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《Ride On The City》-桜花の虹彩- Part14(最終回)

エリカ「起きなさい、アリス」

とお姉様が、タマムシジムの木陰の下で膝枕してくれたままボクの頭に落ちている葉っぱを取り払いながら
エリカ「もう、長々としたおひるねですこと」
アリス「ねえお姉様!ボクってばへんってこな夢見たの!」
とボクはお姉様に自分が覚えている限りのことを、自分の突飛な巡り歩きを、ここまで読んできたとおりおしゃべり、終わるとお姉様はキスしてくれてね、こう言うんだ。
エリカ「へんてこな夢でしたのね、本当。でもすぐお茶へ駆け足しないと、このままでは遅刻ですわよ」
というわけで、ボクは起き上がって駆け足。走りながら心の中は、そりゃやっぱり、これまでの不思議な夢でいっぱい!

ところがお姉様は妹がはなれていったあともじっと座ったまま、ほおづえをついて夕暮れをながめながら、小さなアリスと不思議巡りの道行きを考えているうち、今度は自分もうつらうつら夢を見始めてね、その夢っていうのはこう――

はじめにゆめ見るのは、その小さなアリスのこと。何度となく小さなお手々をこちらの膝の上で握りながら、さらにきらきらわくわく上目づかいでのぞきこんでくる。
――聞こえるのはあのいつもの声音、目に入るのは頭をつんと上げるあのけったいな癖毛、いつも前髪が散らかってどうしても目に入ってしまうからって、そうやって元に戻そうとする――

そしてじっと耳をかたむける、たぶんかたむけるうちに、そのまわりのあちこちが、小さな妹の夢のなかの突飛な生き物でにぎやかになってくる。

長いくさむらが足元でがさごそ、ライコウが慌てて駆けてゆく。びくびくゾロアークがばしゃばしゃ、池のそばを進んでいて。
聞こえてくるレジアイスレジスチルのかちゃかちゃ、オニドリルとスズメ達は一緒にいつまでも終わらないお茶会中。
そのあとセレビィがきぃきぃ声で、かわいそうに来た人みんなを呪うとか言い出して。
そこへミュウツーがガチャンバリン。そこへ彼方から混じり合うミュウのくすくす。

だからじっとしたまま、瞳を閉じていると、もう半ば不思議の国にいるようで、目をいまひとたび開けてしまえば、つまらない現実-うつつ-にみんな変わってしまうとわかっているのに――草はきっと風でかさかさしてるだけで、池がそよぐ草に波を立てているだけで、かちゃかちゃはナゾノクサに付けられた鈴の音に、そのほかけったいな物音だってみんな分かってる。
きっとせわしないジムのごちゃごちゃがやがやに、それから遠くから聞こえるミルタンクのモーモーに、みんな置き替わってしまうだけなのに。

最後にひとり思いえがくのは、この当の小さい妹がこれから先、ひとりの女性に育っていくさま。大人にふくらんでいくなかでもずっと、子どものころの、素直なあたたかい心を持ち続けていくのか。

そして、だれかの子どもをそばに集め、たくさん突飛な話をしては、その子たちの目をキラキラ輝かせるのだろうか。その話は、遠い昔のふしぎの国のゆめそのものだったり?すなおに悲しむその子たちのそばで自分もと、素直にはしゃぐその子たちにかこまれ、楽しかったと気づくのかな。
自分の子ども時代の思い出、あの幸せな夏の日々に。

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ミュウ「ほんとに面白い子よねぇ。まさか自分で自分をなんのチカラも持たない普通の女の子にしちゃって、この世界を最後の作品にしちゃうなんてぇ」
セレビィ「つぼみがいつか花開くように、夢は叶うものじゃんよ」
ジラーチ「えぇ。それにあのお方は願っておりましたから。夢は自分で叶えるためにある、と」
シェイミ「これがあの子の物語でしゅ」

うゅみ「うふふぅ♬でもやっぱりぃ、あの子は本物よぉ。だって、天井桟敷のお芝居を現実にさせちゃったことだけは事実なんだからぁ」

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タマムシシティ東・7ばんどうろ

アリス「さーてっ!記念すべきボクのトレーナー冒険、第一歩!どんなポケモンが待ってるかしら!」
正午を指す懐中時計を水色のエプロンドレスに仕舞うと、大きなリボンをぴょこんと勢いよく跳ねさせながら、軽いスキップを弾んでみせる。
そしたら、フルスロットルなスキップが前方不注意で早速衝突事故に遭っちゃった。
アリス「あいたぁ!」
「いたたっ……」
アリス「ごめんなさい!」
ボクは、ぶつかってしまった女の人に謝ると手を差し伸べる。
その女性は、紅く朱く赤い灼熱のような髪の色と瞳をした綺麗な女性だった。
炎の翼を模したアクセの付いたリュックサックが印象的で目に留まったの。
彼女は転んで砂埃がついたオレンジのローブをはたくと、ボクの差し伸べた腕につかまって立ち上がった。ボクよりも10センチくらい高い背丈をしたお姉さんみたい。
「気をつけてくださいねっ、もうっ」
ぷんすかと怒られちゃった。
わざとらしく膨らませたほっぺを見上げて、つい笑いが零れてしまう。
アリス「ふふっ、ごめんあそばせ!あなたのお名前は?」

グレアット「私ですか?私は、グレアットです。ナナシマっていう場所からやってきたトレーナーですよっ!」
アリス「ボクはアリス。グレアットはトレーナーなの、じゃあボクのセンパイだ!」
グレアット「あら、新米なんですねっ。初々しいです、がんばってくださいねっ!」
にこっと優しく柔らかな笑顔で返してきてくれた、とってもいい人で良かった。
そこでボクは足早に急ごうとする彼女を引き留めてお願いをしてみる。
アリス「あ、待って!」
グレアット「はいっ?」
アリス「ボクここから出たことないんだ、だから分からないこといっぱいで。それにポケモンもまだ持っていないし……良かったら一緒に旅をしてくれないかな!」
そんな突拍子もないわがままに目を丸くするグレアット。
うーん、とひとしきり考えるとにっこりと笑いかけてボクの金髪癖毛を撫でると
グレアット「いいですよっ!いざとなったら、私の自慢のファイヤーで助けてあげますっ!」
こころよく快諾してくれた!
ファイヤー?っていうと、確かこっそり大学に忍んで遊んでた時にエリカお姉様が講義で説明してた、伝説のポケモンの一匹だったような……。
も、もしかしてグレアットって超やばやばな人なんじゃ!?

アリス「すごい!だったらグレアットのファイヤーを借りてジムバッジいっぱい貰っちゃおう!」
グレアット「あ、あはは……それはズルですよっ」
ちょっと困った顔をしながらも、冒険開始3分で頼りになる仲間が出来ちゃったからよし!前よし後よし幸先よし!ボクの顔もよしっ!

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アリス「とりあえずヤマブキに行こう!なんでも揃ってるはずだし」
グレアット「え、警備員さんが通してくれませんよっ?」
アリス「ボク、エリカお姉様の妹だからナツメお姉様とよく遊んでもらってるの。だから顔パス余裕ってわけさ!」
グレアット「え、えええっ?本当のお嬢様じゃないですかっ」
ヤマブキのゲートを見張っているガードマンにいつも通り挨拶を交わせば、そのまま大都市・ヤマブキへとずけずけと入っていく。
ぽかんとするグレアットを尻目に、ボクはトレーナーになったことをナツメお姉様に報告するためにジムに向かって走っているとなんだか騒がしい様子の現場に遭遇した。

「でーすーかーら!私のレジロックは別に爆裂しただけですってば!」
「それがいけねえって言ってんだろ!どう落とし前つけてくれんだ!」
見上げれば、ジムの隣に配置されてる格闘道場で問題があったらしい。
確かに聞こえてきた会話の通り、大爆発の痕跡が残っていて看板がところどころ焦げている。紫色のローブと三角帽子を纏ったまるで魔法使いの世界からそのまま飛び出てきたような少女が、道場の師範さんと揉めあっているって感じかな?
アリス「どーしたの?」
師範「おう、アリスちゃん!この娘さんが俺のサワムラーと試合してたんだけどよ、レジロックに大爆発させやがってな。それも普通の爆発じゃねえ、核融合でも起こしたんじゃねえかってレベルで荒らしてくれてよ」
レジロック……?うーん、確かホウエンっていう遥か西の地方に封印されてるっていう伝説のポケモンだったっけ、エリカお姉様の本棚で読んだ記憶がある。
アリス「ポケモン勝負!いいなー、ねえねえボクにもポケモンちょうだい!まだ一匹も持ってなくってー」
師範「お!トレーナーになったのかい、バルキーでもあげようか。と言っても今それどころじゃなくてな」
「冤罪ですよ、冤罪!別にだいばくはつを使っちゃダメって決まりはありません。私はスポーツマンシップに則って闘っただけです!」
グレアット「らちがあきませんねっ……また建て直せばいいだけじゃないですかっ?」
師範「はいそうです、とは言えねえのよ。なんせこの娘これが初めてじゃねえからな!」
わーお、前科もち!
そう告げられた前科持ちの魔法使いさんは高らかに宣言した。

「我が名は6号!ポケモントレーナーを生業とし最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!
あまりの強大さゆえに地方に疎まれし我が禁断の力を汝も欲するか。
ならば、我とともに究極の深淵を覗く覚悟をせよ。
人が深淵を覗く時、深淵もまた人を覗いているのだ!」
グレアット「あいたたたっ」
アリス「かっこいいー」
二者二様の反応を示していると、後ろから
氷のように白と水を基調とした涼しい髪を靡かせる少女と、鋼のように鈍い銀色の髪を輝かせる少女が悪態をついて登場した。
「……ロック……中二病……乙……」
「なーにやってんのよこのバカ姉貴ッ!」
6号「ちょ、アイス!スチル!本名は封じられし法典の」
あの魔法使いさんロックちゃんって言うんだ、ますますかっこいい~。
この人たちは姉妹なのかな?
スチル「うっさい!あ、ウチの姉が申し訳ないわねッ!お詫びになるか分からないけれど、このメタルコートで手を打ってくれないかしらッ」
アイス「……それと……このおおきなしんじゅで……修繕費……」
師範「お、押忍!気持ちだけ受け取っておこう!そういう心構えさえありゃいいのよ!」
そう言うと、ぶっきらぼうに照れながら道場へと帰っていく師範さん。
おー、まあるく収まったみたいでなにより。いーしょっていいな、かーぞくっていいな、まるくってこんなにあたたかい~♪
6号「べーだ、私の最強のレジロックを馬鹿にするからですよ」
スチル「ちっとは反省しなさいッ、アンタのレジロック、アタシのレジスチルで抜群取って落とすわよッ?」
アイス「……わたしの……レジアイスにも弱い……ロック……不憫……」
などと、わちゃわちゃしている最中、また先を急ごうとしたグレアットを差し置いてボクは提案を持ち掛けた。

アリス「ねえねえ!みんな、アリスの仲間にならない?」
6号・アイス・スチル『……はァ?……』

~ヤマブキジム~

アリス「ナツメお姉様ー!」
ボクは、グレアットと3姉妹を引き連れてナツメお姉様へ挨拶を交わした。
アイス「……ロック……ちょろすぎ……」
スチル「なーにが、この邂逅は世界が選択せし定め!私はあなたがたのような者の出現を待ち望んでいた、よ!アホらしいッ!」
6号「いいじゃないですか、自由に爆裂できるだなんてまたとないチャンスですよ!」
グレアット「無邪気に振りまく権力ほど恐ろしいものはありませんねっ……」

ぼそぼそと喋るみんなを横目に、ナツメお姉様が出迎えてきてくれた。
ちら……見て見ぬフリされちゃった。隣のマナちゃんもやれやれっていった雰囲気で白衣をはたつかせながら、前髪で隠れた目を押さえてる。
ナツメ「いらっしゃいアリス。ずいぶんとお友達増えたのね」
アリス「でしょ!あのね、ボク今日からトレーナーになったんだ!」
ナツメ「やっぱり。予感がしたのよ」
マナ「もうそんな年齢か、時の流れとは光陰矢の如しだな」
ナツメ「だったら、餞別に私のラルトスあげましょうか?タマゴから孵ったばかりでアリスと同じまっさらな子よ」
すごく素晴らしい持ちかけだけれど、ボクは首を横に振った。
アリス「ううん、自分の初めてのパートナーは自分で捕まえたいから」
その言葉に感銘を受けたのか、口を手で押さえて目を見開くお姉様。
ナツメ「流石、それでこそエリちゃんの妹ね」
アリス「今日はその報告に来ただけ!次に会う時は、そのゴールドバッジを貰いに来るときだぜぃ!」
ナツメ「フフ、戦いは好きじゃないけれどその瞬間を楽しみにしているわ」
マナ「私のミュウツーに勝てたのならば、その暁には賞賛を送ろう」

~ハナダシティ南・5ばんどうろ~

ナツメお姉様から「まずはマサラのオーキドを訪ねるといいわ、貴女であれば図鑑とモンスターボールを貰えるはずよ」と進言を頂いたから、おつきみやまから逆走するために北側のゲートをくぐると、育て屋と看板が立てられた民家の前で、銀髪に綺麗なウェーブがかかったおしゃれな格好の子と店主さんらしき人が言い合いっこをしている現場を目撃した。
「ちょっと!ちょっとちょっと!メグのライコウちゃん、まだレベル上がってないんだけどー★」
そだてや「あのねえ、まだまだ時間がかかるんだよ。なにせ伝説級のポケモンは経験値がたくさん要るからね」

グレアット「なんだか今日はこんなのばっかですねっ」

「じゃあいいよ!四姉妹の出がらしカスミちゃんをぱぱっとライスしちゃって育てるから!引き取らせて」
そだてや「料金は100円だよ」
「マネー取るなんてどういう真似!?レベルも上がったことないのに!」
そだてや「こっちも商売だからね」
「だったらふーしぎなアメをのーまされて♬のーまされて♬ってやって
LEVEL UPしたらいいじゃん★」
アイス「……クソデカレベルアップ……助かる……」
そだてや「そ、それをやっちゃ私のメンツがだね」
「あっちにあなたのメンツがあるでしょう?そのプライドを捨てれば信頼を買えるんだよ」
スチル「あいつのトーク脊髄反射かしらッ?」
そうやってさんざん揉めあったあげく、ぷんぷんとじたんだを踏みながら段差を降りてきたタイミングで、興味を惹かれたボクは声をかけてみた。
かけようとする前に、あっちから音速で話しかけれちゃった。
「メグは見世物じゃないんですけどー?アイドルの追っかけだったらお断りします☆」
アリス「メグちゃんって、アイドルなんだ!ボクもよくルチアのライブ見てるよー!」
ルチア、というホウエンナンバーワンの名前が耳に入ったとたんに元々きらきらとアイメイクで輝いていた瞳がさらに星マークまで入って食いつくメグちゃん。
モンスメグ「ルッチーいいよね!……いい……☆不肖モンスメグはアイドルの卵としてガチ恋しちゃってます☆彡」
6号「モンスメグ、ですか。ロマン砲の名前ですね」
アリス「ボク、まだポケモン持ってない新参なんだけど良かったら一緒に応援ツアーとかやらない?」
モンスメグ「ツアー☆チャーミングな響きぃ……♪おけまる~!推しについてガンガン朝まで語り合おうZE☆」
グレアット「とんとん拍子でお仲間が増えてきますねっ!?」

マサラタウン

それから、みんなでわいわいとおしゃべりしながら歩いているうちにあっという間に目的のオーキド研究所まで到達。
懐中時計を開くと、まだおやつの時間というところだった。あ、どこかでティータイムしたいなー。ポーチにお茶会セット仕込んできたし。
モンスメグ「は~マジありすちゃんわかりみ~☆ってかあすあすとすっちーも相当ガチじゃん、やりらふぃ~☆もうさ、幸福な王子ってカンジ!?」
6号「それだと最後はメッキなくなりますけどね」
そこそこにして、研究所に入ると威厳あるオーキド博士が朗らかな態度で応対してくれた。
オーキド「おお!よくきた、キミがエリカの妹じゃな?わしはオーキド、話は聞いておる。そこのポケモン図鑑、キミに授けよう!」
アリス「ロトムじゃなーい……」
オーキド「わしのは旧式なんじゃ……その代わりにこのモンスターボールもやろう!」
アリス「おしゃボじゃなーい……」
オーキド「ええい!こっちも旧式じゃい!わがままなお嬢様はガンテツのところにでも頼んでくるんじゃあ!」
大声で咆哮されて、追い返されるように外に出されちゃった。

グレアット「アリスさん、わがまま言っちゃいけませんよっ」
アイス「……自業自得……」
スチル「ロックに粗相がないように付いてきたけれど、こっちも手がかかる妹みたいなものね……」
6号「つまり私は手がかかる姉って言いたいんですか!?」
モンスメグ「あ!メグちゃんナナミンのとこで毛づくろいしてもらいたーい☆」
アリス「じゃあ、ポケモンを捕まえたらお茶会にしよっか!」

それから、コラッタとかポッポとかと出会ったけどなんかいまいちピンと来ない。
トキワシティで、22ばんどうろに行くと一風変わったポケモンが出てくるからと言われて、アドバイス通りに行ってみたけれどニドランとかマンキーもなんか違う。
んー、こだわりすぎちゃダメなのかなぁ。
6号「こだわりは大事ですよ!」
こう言ってくれてるし(たぶん本人は違う意味なんだろうけど)、もうちょっとだけ粘っても何も出なかったらとりあえずナナミさんの家でお茶会でも……。

モンスメグ「ありすちゃん!上から来るぞ☆」
アリス「わっ!?」
草むらじゃなくて、文字通り上空から襲い掛かってきた気配に足をすくわれた。
そこで出会ったのは……。

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モンスメグ「わかった。この話はやめよ?ハイちゅんちゅん」
博士からもらった図鑑を早速開いてみる。

オニスズメ・ことりポケモン
高く 飛ぶのは 苦手。 縄張りを 守るために 猛スピードで 飛びまわっている。

その鮮やかな羽と小さな身体でみんなを守る健気な姿に強く惹かれていた。
アリス「オニスズメ!きみに決めた!」
モンスターボールを、はじめて投げる。
フォームなんて分からないから、エリカお姉様やナツメお姉様のそばで見ていた見様見真似でカーブを描くようにして投げるも、あっさりとかわされちゃった。
6号「ありすさん、ファイトです!」
モンスメグ「I Continue to Fight☆」
熱いエールが送られてヒートアップしてくる。
あの日誓った空の下で、逢えたなら……!

―――あの日?

あれ、そういえば……。
グレアットも、モンスメグも、ロックも、アイスも、スチルも。
今日の朝お姉様のお膝で眠っていたときに見ていた夢に、まるでそっくり。
それに、みんな手持ちにファイヤーとか、ライコウとか、レジ一族とか……。
ボクの目の前に飛び羽ばたいているこの子は、いずれオニドリルに……。

グレアット「アリスさん!今がチャンスです、投げてっ!」
リュックサックについた飾りの翼をそよがせながら、ボクを現実へと引き戻した。
よく見ればオニスズメは、飛ぼうにも羽休めしないといけないほど疲弊しているみたいで、ずかんにも長い距離は飛べないと書いていた。
ボクは深呼吸をすると、意を決してモンスターボールを天まで届けと祈ってふりかざした。

モンスメグ「ね!なんて名前にしちゃう~?般若とかオススメ☆鬼さんこーちら~手の鳴るほうへ~♬」
アイス「……酒呑童子……!」
6号「デーモンでしょう、閣下と名付けましょう」
スチル「オニから離れなさいよッ!?」

アリス「この子って、いつも仲間を守るために身を挺して寝る間も惜しんでがんばってるんだよね。じゃあ、ゆっくりと遊んでいてほしいから、遊羽。遊ぶ羽根って書いて、ゆん。キミは今日から、ゆんだよ」
グレアット「ゆん、ですかっ。可愛らしくてお似合いですねっ」
ボクは、ゆんの入った紅白のボールを太陽へと翳した。
いつか天使のようになれる日を願って。

一番大切なのはできるかどうかじゃない。
やりたいかどうかだよ!

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かくして 不思議の国の お話が 生まれ
 こうして ゆっくり ひとつずつ
へんてこな 出来事が 捻りだされて――
 そして ここまで お話は おしまい
船を おうちへ むける 賑やかな 一同
 後ろで お日様 沈んでいくよ

アリス! お伽噺を どうぞ
 それから 優しい おててで 供えてほしい
思い出という 秘密の 糸で
 縫いこまれた 子供のときの 夢に
いまはもう しおれてしまった
 遥か遠くで 摘んだ 花輪に


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…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。

『セッションが終了されました』

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あとがき