Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part14

 

アリスは ビアンカをくりだした!
アリス「営業開始だ、接客もてなしてやるぜ」
ビアンカ「特別なお客様だね♪」
ギンノ「私に相応しいメニューを用意しなさい」
クオーレ「やれやれ……」

まずは戦力の見定め、ビアンカは何ができるのかを把握しなくては。つっても不用意な確認のやり方じゃ相手に手の内をバラす羽目になる。
慎重にいきたいけども、さっきまでのやり口を見られているぶんマークが厳しくなってて、今のギンノにゃネクロシアの虚をついた秘策ですら見破られることだろう。
おまけに相手は伝説のポケモン様と来ている、しくじったら次こそ後がない。
そうだ、ビアンカのことをラティアスだと認知していたこいつらだったらステータスを知ってるはず。アイコンタクトで教えてもらおう、ちらっ。

ゆん(むすーっ)
グレアット(ぷくーっ)
モンスメグ(from A to M Pierrot Calc.)
なんかめっちゃごきげんななめ!?あとメグ解読班来てくれ。
6号(9歳児さんにはまだ早いですよ……)
よくわからないけどロックとしか意思疎通が望めなさそうなので、パチパチとアイコンタクトを図ると、なんとなーく教えてくれたから勝負に戻って続行。
ギンノ「評定は済んだかしら?」
アリス「ばっちし!ビアンカ、ねがいごと!」

ビアンカ「いつか消えるあの星の下、永遠を願い想い見上げ……」
ビアンカは ねがいごとをした!

クオーレ「妹相手に気は進まんが……」
一滴の光が、さざなみの音とともに発射された!
クオーレの シャイニングスター!

ビアンカ「きゃん!!」
ギンノ(シャイニングスターは植物と電気と超能力の複合わざ……三つの内一つでも弱点があればほか二つの相性を無視して光が貫通する強力なわざ。でもビアンカ相手にはほとんど通りが悪いはずよ)
ギンノ「ちょっとクオーレ、加減しないでくれる?」
不機嫌にクオーレを窘める令嬢、どうやらまだクオーレには踏ん切りがついていないようだった。ボク自身が妹だから分からないけどエリカお姉様もボクと手合わせする時があれば、同じように感じ取ってくれるのかな……?
クオーレ「オレが本気を出せば終わりだ。だがそれをアリスとビアンカの為になれるか?」
アリス・ビアンカ「!」
この戦いは、単なる戦いじゃないとでも言いたげな発言に心を揺さぶられた。ただ勝つことだけが正解ではない、戦いを通じて何を得て何を学べるかが肝だというエリカお姉様からのお勉強を頭をよぎって離さなかった。
お兄ちゃん……と悲し気に咲くビアンカの肩をポンと撫でる。
ギンノ「……そう、勝手にしなさい」
髪留めをキュッと結びなおしながらふくれっ面になるギンノ、アルトマーレとやらでの思い出があるのか複雑そうな心境らしそうだった。
ビアンカ「リースお姉ちゃん」
アリス「ん?」
ビアンカ「ふたりでなら大丈夫だよってとこ、お兄ちゃんとギンノちゃんに見せてあげたい。だからお願い、そばに置いてね」
アリス「今はおまえしか見えないよ、安心しろ」
そうか、ここでへまをすればクオーレが引き取ってしまう可能性があるんだ。だったらなにがなんでもギンノとクオーレを認めさせなきゃな。
色々と情報がいっぺんにウェーブしてきてあっぷあっぷしてたが、その願い事のおかげでボクらしさを取り戻せた。策士、策で溺れさせてやろう。

ゆん(アリスちゃんであっても……勝てるかしら?)
グレアット(信じています、けどもラティオスさんには分が悪そうっ)
モンスメグ(信じたものは都合のいい妄想を繰り返し映し出す鏡★)
6号(当たって砕けろです!)

アリス「あやつはまだ構えていない、今のうちに息吹を浴びせさせい!」
ビアンカ「ふーっ……♪」
ビアンカの りゅうのいぶき!
こうかはばつぐんだ!
あいての クオーレは まひでからだがしびれた!

ギンノ「ちょっと何やってるのよ!」
クオーレ「案ずるな」
リフレッシュで じょうたいいじょうがなおった!
クオーレ「妹からのフーフーで活力が湧いたからな」
アリス「は?」

あいてのクオーレの シンクロオーラ!
こうげきりょくと とくこうが あがった!
あいてのクオーレは はりきっている!

ちっ、リフレッシュ機能はパッシブスキル、真っ向勝負の土俵に立たざるを得ないわけか。しかも次は確実に急所を衝く一撃が予約されてしまった、そのうえに

ビアンカのねがいごとがかなった!
ビアンカは たいりょくがまんたんになった!

こっちの回復予約はバッドタイミングと来た。さてどうしたものか……。
いや、弱気になってどうする。ビアンカを曇らせてはいけない!
アリス「ビアンカ、空からお出迎えしろ!」
ビアンカ「こくんっ」

ビアンカは おおぞらへとびあがった!
クオーレ「そう来たか、ならオレも飛ぶまで!」
あいてのクオーレは おおぞらへとびあがった!

6号(空中合戦っ!)
ゆん(私たちの主戦場ね)

アリス「そのまま願い事をしながら乱気流を起こすんだ!」
ビアンカ「ええ?!……や、やってみる!」
ビアンカは ねがいごとをした!
ビアンカの たつまき!

慣れないメニューにもたつきながらも、ボク(の仲間)が得意とする同時アクションに成功し無事、蒼龍のトルネードが空中のクオーレを襲いかかる!

グレアット(こうやって観てるとアリスさんの命令って無茶ですよねっ)
モンスメグ(飛び回れこのMyHeart☆)

クオーレ「ぐうっ!……面白い」
あいてのクオーレは ダメージをうけている!
あいてのクオーレの そらをとぶ
しかし こうげきは はずれた!
思わぬ竜巻に身を焼かれながらも、感心したように笑うクオーレ。不敵な笑い方はギンノ譲りか?
ビアンカ「えへへ!リースお姉ちゃんすごい♪」
アリス「喜ぶのはまだ早い、天に向かって流星群を起こせ」
不思議そうな顔をしながらも、ボクの言ったように地上のクオーレとは真逆の方向軸へと白紫の光球を打ち上げ、青空に満天を作り広げてみせた。
クオーレ「何を企んでいる?」
ギンノ「あのメルヘンロリータは奇想天外よ、だったら力でねじ伏せてしまいなさい!」
クオーレ「よかろう」
飛行して対抗せずに、地上からそのまま上空めがけて複数の光球を放射するクオーレ。
たしかに巧妙に練り上げた策も、圧倒的な力の前では塵と化す。小難しい理論ではない簡単でシンプルな答えだ。

あいてのクオーレの りゅうせいぐん
雫のエネルギーが光を纏う隕石となり、ビアンカを標的に降り注ぐ!

アリス「今だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ビアンカ「とっておきのサービスだよー!!」
願いのエネルギーが流星群のエネルギーと合わさり、フュージョンエネルギーとなった星色の彗星が光速で舞い降りた!


こころのしずくが はつどうした!
アリス「狙いどぉ……なんじゃいこの光はぁ!?」
ビアンカが首に提げているペンダントがきらりと光ったように見えた、かと瞼に入れたのも束の間、彗星がより何層も強い光と圧力を発して落ちてくる!

ビアンカの ねがいぼし!
ねがいごとが かなった!

ギンノ・ゆん・グレアット「きゃあああああああああっっっ!?」
6号「うわわわわわわあああっ!!!」
モンスメグ「その時空から不思議な光が降りてきたのです☆」
アリス「いやああああああああああんっ!!」

けたたましい轟音が鼓膜から脳にまで伝い鳴り響かされ、避難訓練どころかバイオハザードなんて意味がないと思い知らされる大地震レベルの激しい揺れで、身体が勝手に地表を転がり出していく。こんな異常アラートの中でもボクが海だか森だかどこかへと投げ出されそうになっていることを察知してくれたおかげで、誰かの柔らかい暖かさに全身を包み込まれて事なきを得た。サンキュー誰か。

光、音、揺れがおさまるとボクはゆっくりとおそるおそる目を開けた。
ギンノ「全くもう……自分のポケモンだったらセーブかけておきなさい!」
気がついたのか、令嬢が呆れ心頭といった仏頂面が眼前に広がった。どうやらギンノがボクを庇ってくれていたようだった。
アリス「意外と優しいのな」
その事実がなんだか面白かったから、あえて礼の言葉ではなくて皮肉を送ってみたら、仏頂面が般若面に変化してしまった。
ギンノ「首絞めるわよ。はぁ、幼い子供を真っ先に守るのは定石でしょ」
アリス「そういえばあやつらは?」
ギンノ「ほら、行ってやりなさいよ」
腕の中から解放されると、打ち込んだ張本人とその兄が居る場所へ走った。
他の奴らも近くで座り込んでいた、安全そうで何より。

アリス「おーい!さっきのはいったいなんだ?」
ビアンカ「リースお姉ちゃん!」
ぱたぱたと元気に駆けつけてボクの腕を取るウェイトレス。ペンダントはもう輝きを失っており、いつもの青い色を光らせているだけだった。今の現象を教えてもらおうとすると、心を読んでいるかのようにクオーレが語り出す。
クオーレ「こころのしずくを使ったのか」
アリス「こころのしずく?」
クオーレ「オレとビアンカが片時離さずつけているペンダントだ」
確かによく見れば、クオーレの首にもペンダントチェーンが巻かれていた、それ自体は服の下に潜ませているのだろう。

クオーレ「簡単に言ってしまえば、オレ達兄妹の魂が結晶になった宝石だな。これのおかげで海に囲まれたアルトマーレは水難に遭う事なく平和な都として繁栄できている」
アリス「なるほどな、それとさっきのアレはどう関係してたんだ?」
クオーレ「これは魂そのものだ、恐らくビアンカの強い想いが応えて共鳴したから数十倍もの潜在能力を引き出せたんだろうな。全く、キミという奴は愛されている」

ってことはつまりなんだ、ビアンカがクオーレに認められたいって気持ちとボクの期待に応えたいって気持ちが生み出したパワーがさっきの流れ星に詰まってたってことか?
なんだかむずがゆい気持ちになってきた、照れるぜ。
ビアンカ「お兄ちゃん!ビアンカ、輝いてた?」
いいことをしたから褒めてほしい!という子供か子犬かのようにそわそわしながら兄の胸元に寄る妹。ウェイトレスとしての彼女しか知らない人は決して見ることのできない側面だった。
ギンノ「順序を履き違えていないかしら?先に謝罪を述べなさい」
後ろからビアンカの頭をこつんと軽くグーするアルトマーレの祈祷師。その3人を囲う雰囲気はなんだか、仲睦まじいファミリーにも映って見えた。
ビアンカ「はう!ごめんなさい~!」
クオーレ「良いじゃねえかギンちゃん。ビアンカ、強くなったな」
ビアンカ「えっへへ~♪」
兄からなでなでしてもらってご満悦な妹君。おかしいな、指示を送ったのはボクだからこいつのポテンシャルを引き出せたボクこそ称賛されるべきでは?
子ども心に湧いてきたそんなニュアンスをテレパシーで受け取ったのか、仕方なさそうに隣で微笑んで口元を押さえるゆんの姿が。

ギンノ「うふ、悔しいけれども合格点といったところね。今日は私の負けにしておいてあげるわ!」
そう宣言しながらもヒールをこつんこつんと地団駄しており、彼女の高潔で負けず嫌いな性分が分かりやすく窺えた。また機会があったら良き好敵手として戦えそうだ。
そして長い試合だったからすっかり忘れかけていたが、ここに来て閑話休題、調子を取り戻したグレアが本題を問うた。
グレアット「ところでエンさんはどうなのでしょうっ?」
6号「そういえば!」
ギンノ「だから言ってるじゃない、この私が直々にしっかり封印を解いてあげたって」
モンスメグ「ほんとぉ?」
敵認識のせいか、未だに懐疑的な様子の面々。まぁボクも半信半疑あっちこっち。
クオーレが代わりにその疑いを弁護してくれた。
クオーレ「オレも似たような立場だったから分かるさ、エンの魂魄は安定している。いまごろ炎の島でアーシアの巫女と対話をしている頃だろう」
ビアンカ「お兄ちゃんがそう言うなら間違いなし♪」
どんなメカニズムで見えてるのかは不明だが、なぜだかすんなりと信用できる言葉に聞こえた。これがラティオスパワーってやつか。
ゆん「それなら安心ね」
グレアット「フルーラさんに任せておきましょうっ」
ギンノ「ちょっと!どういうことよ!」

納得いかなさそうな令嬢を取り囲んで笑い声が響き渡った。
これにて一件落着一件落着、ってね。

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エリカ「これはどういうことですの……!?もしや大団円のエネルギーが傾いてるとでも言うのでしょうか」
ナツメ「私の能力でも捕捉が確認できたわ。まさかアリスは本当にあっちに行ったのかしら?」
エリカ「ナツメのテレポーテーションは確かにイッシュ地方へ座標先が安定しておりました、貴女は悪くなくてよ。おそらく大団円に導かれてしまったの」
ナツメ「何が起こっているというのよ……!」
カルマ「ぼくが見てきてやんよ」
ナツメ「カルマ、ものぐさなのに珍しいわね」
カルマ「間接的っちゃあいえ、ぼくにも非はある。それに最悪のケースが起きちゃそんときゃぼくが適任だろ?」
エリカ「……そうですわね。これ以上わたくしのテリトリーが荒らされては敵いませんもの。アリスを、任せましたわよ」

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それから炎の島にてフルーラと合流するとギンノとの近況を報告し、お互いに落ち合ったところで気がつけば日も暮れていたため、今日は疲れもピークということでアーシアに戻ってフルーラの紹介のもと案内してもらった別荘地に泊まることになった。
ギンノとクオーレはやり残したことがあるからとどこかへ去っていき、フルーラ経由でみかんからスイはエネルギー回復のためにブルーフォレストで休養しているとのこと。
明日も三聖獣巡りの為、雷の島来訪が控えているのであまり大っぴらにはできないものの、メグおかえりパーティをささやかに開くことにした。
食文化が違うので口に合うか不安だったが、アーシアのフルーティ中心のレシピは絶品揃いでウェイトレスで働くボクとビアンカも箸が進んだ。
パーティ中も主役兼主犯のメグは陽気で支離滅裂脊髄トークをお披露目してくれ、ほんとうに三日三晩寝ず食わずからの連戦をしてきたのかと思える疲れ知らずだったが、スイとどういう話をしていたのかだけは決して零すことはなかった。
いずれ時が来れば口を割るだろうと、ボクはあまり深く考えることはしなかった。

その夜、ボクと一緒に寝るのはメグだビアンカだと主張しあって枕投げ合戦に発展したがグレア・ゆんのダブルバード組からうるさいと睨まれてすくんだため、ボクを挟んでふたり川の字で寝ることに相成った。にらみつけるとするどいめ、恐るべし……!ちなみにロックはスヤスヤである、こいつめ。
ビアンカはこの日駆けつけてきたからかすぐに寝静まり、ボクもまどろんできたとき電撃娘がごにょにょとないしょばなしをしてきてちょびっと目が覚めた。
モンスメグ「おきてる?」
アリス「ねてる」
モンスメグ「エレキテ……」
アリス「おきてるおきたねむカゴ」
モンスメグ「おハロー☆……ねぇ、メグたちはどうしてこんなとこまで来たんだろうね、宇宙との交信?」
アリス「さぁ、成り行きじゃね?」
モンスメグ「世の中に偶然はない、あるのは必然だけ」
アリス「どこの店の極東の魔女だよ」
モンスメグ「もしも意味があるとしたらなんだと思われ?」
アリス「意味、ねぇ」

よくよく思い返してみれば、この異世界……大団円に来た理由なんて考えた事もなかった。最初のきっかけは、カフェで出逢ったスズランから依頼を受けてなんとなく手伝っただけ。ナツ姉のテレポートでたまたまこっちまで連れてこられただけだし……。
成り行き、巻き込まれ、ボクの意思が介入していない以上特に意味なんてなさそうなもの。確かにまだ見ぬポケモンとの邂逅を果たせたり、世界の広さをこの身で実感できたもののそれはあくまで副産物に過ぎない。得たものとすればビアンカの正体くらいか?
意味を結びつけるとすれば、ボクがトレーナーとして成長するためか、はたまた逆にボクに知ってほしいことがあるからか。そういえばスズランにミッションを与えたのはカルマの奴だから、あいつだったら何か掴んでいるかもな。とは言っても答えが出てこないな……ここはとりあえずそれっぽいことを言っておこう。

アリス「グレア風にいうなら、ここはバイブルなのかもな」
モンスメグ「もしもふたり会えたことに意味があるなら?」
アリス「大団円はそう何かを知るためのバイブルだ」
モンスメグ「テキトー言ってない?」
アリス「テキトーなことしか口走らんお前にゃ言われたくねえ」
モンスメグ「メグの心は海底より深いのだ」
アリス「マグニチュード10」
モンスメグ「ぎにゃー!メグちゃんはたおれた」
アリス「明日も早いんだ、日付回る前に寝かせろ」
モンスメグ「お子様めー」
アリス「お子様だよ」
悪態をついたものの、どうしてだか落ち着かなくなってボクは自然とメグの手を握って眠りについた。しっかりと繋いでいないと消えてしまう気がして……。
モンスメグ「……グッナイ、小さなヒロインちゃん」

翌朝、ボクたちはフルーラの操縦でボートに乗って雷の島へと向かっていた。残す聖獣はひとり、そこに封じられている雷の御神体・ライだけだ。
アリス「それにしてもなんでボクが聖獣たちを救いに行ってんだ?ただ力を認められるだけだったら他のトレーナーにも出来るんじゃないのか、ギンノみたく」
ここまでやっておいてイマサラタウンな疑問なんだが、すっきりさせておきたい。そもそもどうして三聖獣が封印されて祭壇に祀られてるのかも知らんし、なんの気なしにこなしていくというのも腑に落ちない。
フルーラ「……ギンノは本来封印をレリーズできる人物じゃないのよ」
グレアット「えっ?」
6号「資格がないんですか?」
フルーラ「あたしが舞った言霊の内容、覚えてる?」
あの美しい神楽を脳内レコーダーで再生して思い出してみる。

火の神、雷の神、氷の神に触れるべからず。
されば、天地怒り世界は破滅に向かう。
海の神、破滅を救わんと現れん。
されど、世界の破滅を防ぐことならず。 
すぐれたるあやつり人現れ、神々の怒り静めん限り…。

ゆん「あやつり人、という存在が必要なのね?」
フルーラ「そ。あやつり人の素質を持った人はほんのちょっとしかいないの。あやつり人が居なきゃ、スイ様、エン様、ライ様の三大元素を司ってらっしゃる海の神様を調和することができないの」
6号「理解しました、要は海の神様が暴走しないように普段からスイ・エン・ライが三人がかりで制御してるんですね」
フルーラ「うん、冴えてるじゃない。でもずっと制御しっぱなしだったらいずれ御三方ともエネルギーが切れちゃってバランスが崩壊しちゃうから、その時が来たら魂魄を使ってあやつり人を見つけ出すの。自分たちを解放しても、海の神様を鎮められる素質を持った人材をね」
モンスメグ「ティンと来た!そしてアリスちゃんがスカウトされたのである☆」
フルーラ「そゆことね。現にスイ様がきみを引き寄せたわけだし」
アリス「ちと質問もいっこ。ボク以外にはこの世界にいないのか?」

伝承として幾年もの月日言い伝えられてきているということは、それすなわちこれまであやつり人なる存在のおかげで調和が保たれてきたということ。海の神様が暴れたら何をするのか知らんがイメージ的には大津波なり大洪水なり起こして文明ごと陸地を崩壊させてしまうのだろう。こんにちまで平和が訪れている以上、ボク以外にもあやつり人が居るはずで。
フルーラ「それがね、不思議なことにスイ様たちがお呼びするあやつり人ってアーシアはおろかこの星の地図のどこにもいない人ばかりなのよ」
『っ!!!!!!』

ビアンカ「それって……」
アリス「ふむ……要はあやつり人はボク達と同じ境遇だな。きな臭い話になってきたわ」
そしてギンノには本来素質がないということは、あやつり人としてこっちまで来た存在ではないのか……だとすれば全員が全員(大団円側からみて)別の世界の住人だからといって、決してあやつり人の素質を持っている限りではないという証明になっている。とすればギンノは別の目的があって自主的に来ている、のかもしれんな。
今は考えていてもしょうがない、とにかくやるべきことをするまでよ。
フルーラ「島が見えてきたよ、しっかり捕まっていな!」

アーシア・雷の島
ここもやはり氷の島、炎の島とおなじ殺風景な無人島で、中心に祭壇とそこまで続く石段があるだけの土地だった。
先導してくれるフルーラが安全を確認しながら、その後をついて登っていく。
ようやくライが眠っているであろう祭壇が見えてきたところで、ダダダダとせわしない足音とともに、これまた想定外の人物の声が後ろから聞こえてきた!

スズラン「待って!!」
息を切らして叫んだその声の主は、スズランだった。
グレアット「スズランさんっ!」
6号「お久しぶりです」
ゆん「元気いっぱいね」
ビアンカ「スズちゃんも来たんだ♪」
見覚えのある少女の登場にほがらかに再会の挨拶を交わす仲間たち、いつの間にやらビアンカも慣れ親しんでいた。あれからまたカフェに立ち寄ったのかな?
しかしボクたちの反応とは裏腹に、汗をぬぐうスズランの表情は険しいものだった。
アリス「どうした?」
スズラン「ライの封印を解いちゃダメ!」
一喝されたその一言に、空気が一転してどよめく。



スズラン「メグちゃんが消えちゃうかもしれないんだよ!!!」

Part15につづく!