Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》-桜花の虹彩- Part10

f:id:Alice_Wreath:20211110045111p:plain

ーシーギャロップ

マチス「ウェルカムトゥーシーギャロップ!Driver's Highで飛ばすぜ」

f:id:Alice_Wreath:20211117220911j:plain


6号「しゅごいですぅマチスさまぁ……60000馬力にくわえて、38口径5インチ単装砲、40mm連装機銃、20mm単装機銃、533mm5連装魚雷発射管、爆雷投射機、爆雷投下軌条、Mk.51の兵電装に、SC対空捜索用とSG対水上捜索用レーダーまで……素敵ぃ」

すごいなぁ、同じ言語のはずなのにさっぱり意味わからん。
アリス「誰かあのうっとりしてるアホを止めてくれ」
モンスメグ「ありすしれぇ!メグは巡回にいってまいりまーす☆」
そのくだり、前にも聞いたなあ?
ビアンカビアンカ、ふなのりさん達に配膳してくるねー♬」
あとでボクも手伝うことにならないよね?

グレアット「ふふっ……邪魔者みなさんいなくなりましたし、ゆっくりくつろぎましょうっ」
ぎゅっと後ろからあすなろ抱きしてくるグレアットにがっちりとホールドされてしまって、ソファーから動けなくなっちゃったので仕方なく深く呼吸をついて海の景色を眺めることにした。
ナナシマは、いつか海底宮へと向かった時ほどではないとはいえ、それなりに遠方の距離にあるので半日近くは海の上で過ごすことになるだろう。今の時間からだと、夜に到着するだろうから上陸したらまずは宿を取るところから始めなければ。あっさりとポケモンセンターでルームを取れれば越したことはないが、お姉様の物言いから察するとそれすらも厳しいかもしれない。今回ばかりは順風とはいかなさそうだ。

アリス「グーレア……んにゅ……ちゅ」
不意に襲った眠気にうとうとしながらも、なんの気なしに顔を上げると、待っていましたと言わんばかりに唇を塞がれてしまった。背中から回していた腕を首元へと寄せ、離れないようにさせて海色のように深く口づけを交わす。
グレアット「ん……ぷあぁ♡……なんですかぁ、アリスさんっ♡」
粘り気を帯びた透明の糸を引きながら、返事をする彼女の蕩けた目はボクの視線を追いかけていた。
アリス「もう、すぐにグレアは……。えーと、なんだっけ」
特別急ぐ内容でもなかったので、取り留めのない話題の記憶を辿っているとそのあいだに彼女はぐるりと回りこんで隣へと密着するようにして腕を絡めて着席した。
ちりん、と鈴の音が鳴るのに気を取られて視線をうつすと、その鈴は黒く焦げていることに気が付いた。
アリス「あれ。そのすず」
グレアット「やっと気づいてくれたんですねっ、アリスさんが眠っていた時から交換してたのにっ」
注意深く自分のポケモンを見ろ、と今朝ホムラから讒言されたことを思い返す。
まさか一年近くも気づかなかっただなんて、多忙に目を回していたとはいえちょっと情けない。ボクはその鈴を手に取ると自分のペアルックの鈴を見比べる。

アリス「せっかく新しいの買ってあげたのに使わなかったのか?」
グレアット「だって……これは私にとっての思い出ですからっ……!」
ボクの未熟さから招いた悲劇を、烈火の如く鮮明に頭に浮かべていた。聞けばヤナギも自分の経験不足と不注意でラプラスを失ってから、道を踏み外したと耳に入れていたが一歩間違えていれば彼女あるいは自分がそのような間違いを犯していたかもしれない。
思いに耽って長い睫毛を伏せる彼女の鈴を強引に握りとってやった。
グレアット「きゃっ!あ、アリスさんっ?」

驚いて絡める力を抜いた腕をふりほどくと、ボクはデッキに出て広い大海へとその鈴を放り投げた。
アリス「これから、作っていけばいい」
飛んで近くまで寄ってきた彼女は、ボクの横顔を眺めてあっけにとられるとそのままくすくすと微笑み、決心したようにボクの手を強く握りしめた。
グレアット「はいっ!」

穏やかな波の音をバックにして、どちらからともなくお互いに抱擁しあうと、グレアットは少しだけ屈んでボクの背丈に目線を合わせると、熱い舌でボクの幼く柔らかな唇を責めていく……。海風に煽がれて巫女装束の白衣が肩まではだけるのも厭わず、むぎゅりとこちらの控えめな胸へ押し当てるようにして袖を固めて、互いの衣服へ互いの零れた唾液が滴っていき、舌同士の絡み合いが続くうちに呼吸を求めて嬌声に近い荒い息遣いが漏れていく。
ちゅ、ちゅ……と口付けていく音は最初のうちだけで、段々と唾液によってぬるぬるとしていくうちに吸い付くような生々しい音が、汽笛と波の音よりもハッキリ脳に響いてくる。抵抗が来ないことを知っている彼女は自ずとボクのエプロンドレスを掴めばスカートの下から腕を忍び込ませて、いつの間にか湿り気を帯びていたいちご柄の下着を指先で弄り遊ぶようにして布越しに花弁へ触れていく。
その度に自然と、幼さを残した似つかわしくない姦淫な喘ぎ声と一緒にグレアットの名前を呟いていき、反応して紅潮した名前の持ち主は片方の手で肩をそっと押して木製のデッキへと押し倒そうと……。

6号「大変です!ありすさんグレア!得体のしれない怪物のけは……い…………が……」
突如として呼応されて、真っ白だった頭が急速に回転しようとした結果転倒しそうになったところを瞬時にグレアットが強く抱きしめて防いでくれた。
ふにゅ、と小さくない胸がお顔に押し当たって緩和剤になった。
6号「え、えと……どうぞ最後まで楽しんでいてください、こっちとメグさんで対応しますから。あはは……///」
アリス「あ、待って!」
誤解、でもなく別にその解釈はきっと正しいんだろうけれど、いくら仲のいい身内であってもさすがに羞恥心と歯止めが上回るといいますか。
6号「すす、すごいですね……好き合っているのは知ってましたけど、まさか皆が居る公共の、それもお外でレズレズするだなんて……」
気恥ずかしそうに俯きながらもじもじと喋る6号に、いつの間にかグレアットが腕を上げてにっこりと笑顔で6号の肩を掴んでいた。

グレアット「ろーくーごーうーちゃんっ♪」
6号「ひゃあ!にゃにゃ、なんですかグレア!別に見て見ぬフリしていますから!こっちで問題解決させておきますので、どうぞグレアの好きなように」
わー。似たような光景をヤマブキで見た気がするなー。
グレアット「その怪物というのはどちらにっ?」
6号「え、ええっと、ここから逆サイドの三時の方向に見たこともないクラゲの大群が……」
そう告げられた瞬間に、勢いよく飛び立つと大空から神通力を纏いし闇の炎を広げてこの戦艦よりも大きな範囲の巨大なダークファイアを海にめがけて打ち込んでいった。
ボクは、濡れた唇を拭って立ち上がると、落とした紅き羽根を一枚拾って合掌を送った。

モンスメグ「お掃除☆お浄化★お成仏♪」
こっちまで響いてくるほどの大声でメグがとどめを刺す気配を察知した。

f:id:Alice_Wreath:20211118001635p:plain


マチス「ホワッツ?ミステリーモンスターだなこいつあ

その後、感情に身を任せたグレアットが葬った怪物とやらの一匹を掬い上げて皆で観察をしていた。メグに買ってもらっていたトランプのマークを基調とした赤いエプロンドレスへとこっそりと着替えたボクはみんなの元へと集まる。
ビアンカ「あれ、どーしてドレスアップしたの」
アリス「気にするな」
グレアット・6号「……」
不思議そうに首をかしげるビアンカをよそに、つんつんと部位を触っているメグのもとへ声をかける。
アリス「こーら、迂闊に触らない。ちょっとどいてな」
ボクはクラゲ状の怪物へ近づくとしゃがんで、その身体へと手をかざす。
すると、すーっと気が脳内へと直接流れ込んできた。ということはこいつはポケモンだということになる、つまり新種って可能性が高い。

マチス「ハハハ!はじめてルックしたぜ!」
感心した様子で、ボクの持つ特殊能力を応用した術を眺めるマチス。呼び寄せたり懐かれるだけでなく、そのポケモンの状態を見定めることも出来るのだ。ただあまりにも遺伝子に手が加わっているとちょっとした基本の能力しか出来ない。ほぼ人間と変わらないグレアット達とかね。
モンスメグ「どんなカンジー?」
ビアンカ「損なかんじー♬」
モンスメグ・ビアンカ「温厚篤実エキセントリックなアナター♪」
そこ、黙りなさい。集中途切れちゃうでしょ。
6号「ひそひそ……ありすさんショーツも変えたんでしょうか」
グレアット「すっごく濡れてたよっ……もしかしたら6号ちゃんみたいに今はいてないのかもっ……」
6号「にゃ!……なぜそれを……」
グレアット「だってお洗濯の時6号ちゃん、服しかないからっ……」
この怪物に気を送ってる都合で、お前ら2人のないしょばなしがはっきり聞こえてきちゃうなー。こんなときにヘンな話しないのふたりとも。
そんなこんなしてるうちに、こいつの正体が割れた。

アリス「ドククラゲ……か?……なんかの進化エネルギーが感じられるな」
イズミ姐さんがいれば、より詳しく進化エネルギーに関しては裏が取れるがないものねだりをしても仕方がない。
マチス「アンビリバボー!ドククラゲだって!?アレンジされまくっちまって原型が残っちゃいないぜ!?」
手を額に当てて上半身を反らし、大げさなリアクションで面食らうマチス
確かに信じられないだろうが、ドククラゲの生体反応を感じた以上間違っていないのだ。
モンスメグ「銀次郎めー!」
マサキの仕業だと感じ取って彼への憤りを顕わにするメグ。まだ決めつけるのは早計だが、確かにこのような技量を持ち合わせているのは、ほかにマナことミュウツーを生み出したフジくらいだろう。とすれば、実現できるような人物はマサキと仮定づけた方が自然と思える。
だがしかし、一体なんのためにこのクラゲを送り込んだのか?
6号「ポケモンを実験のどうぐにするだなんて、到底許せませんね」
グレアット「カツラさんを思い出しますっ」
彼と交戦したときに、ユニコーンとして改造されたギャロップを思い出した。グレアットがその時に向けていた憐みの目つきと同じ視線で眉間に皺を寄せる。
そしてそのクラゲに対し、最も憤慨していたのはビアンカであった。

ビアンカ「……おんなじ」
アリス「ビアンカ?」
ビアンカビアンカも、もともと人間だったのに……気が付いたらポケモンの身体にされちゃって。この子も、ドククラゲさんだったのに」
そっとそのクラゲの体に触れて、悲しそうに俯く。
そうだった。こいつは最初からラティアスだったわけじゃない、どこにでもいるサイキッカーに過ぎなかったのだ。人間の勝手で変えられてしまったという点においては同じ境遇だろう。しかしそれを言うのであれば、今ここで取り囲んでいる少女はみな一緒だ。
モンスメグ「会ったら、ぶっこわーす!」
海岸へ向けてぎゅっと拳を握りしめながら、宣戦布告を口にする。
みなマサキへの敵意を高めることで士気高揚していた。

うゅみ「壮大な夢物語も、ラストステージかしらねぇ」

~ナナシマ~

マチス「ヘイ!ナナシマへアライバルしたぜ!オレ様は忙しいからよ、ディサイシブが終わったら言ってくれ!グッドラック!」
シーギャロップ号からボクたちを降ろすと、そのままUターンして帰っていくマチスを見送ると今回の舞台・ナナシマへと踏み入れる。
マップを開くと、そこには《24ばんななしま》と記されていた。
そういえば、岬の小屋へ行く道も24ばんどうろだったな。この奇妙な一致は偶然ではあるまい、確実にここに奴はいる。
6号「なにやってるんですか。早く行きましょうよ!」
顔を上げれば、みな一様にずんずんと前へ進んでいっていた。
ええい、相も変わらず先にいけいけドンドンするなお前らは!

f:id:Alice_Wreath:20211125231327p:plain


そこには、不気味なほど静寂が広がっていた。施設はおろか、人の姿ひとりおらず、ポケモンの姿や気配も見当たらない。まるで完全に外界から隔離されたような……?
だからこそ、奥にぼんやりと見える不自然な研究施設がこの世のものではないような雰囲気を醸し出していた。
ボクはグレアットの翼に乗って、そこまで一直線に空を駆け抜ける。
みなボールの中へ入っていったが、ビアンカひとりは並行して翔んでいた。その行動になんの意図があるのか、彼女の心を読み切れないので汲み取れない。
ポケモンからヒトへと遺伝子組み換えを行われたグレアット達は、完全にヒトというわけではなくあくまでも姿かたちが酷似しているに過ぎず、それゆえにボクの能力もほとんど通用する。だがビアンカはヒトからポケモンに替えられた少女であり、ボクの持つ能力はほとんど伝達しえない。
この些細な違いが、ボクとビアンカのあいだに決して埋められない溝を作っていた。
そんな考えにふけっていると、マサキが居るであろう研究施設が近づいてくる。
その扉の近くに、いくつも丸い物体が転がっていた。

f:id:Alice_Wreath:20211125232947p:plain

グレアット「マスターボールっ?」
ビアンカ「どーしてこんなとこに……」
明らかにトラップといわんばかりに、マスターボールがいくつも転がっていた。
いや、違う。
グレアット「それにしてはあまりにも大きすぎるような……っ!」
ボクたちがそのボールとの距離に近づいたそのときであった!

マスターボールがいくつも、ダイナマイトの導火線のように次々と大爆発を起こした!

ビアンカ「きゃああっ!!」
グレアット「きゃーっ!!」
アリス「はわあぁーっ!?」

爆風に飲み込まれないよう、高速で大空へと舞い上がって最悪の事態からは免れる。
幸い、着ている服が軽く焦げただけで済んだものの、一帯は隕石が落ちてきたかのような深いクレーターと化してしまった。
アリス「あーもう、さっき着替えたばっかなのに!」
砂埃と爆撃によって、モンスメグから買ってもらった衣装に汚れがついてしまった。
グレアット「けほけほっ!大丈夫ですかっ?」
ビアンカ「なんなのさー!」
それは、恐らく研究施設へ侵入しようとする者への防犯のような役割だったのだろう。
これで完全にクロとなった、あそこは間違いなくマサキがいる!
しかしあのような罠がまだまだ張り巡らされているのは間違いないだろう、正面から突入するのは得策じゃあない。
アリス「こうなりゃ強行突破するしかない!グレア、ビアンカ!あの窓からつっこむぞ!」
ビアンカはミストボールをいくつも発生させながら、そして聖なる炎を纏いながらグレアットは旋回し、襲撃を試みる。
不思議とボクの周りを包む炎だけは、触れてもやけどしなかった。
火を支配するファイヤーたる彼女だからこそ行える芸当だ。

グレアット・ビアンカ「はああああああああっッッ!!!!」

勢いよく強大な攻撃をしたことで、施設の窓が割れ無事に施設内への襲撃に成功する。
ボクはグレアットに乗ったままメグと6号をボールから出し、共に次々と連続して切り込みながら内部へ侵入していく。
建物は案外小さく、2階建ての造りとなっていた。やはりというべきか、全く人の気配がしなかった。とすれば極秘で単独に研究と実験を行っているのか?
だが、ホールにあたる場所に差し掛かった時その思いは打ち破られた。

f:id:Alice_Wreath:20211125234710p:plain


キサラギ「よ!」
アリス「キサラギ……!?」
思いもがけない人物の登場に面食った。ここ最近まったく見かけないと思っていたが、まさかこんな辺境にいたとは。
ビアンカ「だれ、ですか?」
初対面らしきビアンカに向け、意外にもまっすぐに自己紹介をする。
キサラギ「オレ様の名前はキサラギ・ユキナリ!ポケモン学会最高顧問オーキドの子にして、カントーのチャンピオンに一度は輝いたトレーナーだ。そして……アリス!いや、アイリスというべきか?こいつを超える男さ!」
ビアンカ「…………かっこいい」
モンスメグ「あー!負け犬じゃーん★」
6号「そうです!あなたは特別ルールとはいえアリスさんに負けたお方じゃないですか!どうしてまた現れたんです!」
すごいさんざんな言われよう。嫌われてるねキミ。
だがそんな酷評などどこ吹く風、彼はボクだけをまっすぐ見ていた。
ボクもまた対峙していたのだが、ゆっくりとこちらへと歩を進めていく。
……今回は戦う気はないのか?

キサラギ「アリス!」
気が付けば、目の前まで距離を詰めていた。ゆうに20センチ近い身長差があり、子供を見下すようにして首を傾けるキサラギ
そのあまりにも威風堂々とした姿勢に、誰もが動きを止めていた。
アリス「な、なにを……うぐぅっ!!」
気が付けば膝から崩れ落ち、視界は地面を向いていた。両手は自然と激痛の走る腹部を抑え込んでおり、一切の抵抗ができなかった。
その行動に、仲間たちがキサラギを一瞬で包囲し睨みを利かせる。
グレアット「キサマぁっ!」

キサラギ「ひゃあははははぁッ!!来いよてめえら!!!本気のてめえらを殺してこそオレ様は真の意味で頂点に立てるんだよォォォ!!!!!!」
高笑いしながら、両腕を広げて挑発行為をするキサラギ
プライドと自尊心の塊であるこいつらが黙っているわけもなく、全員臨戦態勢に入る。
そして唯一、ビアンカのみがボクを抱きかかえると安全な壁際まで運び介抱してくれた。
ビアンカ「お姉たんしっかりして!」
アリス「ひゅー……こひゅー……不覚でしたの……っ」
まだ星が飛んでいたものの、どうにか落ち着きを取り戻す。
ビアンカ「あっちはお姉さんたちに任せよっ、何があるかわかんないからビアンカが護衛してあげる!」
ぎゅっとこっちの両肩を抱いて心配そうに眺めながらも、ビアンカは交互にこちらとキサラギ達に目を配る。ボクも不要な心配をかけまいとキサラギとあいつらの試合を見守ることにした。
どっちにせよ今の状況では、まともな指示など送れないし完全に頭に血が上っているあいつらへ命令も送ってやれない。
そして、視線を試合に送った瞬間目を疑う光景が映り込んだ!

f:id:Alice_Wreath:20211126001753p:plain


アリス「あれは…………ポケモン?」

次回に続く!

Let's say goodbye to the world we live in