Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part5

みかん「ここ、キガンを抜けますと、えーと……サイレントヒルがあります」
ウルミシティからモノレールで乗り継いでいき、豊穣な草原ゆたかな大平野へと降り立ってきたボクたち。
ようやく目的地がすぐ近くまで迫ってきたそのガイドに安堵を覚える。
この広大な平野を通った先にキガンという都市があり、そこから北西へ進めばサイレントヒルが位置するらしい。
勉強も兼ねて日記を取ってくれていたリーリエのおかげもあって、なんとなくだが地理は読めてきた。おそらくだがみかんが住むブルーフォレストはまだまだ随分と北にあるのだろう、そう考えると彼女の行脚はもはや全国一周規模である。

モンスメグ「ここをキャンプ地とする!」
でかいフラッグを掲げて勝手に突き刺すメグ、そのポーチは四次元ポケットか何かか?
スズラン「メグちゃんワイルド~!」
ゆん「スーツケースも記念写真もガイドもある旅だけどもね」
グレアット「出会ったみなさんのあたたかさはちゃんと持って帰りますっ」
6号「ただの、ただの冒険じゃないですか」
リーリエ「さすがに今回ばかりは私のツッコミを認めます!」

アリス「あ、見たことないポケモンの群れ」
みかん「その子は、コトラとライトラ……ですの」
そっちはそっちでなかよしこよししておいて。

みかんガイドのもと、新種探しも並行しながら進んでいくうちにとても大層な城門が構えられた土地まで着くと、思わず息をこぼしてしまう。
見上げればキキョウやエンジュとは比べ物にならないほど、立派な天守閣が誇らしくそびえ立っていおり、いくつもの総堀や櫓が並んだ城郭が見る者を圧倒したのだ。

モンスメグ「行き先は分かってんだ!焦ることはねぇ、レッツパーリィ☆」
リーリエの日記は資料として価値あるけど、メグの自撮りフォルダは一切価値ないので無視。むしろ帰ってきた後に大量放出して異世界情報漏洩に触れそうで怖い、こっそり消しておいてやろうか?
みかん「あ、モンスメグさん。キガンの城下町は、セキュリティが厳守されていますので撮影はめっですよ……それと通行手形が必要ですので……ポケモンである方々は大丈夫ですけど、私達4人は発行しておきましょう」
どことなくヤマブキシティみを感じる。
証明写真の撮影だっつってんのにプリクラ感覚でデコしまくろうとする約2名の手から逃れつつ、証明書と手形を発行した一行はキガンへと足を踏み入れる。

ーキガンー
なかなかに清めぬ庭は塵もなし
風にまかする山の下庵

リーリエ「わぁー!とても奥ゆかしくて綺麗な街です!」
6号「爆裂魔法の練習場にもってこいでは」
ゆん「ダメよ?」
6号「難攻不落とのエピソードが伝わっているみたいですから私が終止符を打とうかと」
スズラン「わたし達手配されたくないよ!」
みかん「あ……まずはキガンのお殿様に、ご挨拶に参りましょう……きっとお力になっていただけるかと……」
アリス「それだったらブティックかどこか無いか?今着てる洋服さっき捕獲する時に汚しちゃったからクリーニングに出して、その間の繋ぎが欲しい」
モンスメグ「賛成☆」
スズランとリーリエも似た育ちだからか、やはり格上の相手と挨拶するならと頷く。メグも快い反応を示す。ゆんとグレアとロックは宿を見つける担当を買って出た。

みかん「ぶてぃっく……?お召し物が所望でしたら、ここには老舗の着物屋さんがありますから、そちらを伺いましょう」

ー老舗呉服店「きもの蔵人」ー
店員「いらっしゃいませ。あらま、お人形さんみたいなお嬢様ですね」
アリス「良い着物ないかな?それと今着てる服を洗濯してほしい」
店員「畏まりました。お嬢様でしたらどれもお似合いですよ」
こういう格式のあるお店にはエリカお姉様に連れられてよく行ってたからこそ分かるが、店員のお姉さんは営業のおべっかではなく純粋に褒めてくれているようだ。それとどの着物も上質な布地を使っていて、着心地を試すまでもなく一目だけでレンタルとの違いが見て取れる。

リーリエ「わたくし和服体験はじめてです、ワクワクしてきました!」
スズラン「んー……あ、お洋服もあるんだ!わたしはこっちかな」
みかん「では私は、外でお待ちしていますから……」

モンスメグ「凛として咲く花の如く🌸」

(イメージ図)

 

和服を装ったメグというのは斬新なビジュアルだ。よそいき感がすごいというのはこの際黙っておこう。

スズラン「じゃじゃーん♬」

さっきまでのスポーティーなイメージからガラッと一転して、お嬢様っぽさが強調された雰囲気になった。
しかしどんなときでもスパッツだけは履き続けるという固い意志を感じる。

リーリエ「似合っていますか?」

忍術学園の生徒みたくなったな。
カチューシャはニンフィアの耳デザインかな、とても愛おしい。

そしてさいごにボクがお披露目する順番が回ってきた。

アリス「はあーい、良いお天気ね」

リーリエ「とてもお似合いです!」
スズラン「マスコットにしませう」

思えば和服を着るのも七五三以来か、懐かしい締め付けを感じる。
あれ、こういうとき真っ先に喚くファッションモンスターはどうした?
モンスメグ「……アリスちゃん」
なんだなんだ改まって、気味悪いわね。
なぜか緊張してきてこわばると、ガシッと右手を掴まれ
モンスメグ「姫が誘拐されることがないように、しっかりとお姉ちゃんの手を離さないでいるのよ」
アリス「せめて普通にリアクションして!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

風雲キガン城

本当だったら着物姿じゃなくて、ピカピカにクリーニングした普段着で謁見したかったのだが、せっかくならしきたりを合わせようというアイデアにつきボクたちはこのまま城内へ入ることになった。
っていうかどうしてこの着物は下丈が短いのか、店員さんの趣味なのか単純に年相応の丈に合わせられてるのか。うぅ、ウェイトレスしてる時くらい足の露出が多くてなんだか落ち着かない。安全が確立されてる店内だったら別に気にならないけれども、外だと風とか体勢とか意識してしまう。
あとメグがずーっと手を離さないせいもあって、こそばゆい気分になってしまう。

スズラン「アリスたんそわそわしてる~かわうぃ~」
アリス「うゅ~……!」
生地がふんわりふわふわなおかげで、おはしょりが一切機能してないのも拍車をかけてる。アイドルのステージ衣装か。
用が済んだら速攻で着替えを戻してやるからな、この着物はロックにでも譲ろう。

ぐいーっ

モンスメグ「あー!見てみて時代劇でよく見るやつ☆これがほんとの聖地巡礼!」
手をしっかり繋いだまま急に走り出しやがるから、やんちゃなペットにリードされてるかの感覚で引きずり回される。
アリス「ま、待って!見えちゃうってばぁ!」
スズラン「わーお……わたしスパッツ常備でよかったあ」
などとただの移動に四苦八苦してる間に、どうにか正門まで到着した。

みかん「ここから先は……くれぐれもご無礼のないようお願いしますね、特にモンスメグさん」
リーリエ「名指し」
お殿様やらの前にまずは普段からボクに無礼を働くな電撃娘。
もー絶対にこれから死ぬまで足元までスカート丈がある普段着と同じ長さのスカートしか履かないからな、ビアンカとカフェにも言っておいてやる。
モンスメグ「了解道中膝栗毛」
アリス「もうさっさと行こう……」

キガン城天守・大広間
ウジヤス「よくぞ来てくれた、わしが三代目キガン領主のウジヤスじゃ。その節は世話になったな、みかんよ。主のおかげで幽霊騒ぎはぴたりと止んだぞ」
みかん「お褒めに預かり、光栄です……こちらが紹介した、アリス様ご一行です」

アリス「アリスと申します、以後お見知りおきを」
短い丈でどうにかサマになるカーテシーを行って挨拶を交わす。

スズラン「スズランって言います、よろしくお願いします!」
リーリエ「わたくしはリーリエです、よろしくお願いいたします」
そして不安そうに向けられる視線4人分。変なことだけは言うなよ?

 

モンスメグ「そのハチマキのマーク、トライフォースみたーい☆
殿ちゃんおっしゃれ~!まずは記念撮影してこ!メグと殿ちゃん夢のツーショット♬
馬車で来た!
これは万バズきたーん☆あ!この振袖ばっちり決まってるっしょ!ここのお店すっごくキュートでメグすぐにブクマしちゃった、殿ちゃんのセンスが成せる技だよ!
雪折の竹の下道ふみわけてすぐなる跡を世々に知らせむ ってね♡」



・・・カコーン(竹の音)

終わったわ。
メグ来た瞬間終わったわ、センスは良いのに恥がない。

うわーん!!!曲者をひっ捕らえい!されちゃうんだ~!
全員が硬直した、青ざめたようにも映る表情で固唾を飲む。

ウジヤス「わっはっはー!誠に面妖な娘よな!」
あれ??????なんかめっちゃわろてはる。
あ、あれか、よくあるこっから真顔になって処刑されるやつだ。
打ち首御免って舞台で見たことある。

みかん「申し訳、ございません……とんだ失礼を」
ウジヤス「よいよい、儂は気に入った!ブクマしたわ!
アリスよ、光る逸材たるポケモンを連れておるな」
あ、バレテーラ。しかもボクの手持ちだってことまで。一国の主に相応しい素晴らしき観察眼をお持ちのようで……
ボクはバイバニラ並みにいま冷や冷やなんですけどね。
アリス「ありがとうございます」
ウジヤス「うむ、堅くならずとも良い。平時のようにくつろいで話せ」
なにやら切り抜けられて良かった、寿命が縮むとこだった。
ちらりとメグを見るといっちょまえにピースサインを送ってきやがった。
遠くへ行け遠くへ行け。

ウジヤス「アリス達よ、貴女らを見込んで相談がある」
スズラン「と言いますと?」
ウジヤスは版図を取り出して畳の上に広げてみせた。
パッと見るに、キガンの領土統一を果たすためのようだった。
ウジヤス「我がキガンは発足以来、民政制度を基盤にこの平野を豊穣で根強い土地として勢力を拡大してきた。じゃが長年の因縁・サトミを打破せぬことには盤石とは言えん、サトミは小大名ながら海軍を率いキガンに対抗しておる小賢しい連中よ。そこでじゃ、サトミを滅ぼせとは言わぬ、宿敵とはいえ儂とて無暗な殺傷は好まん。サトミが向こう一切手出しできんよう働きかけてはくれんか」
リーリエ「停戦を結ぶ、ということですね」
ウジヤス「左様。しかし恥を忍んで申すが儂らは戦う事しか知らん、国を豊かにしてきたのも和平のためと銘打っておきながら軍備増強の延長に過ぎぬのよ。そこで、主らであればあるいは……とな」

アリス「不躾だけどまだ面と会ってすぐのボクたちをそこまで買ってくれるわけか?」
ウジヤス「面構えを見れば分かる、主らからは血生臭さとは無縁の朗らかさがする」
モンスメグ「殿ちゃん見る目ある~☆プロデューサー天職!」
そりゃ言い換えてしまえば事務所はおろか国家規模の代表取締役だからなこの人。
まだ不明瞭だがこの異世界においてトップレベルの権力を有してるだろう。
ウジヤス「無償とは言わん、例え失敗しようとも褒美は取らす」
リーリエ「そ、そんな」
アリス「乗っておけ。分かった、まずはサトミについての情報をちょうだい」

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宿屋

ゆん「へえ、それで安請け合いしたと」
6号「巻き込まれ体質ですからね」
帰還後、夕食と入浴を済ませた夜にウジヤスとの事の一部始終を仲間たちに話すと、やれやれといった具合で寝そべる一同。
みな寝間着の浴衣を着用しており、この街の雰囲気と相まって納涼大会に来たような感覚だ。
アリス「すぐにサイレントヒルに行くのは簡単だけど、せっかくだったらこっちの世界の事情も知っておきたいし良いチャンスだからな。それに信頼関係を築いておけばいろいろ動きやすいだろ、お前が所かまわず爆裂してもな」
6号「うぐっ……仕方ありませんね」
スズラン「明日さっそくサトミさんの所へ行ってみよー!」
なんだかんだ流れに乗ったところで、リーリエが真剣な面持ちで声を上げた。
リーリエ「あの!」
アリス「んー?」
リーリエ「わたくしも皆さんのサポートをしたいです!」
グレアット「リーリエさん」
ゆん「リーリエちゃんがそばにいてくれているだけで癒しになってるわよ?」
ぶんぶんと首を振って遮るリーリエ、ボクたちと一緒にいる間になにか心境の変化があったよう。

リーリエ「守ってもらってばかりは、もうやめたいのです!これからは、わたくしも皆さんを、アリスさんを支えるメンバーとして胸を張って旅がしたいです!」
モンスメグ「エモーい☆彡」
アリス「……具体的には?どうやって?何をするつもりだ?」
気持ちだけが焦って先行してるだけだったら、かえって迷惑になる。ボクはリーリエのことを大事に思っているからこそ、仲間だからこそ足手纏いにさせてやりたくはない。そんな思いやりから、敢えて冷たい現実的な対応を施した。
しかし予想していたのか、決して彼女は言葉を濁さなかった。
リーリエ「わたくし、トレーナーになります!」
そう宣言した彼女の瞳は決意に満ちていた。
スズラン「えーっ!!」
大きく目を見開いてあんぐりさせたお口を両手で隠すようにして驚くスズラン。
確かに意外だった。
性格や言動からして、研究者の道を進むと思っていたし。
リーリエ「ポケモンさんを戦わせるのは傷ついてしまいますから苦手です、けれども乗り越えねばなりません。見ていることしか出来なくて、歯がゆい気持ちを味わうのはもういっぱいです。今度は、わたくしが……わたくしが全力で皆さんを支えていきます!!」
……きっと、一晩中根を詰めて考えてきたのだろう。その潤んだ瞳にはまだ不安の色が残っていた。
でも、迷いはなかった。
ボクを見つめる視線は憧れの視線から、目標の視線へと移り変わっていたのだから。

アリス「ゆん、グレア、メグ、ロック」
6号「はい」グレアット「はいっ」
モンスメグ「呼ばれて飛びでてジャジャジャジャーン☆」
ゆん「仰せのままに」
4人はボクを取り囲むようにしてリーリエと向き合う形になった。
アリス「リーリエが新しい司令官だ、ボクが席を外しているときは彼女に従うように」
リーリエ「ふえっ」
両手をパーにして面食らう彼女をよそに返事が返ってくる。
ゆん「よくってよ」
6号「フフ、この私を制御できるか仰視しましょう」
モンスメグ「当たるも八卦当たらぬも八卦!これは運命を解き放つRPG!」
それぞれがOKサインを出す中、グレアットはリーリエのそばまで寄ると、ぎゅっと柔らかく両手を握って微笑むと、優しく問いかけた。
グレアット「リーリエさん。いつだって世界を変えるのは夢を本気で追い求める方……そんなポケモントレーナーの道は長く険しいと言います、それでも目指しますかっ」
リーリエ「はい!わたくし、本気でアリスさんたちを支えて……それで、世界中のポケモンさんを笑顔にしてみせます!」
グレアット「そうですか。そうですよね、諦めるくらいなら最初から夢へ向かって学びませんものねっ!リーリエさん、私の炎は貴女の炎ですっ、一緒に飛び立ちましょうっ!」


翌日、身支度を整えて(おかえり普段着ロングスカートエプロンドレス、もう離さないキミがすべてさ)ボクたちはサトミの居住地へと進軍した。
みかんは城下町でお仕事だそうなので、キガン領のマップが本日のガイド。
どうやら海をはさんで、細長く浮かぶ島一帯がサトミの拠点のようだ。

リーリエ「あ、あの!わたくし自分の手でポケモンさんを捕まえてみたいのです、トレーナーになるための第一歩なのです!」
スズラン「マサキにほしぐもちゃんもシロンちゃんもあずけっぱだもんねー、良いんじゃないかしら?」
いざとなればボクの仲間を貸すつもりだけれど、確かに自分自身でゲットしたポケモンが居れば自信がつくだろう。
向かう途中に、のどかなお花畑があるのでそこで最初の試練といこう。

ゆん「あら、こっちにもオニスズメちゃん達がいるのね。いらっしゃいあなたたち、羽根繕いしてあげる」
6号「は!手ごろな洞穴が」スズラン「ちょっとー」
モンスメグ「メグお手製はなかんむり~♪」
グレアット「彼岸花オンリーっ!?」
・・・リーリエはじめての捕獲体験というのにこれである。
うん、こいつららしくて結構。究極のマイペースこそアリスパーティ。
ボクもメグレアのお花遊びに付き合いながら遠目で見守っておくことにした、あんまり手出ししちゃうとかえって邪魔になっちゃうし。

さてさて、彼女のパートナーは誰になるかな?
スズランから借りたパティを連れて、慎重に……というよりお化け屋敷を進むようにびくびくしながら歩き回るリーリエ。
リーリエ「こういった叢を……きゃあ!」
お、あの反応からしてエンカウントしたっぽい。
パティがおのずとリーリエの前へと飛び出していった。

やせいの アブリボンが とびだしてきた!

ロトムアブリボン、アブリーの進化系~!むし・フェアリータイプ、特性みつあつめ。
花粉が湿るので雨が嫌い。雲行きが怪しくなると木のウロ(樹洞)でじっとして動かなくなるロト~♬」

リーリエ「可愛らしいです!キミに決めました!」
アリス「見惚れてないで勝負の構えを取りなー、野生は見境なく人間目がけて襲ってくるぞ」
リーリエ「ええぇっ?!ぱ、パティエさん!お願いします!」
パティエ「こーん?」
グレアット「リーリエさん、具体的な指示をっ!」
まずい、はじめてのポケモン勝負でパニくっている。アブリボンは大人しい気性とはいえあんな隙まみれだと嬉々として狙ってくるぞ!
ボクが出ようとした瞬間には、メグがリーリエを後ろから抱えて落ち着かせていた。
モンスメグ「ポケモンバトルはトレーナーにとってライトステージ☆その場しのぎの持論理論を織り交ぜた自由さユニークさなんてNONONO!!」
なんだそのフォローにもアドバイスにもなっていない完全感覚Trainerは。
よく見れば後ろから耳打ちしてるみたいで、なんて言ってるかは聞こえないけどひとまず任せておこう。

モンスメグ「背伸びしてしゃんとして。メグたちポケモンは感情に敏感だから、パティ震えてるでしょう?この子は賢いから自信をもってしっかり命令してあげればリーちゃのために動いてくれるから」
リーリエ「は、はい」
モンスメグ「大丈夫、正解なんてひとつじゃないから。スクールで学んだこと、今実践で発揮してみせて」
リーリエ「分かりました、ありがとうございます!」

ほんの数秒の間に、リーリエはピンと背すじを伸ばし凛々しい顔でアブリボンと対峙していた。メグが何を吹き込んだか知らないけど、初々しくも良い表情になった。
リーリエ「パティさん、ほのおのしt……」
モンスメグ「それ、アブりんR.I.P.
リーリエ「え、っと、パティさん!さいみんはどうをしてください!」
パティエの さいみんはどう!
やせいの アブリボンは ねむってしまった!
モンスメグ「Amazing☆」
程よいダメージに睡眠状態、捕まえるにはこれ以上ないベストな状況だ。
リーリエはおずおずとバッグから、ヒールボールを掴むとそっと手首だけをスナップしてころころとアブリボンの方へと転がしていった。
アブリボンは抵抗することもなく、それどころかリーリエの心が通じたのかどことなくほころんだ寝顔を見せてヒールボールの中へと入っていく。

リーリエ「やりましたー!わたくし、試練を乗り越えたのです!」
モンスメグ「ハイターッチ☆彡」
パンっとハイタッチを交わすふたり、ぞろぞろとみんなが駆けつけてくる。
グレアット「おめでとうございます、応援していますよっ」
リーリエ「グレアットさんのお祈りのおかげです、ありがとうございます!」
こうして、彼女はポケモントレーナーデビューを飾ったのだった。
これで心置きなくあの島へ乗り込めるってもんよ。

ゆん「どうしてか遠くまでは乗せてあげられないけど、この距離だったら飛べそうよ」
グレアット「みぎにおなじくですっ」
アリス「じゃあグレアはリーリエを乗せてやってくれ」
スズラン「わたしはアリスたんと一緒にゆんちゃんに乗ります!」
モンスメグ「肩に乗りなろっくん、水上ランニングをお見せするZE」
6号「え、ちょ、ま、いやああああああああ!!????」
リーリエ「すごいです!片足が水中に沈む前にもう片足を水面に乗せて、刹那の速さで交互に走ることで海を走っています!!!」
んなアホな。
メグの膂力、恐るべし。

スズラン「ゆんちゃん大丈夫、わたし重くない?」
ゆん「うふふ、羽よりも軽いわよ。でも私のお胸を鷲掴みにするのはやめて?」
スズラン「やあらかくてつい!」
アリス「そういえばスズランは128のうわさをどこで聞きつけたんだ?」
そもそも、今こうして異世界を旅してるきっかけはスズランの依頼である。
まだお見えにはなっていないが、このぶんだと128と遭遇するのも時間の問題だ。しかし異世界にしかいないはずのポケモンを、それもイラスト付きでどこで見つけたのやら。今さらながらそのクエスチョンを投げかけてみた。
スズラン「セレビィから聞いたの!」
アンサーは、想定のナナメ上から降りかかってきた。

アリス「……え?」
ゆん「それってどういう」

Part6へつづく!