Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part23

柔らかな日だまりが包む背中に、ポツリ話しかけながら。
いつかこんな日が来る事も……。
きっと、きっと、きっと、わかってたはずなのに……。

その2匹は見覚えのない生命体のはずだというのに、見覚えのある点字が刻まれていて私の頭の中はキャンバスいっぱいに真っ黒けな落書きをされたようにモヤがかかってしまいました。
アイス「ママと……同じ匂いがする……」
スチル「アタシらと姉妹なことには間違いないわねッ!」
この二人がそう感じたということは、プレートから生み出された生命と決めて相違ないでしょう。問題はどうしてここに、それもヒガナと一緒にいるのかということでした。はっきりと答えてもらいましょう。
6号「どういうことですか」
ヒガナ「これでわたしの使命が果たされる!ようやく、ようやく……ようやくなんだ!!」
しかし仇敵は自分の使命とやらに酔ってしまっていて聞く耳持たず。よく見れば、黄色い点字プレートと黒い点字プレートのほかに、忘れ形見である茶色い点字プレートがそれぞれ祭壇のくぼみにピタッと填められてしまっているではありませんか!
私はすっかり寒さのことなど忘れ、ロックさんからの形見を取り出そうとめいっぱい力を込めて引っ張るも、完全に設置されてしまっていてびくともしませんでした。
つまりそれは私の大事な備忘録の1ページが消えてしまって、もうこの手には返ってこないという現れでした。愕然となって膝から崩れ落ちそうになります。
それもこれも全部この流星の一族の仕業です!私は絶対不可避の幻術、ルナ・トリガーをヒガナ目がけて容赦なく放ってやりました。

ヒガナ「甘ちゃんだね」
しかし竜騎士の目にもとまらぬ槍さばきであっけなく貫かれてしまいます。自慢のわざなのに、ポケモン相手はおろか人間ひとり相手に見破られてしまいプライドまでもが砕け散りそうになったのですが、アイスが槍を氷結させスチルが足元を固めてくれたおかげで、血縁を超えたその姉妹仁義に救われました。
さあこれでもう身動きは取れません、私は全身全霊エネルギーを溜めこんでいきます。

ヒガナ「いいの?爆裂させちゃレジエレキとレジドラゴごとドカーンだよ」
6号「!!!」
その言葉によって心に迷いが生じてしまい、詠唱を止めてしまいました。
そうでした、この2人がなんであれアイスチルの新しい姉妹に変わりありませんし罪と罰もありません。仇敵から忠告されるのは腹立たしいですが従わざるを得ませんね……。
ギンノ「甘いわよロック。その甘さが命取りになるのよ」
ブゥゥゥゥゥゥーーーン……!
ギンノは相棒のネクロシアを繰り出して、ヒガナの退路を断つように空間ごとぶち壊して切り取っていったのです。
ヒガナ「ベリリュンヌ!ようせいのかぜ!」

ヒガナが指を鳴らすと、ボールからひとりでにチルタリスが繰り出されてネクロシアにとって唯一の致命的な弱点であるフェアリースキンの技がお見舞いされたのです。
ギンノ「あら、残念ね。どこかのメルヘンロリータのおかげで克服済みなのよ」
ですが一度喰らった手段は二度通用しないのが真の強者というもの。ネクロシアは妖精の風を浴びてしまいましたが、余裕綽々に後ろ髪を振り回しながら彷徨っていました。
6号「観念してください!逃げ場はありませんよ!」
戦況はこちらが圧倒的優位に立てています、今こそ屈辱を晴らす時!
と思っていたのもつかの間……時流は流星へと追い風を吹かせていたのです。
アイス「……アーク……後ろ後ろ」
6号「へ?」
スチル「ボーっとしてんじゃないわよッ!!」
スチルが私へ突進してきたかと思うと、脇の下から抱きかかえて石像の前から退かせたのです。
6号「いったい……うわあぁっ!?」
ギンノ「きゃあんっ!また地震かしら!!?」
足元がぐらつく程度のただの地震どころじゃありませんでした。神殿の壁という壁が、床という床が、天井という天井が、すべての物質がおかまいなしに崩れ落ちて崩壊していくではないですか!?

ヒガナ「これで……これで成就する!」
アイスとスチルの足止めから解放されたヒガナが勇んでどこかへ去ってしまいます。速攻に追いかけてやりたいのに、バランスを保つことと受け身を取ろうとすることに精いっぱいで身体を満足に動かすことすらままなりません。それにこのままでは追いかけることはおろか、神殿から地下へと落ちていってしまいます!
ギンノ「マダーム!プッチー!」

あわや万事休す。そう覚悟を決めていると間一髪のところでギンノが機転を利かせて、お互いに安全を確保することに成功しました。プテラに乗ってさっきまで居たところを眺めると、石像があったはずの祭壇には何もなく、レジエレキとレジドラゴと呼ばれていた生命体もどこかに消えてしまっていたのです。
私たちは地上を目指して、落盤を自分たちの技を駆使してどうにか防ぎつつ帰還しました。
-キッサキシティ-
6号「大丈夫ですか!?」
雪の街に戻ると、至る所に地割れが発生していて何軒か建物が崩壊されていました。
目を覆いたくなるような大惨事が目前に広がっていたのです……。
アイス「……これはひどい……」
街の住民たちを救出させてあげられないか考えを巡らせていると、私にオシャレな破廉恥特訓衣装を着せた現役女子高生がミニスカサンタ衣装のデリバードに乗って現れました。

スズナ「ギンノさんたち無事でよかった!私たちの街は見ての有様だよ!!」
ギンノ「痛ましいわね、おおかたレジギガスが無理やり起こされて機嫌を損ねてるのね」
スチル「そんな……ママッ!!」
これほどまで絶大なパワーを出せるのは状況証拠的にレジギガスさんしか有り得ないでしょう。そしてそのレジギガスを起こしたのはヒガナ……起こした目的はこうやって天変地異を起こすことでレックウザを呼び出して、隕石ことデオキシスを止めるのがあいつの狙いだからです。
アリスさんの予測していた通り、ヒガナのやり方は乱暴なんてものじゃ済まされませんでした。無害な方たちを巻き込んでおいてなにが世界を救う使命ですか。
こんなのは””救星””じゃありません、ただの自分勝手なエゴイストというものです。これだけでも悲劇というのに、まだ災いは終わっていませんでした。
ボーマンダに乗って上空から何かきょろきょろしている様子のヒガナを発見したので、見つからないようにそっと近づいて監視してみると驚くべき発言を耳にしたのですから。

ヒガナ「ねえ!来てよ!!レックウザ!!!いま世界が大変なことになってるじゃないの、レジギガスが起きるのは天変地異が起きた時だけさ!!はやく来なさいよ!!!」
その叫びに、私も顔が真っ青になりそうでした。
事もあろうことか、レックウザが来ないというではありませんか。流星の一族であればレックウザが動けばすぐにでも分かるのでしょう、その末裔たる彼女が悲痛を叫んでいるのです。つまり、レックウザを呼ぶために滅茶苦茶しやがったというクセにそのレックウザ本人が来ないということ……それはもはや人災、カタストロフィ超えの悪行じゃないですか……!
様子を窺っていたギンノがヒガナに接近して嘲笑なさっていました。
ギンノ「うふ……とんだお間抜けね。どう落とし前をつけてくれるのかしら」

ヒガナ「うるさいうるさいうるさい
わたしは失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗……今は1000年前の予言の日から一週間前……失敗した。」

ギンノ「ちょっと!壊れていないでしゃんとしなさいな!!」
ヒガナ「わたしはなにものにもなれなかった」
6号「……!?」

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-そらのはしら頂上-

アリス「こんな空高くまで揺れていやがる!」
モンスメグ「イエッタイガーしてる観客席みたい★」
ゆん「言ってる場合じゃないわよ!?」
今いる場所は地表から数千メートルは上空の成層圏地震が起きたとてここまで揺れが生ずることは無いはずだ。つまりこの揺れはただの地震なんかじゃない。

レックウザ「大地の創造神め、覚醒したか…………ふえぇん」
グレアット「急に泣かないでくださいっ!前後が脈絡なくなってますよっ!」
レックウザ「ひっぐ……!無窮の観測者として調停しに行かなくては、うえぇーん……」
ビアンカ「よしよし、アメちゃん舐める?」

アリス「いや、待て。こーれは好機!」
モンスメグ「こうきくん!?」
アリス「ラルース、依頼通りデオキシスの討伐に当たってくれ」
レックウザ「然り……じゃが好いのか?わっちは奴と闘えば数日は悠に帰ってこぬよ。あ、このアメ美味!」
アリス「だがそれでいい!」
ラルースへの邂逅が間に合ったおかげで功を奏して、意図しない形である対策を取れてしまったのだからな。それとビアンカ、ぽいぽいとアメを与えるな、ボクの取り分が減っちゃうだろ。

ゆん「アリスちゃん、何か策があって?」
グレアット「あんまり神罰に当たることしちゃだめですよっ?」
アリス「もう既に策は貼っているよ」
モンスメグ「おそろしく速い計略、メグじゃなきゃ見逃しちゃうね」

ラルースは飴一袋を持っていってオゾンよりも遥か上の真空空間まで飛び立っていった。これであやつは数日は地上に降りてこないしデオキシス問題も同時に解決した、一石二鳥とはこのことよ。
さて、おそらくロックのことだから今頃レジギガスと感動のご対面を交わしているあたりだろう。とすればきっとレジ姉妹もいるはず、それと一夜でシンオウまで運んでやってくれた協力者も同伴しているんじゃないかな。その協力者が誰かはまでかは読めないが、場合によってはこれからの状況を打破できる可能性が高まる。
ボクはラストのピースを埋めるために、最後の仕上げに入ることとした。

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-エイチ湖-

ヒガナはもう使い物になりません。あれは完全に精神が廃れてしまっています。なにか私の思いもよらない高尚な糸がいくつも絡み合っているのかもしれませんが、その真意を探ることは現状では到底不可能といって差し支えないでしょう。
私たちは怒りを抑えるべく、純白の凍土・エイチ湖へと急いでそこで鎮座している彼女のもとへと足を運びました。

「……愛しの我が子までもがあたくしを止めるか。それもよかろう、大きくなったな……アイス、スチル、そして……」
6号「久方振りです、ギィさん」

ギィ「アーク、呪われし種よ……」

叩き起こされたキッサキで一通り暴れたからか、湖で水浴びに興じるくらいには冷静さを取り戻しているようでした。さしものギィといえども、自らが創り出した叡智の湖までは壊すような真似はしなかったみたいで安心しました。
ギンノ「あらあら、大地を創造した神様にしてはずいぶんとグラマラスなアーティストなのね。ちょっと期待ハズレかしら」
対面して開口一番に挑発をやってのけるギンノ、高飛車も此処まで来ると尊敬してしまうレベルですね。ギンノの目からみればギィであっても単なるポケモンの一種に過ぎないんでしょうか?
よく見ると、ギィの後ろに先ほど拝見したエレキとドラゴの姿もありました。ギィの力のおかげか知りませんけれども、私たちと同じように人間の美女を模した風貌となって。このふたりからはどうやら敵意は感じられません、それともただ単に何も分かっていないだけなのか。

スチル「ママッ!もうやめてッ!」
アイス「……破壊は……創造にあらず……」
血ならぬ地を分けたふたりが母を説得しようと試みますが、ギィにその訴えは届きそうにありませんでした。
ギィ「あたくしを止めたいのなら、あたくしを超えてみせよ。
が……大団円を見てきた程度で超えられるつもりかァァァァァァア!!」

ギィの雄叫びともなれば、それはただの音波ではすまされずひとつの立派な攻撃へと昇華されます。私は自身の聴覚そのものにイリュージョンを起こして未然に防いでおきました。大団円、そのことは眠っていた間も認知しているんですね。

あいてのレジギガスの ハイパーボイス

6号「やれやれ……平和的解決は無理そうですね!」
アークは つるぎのまいをつかった!
アイス「ママに……認めてもらう……!」
アイスは てっぺきをつかった!
スチル「ほんと、しょうがないんだからッ!」
スチルは きんぞくおんをつかった!

ギンノ「シア、やるわよ」

今ここに、史上最強の親子喧嘩が始まるッッッ!!!

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-ホウエン上空-

アリス「メグ、隠してるもん出せ」
ゆんに乗り換えて
シンオウへと飛んでいる途中、グレアの翼の上でメイク直しをしているバイアスチェックワンピwithポニテメグに要求をした。ホウエンが温暖な地方だからなのかトレンドだからなのか、大きい胸を余すことなく魅惑の谷間を作る衣装を最近着るようになったため同性相手でもその毒に目が行ってしまいがちだ。

モンスメグ「なぜバレたし☆」
アリス「毎日お前のこと見てんだ、気付かれないって思ったか」
モンスメグ「しゅき……きゅん♡」
上手いことを言って引き出させてみたけど、実は気づいたのはラルースの目線がチラチラとメグの腰元へ向けられているのを見た時だった。依頼者であるボク以外に対しては、アメを受け取る瞬間ですらビアンカからそっぽを向けていたというのに、わざわざメグに視線を送っていたということは絶対になにか意味があると察したからだ。
なので半分カマ掛けのつもりだったのに一発でビンゴを抜いてしまった気分になった、スイとの押し問答での経験が活きているのかもしれない。
メグが空中にポイっと捨てるようにしてなにかを投げてきたのを、ゆんがスピンターンしてボクがダイレクトキャッチ。
両手に取ったそのゴツゴツは、大きな石のようななにかだった。

アリス「なぁにこれぇ」
石を眺めていると、ひゅーんとビアンカが真横についてきてそれを一目見てはオペレーターの役割を遂行してくれた。
ビアンカ「これ隕石っぽいけど、ちょっと違うみたい」
ゆん「なんだか分かるかしら」
ビアンカ「ちょっと触らせて~」
アリス「ん」
なんだかからかいたくなって、石を持っている方とは逆の手を差し出してみた。
ビアンカ「リースお姉ちゃんのおててふにふに~♬って真逆だよ!方向も感触も全部逆~!」
グレアット「そのツッコミ、Xしか合ってない以上に用途限定的ですねっ……」
モンスメグ「ベトベトンキレイハナ
グレアット「芳香も間色も全部逆~っ!?」

漫才師メグレアはさておき、ビアンカはどこから取り出してきたのかピントレンズを使ってそのゴツゴツとした物体をくまなく見るも、真相には至らなかったようで首を小さく傾げていた。
ビアンカ「ん~、なんなんだろこれ?ギンノちゃんだったら分かるかも」
ゆん「そういっても何処にいるのか足取りが掴めない人なのよねぇ」
ビアンカ「メグちゃんこれどこで拾ったの?」
モンスメグ「突撃!ハジツゲの晩ごはんの収録☆」
アリス「新番組をプロデュースすな。ハジツゲつったら最初に来たとこか、ちょいとUターンしてみるのも手だな」
グレアット「お時間はよろしいんですかっ?」
モンスメグ「ちょっぱやでいかなきゃけつかっちんよ」
さっきからプロデューサー気取りなのか、サングラスをつけてミノムッチの葉っぱを丸めた棒を口にくわえながらグレアの背中で器用に寝そべっていた。

アリス「どうせ寄り道するつもりだったからな、行ってみる価値ありさ

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ギンノ「この私に不覚を取らせるだなんて、なかなかやるじゃない」
私たちは総動員でギィに立ち向かうも、文字通り手も足も出ませんでした。私のイリュージョンも、アイスの氷像空間も、スチルの砂鉄錬成も、そして私たちよりも実力のあるギンノのパーティーですら簡単に撥ね退けられてしまっていました。

アイス「高飛車だから……不覚を取っちゃうんだね……」
スチル「歩と角の話じゃないのよッ!」
6号「劣勢だというのに、余裕に成れていますね?」

ギィ「ならば強者のあたくしはただ突き進むだけで貴様らを屠れているようだな」
6号「こんな香ばしい車に乗った?!」
死力を尽くして激闘している真っ最中というのに、愛娘たちのトークに混ざりたかったのかお茶目な対応を見せてくれるギィに思わず脱力しちゃいました。なんだかこの分でしたら案外本気で怒っているというわけでもなさそうですね?
唯一この輪に混ざれない銀色の令嬢さんは、ひとり闘気を剥き出しにされておられました。多分現状においては貴女が最も正しいと思いますよ。

ギンノ「ちょっと。ひょっとして手を抜いているつもり?」
そういえばポケモンバトルに際しては華麗なる信条をお持ちの彼女は、相手から舐めプされるのが一番腹立たしいのでしょう。ネクロシアも隣で後ろ髪をブンブンブンブンブンブンと振り回して、地球と太陽みたいに光と影を生み出して不満を表現していました。
ギィ「娘たちを痛めつけるような毒親ではないわ。あたくしはあくまでも成長具合を見ているのみ……貴様のことは娘の保護者として見ているわ」
ギンノ「だーれーがー保護者よ?」
今の発言で確信しました。
ということは論理的結論として、私たちがここで出来る限り時間を稼いでおけばアリスさんが活路を見出しに助けに来てくれる可能性があります。グレア以外には何も言わないで出ていった手前、後ろめたい気持ちこそはありますが奇跡を起こしてくれるとすればそれはアリスさんに他なりませんから。
6号「信頼……というべきですかね」
スチル「なにボソボソ言ってんのよ、ほら!さっさとママをやっつけちゃうわよッ!!」
ギィ「フッ……やれるものならやってみせよ!」

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-ハジツゲタウン-
メグが空き巣したという民家にお邪魔すると、生活感があるのに中には誰もおらずよっぽど不用心なのか間が抜けてる家主が住んでいるようだった。
散乱している研究資料を適当に拾っては速読していくと、どうやらここには隕石に関する学者が住んでいると思わしき情報が手に入る。その中でも目を引いたのは、メガストーンについて記載されている書類の山。何割か変色してしまってる紙も見受けられ、非情に膨大な時間を費やしてフィールドワークをしてきた形跡が垣間見える。

????「誰かいるのか!?」
漁っているうちに家主らしき研究者が帰宅してきたみたいだ、ボクは急いでゆん達を裏から飛ばして逃がしてやると、下に戻ってトコトコと不安そうに歩く演技を始めた。
アリス「はうぅ……アリス迷子になっちゃったぁ……」
????「なんだ子供か……お嬢ちゃんここはきみのおうちじゃないよ」
ここの家主は眼鏡をかけた妙齢の男性で、白衣を着ていることからも学者であることに間違いはなさそうだった。それに人の良さそうな目をしている、これなら上手く誤魔化しきれそう。
アリス「ごめんなさいおじちゃん!あのね、こんなの拾ったんだけど……」
????「おじちゃんじゃなくて、ソライシと呼んでおくれ。どれどれ……」
ソライシと名乗る学者に、メグがここで拾ったと思わしき鉱石を見せるとソライシは驚いた様子でボクの手から取り返そうとしたので、あえて抵抗することなく返してあげた。
ソライシ「こらこらいけないじゃないか、人のものを勝手に取っちゃ。これは代々ぼくの祖先から譲られてきた大切な石なんだから」
アリス「なんの石なのぉ?綺麗だから気になっちゃったぁ」
両手をスカートの前に合わせてもじもじと振る舞って、好奇心旺盛なぶりっ子の態度を演じておく。小さな女の子ひとり相手ということで警戒心も解けたのか人の良いソライシは解説をしてくれた。
ソライシ「おお、これを気に入るなんてお目が高いお嬢ちゃんだ。そんな将来有望なきみに特別に教えて進ぜよう、これはかつて存在した古代兵器・レジロックの欠片なんだよ」
アリス「!?」
ここにきてレジロックのパーツだと?確かに機能を停止したあと、その遺体の行方がどうなったのかが気にはなっていたがまさかその一部が学者の手に回っていたとは。
動揺を隠しきれず、ついつい素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
ソライシ「おや。どうしたんだい?」
アリス「ううん!それを見つけた先祖様ってお名前なんていうのぉ?」
ソライシ「確か……ドロッセルだったかな。戦争が終わって封印されたレジロックを掘り起こしてでも砂漠の中から発見したらしくてね、どうしてそこまで意固地になったのかが分からないんだよ……なにせほとんど研究されたことがなくて、ずっとカプセルの中に保存していたからね」
アリス「ふーん」
ドロッセルはどこかのタイミングでアークの正体に気づいていたんだな。そして風のうわさで聞きつけてアークが親しんでいたレジロックの一部を、アークとの思い出として残したかったのかもしれない。
よくできた絵本のようにしんみりするお話じゃないかい。
ソライシ「さあさ、おうちにお帰り。どこから来たんだい?道案内ならしてあげよう」
アリス「道案内してくれる?ほんと?えへへ、じゃあねぇ……」
指パッチンするとそれを合図にソライシのまわりを取り囲むようにして、ゆん達が集結した!

アリス「それを持ってキッサキまで来てもらおうか!」

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-花の楽園-
シェイミ「そうだったんでしゅか……セレビがゆーならそうなんでしゅね」

咲き乱れるような花の中心で、カルマさんがなにやらむつかしい話をシェイミさんに淡々と説いていってあげていると、どうやら納得してくれていたみたいでした。
私はというとその間立つ瀬がなかったので、綺麗に花束や花冠をつくって待っていただけです!

リーリエ「お分かりいただけましたか!」
カルマ「おまえ何もしてねえじゃんか」
リーリエ「平和な人間さん代表です」
シェイミ「くふふ、そのお花は枯れないから大切な人に贈るといいでしゅよ」
枯れないお花ですって!?この世界にはまだまだ不思議がいっぱいです、私の探究心は止む気配がありません。今度アリスちゃんかグレアットさんに進呈しましょう。

カルマ「ま、そーゆーわけだから後はぼくが責任持って後始末しておくじゃんよ」
シェイミ「おまかせするでしゅ」
お話がひと段落ついたとたんに、ポンッとシェイミさんが消えてしまって代わりに桜の花びらだけがはらはらと舞い散っておりました。
リーリエ「えっと、もう終わったんですか?」
カルマ「ん、こっちの世界の方わな。いまから大団円行って自然エネルギーのバランス取りに行くじゃんね」
リーリエ「またあちらに行けるのですね!」
カルマ「あ~……おまえが思ってるのとはちと違うかもじゃんね」
リーリエ「え、それってどういう」
カルマ「百聞は一見に如かず、さっそく連れてくじゃんよ!」

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ギィ(む、たまむしプレートが元に戻ったか……残すいくつかがこの地に還るまであたくしも間に合わなせねばな……)

ギンノ「よそ見しないでもらえる!」
メガリザードンXの フレアドライブ
ヤミクラゲの ハイドロポンプ
メタグロスの メガスパーク!
カラバジオの ラスターカノン!
フォリキーの ダークブラスト!
ネクロシアの ふみたおす!

スチル「回天剣舞六連ッ!」
アイス「要約6体同時命令……あれがアルトマーレの女王……」

ギィ「遊びはここまでのようだ」
ギィの スロースターターが解除された!
ギィの メタルバースト!

ギンノ「嘘ッ!私の子たちが一瞬で壊滅だなんて」
6号「スロースタート、ですか。まさか本当に本気じゃなかったんですね……」

私たちをものの一撃で圧倒してみせると、ギィは何も言い残すことなくどこかへ移動を始めてしまいました。ですがこの如何ともしがたい実力の差を見せつけられてしまった手前、追いかけるような精神など打ち崩されてしまいましたよ。
エレキ・ドラゴ「……ぷるぷる」
6号「おっと、残されちゃったんですね。ついてきますか?」
私がやさしく手を差し伸べると、エレキはアイスのもとへドラゴはスチルのもとへ走ってすり寄っていきました。え、私フラれました?

やれやれ……私は結局何も成し遂げられませんでした。ドサッとその場に寝転んで青空を見上げて黄昏てみます。
足音が全身に響き渡り、まだギィはエイチ湖から出ていってはいないのですぐにでも引き止められますけれども、もうそんな気力なんて……などと弱弱しくため息をついているとなにやらお空に見覚えのあるシルエットが飛んできたのでした。
そして約一名がそのシルエットからひゅーんと星のように落下していって、瞬間移動のような速さでこちらに近づいてきて……

モンスメグ「あーくぅぅぅぅぅぅぅぅぅん☆☆☆」
6号「ぎにゃああああああっっっ!!!」

ギンノ「メルヘン劇場の開演かしら」

Part24へつづく!