう。

ギィ「順を追って話してやろう、あたくしが何を止めているのかを理解してもらうためにな。まずあたくしがこの世界の大地を創造した英雄の一人ということは存じているな」
グレアット「はいっ、英雄の一人……ということは他にもいるんですねっ?」
ギィ「左様。世界に必要な礎を創造した者は七人いて””七英雄””と呼ばれている」
6号「かっこいい!」
ギィ「大地の創造神のあたくし、レジギガス
天空の創造神ことホウオウ、大海の創造神ことルギア。この二人とは出逢ったろう」
ゆん「本物のルギアさんとはまだですけどね」
ギィ「自然の創造神ことセレビィ、生命の創造神ことミュウ。この二人は性格に難ありであたくし達も滅多に面と合わせん」
アリス「カルマにうゅみもか……案外神様ってーのは身近な存在なんだな」
ギィ「奴等の真名を知っているのか……侮れん小娘よ。そして残すは未来の創造神ことキュレム……こいつもまた滅多に姿は現さんな」
ギンノ「まだ六人じゃないの」
大地のレジギガス、天空のホウオウ、大海のルギア、自然のセレビィ、生命のミュウ、未来のキュレム……なるほどどれひとつ欠けても世界は成り立たないな。
ギィ「……焦るな、そしてあたくし達にはそれぞれ自身と魂を分けた従属が存在する。あたくしにはグラードン、ホウオウにはレックウザ、ルギアにはカイオーガセレビィにはシェイミ、ミュウにはミュウツーキュレムにはゼクロム・レシラムと言った具合にな」
アイス「……ワンオペだと……大変……」
スチル「個人活動みたくいうなッ!それでママ、もったいぶらないで教えてちょうだいよ」

ギィ「待て!今は歴史の境目が変わる枝分かれ……ここで話せば時代の風向きが逆転する」
神妙な面持ちで緊張感を持たせてくれてるとこ悪いけれど、どうして英雄というのはみんな話に具体性があるようで抽象的になっていて内容が分かりにくいのか。ゆんがまたピヨピヨと擬音を立てて混乱しちゃっているじゃないか。
ギィ「……七人目の従属を当たれ、貴様であれば正しさを証明できるだろう」
グレアット「その従属さんっていうのはっ?」
6号「どこにいるんですか!」

ギィ「名はギラティナ……英雄の分身にして大団円を司る者」
ビアンカ「大団円!」
ギンノ「捨て置けないわね」
ギィ「ギラティナ唯一神話に残されなかったいわばアンチエネルギー……本来ならばあたくしがこれから話をつけようと画策していたがあたくしもまだ不完全の身ゆえな……アリスよ、貴様に委ねてやる。自身の手によって大団円との縁に終止符を打て」

これまでの話とみなの反応、自分の憶測をもとに推理をして、一つの仮説に辿り着いた。
アリス「ギィよ、大団円というのはさては一個ではないな?」
『!!!!!!』
何度も足を運んでいるはずのギンノがギラティナを知らないのは不可解だったし、いくら有名なネームバリューがあるとはいえ、こうもあっさり七英雄の真実について話をしてくれるのも不自然だった。それにシロナの真の目的はこの世界を救世することとは別にあって、自分では不可能だと分かったからボクに委任したのではないか?という邪推も含めて考えてみれば、大団円という存在は切っても切れない。
ボクの出した答えに、ギィは口角を上げた。

ギィ「聡い小娘よ、そもそも大団円という名称もまた道標から外れるために付けられた俗称……その真の名を知る時、この世界は在るべき形を取り戻すだろう」
哲学的な発言を最後に、ギィは姿を消した。自分の目的を果たすための役割があるのだろう、彼女が去った後には何か光り輝くものが落ちていた。
ゆん「あら、なにかしらこれ」
手に取ってみると、それは昔話で読んだ蓬莱の玉とよく似ていた球体だった。ボクが見てもよくわからないので、かわりばんこにそれを回していくとアークが手に取った瞬間にレジロックのプレートと反応して強烈な発光をし始めたではないか!
6号「わわわわわわ!?」

目を開けると、そこには鈍く重たい石製の武器をいくつも身体に装着した麗しく精悍な美女が立っていた……。
???「む?……どこだ、ここは。このせせらぎはエイチの湖、か?」

レジロック@冷水ゆき様

6号「え、え、えっ……?ろ……ロックさん!?」
アイス「……本物……」
スチル「見間違い、じゃなさそうねッ?」

アリス・ゆん・グレアット・ビアンカ・ソライシ「え~~~~~~~~~~!!!!!?????」
ギンノ「あら、面白いことになったわね」

モンスメグ「流星の末裔回収一丁あがり☆ほよ?みんなDarling'darling'FRIEZE??」
ギィのやつ、置き土産に粋な計らいをしてくれやがって……。
それから何分ものあいだアークがロックに泣きついて止まらなかったのは言うまでもない。

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-シンオウ某所・シロナ宅-
シロナ「レックウザデオキシスと交戦して圧倒的優位、上々ね。そしてレジギガスの生体エネルギーが道標のもとへ動き始めたのね……状況は好転しているわ、やっぱりアリスちゃんを見込んで間違いなかった!」

あたしは七英雄観測レーダーを計測し、世界がより良い方向に向かっているのを見届けるとスカウターをそこら辺に放り出して、相棒のガブリアスを専用のブラシでお手入れしてあげる。変な邪魔をされないようにトリトドンの粘着で軟禁させているスズランちゃんにアイスをあげながらね。

スズラン「むぐっ……こんなことしたって無駄ですよ。わたしじゃどうせ敵いっこありませんもん」
シロナ「うふふ、どうでしょうね?だって貴女はあのロケット団を単身で壊滅させたんですもの」
この子は10歳と幼いながらも、あたしが認めるくらいの実力者。好奇心たった一つで自分の故郷であるタマムシを占拠していたロケット団を解散させちゃうばかりか、ガラル地方までの約800匹余りのポケモン図鑑までコンプリートするくらいの猛者。彼女のパートナー、パティエ・ローレルは正直あたしのガブリアスであっても、どうにか五分以上にキープできるかどうかもあやしいくらいの強さを誇っているもの。もしもこの子が敵に回ったらあたしの計画は頓挫しちゃう危険性だってあるのよ。

スズラン「それとこれとは次元が違います!……あ、このフレーバーおいしい」
シロナ「でしょ?でもあたしは完璧主義なの、シンオウを守るためには手段だって選ばないわ」
スズラン「……変わっちゃいましたね、シロナさん。今のあなたはクロナさんです!」
スズランちゃんの子どもらしいシンプルなネーミングセンスに、あたしの低い沸点が反応しちゃって心から笑いが込み上げてきちゃった。
シロナ「あははははは!ちょっと、ツボに入っちゃったじゃないの~!……そうね、そうかも。だってあたしは道標を知っているもの……」

あたしだって、つい最近までは誇り高いひとりのポケモントレーナーの一角に過ぎなかった。でも好奇心はニャースをも……って言うじゃない?
ある日、本業である考古学の調査に熱が入るあまり、触れてはならない真実に介してしまった。確かアリスちゃんが新しいカントーチャンピオンになったっていう報道があったくらいだったかしらね。あたしたちがポケモン達と共生を育めているのは奇跡なんかじゃなくって、絶妙なバランスと道標の筋書きだけで成り立っているだけに過ぎないと思い知ったその日から、そのバランスと筋書きを崩しかねない因子は排除しなきゃって正義感に駆られたわ。

スズラン「道標ねぇ……わたしはいやですね、敷かれたレールの上をただ進んでいくだけの人生だなんて。たくさんある選択肢の内から自分の足で選んだ道を歩んだ結果が今なんだもの!」
シロナ「その選択肢に見えているものだって、自分の意志じゃなくて道標が用意した分岐点なのかもね」
スズラン「……だったら、その道標を壊すまでです!」

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ヒガナ「たはは~……あたしじゃなくてもレックウザは動いてくれたんだ、なんか気が抜けちゃったさ」
事の顛末をヒガナに語ると、次第に目の色を取り戻し自分の行為を悔いるように両手の指を折ってお祈りするようなポーズを取って返した。
6号「どうしてあんなに固執していたんです?」
ロックと再会できたからか、アークにはもう復讐しようという気配は無かった。現金な性格だがこれがこいつのいいところだ。本物のロックさんが出てきてくれたおかげで、呼び名をアークにしなきゃいけなくなったのが煩わしい点だが。

ヒガナ「あたしはね、ほんとは流星の末裔じゃないのさ」
グレアット「えっ!」
アリス「どういうことだ」
彼女は
ほっぺを指先で掻きながらばつが悪そうな顔をして、ためらいながらもひと呼吸置くと立ち上がって意を決して宣言してみせた。
ヒガナ「あたしの正体は流星の一族分流の民・流世の一族!世界線を旅して回るさすらいのトレーナーさ!」
ゆん「時をかける少女だったのね!?」
ゆんは新鮮な反応を示しているもののこれまでの冒険が冒険だっただけに、感覚が麻痺してしまっているのか時空の旅人だと告白されても衝撃は薄かった。むしろ隕石の阻止に躍起になっていた疑問がすんなりと解決してしまったまである。
それに……道理でアークを見たときに妙な反応をしていた訳だ。もしかしてと思いカマをかけてみた。

アリス「だったらアークを知ってるな?」
ヒガナ「フッ……正直驚いたけどね」
6号「え!じゃあドロッセルと口論していたのって」
ヒガナ「アマリリスっていうのはあたしの本名のヒガナ……もとい彼岸花の別名なのさ~」
モンスメグ「流星の民・最後の47日間」
スチル「彼岸違いよッ!」
6号「そうですか……現実を前にしているのに現実味がありませんね、あはは」
アイス「……ところがどっこい……夢じゃありません……これは現実……」

グレアット「ヒガナさん、続けてもらっていいですよっ」
司会進行役は灼熱灼眼の見た目とは真逆にとても冷静なのである。
確かにこれだけの情報ではまだ不明な点が多い、ヒガナの性格的にいずれ再会したとしてももう口は割らないだろう、せっかくの機会を逃してはいけない。

ヒガナ「世界線といってもそんな大それたものでもないよ。あたしが感知できるのは隕石が落ちたか落ちてないか、ただそれだけ。隕石が落ちて災害が起きたホウエンだってこの目で見てきたからね……星座になぞらえてアルタイル世界線って呼んでるんだけど、あっちは本当に救いようがなかった。だからあたしは自分が生まれてきたこの世界線くらいは守りたくって何度も移動を繰り返して旅してんのさ」
ギンノ「ふーん、アルタイル世界なんて呼ばれてたのね」
興味が湧いたのかギンノがピンヒールを鳴らして、含みのある言い方とともに目の前にしゃしゃり出てきた。

ヒガナ「あたしが勝手に名付けてるだけよ」
ギンノ「私はそこの生まれよ」
ビアンカ「えぇっ!?」
タイミングがここぞとばかりに一致したこの瞬間にカミングアウトされてしまった。いやさすがにそれはビックリした、まさか平行世界出身のトレーナーだったとはお見逸れしました、どうりで大団円だかに精通していたと思えば。
ヒガナ「あんな荒廃した世界で生まれ育ったんだね、そりゃ捻くれるわけさ」
ギンノ「その御言葉そっくりそのまま返してあげるわ、私から見れば文明に依存しきったこっちの世界の方が退廃的よ」
ゆん「どっちもどっちね……」

アリス「話を戻してくれ、結局のところもうこの世界には隕石……デオキシスの脅威は無くなったのか?」
ボクからしてみればその一点が重要なのである、もしもまだ脅威が完全に立ち去っていないのであればその将来に向けてプランを練っておく必要性があるからだ。
ヒガナ「レックウザとホウオウに認められているキミのおかげで安泰さ。いいね、キミはみんなから愛されて……いいや、あたしはずっと一人きりさ」
アリス「夜の淵をなぞるようなお前みたいな存在がいるからこそ安心して暮らせる」
ヒガナ「あはは!キミは可愛いね~、よしよししたくなっちゃうさ」
6号「ダメです」
おお、アークが割って止めるとは珍しいこともあるものだ。

ギンノ「さーてと……私は帰ろうかしらね」
ヒガナ「あたしはまた世界を流れるさ!」
アイス「……一難去ってまた一難……配信業の理なり……」
スチル「そうねッ、アークも大丈夫そうだし戻るわッ!」
ロック「なら俺は1000年のブランクを戻しに放浪しようか」
6号「えー!一緒にご飯食べていきましょうよ~!」
ロック「今のお前には俺は不要、いずれまた会おう」
エレキ・ドラゴ「たじたじ」
モンスメグ「ふたりはガラルにGoHome☆」
グレアット「どうして翻訳できるんですかっ!?」
ビアンカ「メグちゃんマジックだね~♬」
ゆん「だったらわたくしたちも、ギィさんの志を継ぎにいきましょう」
アリス「そうだな……行くぞ!」

こうしてレジギガスの一件も終了し、世界の脅威を2つ取り除けたところでボクたちは差し迫る大団円の謎に立ち向かうため、ギラティナと会いに旅を再開した。

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-タマムシシティ-
エリカ「マユミ、ジムはいっときお任せしましたわよ」
マユミ「ええ。エリカお姉さまはどちらへ?」
エリカ「わたくしを必要とする場所までお散歩ですの」

アリスの姉・エリカ、発つ!!!

Part25へつづく!