Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part13

モンスメグ「エレキテル☆エレクトリック!!」
開幕早々、ほとばしる電撃を全身に纏って猪突猛進するメグ。こいつを捜してたあいだの3日で何を会得してきたのか最早その速さは目にも止まらなかった。
モンスメグの エレキテル☆エレクトリック!
こうかは ばつぐんだ!
6号「効いてない?!」
みずタイプ相手に渾身の雷撃が完全に入ったのに、気にも留めない様子で触手状の黒髪をいじるヤミクラゲ。そんなバカな。
ギンノ「ポフィンの余りよ」
アリス「ソクノの実か!」
ソクノの実:効果抜群の電気技を受けた時威力が弱まる。
カフェテリアのバイトでよく使うからただの食材としか思っていなかった、どういう原理でダメージを軽減してるんだそれ。
グレアット「クラゲさんは元々特殊防御の高い子、そのさらなる進化系と来れば鉄壁のはず……そこを徹底的に極めたとなればメグちゃんの攻撃であっても平然といられるんですっ」
ギンノ「ご名答。ヤミー、バリアーを貼りなさい」

あいてのヤミクラゲは バリアーをつかった!
ぼうぎょりょくが ぐーんとあがった!

ゆん「あら、ズルいわよ」
6号「絶対防御海月!」
数少ない穴である物理防御まで固められてしまい、要塞となってしまったか。
ビジュアルはただのビキニのおねえさんなのにガードが固いってなにそれ。
……目つきと体つきが妙にナツ姉を彷彿とさせて、敵なのになぜだか無性に甘えたくなってきちゃったよ。それにしてもナツ姉はボクたちが本当に異世界まで来ちゃったこと分かってるのだろうか。いや絶対偶然だよなぁ……?
ビアンカ「どうしたのリースお姉ちゃん、ホームシック?」
アリス「ちゃうわい」
モンスメグ「今夜は一緒に寝ようね☆」
アリス「お前はそいつをなんとかしろ」
どうなんとかしたものか。まずあの厄介なバリアー、それと恵まれた特殊防御の抜け道を思案しなくてはならない。搦め手でじわじわと嬲ってくると想定すると、メグの攻撃を受け流しながらさらに守りを固めてくるはず……ロックに任せてしまうのも手だがまだギンノは真打を見せていない、ここぞというシーンで切るべきだ。

モンスメグ「シグ☆ナルビーム!」
こうかは ばつぐんだ!
ギンノ「巻き付きなさいヤミー」
ヤミクラゲは長くしなやかな髪の毛を何本も束ねて延ばすと、メグの腹部と両足をキャッチしてぐぐぐ、と堅結びしてしまった。
あいてのヤミクラゲの まきつく!
モンスメグは ヤミクラゲにまきつかれた!

ええい、他の穏便組と違ってメグはボクが考えてる間でもおかまいなしに動きおるからな。拘束されたせいでいったん交代させるという択も消えてしまった。
モンスメグ「にょわー……せっかくだったらそのわがままボディでハグハグしてほしかったじぇい★」
ヤミー「・・・フルフル」
待てよ、身体の部位がくっついている今こそチャンス到来じゃないか?
アリス「メグ!触手ごと感電させてみろ!」
モンスメグ「ずっとビリビリさせてり☆」
ということは電気を通さないゴムのような物質で出来ているのかもしれないな、つまりその気になれば自分の身体を触手でグルグル巻きにしちまえば絶縁体になれるのか?
単純なタイプ相性だけじゃ推し量れない……なにか有効な手立てはないか。
ギンノ「これが力と技の差よ。ヤミー、ねっとう!」
絡みついた触手で躱せないようにしたところで、帽子を模した2つのレーダーから沸騰した水を勢いよく発射してきた!
あいてのヤミクラゲの ねっとう!
アリス「メグ、今だぁ!」
ギンノ「なんですって?」
モンスメグは まきつくから かいほうされた!
自由を取り戻したメグは鍛え抜かれた膂力によって、1/75秒のスピードでばくれつパンチを2回放ち、1度目の衝撃が抵抗を生じるよりも速く2撃目を打ち込むことによって一切の抵抗を0にした必中必殺のばくれつパンチを放った!

モンスメグの シークレッツ☆デュアル!
こうかは ばつぐんだ!
あいてのヤミクラゲは たおれた!

ビアンカ「メグちゃんすっごーい♪」
アリス「ふっふっふ、メグに帯電させていたのはターン数を一気に経過させるためよ。まきつくのロックは最大5ターン、ならば5回連続行動で動いてやればおのずとほどける寸法だよ」
そんな無茶苦茶な道理を通してしまうのが常識外れのメグの絶対特権。
バリアごと粉砕して貫通させるシークレッツデュアルなら弱点も突けてお得。ライコウがそのような奥義を習得しているとは読まれないからな。
満足げにメグはホップステップジャンピングで持ち場に帰ってきた、リベンジマッチ成功だな。
ギンノ「本当楽しませてくれる……グロス!やっておしまい!」
ギンノは メタグロスをくりだした!

6号「ホウエンが誇るスーパーコンピュータのお出ましですか。レジロックさんの意思を継ぎし私の出番のようですね」
アリスは Type6をくりだした!

後ろで私が万全だったら迎え撃てたと悔しそうに嘆くグレアをメグが宥めているのを横目に、博識だったことが判明したビアンカがアドバイザーとしてオペレートする。
ビアンカメタグロスは鋼タイプだからロックお姉ちゃんには不向きじゃないかな?それに大爆発の物理演算をされたら完備されてるシステムではじき返されちゃうよ」
アリス「ビアンカ、ロックを信じろ」
ビアンカ「え……?」
ボクだってメタグロスの脅威さくらい知ってる、でも不可能を可能にするためには信頼関係が不可欠なんだよ。満を持して言うが、ロックを扱えるのはボクしかいない!
ギンノ「そういえばあなたには煮え湯を飲まされたのよね、その借りはきっちりと返させていただくわ。グロス、0x01DC9A3C!」
メタグロスの持つ鉤爪ロッドの先端から彗星が発生し、大きく振りかぶってロックへと矛先が向けられた。
しかし重量がずっしりとしてるぶん、動き自体はスローモーションだ、ロックの方が先に行動を取れる!
6号「詠唱!」

ロックは つるぎのまいをつかった!
ロックの こうげきりょくがぐーんとあがった!
あいてのメタグロスの コメットパンチ!
メタグロスの こうげきりょくがあがった!

ビルドアップとアタックを兼ね備えた技にしては生半可なダメージではなくしっかりとロックに切り傷跡を刻んできた、体力が持つかどうか時間の勝負だな……。
ギンノ「ワンパターン、そう揶揄されることも少なくないのではなくて?」
ゆん「失礼よ」
グレアット「とはいえ悲しい事実ですけどねっ……」
いいやそれは令嬢の仰る通り、飲み込んで認めるしかない。こいつらがバリエーション豊富ゆえに余計に浮き彫りになっている。
ギンノ「結構じゃないワンパターン。言うなれば他の追随を決して許さない自分だけの領域、一撃必殺まで昇華させればだいたいのトレーナーは身を引いて二度戦おうとは思わなくなるもの。あなたはジョーカー的存在なのでしょう?素敵じゃないの」
なんかめっちゃべた褒めしてくれていた、珍しいな。高飛車な令嬢からそんな言葉が出るなんて、それほどまでにロックを危険視されていた訳だ。
6号「揺さぶりなんて引っかかりませんよ」
モンスメグ「ろっくんにやついてる~」
6号「ナーンナーン!」
おだてられると伸びる子です。
ギンノ「だからこそ―――私は決して手を抜かない、ホウエン最強の華としての務めよ」
アリス「そりゃどうも、だったら華道宗家の神髄を見せてやるよ」

ロックは つるぎのまいを つかった!
こうげきりょくが ぐーんとあがった!

ギンノ「グロス、01DC9D5C」
メタグロスの持つ鉤爪ロッドがヴオンと電子音を鳴らしてハンマーに変形し、ヘビー級の一撃が振って落とされた!

あいてのメタグロスの アームハンマー
こうかは ばつぐんだ!
メタグロスの すばやさがさがった

グレアット「ロックちゃんっ!!!」
ゆん「無事じゃすまされないわ……」
ロックにとって致死レベルのダメージがお見舞いされ、悲痛な心配の声が響いた。
だが、ロックは生きていた。
頭からダラダラと血を流しながらも、倒れてはいなかったのだ。
モンスメグ「ろっくんの強靭耐久は世界一ィィィ☆できんことはないイイィーーーッ!」
ギンノ「腹にくくった”一本の槍”には敵わないわね……」
アリス「術式展開!」

6号「略式・・・ージョン・・・!」
みちびきのとう全域を覆うほどの巨大すぎる魔法陣が空と大地にふたつ、何人たりとも踏み入れられない重圧が、身を守ろうとする意思すらもメタグロスから奪い去り制御機能を停止させた。
光満ちるその輝きは、爆発という小さすぎる括りで呼ぶには無粋すぎよう。
究極の炉心融解が、堕ちた――――――

<パターンを解析、エリア検知、セキュアコート発動>
ギンノ「うふ……私のグロスに爆裂なんて通じないわよ。あなたには借りがあると言ったじゃない、あらかじめ備えておいたのよ」
6号「しまった!」
ギンノ「ほんのお返し。ひとりで自爆して天を見上げた気分はどう?」
6号「そうですね……天にも昇る気持ちですよ、こんな上手くいくと」
ギンノ「なんですって?……は!まさか今私が見ているのは……!」


光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す。終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!
エクスプロージョン!

あいてのメタグロスは たおれた!

6号「ジャスト一分です。いい夢見れたかよ?」

Type6は ちからつきた!

アリス「……?」
あれほどまでに強力な超爆発を起こしたというのに、地面にヒビひとつ入っていない?すべてが滅茶苦茶に作られているこの島の物質にはあらゆる物理法則が通用しない、という代えようのない証拠は、ギンノの雄弁していた通りこの島そのものがイレギュラーであることの証明になっていた。だとすれば浮かび上がる疑問は、どうしてこの世界……大団円だったかの正体を知っているのか?
普通に生活を送っていれば、大団円への行き方はおろか存在を知る由もないだろう。
今はそんなことを探っていても仕方あるまい、これでギンノの残り手持ちは半分。こちらは瀕死1に重傷1に軽傷1に無傷1、充分に勝機は見えてきた!

ギンノ「こんなに熱くしてくれたお礼として、私のパートナーを紹介するわ。
祟りなさい……シア!」
これまでと違い、モンスターボールの柄が黄金と漆黒に染められていた。
いよいよ真打のお出ましか。

ーーブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンーー

アリス(気のせいか……?いま一瞬なにか映ったような)

ギンノ「ほら、かかってらっしゃい」
気高き表情と、麗しくも冷たき視線が、ボクの意識を現実へと返した。
ちらっとビアンカに目を向けるも知らないとばかりに首を振られる。
ネクロシア……未知数のポケモンだが戦ってみれば分かる!
アリス「ゆん!」
ゆん「えぇ!よくってよ!!」
アリスは ゆんをくりだした!

グレアット「うぅっ……」
苦悶そうにしわをよせて呻くグレアにメグが駆け寄りおまじないをかける。
モンスメグ「いたいのいたいのとんでけー☆」
グレアット「違うんです……あのポケモン、どこか不吉な予感がしてっ……」

アリス「ゆん!トライアタック-円の型-!」
ゆん「凪ッッッ!」
雷・氷・焔を帯びた旋風が合体して三角形の台風となりネクロシアへと吹き荒れる。
ゆんは トライアタックを つかった!
ネクロシアには こうかが ないようだ……
アリス「!」
ギンノ「独立させて打てばタイプを得たまんまだったのに……お可愛いこと」
指摘された通り、それぞれ対応したタイプとして使い分けれるトライアタックなのだが、三属性を合わせると同時に麻痺・凍結・火傷を負わせられる代わりに属性同士が三すくみとなることで、ノーマルタイプに変化してしまうのが唯一の弱味だ。
そしてノーマルが効かないということは、ゴーストタイプを有している!
ギンノ「言ったじゃない、私の本職は祈祷師よ。ゴーストはみな私のペットな訳……シアだけはパートナーだけれどもね!」

口語による命令もなしに、自身の手足を動かすかのようにネクロシアが優雅なワルツを踊るかの如く彷徨いだした。そして鎌に見立てた後ろ髪を罰字型に流すと、こともあろうことかその空間だけが切り取られ、そのままゆんへとダメージが連動したではないか!
あいてのネクロシアの ぶちこわす!
ゆんの ぼうぎょりょくがさがった!

ビアンカ「な、なに……なんなのアレ?!」
一連の不気味さに思わず恐怖の色をあらわにするビアンカ。ほかの面々も黙り込んでしまった、メグさえも笑顔を失い音を発さなかった。
ギンノ「怖がらなくてもいいのよ、シアはものを切るのが得意なだけ

ものを切るって次元じゃねーよ。ハサミでお空が切れてたまるか。切り取られた空間の先はいったいどうなっているのか、つい想像を掻き立てられていっそう恐怖心が煽られる。あのままどんどん切られまくられたら、何が起こるか分からない。
いちいち律儀に相手してたら間に合わん、やらせてもらうぞ!
アリス「ゆん!ひとっ飛びで連鎖しろ!」
空高く飛翔しながら同時に両翼から風の刃を繰り出していく。
ゆんの クロスエッジ
さらにそこからカーブせずに勢いを乗せたまま垂直にネクロシア目がけて突撃していく。
ゆんの きゅうこうか!
その突撃に推進力を掛けて、羽根ごと回天させて墜ちるように急転直下。
ゆんの ドリルダイブ!
急転直下した際に生じた、空気ごと収縮して元に戻ろうとする働きで起きた真空から強引に暴風を起こして吹き飛ばす!
ゆんの ファイナルダイブクラッシュ

6号「4連撃!」
ビアンカ「あれがリースお姉ちゃんとゆんお姉さんの絆……!」

ギンノ「その程度?」
『っ!!!!!』
ネクロシアはふよふよと何もなかった様子で空中浮遊していた。おかしい、おかしいぞ確かにすべてが直撃したはず、この目と耳で感じた手ごたえはすべて手のひらから消えていきそれが錯覚だったのかと思ってしまう。
じっくりと凝視してくれてたのか、ここでメグが現象の正体に気付いたようだ。
モンスメグ「メグちゃんサードアイ☆いま見えてるのは抜け殻★」
アリス「ぬけがら?……ふしぎなまもりか!!」
特性:ふしぎなまもり
効果抜群の技しか当たらない不思議な力。
ゴーストタイプのあいつにゃ、ひこうタイプの技はすり抜けてしまう。なるほど合点がいった、とすれば弱点を突いてしまえば良いだけのことよ!
ギンノ「見事な洞察力ね、果たして実力が追いつけてるかしら!」
再び後ろ髪の鎌を使って罰字型に切り取り出した。しかし読めていたさ、ノーマルタイプのゆん相手ではゴーストタイプの本領は発揮できない。逆にいえばそれしか傷を与える手段がないのだろう。
ゆん「お命頂戴」
真下から懐へと入り込んで無防備な胴体を突く!
ゆんの ふいうち!
6号「ゴースト相手なら倍率ドン!」

ギンノ「シア、獲物が自分から来てくれたわよ」
グレアット「効いていないっ……!?」
ゆん(まずいわ……!!!)
あいてのネクロシアの ぶちこわす!
きゅうしょにあたった!

ギンノ「あら、きあいのハチマキなんて仕込んでいたのね」
モンスメグ「うんうん、それもまたファッションだね☆」
どうにか一命は取り留めた……しかしこのままじゃ状況を打破できない。情報を整理しよ、ゴーストタイプとの組み合わせでふいうちを等倍に落とせる相方は、かくとう・あく・はがねの3種類。ひこうタイプがふしぎなまもりの範囲内ゆえ、かくとうは候補から取り除かれて、あく・はがねのどちらかとの複合になる。
<ぶちこわす>の攻撃手段から見るに、タイプはあくかダークのどっちか。ただダークならば効果抜群を取るはず、つまりあくタイプと見た。そして特技と豪語してあれだけ連発してくるあたり、タイプ一致の可能性が高い。ネクロシアは、ゴースト・あくタイプと推測した!よってあやつに与えられるダメージとは……。

仲間の状態を仔細に眺めて、ギンノから覚られぬようアイコンタクトと読唇術を合わせたコミュニケーションを駆使して呼ぶ。
アリス(グレア)グレアット(はいっ?)
アリス(お願いがある)グレアット(はいはいっ)
アリス(動けるか?)グレアット(ぎりぎりっ)
アリス(ごにょごにょ)グレアット(ぽかぽかっ)
あまり長引くと不審がられる、伝わる最低限のラインで作戦会議を済ませてお互いに目を離す。チャンスは一度限りの一瞬、それにくわえてゆんが察してくれた上で、前提の推理が当たっている必要がある。非常に不安定かつ非合理……だがそれ故に読まれる不安は一切ない、たったひとつの冴えたやり方を試すのみ。

ギンノ「ふいうちの発想は良かったわよ、楽にしてあげる」
アリス「ゆん!羽ばたかせるだけでいい!」
ゆん「え……?よ、よくってよ」
翼が動き出す瞬間にタイミングを合わせて、力を振り絞ったグレアが着火させた服の切れ端を風に乗せてゆんへとレターを送る。
このさりげない行動に対してボクはアクションを起こせない、令嬢の卓越した眼には気づかれてしまう。ゆんへと視線を向けたまま託すしかない。
気付いてくれ、郵便屋さん……!
ゆん(あの灯火……グレアちゃん?)
あいてのネクロシアの ぶちこわす!
後ろ髪が引かれ、そのわずかな靡きであわや小さな切れ端が宙に流されてしまう……!
諦めるんじゃない、最後の最後まで信じ抜け!
モンスメグ(!)
急に電撃娘がダッシュしたかと思えば、ウェイトレスに対してごく自然に「ほこりついてる!静電気洗浄☆」とパタパタ掃って制服の汚れを落とす……と見せかけてバチバチと起こした電気で、切れ端をゆんの翼の付け根へと引き戻してくれた。火の温度が熱さとなって"火を引き離すために反射的に羽根を翻した"

ゆん「妖精乱舞!」
グレアの服の切れ端から煙るワンダースチームと、ゆんのクロスエッジが化学反応を引き起こし、パートナーは新たなわざを閃き編み出す!
ゆんの きらきらストーム!
むせ返るような香りの竜巻でネクロシアを包む!
普通のポケモン相手ならさして気にならないような威力だが、おそらくネクロシアはふしぎなまもりによってこれまでまともな痛みを浴びた経験がないはず。そのような生物がいきなり弱点を全身に食らえばどうなるかなど、火を見るよりも明らか。
アリス「散るがよい」
こうかは ばつぐんだ!
あいてのネクロシアは たおれた!

ゆん「やった、わね……」
アリス「あぁ、休め」
もう限界だったのか、どさりと地面に倒れこんだゆんに称賛を送る。これで闘えるのはメグひとりか。
ギンノ「まあ!シアがやられるなんていつ以来かしら」
令嬢はしゃがんでネクロシアと視界を合わせると、頭を撫でてゴージャスボールへと優しい手振りで戻してあげた。スカートを手で払って立ち上がると、彼女の面持ちは今まで見たことのない、優美さと冷酷さを兼ね備えたような緊迫感で出来上がっていた。

ギンノ「クオーレ」
名を呼ぶと、ラティオスがボールからではなくギンノの隣からゆらりと現れた。

ギンノ「うふ……行くわよ」
クオーレはビアンカと目が合ったとたん、お互い息を漏らしていた。
ビアンカ・クオーレ「!!」
アリス「……ビアンカ?」
そういえばクオーレから詰め寄られて、妹がどうこう言ってたような。
ふたりの事情を知っているそぶりのギンノが侮蔑した態度で語り出す。
ギンノ「ビアンカ。どうして逃げ出したのよ、探してたんだから」
ビアンカ「知らない!」
怒りをあらわにして、今にも泣きだしそうな彼女のこんな顔は初めて見た。過去になにかあったのか、問いただしたいがそんなことを聞ける雰囲気ではない。
ギンノ「そう。いいわよ別に、メルヘンなお友達と仲良くしていれば」
クオーレ「ギンちゃん」
ギンノ「せめてケジメは付けてもらうわよ、アルトマーレの祈祷師としての私がしてあげられるあなたへの最後の役目として!」

ギンノは ラティオスをくりだした!
アリス(アルトマーレ……?ラティオス……ビアンカ……役目?)
ギンノと再会してからというもの、クエスチョンだらけだ。あまりに情報量が多すぎて捌き切れない、脳がパンクしないべく頭の片隅に追いやって処理するしかなかった。
そうやってどうにか持ちこたえていたが、現実とは非情である。待ってはくれず、握りしめても開いたと同時に離れていく。
ギンノ「どうしたのよ。ビアンカ、したくないの?」
クオーレ「まだ気持ちの整理がついていないんだろう、待ってやれ」
ビアンカ「……優しいね、お兄ちゃん」
アリス(お兄、ちゃん?……ラティオスが兄?)
いつか文献で読んだ日のことが思い出される。ラティオスは兄妹が存在するポケモンだと記憶している。その名前は……その名前は!

アリス「ラティアス、なのか?……ビアンカ
ビアンカ「ッ!!」
耳まで震わせた激しい動揺が、答え合わせになってしまっていた。
それと同時に点に散りばっていた疑問が、いびつな線になって繋がる。
そして、仲間たちは誰一人として驚いたリアクションを見せておらず、むしろバツの悪い顔をして俯いている始末だった。
アリス「知ってたのか?」
返事、なし。
アリス「ゆんも、グレアも、ロックも、メグも」
自分の幼い声だけがこだまする。

アリス「知らなかったの、ボクだけかよ!」

居ても立っても居られない気持ちに襲われた。どうして最初に教えてくれていなかったのか、どうして自分でも気づけなかったのか、どうして。
このやる瀬のない怒号と嘆きに応えたのは、ほかでもない銀髪の令嬢だった。

ギンノ「ビアンカったらまだ悪い癖を直してなかったのね」
ビアンカ「ひぅ……!」
アリス「悪癖?」
ギンノは品の良い歩き方で、一歩一歩こちらへと歩み寄ってくる。上質な香水のフローラルが鼻をくすぐった。
ギンノ「この子は悪戯っ子なのよ、光の屈折と超能力でヒトの輪に溶け込んで遊ぶのが大好き」
ビアンカ「むぅ……」
ギンノ「メルヘンなロリータが分からないのも無理ないわ、だって人間たちはこの子のことを疑わない……そう深層心理に及ばせる能力。自分に対しての心理的なパーソナルスペースを弄る能力を持っているから」
その説明のおかげで自分への疑念が晴れたと一緒にビアンカへの疑念が曇り出した。
要は人をからかってお友達ごっこをさせられていた、という事に他ならないのだから。

ギンノ「それが原因でトラブルを起こしてくれてね……その時に叱ってあげようとした時にはアルトマーレには居なかったわ」
さっき言っていた、逃げた探してたというのはそのことだったのか。
ギンノ「呆れちゃったわよ、まさかまた同じ遊びを続けてただなんて」
ビアンカ「……」
だとしたら。ひとつ、たったひとつだけ、ビアンカから答えてほしいことがある。
ふたりが黙ったタイミングを見計らって、ボクはビアンカの肩を掴んだ。
アリス「ビアンカ。どうして、ここまで来てくれたんだ?」
出逢った理由なんて、仲良くなった理由なんて、そんなのはどうだっていい。
大事なのは、付いてきてくれる理由ひとつ。ただそれだけ。
ビアンカは、小さな唇を震わせながらもボクの目を見つめて呟いた。

ビアンカ「リースお姉ちゃんが、だいすきだからだよ」
その理由は、ゆん達が抱いてくれている気持ちと全く一緒の理由じゃないか。
ああ、なんて馬鹿げたことで悩んでいたんだ。
アリス「ビアンカ
ビアンカ「お姉ちゃ……ん、んぅっ……///」
周りなんてお構いなく、ビアンカに甘い絆の証明を送った。
あいつらから勝手にされることはあっても、ボク自身からボクの意思でしたのは生まれて9年にしてお初だ。この行動すらもビアンカの能力の影響だったとしても良い。ボクは彼女を、心の底から信頼したのだから。
ふたりの唇から架かる糸を引くと、いつの間にか元いた場所まで距離を戻していたギンノへと顔を向けて対峙する。

アリス「降りてこいよクオーレ、お前の妹はボクが貰った」
クオーレ「オレからすれば任せられる相手なら誰でも構わんが……妹がどれだけ強くなったか見させてもらおう」
ビアンカ「お兄ちゃん……ギンノちゃん……リースお姉ちゃん……ビアンカ、がんばるよ!」


Part14へつづく!