Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part10

 

スイ「レベルアップの時間よぉ~ん♥」
ゆん・6号「は?」
みかんのお社に泊まらせてもらった翌朝。鳥のさえずりと太陽のぬくもりをストレートに味わえる広い和室で四角形の大きなテーブルを取り囲みながら、みかん直伝の和風手料理に舌鼓を打っていると、突拍子もなく織着の紬にすらスリットを入れて着崩しながら、水晶色の煌びやかな椅子で足組みしながら余すことなく白い脚の曲線美を魅せて佇むスイから、容姿に合わない媚びた口調による謎発言が耳に入ってきた。
ぶっちゃけその発言の内容よりもなんでそこまでしてスリットにこだわるのかが気になって仕方がないんですけど。
あ、みんなの視線がスイに集目してる隙に苦手な茄子をロックの鉢皿に入れておこ。
グレアット「こらっ」アリス「なぜぇ!」
みかん「スイ様、皆さまにそのようなお時間は……」
お茶のおかわりを汲むかんなぎを制するようにして、さらに続けた。

スイ「今のままだとライコウちゃんを追いかけても無力よぉん♥」

無力。そのあっけない2文字に、仲間たちが不穏な反応を示す。
6号「今の発言、私のエクスプロージョンを見てから取り消してもらいましょうか!」
不満そうに帽子を被って噛みつくロック。
グレアット「まだまだ、ということでしょうかっ」
真摯に受け止めて落胆するグレアット。
ゆん「足りない力は、アリスちゃんの頭脳で補ってきたわ」
自身が非力と自覚してるからこそボクを高く買うゆん。
三者三様のリアクションだったが、ボクは三者を束ねるトレーナーとして代表してスイへと意見を述べておく。
アリス「達観してるお主の言葉には具体性が伴っていない、どういうわけか聞かせてもらおうか」
美脚を真っ直ぐに伸ばして保湿スキンで手入れをしながらスイはきっぱりと返した。
スイ「簡単よぉ♥わらわに勝てっこない貴女たちでは、この先待ち受けるのは♡死♡あるのみよん♥」
死、と大きく出たか。
なんとなくだが、メグが出向いた先は読めてきてしまった。
6号「こうなったら今すぐ決闘です!そのご自慢のキラキラ木っ端みじんにしてやりますよォォォ!!!!」
憤慨して地団駄……というよりもただただ足をばたつかせるロックを、どうどうと2人が仮で制止するグレアとゆん。あの爆裂娘はおいて、スイの言うレベルアップとは何かを質した。
アリス「ボクたちには何が足りていない?」
スイ「それはひとりひとりオンリーワンよん♥ご飯を食べて支度ができたら裏へいらっしゃい♥わらわも一肌脱いであげるん♥」
両腕をしならせるだけでさらりと紬を脱ぎ捨てると、一糸纏わぬ姿となってどこからか発生したオーロラの道で滑っていき奥へと消えていくスイ。
文字通り一肌脱いでどうすんねん。ええい、掴みどころも緊張感もない聖獣め。
みかんに諭されて食事に戻るとちゃっちゃと平らげて、彼女のもとへと急いだ。

みかん「スイ様がいらっしゃるのは……こちらの大広間かと……」
いち神社とは想像できないくらいに拡張された(どうせスイの趣味だろう)境内を足早に歩いていき、案内された先の障子を開くと神秘的すぎるオーロラの風景が広がって、度肝を抜かれてしまった。

ペカーンッ
アリス「おうふっ!?」
グレアット「なんてお綺麗っ」
6号「むむ……爆裂する気を失ってしまいましたよ」
ゆん「幻想的ね」
別に観光に来たわけでもないのに、そんな情緒溢れる気分にされてしまいそうになる。これもスイの魅せているフィールドに過ぎないのだろうが、そう真に受けるのは野暮がやることだ。いかんいかん、こっちはついさっきアンタ死ぬわよと宣告されたのだぞ、しっかり気を持たねば!

スイ「ようこそん♥わらわお手製のバーチャルトレーニングルームへ♥」
アリス「バーチャルトレーニングルーム?」
6号「VTR!」ゆん「そう略すと俗ね」
グレアット「映像なので間違ってませんよっ」
お前らもお前らで緊張感を持たんかい。真摯で真面目に取り組んでいるみかんがなんだか気の毒じゃないか。しかももうどっか行ったし、スピリチュアルめ。
スイ「今から貴女たちには、わらわが独自に開発したバーチャルエリアで特訓をしてもらうわん♥」
パチンと指を鳴らすと同時に、なにやら仲間たち3名にクリスタルチックな装置を言い渡された。いちいち芸を見せんと気が済まんのか。

スイ「自称レジロックちゃんにはご自慢の爆裂魔法で永久凍土の氷壁を壊してもらうわぁ♥」
6号「1日の回数制限がありますが」
誇らしげに胸を張って威張ることか?
スイ「仮想だから無制限よん♥」
6号「一生ついていきます」
ゆん「ロックちゃん……」
スイ「オニドリルちゃんには絶対零度の猛吹雪シミュレータの中で、空気を自分の風だけにしてもらうまで羽ばたいてもらうわよん♥」
ゆん「むちゃくちゃね!?」
スイ「どんな風でだって飛び回ってもらわなくっちゃん♥」
グレアット「言いたいことは分かりますけどっ……」
スイ「ファイヤーちゃん♥貴女は荒れ狂う大津波を蒸発させるまで燃やし尽くしてちょうだい♥」
グレアット「そんなの不可能ですよっ!?」
スイ「弱気になっちゃダ・メ・よん♥不可能を可能にしてみせる情熱をわらわに示しなさい♥」
なるほど、一見トンデモなミッションを要求しているがどれもこいつらの長所をとことん伸ばしきり、苦手も同時に克服できる合理的な特訓内容になっている。
それにバーチャルでなければ現実的にはできない超自然現象相手と来た。
もしも3人ともクリアできれば、大いにステータスアップを望めそうだ。クリア出来なさそうということにさえ目をつぶればな。
そしてスイは、3人をやる気にさせる言葉選びが上手かった。あれだけ不服そうにしていたというのに、みな一堂スイッチを瞬時に押してVTRに行ってしまった。
どうやら、スイの心遣いは本気のようだ。

アリス「ところでボクは?」
ボクだけ何にももらってない、仲間外れ。大げさに両腕をぶんぶんと振ってアピールしてみた。まぁ氷壁を壊すことも吹雪を消すことも津波を蒸すことも出来ませんが。
スイはドレスアップしたばかりと思わしき、雪玉模様の留め袖を風になびかせながらスリットスカートから覗く生足で一歩一歩上品な足取りで近寄ってくると、身長差約20センチほど低いボクの金色の髪先から頬まで細い指先でなぞり、妖艶に笑みを浮かべて告げてきた。
スイ「わらわが直々に手取り足取りぃ♥……指導してあげるわぁん♥」
ぞくり、と溶けかけの氷が身体を滑ったような感覚に襲われた。

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Case1:6号 VS 永久氷壁

6号「覚悟はいいか?響く鼓動は清廉なるか?その魂は安息の標たるか?今この一薙ぎに問おう!エクスプロージョン!!」
こうかは ないようだ……
6号「真紅の爆炎!我が身に宿れ!これは全てを焼き尽くす轟爆の疾走!エクスプロージョン!!」
こうかは ないようだ……
6号「出でよ!原罪の特異点!虚無と永劫を交え、弾けて潰せ!始まりの力、手の内に!我が導となり、こじ開けよ!エクスプロージョン!!」
こうかは ないようだ……
6号「私の爆裂魔法を以て傷一つつかないとは……最高ですね!それにこんなに連発できるだなんてここは夢見た楽園に違いありません、カイカンです!」

なんだかんだ楽しそうな6号だった。

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Case2:ゆん VS 猛吹雪

ゆん「疾ッッッ!」
ゆんの クロスエッジ
ゆん「斬ッッッ!」
ゆんの トライアタック-氷の型-!
ゆん「砕ッッッ!」
ゆんの トライアタック-雷の型-!
ゆん「滅ッッッ!」
ゆんの トライアタック-焔の型-!
ゆん「破ァァァ!」
ゆんの つのドリル!
ゆん「天空統一への一歩、開眼したわ!」
ゆんは エアロブラストを おぼえた!
ゆん「よくってよ!」
ゆんは きゅうこうかを おぼえた!
ゆん「遊撃の羽根よ、舞い上がり堕ちなさい!」
ゆんは ドリルダイブを おぼえた!

ゆんは あられの ダメージをうけている!

ゆん「っくちゅん!もうイヤ~~~!私寒いのは苦手なのよー!!!」

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Case3:グレアット VS 海王津波

Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,
benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria mater Dei,
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.
グレアットの せいなるほのお!

グレアット「焚ける限りの炎を出してみましたけど、やっぱり”おくりび”か”せいなるほのお”が最も私の火力を引き出せますねっ」

グレアットの じんつうりき!
グレアット「こっちは”じんつうりき”が一番素直に御詠みできますねっ」

グレアットの かみづなあらし!
グレアット「ゆんちゃんとは被るので申し訳がありませんが……風読みはこの技が適任でしょうっ」

グレアット(みかんさんが特別だっただけで、私にはこれ以上特別なアビリティは必要がなさそうなんですよねっ……けれどあの時ギンノさんに敗北を喫してしまったのもまた事実っ……一体どうすれば活路を見いだせるのでしょうっ)

グレアットは黙祷に耽ってしまった、どうするつもりだ!?

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相手の出方をギリギリまで窺い、時局の流れに身を委ね、後の先を最も効果的なシーンで出し抜くまで、ひたすらに光明を待つ。
エリカお姉様からの9年間の英才教育とゆんとの一月の二人旅での実戦経験。そこから培われた智慧によって、そうやってこれまで司令を統べてきた。
だから、くびれた腰を屈んでボクと視線を合わせているスイの手を振りほどくことはせず、睫毛も触れそうなほど至近距離で詰められている今も、ただ彼女の濁りが一切ない真水のような透き通った瞳を一点見つめていた。

スイ「わらわが刃を仕込んでいたらどうするのかしらん♥」
冷凍庫のような吐息が唇に吹きかかるとともに問答が飛んできた。
アリス「獲物を持つ奴は、距離を詰めるときにはもう刺してるさ」
一切の淀みもなく、自然に雑談をする流れで秒速で回答を返していく。
スイ「模範生徒ねぇ♥でも刃は物理的な存在とも限らないわよん♥」
首元から漂うアマリージュの持つ魅惑的なラストノートの香りが強まる。
アリス「ハニートラップに弱い奴にはメンタルハーブを持たせておけ」
もっともらしく、淡々と振るまって言葉遊びに返していく。
スイ「うふん♥塾の模試だったら満点あげちゃうわ♥」
試しているつもりなのか、まだ意図が読めない。トレーニングはもう始まってる?
ただ受動的なばかりじゃ、負けることはなくとも勝てることもない。
フェアになるよう、こちらからも問答を投げかけてみる。
アリス「このやり取りに意味はあるのか?」
スイ「それは問いかけじゃなくって♥ただ答えを求めてるわね♥」
アリス「回りくどいのは性に合わなくてな、お姉様たちにもよく𠮟られたよ」
スイ「そうねぇ♥意図を汲んだり答えを見出すばかりが天才じゃないわぁん♥誰よりも何よりも、まだ辿り着けていない答えを創り出す子が天才なのよ♥」
誰も知らない答え、それは
ボク達の旅路、メグの思惑、あの3人の結果、128等の情報、ほしぐもちゃんの正体。
そして、目の前に居るという幻想を見せておいて、その実全く違う場所から押し問答をしてきている三聖獣の一人!
アリス「質問に答えろってーの、今ここに居ないお主とガールズトークをしても意味はないだろ?」
微かだが、1cm先の長く青い睫毛が動いたのを見逃さなかった。
案外動揺するのな、まぁ自分のペースに置くことが得意な奴は皆そうなんだが。
スイ「すぐ気づいちゃったのね♥えらいえらいしてあげるわよん♥」
凍りついた冷気がリボンを結んでいる頭の上をそよぐ。
アリス「何回もちゅーしてたのに気づいてなさそうだったから」
してやったり顔で、冗談をかましてやる。
スイ「あらやだおませちゃんね♥でもアーちゃんだったらいくらでもしてあげるわよ♥」
アリス「誰に囚われてるんだ?」
スイ「~~~♥!」
アリス「ハッタリがビンゴになっちまったか。ま、力試しさせてきたかと思ったら急に稽古をつけてくるし、察しやすい問答だったけどな」
真実に辿り着かれたスイだったが、それでも顔色媚び声至近距離なに一つ変えることなく、ボクにとびっきりの試験を与えてきた。
スイ「ライコウちゃんが、わらわを捜しに走り回ってるわぁん♥VTRを3人ともクリア次第、ここから東の海を渡ったところにあるアイランドまでいらっしゃい♥」
VTR気に入ったのか、ブクマしたんか。
んで、メグは一足早くそっちまで遠足しに行ったのね。例え異世界であっても同胞は惹かれ合う……ということか?
アリス「分かった。あいつらが戻るまで話し相手になっててやんよ」
スイ「そう来なくっちゃ~ん♥1μmでもわらわから離れちゃフリーズよん♥」
本当に容赦なくフリーズさせてきそうで怖い。いっそマジでキスしてやろうか。
キスと海で思い出した、後でみかんに頼んで伝書
でも飛ばしてもらっとこう。

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異世界某所・うつしみのおか

きっとメグとエンとスイたちと同じで、こっちの世界のネコちゃん達をレリーズするにはアレがいるはず。
(エン⇒獅子 スイ⇒豹 ライ⇒虎)
そしてここにあるのは間違いない!だってメグと同じ香りがしてる!
待っててね、パラレルのエンとスイ、それともう一人のメグ!
モンスメグ「これはメグのわがまま……アリスちゃんは関係ない……これはメグのわがまま……」
パパっとやっちゃってドーンだヨーして、あとは「お散歩してた☆」って言っておけばいいもん。きっとアリスちゃんのことだから心配いらないって言いふらしてるはずだし。
モンスメグ「あった☆……セイクリッドアッシュ!」
メグはシニフィエに導かれるがままに電撃で駆け抜ける!
????「強さの果てに何を望む」
モンスメグ「最強☆」

表面的にはキャッキャしてても心の底では常に集中して凪の状態を保つの☆彡

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ブルーフォレストから唯一繋がる海路に構える港の場所を教えてもらうと、ここまで案内役をしてくれたみかんに別れを告げる。
みかん「私が、皆様に出来ることは……ここまでですの」
ゆん「お世話になったわ」
6号「また来ますよ」
グレアット「そちらのスイ様もお願いしますねっ」
みかん「ええ……お気をつけて。その……がんばって、くださいね」
それは、みかんが初めて心の内から見せてくれた精いっぱいの微笑みだった。
VTRを終えて見違えたような何も変わってないようなそんな3人を連れて、ボクはスイが封印されていると言い伝えられている島へと向かって駆け出した!
みかん「……あの方達でしたら、ひょっとしたら奇跡を起こすかもしれませんね」
スイ「みかん♥わらわが居なくても一流の神楽を舞うのよぉ♥」
みかん「えっ……それって…………はい。スイ様の命とあらば」


アリス「この辺にいるんじゃないか……?」
粉雪がしんしんと降るなか、防寒用のレースアップビジューファーコート(ピンク色)を着こんで、みかんに連絡をしてもらっている約束の人物を捜しまわっていると、前方から大きな手ぶりと共に聞き慣れた活発な声が頭に響いてきた。
サトミ「ほーら!こっちよー!」

キガン領クルリ島水軍頭領・サトミとの再会を果たした。
あれからウジヤスと再び手を組み同盟関係となって、援助のもと現在では水軍として海の見回りをこなしながらも、クルリ城に眠っていた漁船を改修してレイモンドらを率いて第一次産業に貢献する日々を送っていくらしい。
あの漁船をリーリエが見つけてくれていなかったら、今頃海の藻屑になっていたかもな……などとしみじみ思い浸ってる場合ではない、割と一刻を争っているのだ。

グレアット「6号ちゃん、食べてる場合じゃないですよっ」
6号「マーイーカの素揚げが!素揚げが私を待って」
ゆん「サトミさん!お願いしますわ!」
ボクたちは飛び乗るようにして小型船に乗船すると、レイモンドが碇を上げて出航の手配を可及的速やかに整えてくれた。
今度こそ立派なクルーズが期待できるってもんよ、まあ時間が押してる都合上あんまりゆったりとした気分にはなれないのが玉にキズだが。
サトミ「帆を上げろ!舵を取れ!行くわよ、全速前進~ヨーソロー!!」

ゆん「あ、『ヨーソロー』っていうのは航海用語でね、
私、船が大好きだから……テンション上がるとついつい言っちゃうんだ~。
そう!新しいステージが始まるって聞いて、朝からワクワクが止まらないんだよ~!
ワクワクの気持ちを抑えられなくて、思わず海にダイブしちゃった☆」
アリス「スクールアイドルにでもなるつもりか」
6号「我が名はヨハネ。天界を追放され魔性へと堕ちた罪深き堕天使……!」
グレアット「6号ちゃんはキャラ作りしてもいつも通りですね、ふふっ」
6号「笑うなー!」
こいつらますます磨きがかかってんな。VTRにのめり込んだ影響か、はたまたスピリチュアルか。メグがいない分も元気があってなにより。

サトミ「借りてくよ」
自分の部下たちに操舵を任せているのか、颯爽と現れてきたかと思った瞬間にひょいっと軽々しく持ち上げられて視界が高くなった。おお、海は広い。
グレアット「さらっちゃダメですよっ」
6号「うちのマスターはアイテムじゃないです!」
サトミ「こいつと約束してんのよ、アタシの背中から海の景色を見せてやるってね」
アリス「その約束のおかげで今こうやってウィーアーできてるんだ、感謝は返しておかないとな」
片腕で抱きかかえられてるので後ろ向きから失礼しました。いやこいつらに失礼する義理もないが。おお、海は大きい。
ゆん「しょうがないわね……妹タイプのアリスちゃんは、お姉さんタイプがだーいすきだからあまあまべったりだものねー?」
アリス「特性:どくのトゲでも習得したか?」
ゆん「サトミさん、ちゃんと返してくださいね。私の胸に♡」
グレアット「私たちの大切な妹ですからねーっ」
6号「ほよ?マスターでは……は!なんですかあの暗黒心くすぐる帆のマークは!」
ばさばさしゅたしゅた

サトミ「よく懐いてんね、姫ちゃんのパーティは」
アリス「どうでもいいからおぶってくれ、このままだと酔いそう」
サトミ「また酔い止め飲ませてあげようかしら?」
アリス「普通にグラスに注いでくれ」

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エンジュシティ

スズラン「焼けた塔がカネの塔として現存していた頃、このカネの塔にたびたび飛来してきていた名もなき三匹のポケモンが居たのだが、約150年前に起きた巨大な落雷が原因と思われる大火事によって焼け落ち、大雨によって自然鎮火された。その際、その三匹のポケモンが亡くなってしまった。その三匹のポケモンに、スズの塔に住む守り神・ホウオウが、化身として命を蘇らせた。せいなるはいがその名残です。それぞれ塔に落ちた雷・塔を焼いた火・火を鎮めた雨の三自然現象の化身であり……え、これってもしかして」
スズラン「雷の公主(古代中国の王侯貴族女性)・炎の帝王(帝国における君主の総称)・水の君主(世襲による国家の最高権力者)を略称し、現在の呼び名で通っているが元々は名もなきポケモンであったため、実際の種族名は不明である……ということは!?」

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サトミ「見えてきたわよ、アレがアーシア島さ!」
甲板の最前席に座ってボクを抱っこしながら目的地の小島を指差すキャプテン。背中って聞いてたのに結局おひざの上なのな、っていう揚げ足取りはおいといて、指差す先は海上からでも分かるくらいに賑やかな活気ついた市街地整備されている、それでいて豊かな自然を多く残す理想郷のように綺麗なアイランドだった。
あそこにスイ達の本体と、それを追ったメグが居る。
アリス「サトミ、いつでも船を出せるよう待っていてくれるか?」
みかんからのガイドでは、アーシアを囲むようにして3つの出島があると聞いている。つまり帰りと合わせてあと4回は船を出してもらわなきゃならない。
サトミ「このアタシを足にしようだなんて良い御身分ねえ~」
アリス「交換条件か?」
サトミ「分かってきたわね。アーシアには三つ祭壇が捧げられてるのよ、その供物に対応した色のかけらが祠に落ちてるからそれをお土産に持ってきてちょうだい」
アリス「いえっさー」
満足そうに交渉が終わり、ボクを腕に抱えて立ち上がると威勢よく水兵に指示を送る。
サトミ「よーし!アンタら、入港するわよ!」

Part11へつづく!