Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》-硝子色の夕空- part21

篭の中の鳥のような虚ろな目に触れている午後の日差しはまるで
貴方を外へ誘う光

変わらない予感は続いているあの日々さえ曇ってしまう

めぐり来る季節-とき-に約束を奪われそう
この両手差しのべても心は離れて

Why do you stare at the sky
with your blurry eyes?

6号「……そうですか、そうだったんですね。こいつが……こいつが」
グレアット「6号ちゃんっ!

灼熱灼眼の巫女が怒りに振るえるロックの腕を取って制止する。空気を清浄させようとメグが茶化してみせるも、この鬱陶しい太陽の光は変わらず燦々と紫の影へと照らし続けていた。
ラン「な、なんのことか分かんないけど、とりあえずぼくたちは修行に戻るね!」
フウ「それとダイゴのおうちは海沿いに離れたとこにあるよ!それじゃあね!」
張りつめた空気から逃げるようにして、伝えたいことを伝えて足早に消える双子を見送ってあげられたのはビアンカとゆんの2人だけだった。

アリス「ロック」
6号「放っておいてください」
ボクは彼女を見上げるとたったひとこと、忠告だけを命じた。
アリス「勝手はボクが許さない……いいな」
6号「っ……!……分かりましたよ」

ゆん「一発で抑え込んじゃったわ……」
モンスメグ「アリスちゃんやる~」
野次を投げる外野は放っておき、ボクは砂浜のほうへと出てダイゴの家らしき離れ小屋のある屋根へと向かって歩き出す。ちらりと後ろに目をやると、長身のメグのビキニスタイルが正装かと思えるくらい海岸だとやけに眩しく似合っていて目に毒だった。相反してロックの暗い表情が日光で隠れてしまって見えなかったから。

-DAIGO宅-
アリス「シロナからの紹介で来たアリスだ、開けてほしい」
ドアの前に立ってそう告げると迅速な対応で開いたかと思えば、こんな島国にはもったいないくらい爽やかな好青年が出迎えてきてくれた。身長差がありすぎて足しか見えん、首が痛い。
ダイゴ「やあ、待ってたよ!……おっと失礼、マドモアゼル」
足元のボクに気づくとすぐにしゃがんで、視線を合わせて挨拶をしてくれた。社交スキル良し、舞踏会に参加しても違和感がないくらいの紳士じゃないか。

6号「なんだか落ち着いてきました」
モンスメグ「MKR!めんくいろっくん☆」
おお、ダイゴがイケメンだったおかげでロックが調子を取り戻してくれてなにより。

ビアンカ「ダイゴさんおひさでーす♪」
ダイゴ「おや、ビアンカちゃんじゃないか。ギンノさんは元気かい?」
ビアンカ「便りがないのは元気の証拠です!」
切り返しかたが上手い、さすがはバズウェイトレス。
このふたりが知り合いということはなんとなくだが予想がついていた、ギンノが今のホウエンチャンピオンでもともとクオーレともどもギンノと仲間だった経緯から逆算して考えてみれば、きっとビアンカはダイゴと戦った経験があるのだろうと推測がつく。

ボクは彼にエスコートしてもらって家の中に入ると、部屋は質素なつくりながら壁中には様々な鉱石が丁寧に飾られまくっていて、まさに筋金入りのマニアだった。
””キレイハナより団子””ということわざがあるが、彼は””キレイハナより石””という言葉がうってつけだろう。
テーブルをはさんで三人掛けのソファーの真ん中に座らせてもらい、その両隣にゆんとビアンカが、後ろにはグレアとロックが立つ形で位置取って、対面にはチェアにダイゴが腰を下ろした。気ままにウロウロしてるビキニのスクリーマーは知らん。

ダイゴ「アリスちゃんだったかな、ぼくのためにこんな辺境までようこそ」
アリス「謙遜しなくていい。早速だけどこれを見てくれ」
ボクはリボンチェーンフリルリュックから、流星の里で取得したメガストーンを彼へと見せて鑑定してもらった。テーブルに置くなり、おお……とヘラクロスを見つけた少年のように目を輝かせて感嘆していた。
ダイゴ「素晴らしい原石だ、これは流星の滝から掘り出た天然ものだね」
6号「私が見つけました」
ゆん「間違っては無いわね……」
ビアンカ「ロックちゃんって案外ちゃっかりしてるね」
グレアット「あははっ……」
アリス「メガストーンだと思うんだが、なにぶんカントー出身なもので用途が分からなくてな」
ダイゴ「だったらまずはこれをあげるよ、嵌めてあげるといい」
ぴったりとメガストーンが嵌まりそうなサイズのバングルを受け取った。なるほどこうやって管理するものなのね。ボクはバングルのベルトを巻きなおして自分の手首に合うくらい輪っかのサイズを小さくする。
ダイゴ「ふむ、これはふたつとない逸品だよ。ビアンカちゃん、キミにお似合いのようだ」
ビアンカ「ほぇ?」
ダイゴ「ほかのストーンにあやかってラティアスナイトと名付けるべきか、これを使えばビアンカちゃんの潜在的な遺伝子をもっと引き出せるに違いない」
ビアンカ「ほんと!?やーりぃ♪」

それは想像していなかった、まさか伝説のポケモンにも対応するメガストーンが存在していたなんて。それもボクの仲間のものとは、偶然にしては出来上がりすぎている事実だ。ボクはそのラティアスナイトとやらを返してもらってバングルにセットすると、ルビーのように赤く光り出した。
ゆん「まあ綺麗」
アリス「ありがとう、ところで隕石飛来……もといデオキシスについてなにか情報は知らないか?」
6号「む」
ロックがその話題に食いついてきて感情を昂らせたのか、先ほどとは違った意味で後ろから重圧を感じた。その彼女の夥しさを目にしているダイゴはうって変わって精悍な態度へと切り替わり、真摯に語り始めた。

ダイゴ「この目で実際に見た訳じゃないけどね、言い伝えではデオキシスは宇宙によってDNAが突然変異を起こして生まれてきて、コスモパワーによって十分に成長したら隕石の姿と化して地上へと落ちてくるとされてるんだ。そしてその力は絶大で、3つのフォルムにチェンジしながら裂空を歪曲させるエスパーを持っていてデオキシスに抗えるのは、真空空間であっても全力を出せるレックウザのみだってエピソードがある。もし近々落ちてくるとすれば、誰かがレックウザを呼び起こさなきゃならないね……!」

隕石ことデオキシスのくだりにレックウザという名が出た瞬間に、ボクは間を置かずして返す。
アリス「その呼び起こそうとしてるヒガナって奴とさっきやり合ってきたとこだ」
ダイゴ「そうか。レックウザと共鳴ができる流星の一族ならではといった感じだ」
グレアット「共鳴っ……レックウザにもメガストーンがあるんでしょうかっ?」
察しのついたグレアにダイゴはアゴに手を添えながら頷いてみせた。
ダイゴ「有り得る話ではあるね、モンスターボールを使わずしてドラゴンを使役する民族だ。それで彼女は今どこに?」
ゆん「闘いが終わったあとすぐに使命があるとかなんとか……」

6号「あの方のやり方はハッキリ言って到底許せませんね、このまま任せておいたら1000年前のように戦争が起こってもおかしくありません」
炎の魔女の言葉には端々に憎悪が籠っていた。無理はなかろう、そのデオキシスが戦争の引き金であり、彼女を支えていたレジロックを破壊した本人だと聞いている。さっきビアンカデオキシスから発せられる生体エネルギーによって開発された∞エナジーとやらで、確かに文明は大きく発達して今や生活の基盤となっているのかもしれないがその過程には決して放置できない悲劇の上に成り立っているのだ。
双方の話が正しいと仮定するのであれば、推理するにかつてデオキシスが襲来した際に地上に残された隕石かなにかから∞エナジーのもととなるエネルギーが発見されたことによってそれの奪い合いが始まってしまったのだろう。さらにいえばそれを基に暮らしの助けやポケモンの道具だけではなく、兵器までもが作られてしまい激化……ホウエン中を災厄の渦中に巻き起こした挙句の果てに、ロック……いやアークのような存在を生んでしまったきっかけになったとまでは考えられる。

ダイゴ「デボンは確かに産業革命の勝者になった。今のホウエンはデボンあっての地方だよ、でも僕だってそんなことのために戦争をするだなんてまっぴらごめんだね。僕も協力してあげよう、流星の一族はどうも盲目的でいけない!未然にデオキシスレジギガスの襲撃を止めようじゃないか」
6号「……助かります」
なんかダイゴもダイゴで手振り口振りがいちいち仰々しくて性に合わないけど、まあ平和主義なら手を組んでおこうか。
アリス「具体的なプランはあるのか?」
ダイゴ「そうだね、レックウザは幸い観測者の立場だからきっと民衆を脅かす真似はしないはずさ。そこでデオキシスが隕石となる前に、天空で決着をつけてもらおう。そうすれば例え喧噪が激しくなったって被害は出ないだろう」
グレアット「お空の上でやり合ってもらおう、って算段ですねっ」
ダイゴ「直接レックウザに会いにいこうか、そらのはしらと呼ばれる場所の頂上で佇んでいると聞く」
ゆん「壮大になってきたわね……」
ビアンカ「そらのはしらだったら、ビアンカが連れていってあげる!ギンノちゃんと一緒に行ったことがあるから!」

こっちに来てからというもの、ウェイトレスとして一緒に働いているとき以上にビアンカが頼りになってくれてて本当に頭が上がらない。善は急げだ、ボクは立ち上がって速攻でダイゴの家から外へと駆け出した。

アリス「……ほぁ?」
あれれ?世界がくるり回ってる……勢いよく玄関まで駆けていった先で強烈な眩暈に襲われて、全身のバランスを崩してしまった。なぜだか景色が
不思議と澄んでゆっくり、ゆっくり、スローモーションで流れていき……。

ゆん・グレアット「アリスちゃんっ!!!」

ふたりの声だけがはっきりと聞こえてくる。
そのままよろけてあわや転倒事故……という間際で澄んだ景色のなかにあっても美白の長い脚だとはっきり分かるストライドがよぎり、亜麻色の髪のビキニが瞳の中へと映し出されたのも瞬間、マシュマロみたいに柔らかな感触が上半身を包んでくれて事なきを得たのだった。
ビアンカ「だいじょうぶリースお姉ちゃん!」
ダイゴ「ふたりとも、ケガはないかい」
アリス「んーにゅ……」
モンスメグ「よちよち☆アリスちゃんフラフラだったもんね~」
頭に感じる柔らかさはメグのお腹だったらしく、上半身が太ももに直接挟まれている感覚からしてメグは両脚からスライディングして自分の身体をマット代わりにするようにしてボクを守ってくれていたっぽそうだった。

6号「……考えなしにうろついてたんじゃなかったんですね」
モンスメグ「メグちゃんアイはゼブライカよりも広くって高性能レーダー搭載なのだ☆」
腹式呼吸でマシンガントークしてくれてるおかげで脳が揺れる揺れる……ボクは起き上がろうと力を込めたのだが、どうしてかしら全然言うことを聞いてくれなかった。とうとう身体の神経がバッジなしでは動かなくなったというのか。
グレアット「そういえば今日は朝からハードでしたもんねっ……はるばるこっちまで飛んできてそのままヒガナさんとガチりましたしっ」
ゆん「9歳の子にはちょっと鬼がかっていたかしらね」
そう言われてみれば、今日はずっと気を張り巡らせていて疲れている感覚すらなかったかもしれない。それにメグのしっとりとした素肌がマシュマロみたいなクッションで気持ちよくてこのまま微睡んでしまいそうだ……。

ダイゴ「幼き身体に巨大な正義、か。今日はもう日が暮れそうだし、明日そらのはしらへ向かうといいよ。僕の家じゃなんだしフウとランに連絡をつけておこう」
そう気遣ってくれたダイゴに感謝する間もなくそのまま外へと出ていってしまった。しかし休んでいるような余裕はない、そうこうしてるうちにも事態は悪化の一途をたどっているのだから。
アリス「メグ、離せ。すぐにでもそらのはしらに……」
モンスメグ「ばっかじゃないの?」
アリス「ばかにばかって言われたあ」
同情を求めようとみんながいるほうへ視線を向けると、なにやらこいつらも揃って蔑みにも近いような暖かい目線で見据えていやがった。
6号「はぁ……なんだか毒が抜けてきちゃいましたよ。本日はお言葉に甘えて休憩しましょう、私もくたくたです」
グレアット「アリスちゃん、元気がなきゃ戦はできませんよっ」
ビアンカ「リースのばーか♪」
アリス「あ?」
ゆん「皆の言う通りよ、このまま無理して行ったってレックウザに門前払いされるわ。今夜ゆっくり休んで明日がんばりましょう」
アリス「ぐぬぬ
反論したかったが気持ちだけが先走りしていて身体が思うように動かないのはまぎれもない事実だった。ボクはふてくされてメグの剝き出しの太ももやら脇腹やらを指で突っついてやった。
モンスメグ「やーん☆ワルなんだ~!」

絶対にもっともっと強くなってやる、フィジカル的な意味で。ボクはこの日そう心に固く誓ったのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カルマ「さーてと、シェイミにはぼくから直接ひとこと釘を刺してやる……って思ってたのにどーして子守りまで一緒にしなきゃいけないじゃんよ」
リーリエ「もう子供じゃありません!わたくしは一人前のトレーナーです!」
カルマ「はいはい……にしても相も変わらずシンオウは寒いな……」

リーリエ「しっかり着込まないからですよ、カルマさん」
カルマ「ゲレンデで紅茶しばいてたくせに、よぉいけしゃあしゃあと……」
リーリエ「論理的結論として、銀景色で嗜む紅茶は別格なのです!」
カルマ「あいつらに感化されてんのか?あ、そろそろ着くじゃんね」
リーリエ「幻のポケモンと噂されるシェイミさん……ワクワクが止まりません!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

-フウとランハウス-

ルチア『ようやく会えたね嬉しいね♪待ち遠しくて足をバッタバタしながら今日楽しみで寝れねかったよ♪』
モンスメグ「メグも~☆」
メグさんはルチアさんのLIVE配信に夢中の様子ですね、このぶんでしたら配信が終わるまでのいっときは動かないことでしょう。
個室へと音もなく忍び寄ると、お疲れだったアリスさんはベッドの上でゆんさんに抱きしめられながらぐっすり安眠のようでした。くれぐれもご自愛くださいね……それと、ごめんなさい。やっぱり私は自分の心にぐつぐつと沸き上がってくるこの黒い衝動を止められそうにありません、この勝手を許してほしいとは言えませんが理解ってくださると幸いです。
夜分ということもあって家主の双子さんも年相応にスヤスヤと寝息を立てていました、まあこの時間まで待っていたという言い方のほうが正しいのですけどもね。ソファーで横になっているビアンカさんも以下同文と言った感じでした。

違和感に気づけたのは、我ながら腹立たしく非常に悔しいのですが包帯を巻きなおすために脱衣所をお借りして衣装を脱いだ時でした。片時離さず身につけていたロックさんの形見こと点字プレートがどれだけ探しても見つからなかったのです。
思わず発狂してしまいそうでしたが、アリスさん達に勘繰られてはいけなかったためぐっと唇から血が出るくらいに噛みしめて堪えていました。

犯人は分かっています、あの生き残りの末裔に決まっていますよ。おそらくは私を槍で刺した瞬間に気が抜けてしまった一瞬を見逃さなかったのでしょう。
目的だって見破れています、アイスとスチル、そしてロックさんの生みの母たるレジギガス様をいち早く復活させて、大団円による地層の影響に付け入って天変地異を引き起こしレックウザを無理やりにでも降臨させやがるためです!

もうさすがに看過できません。
それに私たちはレックウザへの一手として今日というタイミングを失ってしまった以上、このままではヒガナに先を越されてしまう可能性があります。今から急げば間に合うかもしれません、今のシンオウはかつての私の故郷……あの頃の旅路を逆走していけば明朝までにはヒガナを止められるはず。
私は決意をみなぎらせて、潮風吹く島の外へと向かいました。

グレアット「どこへ行こうというんですかっ?」


6号「グレア!?」


一心な私を唯一引き留めようとしたのは、親友に他なりませんでした。
グレア……グレアットは、あの日からアイスとスチルと邂逅したのちにホウエンの地に留まれるほどの勇気がなくて再び放浪していた時に出逢った春風の渡り鳥。癒えない傷心のなかに入り込んできて、気がつけば私の凍てつくハートを溶かしてくれた、かけがえのないパートナーです。
そんな彼女だからこそ、私のこの行動を読めていたのでしょう……いえ、きっと私が形見を失くしたことすらも気づいていたのかもしれません。
グレアの瞳は全てを見通してしまえそうなくらいに、クリアで邪気のない、それでいて誰よりも熱い情熱を燃やす視線なのですから。

グレアット「ダメじゃない、そんなケガで火遊びをしちゃっ」
上空からタタンと靴の音を鳴らして私の目の前へと降り立って忠言するグレア、ですが今の私には親友の言葉ですら聞き入れる余裕はありません。
6号「止めないでくださいグレア、これは私個人の問題です」
グレアット「ふーん……今のあなたはもう一人じゃないのよっ。アリスちゃんが心配しちゃうわ、それにちゃんと伝えれば絶対に協力してもら……」
6号「迷惑なんですよ!!!」

私は感情のままに親友の諫言を遮ってしまいました。
もう止められない、取り繕うことも忘れて何年もずっと抱えていた気持ちを吐き出してしまう、こんなことをグレアにぶつけたって何の意味にもならないというのに……!
それなのに彼女はその間大人しく黙って聞いてくれていたんです、ロックさんにも、ムウマージにも、ましてやゾロアークにすら成り切れない半端者の幼い言葉を。

グレアット「そっか……ごめんね、私じゃレジロックの代わりになれないもんね」
6号「!!……そ、そういう意味では」
そういう意味を込めたつもりではありませんでした、ですが誰がどう聞き返したってそういう風に受け取ってしまうでしょう。ぐしゃぐしゃに顔を崩すこんな弱い自分が嫌いで支離滅裂になっていました。
……ロックさんだったら、どう言葉をかけてくれたのかな。

グレアット「でも……それとこれとは話は別よ。6号ちゃんが引いてくれるまで、私は退かない。あなたと……アリスちゃんのためにもっ」
まだ風も炎も吹いていないというのに、発せられたそのプレッシャーひとつで私のわがままな激情なんてあっけなく圧されてしまいそうになりました。
ですが私にも私の意地があります。
確かにそらのはしらまで待てば、アリスさんの妙案でしたら、誰もが目を奪われてくハッピーエンドな解決が出来るかもしれません。
でも!
私は自分の手で、ロックさんへ恩返しを果たしたいのです!

6号「詠唱!」

グレアット「ろく…………アークちゃん、本気なのねっ」

とめどなく溢れた涙だったのに、一瞬にして乾いちゃいました。
ああ……眩しいな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ルチア『3!2!1!ぽっぽーん!!わーい♪なぜなにコンテスト~☆』

モンスメグ「説明おばさんktkr!」
(あのふたりにメグが入る余地はナンセンス、かな……?)

ヘッドフォンを取って手櫛で髪をさっと整えたら、カノンちゃんを起こさないよーに伊賀忍者秘伝の抜き足差し足でアリスちゃんとゆんゆんがスリープモードしてる部屋まで寄って、この子の歳らしいあどけない寝顔をのぞいて精神を落ち着かせる。

焼き焦がれた木造建築のなかでわけもわからないまま生まれ変わってから、人生の意味とアイデンティティーを見つけられなくって、世界の流行をただひたすらに追いかけていただけだった絵の具色の毎日を過ごしていたメグを変えてくれた最愛の子。忘れもしないカントーで出逢った半年前、アリスちゃんの持ってるファンタスティックさのおかげで、次第にメグは自分らしさを組み立てられるようになったの。
きっとゆんゆんも、グレアたんも、直近だったらリーちゃとカノンちゃんだってそのはず。

だから……ろっくんもそうだよね?
アリスちゃんの前から消えたりしないで。もし消えちゃっても、そのときは……表面上ではキャッキャしてても心の底では常に集中して凪の状態を保つの。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

胸部に刺された傷もまともに癒えていないというのに、私は愚かにも西海岸に位置するミナモシティを目指して遠泳をしていました。遠泳といってもバカ正直にクロールしてるわけではなくって、うみねこペリッパーに乗っかって月がゆらめく水面を飛行させてもらっているんですけどね。

6号(ジャスト1分……いい夢を見てください、グレア)
もう後には引けません。この夜、私は流浪に戻りました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルバムの栞を差し戻す6号ことアーク。
研究から解放され地元探訪するアイスチル。
考古学の発展という名目のもと企むシロナ。
シェイミとの和睦を願うリーリエとカルマ。
ひとり奔走するはアリスのためかスズラン。
全ては隕石を止めるべく暗躍するヒガナ。
翼を閉じ涙に打ちひしがれるグレアット。
何も露知らず、夢見心地に寝とぼけているアリス。

うゅみ「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に明日はなし。ゆえに夢持たぬ者に明日はないのよぉ。さぁて……いったい誰が為の明日が訪れるかしらぁ?」

Part22へつづく!