Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》-桜花の虹彩- Part9

f:id:Alice_Wreath:20211110045111p:plain


サカキが消えてロケット団が自然解散してから約一年の月日が流れた。

アイリスは10歳を迎え、次期ジムリーダーの後継者としてホムラとカガリの協力でトレーナーの素質と経験を基礎から実戦で叩き込まれていた。
午前は付きっきりでトレーナーの修行、午後からビアンカとウェイトレスのバイト、夜には各地のジムリーダー等と会合と、おおよそ10歳になりたての幼女にはハードなスケジュールの連続だった。更に就寝前には賑やかな仲間たちに囲まれて、かわりばんこに添い寝が出現してくるため、心身ともに休む暇は一刻すら存在しなかった。しかし、エリカの血を受け継ぐ彼女は才女として遺憾なく発揮し、大きく成長していた。
……成長期にも関わらず、身長も体つきも全く成長の兆しがないのはこの際置いておくこととする。

そんな彼女を傍目に、珍しく休暇を取れたエリカはナツメを誘い2人水入らずでお茶会と洒落込んでいた。

f:id:Alice_Wreath:20211116000119p:plain


ナツメ「こうして落ち着いて会うのも久しぶりね」
エリカ「ナッちゃんのことはテレビや雑誌で見ておりますよ」
ナツメ「いい加減ジムの仕事をだれか代わってほしいわ。マナじゃ手を抜かないおかげで、リーグの規定を守ってくれないし」
エリカ「でしたらアイリスなんてどうでしょう♪」
ナツメ「……脳内までお花畑になったの?」
エリカ「あーんひどいですわー」
ナツメ「確かにあの子は天才よ。でもあの子はこっち側に来るなら、図鑑集めでもしておくのが適任でなくて?」
エリカ「わたくしの可愛い妹に旅なんてさせません!」
ナツメ「どの口が言うのかしら……」
エリカ「アリスはアリス、アイリスはアイリスですわよ」
ナツメ「はいはい。ところで、伝えなくて良かったの?どうしてグレアット達が選抜されたのかって理由」
エリカ「……お伝えしたところで無意味ですもの」
ナツメ「簡単に切れるような縁ではないでしょう?」
エリカ「散文的に、時には詩的に物語を繰り返して、歴史の境目まで来たときに……わたくしが遺しておきますわ」
ナツメ「……そう。エリちゃんの自由だもの、とやかく言いやしないわ」
エリカ「ナッちゃん…………接吻しましょ?」
ナツメ「嫌。妹のお仲間さんの悪い癖ばかり影響されてないで、少しはアイリスの体でもいたわってあげたら?あのままじゃあの子過労死待ったなしよ」
エリカ「わたくしのお顔が毎日見れるだけで充分な癒しでしょう」
ナツメ「本気で言っているのなら、今すぐにでも私が引き取るわ」
エリカ「奪わないで!この泥棒猫!!!」
ナツメ「イラッ☆ちょーっと、ツラ貸しなさい♬」
エリカ「そーんなこわいかおをなさっても、わたくしのくりあぼでぃーの前では通用しなくってよ」
ナツメ「ぷぷっ……」エリカ「くすっ……」
ナツメ「本当飽き飽きしないわ。それで……この舞台はもう終幕を切って落とされるかしら?」
エリカ「あら。どうしてわたくし直々にカガリとホムラへトレーニングコーチを頼みに行ったと思って?」
ナツメ「……本当飽きないわ。貴女が辞退しなければ、私以上に優秀なエスパー少女だったというのに、損な生き方しかできない子ね、エリちゃん」
エリカ「華は貴女にこそ相応しいと思ってよ、ナッちゃん」

~~~

タマムシ・アイリス宅リビング


モンスメグ「ただいマンボウ☆あれ、あいりすたんは~?」
6号「おかえリス。アイリスさんでしたら、マグマ団の方と実戦訓練中ですよ」
ビアンカ「むにゃむにゃ……」
グレアット「あらビアちゃん、風邪ひいちゃいますよっ。ま、いっか

16ばんどうろ・草原

カガリ「……チロン……オーバーヒート……!」
傾世元禳の異名を持つカガリが、チロンと呼ぶ(正式なニックネームは”チロンヌㇷ゚”)ただ一匹の相棒である妖かしの女狐・キュウコンへ命令を送り、チロンは強力な炎のエネルギーを九尾に集めていく。

f:id:Alice_Wreath:20211116005004j:plain

チロンヌㇷ゚「あはぁん♡五火七禽扇よぉ~♡」
チロンヌㇷ゚の オーバーヒート!

アイリス「フルーラ、エアロブラストですの!」

f:id:Alice_Wreath:20210918211954p:plain

フルーラと命名されし、大海と生命の女神・ルギアが旋風状に竜巻を集め巨大な渦を形成しチロンヌㇷ゚へとぶつけていく!
チロンヌㇷ゚「きゅぅ~ん」
急所へと直撃したチロンは、そのまま仰向けに飛ばされてなぜかセクシーなポーズを取って倒れる。
ホムラ「バット!どくどくのキバ!」
アイリス「わ、しまっ……!」

f:id:Alice_Wreath:20211116010620p:plain


連戦無敗たるホムラのバットこと、サキュバスとのハーフである特殊な混血種のゴルバットがエアロブラストを繰り出して生まれた大きな隙を狙って、猛毒の牙を剥き出しにしてフルーラの首筋を噛んだ!
バット「か~ぷっ♡」
フルーラは もうどくをあびた!
せいめいりょくを うばわれた!
いちげきひっさつ!

フルーラ「く。カルマの友よ、我はこれまでのようね……」
アイリス「やー、フルル~」
ホムラ「ったく、だから言ってんだろ。大技は当たってもスキがでかいんだ、まだ敵が近くに残ってる状況で打ったら自分の首を絞めるだけだっての!」
ぽりぽりと髪を掻きながら、バットを近くへ寄せながらアドバイスを送る。
カガリがフルーラを心配するアイリスのもとへぬるりと近寄ると、挨拶するかのような軽さでアイリスを抱きしめてエンゲイジする。
カガリ「かわいそう……ハグハグ……♡」
アイリス「くふふ……カガリスキィ……///」
その一部始終を心底関心なさそうに、怪訝そうな険しい目つきでカガリに対し諭す。
ホムラ「おい、カガリあんま甘やかすな。オレたちゃ金もらって引き受けてんだ、結果残さねえと親父にどやされちまう」
親父ことマグマ団のボスであり、孤児だったこの2人を引き取って家族同然に育て上げてくれたマツブサの名を聞いて、アクロバティックにさっと元のポジションへと飛び戻るカガリ
カガリ「……パパに……怒られちゃうノは…………フィアー、ダメ……でス」
しょんぼりとしながらも、チロンの尻尾を撫で巻き付けながらじゃれるカガリ

アイリス「だってー、大技を見たら大技で返したくなるのでして!」
ぷくーっとほっぺを膨らませて反抗するアイリス。そんな駄々っ子のような様子を見かねて、ホムラはぐったりとした様子でバットにもたれながら
ホムラ「馬鹿野郎、そんなんだから宝を持ち腐れさせちまってオレのバットに一回も勝てねえんだぞ。嬢ちゃんはポケモンに頼りすぎだ、もちっと状況判断以上に戦ってる相棒の姿と動きをよく見な」
カガリ「…………ホムラ、アイリスは……ヤローじゃなくて…………ガール……」
ホムラ「揚げ足取んなくていいんだっつーの!ああくそ、手のかかる妹がもう一匹増えちまった気分だ。もう一か月くらいになるってのに、全然進歩しやがらねえ」
アイリス「お兄さんの教え方が悪いに一票ですのー」
カガリ「…………ですの……多数決ゲームによって……ホムラ…………失格」
ホムラ「だーーーっ!!嬢ちゃん家、襲撃してやろうか!!」

わいのわいのとトレーニングを中断して談笑しているところに、居合切りの木を打ち破ってひとりの少女が間に割って入ってきた。
アイリス「誰ですの!」
いち早くその気配に察知したアイリスが影の方向へ振りかざす。

f:id:Alice_Wreath:20211116013020j:plain

セキチク新ジムリーダー・アンズ

くノ一をイメージした忍び装束を纏いし少女は、四天王となった父親のキョウに代わって新たにセキチクジムのリーダーを務める新米のアンズ。
名前こそ聞いていたが、実際に対面するのは初めてのことだった。
アイリスはおずおずと近づくが、ホムラとカガリが念のために片腕をそれぞれ広げてそれを制止して前に立った。
アンズ「その警戒心やよし!戦いのイロハを分かってるね、感心歓心!」
ホムラ「誰だいお嬢さん」
アンズ「アタシはセキチクジムのジムリーダー兼カントー治安維持団体の情報屋、アンズだよ!」
カガリ「…………知ってる…………?」
アイリスに向けて目を合わせるカガリ
こくりと頷くと、エプロンドレスの裾を両手でたくし上げて挨拶をする。
アイリス「お姉様から名前だけは聞いておりまして。ボクはアイリス、お見知りおきを」
アンズ「知ってるよ!だからこうやってニュースを伝えに来たんだから!」
ホムラ「ニュース?」

アンズは笑みを消し、業務モードの顔に化けると深刻そうかつ淡々とニュースの内容を早口で話していく。
アンズ「今朝突然パソコンのボックスが使えなくなったんだ」
アイリス・ホムラ・カガリ『!』
アンズ「原因は現在調査中。当のマサキとは一切の連絡がとれず、全トレーナーの混乱を防ぐため地方内でのポケモン勝負を当面禁止とする。以上がお父様からの伝言」
アイリスはその報告を受け、対応については納得した面持を見せながらも原因が掴めず困惑した顔色で俯く。
アンズ「じゃ!後はよろしく!」
ホムラ「おい待てよ!ホウエンはどーなってんだ!…………ち、そそっかしいお嬢さんだぜ。おい、嬢ちゃん。心当たりはあるか?」
ダメもとながらこういったイレギュラーの状況には強いアイリスへ訊ねてみるも、アイリスはお手上げといった具合で首を横に振りながら両手を開いてみせる。
アイリス「分かりませんわ、マサキは謎多き人物ですもの。どうやってうゅみの遺伝子を弄ったのかすら見当もつきませんし」
ホムラ「そうか……とりあえず今日のトレーニングは終わりだ!この問題が解決するまで一旦休止とする!カガリ、帰るぞ」
カガリ「……もし…………チカラが必要なら……イって…………ちゅ」
お別れのキスを送ると、ホムラと一緒にバットの背に乗って帰還していく。
アイリスは足早に自宅へと駆け抜けていった。

~~~

※ここからアイリス目線で物語を進行していきます。
三者目線はここまでです、お疲れさまでした。

タマムシ某所・アイリス自宅ー

ボクはぱたぱたとよそに目もくれず、旧マンションがあった敷地に建つ自分のハウスへと足継ぎ、勢いよくドアを開けると大声をあげ仲間へ叫びましたの。

アイリス「集合ですの!緊急事態でしてよ!!」
まだ午前過ぎということもあって、タイミング良くグレアット、モンスメグ、6号、ビアンカの4人が揃っていましたわ。都合のいいことにうゅみまで隠れていたので探す手間が省けました。ボクは5人に向かってさらに続けて報告をしていきます。
アイリス「マサキのボックスが使えなくなったとのご報告!原因はお姉様がたが調べておられるようですけれども、マサキとコンタクトが取れないみたいですの!」

6号「なるほど……それが何か問題でも?」
ビアンカ「大アリでしょ、アホのお姉さん」
6号「阿呆!?」ガガントス
モンスメグ「ボックスが壊れちゃって全国のトレーナー生命危機!え、ここから入れる保険があるんですか!?」
ビアンカ「白ボンは入れないと思うな」
グレアット「アイリスさん!朝のスクランブルエッグ、チイラのみだけ残したでしょうっ!」
ビアンカ「今言ってる場合かー!」

だ、駄目ですわ……。この子達、ボク以上に世間を知らない以上にヒトへの関心が無さすぎますの……ビアンカには苦労をかけますわ。
アイリス「これが無ければ、アイスとスチルを呼び出したりウォルルを連れていくことが困難となりますの」
6号「この難事件、解きましょう!」
モンスメグ「フラグオン!マサキイベント開始だー☆」
ビアンカ「変わり身はやっ!あとメグさんメタい!それじゃモンス・メタです!」

グレアット「ビアちゃん、気が散るので黙っていてくださいっ」
ビアンカビアンカが悪いのかなこれー!?」
およよと涙目で泣きつくビアンカの艶やかな白き髪を手のひらで優しく撫でて慰めてあげながら、まずは状況の整理をつけることにしました。おや、ビアンカ少しだけ体温が上がってますのね、風邪の前兆かしら?

アイリス「近頃、なにか変わったことはありまして?」
聞き込み調査は基本ですわ、まずは身内から洗っていきます。
モンスメグ「うーん。あいりすたんのしゃべり方がなんだかムズムズすること☆」
アイリス「今言うことでして?!」
6号「まあ確かに、慣れればそうでもないですけど。やっぱりあの荒々しい口調がアイリスさんらしいと言いますか」
ビアンカ「だめだよー、お嬢様ウェイトレスとして需要あるんだから!」
グレアット「私は、アイリスさんが毎日ご無事でしたらそれに越したことはありませんのでっ」
な、なんだか議題がボクの話し方についての会議になっていますわね。
お姉様の凛とした佇まいを真似しているだけに過ぎないのですけれど、意外と賛否両論でしたのね……。ナツメお姉様にも後でお伺いしようかしら……。

うゅみ「アイリスはどうしたいのよぉ?」
突如として隣に出現されたうゅみにちょっとびっくり。面白そうだと思って完全にからかいに来ていますわね、この子ったら……。

アリスとして振る舞っていた時の自分を思い返すと少し恥ずかしくなってきたので、ためらいがちに流し目で仲間へとお気持ちを伝えました。
アイリス「ボクは……このままが、良いですの……」

f:id:Alice_Wreath:20211116021717p:plain

KISS Official


グレアット「はうぁ~~~~~~♡アイリスちゃん今日はグレアお姉ちゃんとおねんねしましょうね~っ♡」
言葉遣いだけでなく、真っ赤な瞳までもハートにして欲望を曝け出すグレアット。流石にボクであってもドン引きですの……。
6号「いいえ、私とエクスプロージョンな夜を過ごすのです!」

モンスメグ「んー、じゃあメグちゃんは一緒にお風呂☆はいったげるね♬」
グレアット・6号「!!!!!!」

その手があったか!みたいに目を血走らせないことでしてよ、お二人。そもそも貴女がたは仲が良いのですから、貴女がたお二人で入浴してはいかがですか?
ビアンカ「え、えと。えと、ビアンカはお姉たんといっつもお昼間一緒に働けてるから、それだけでいいかな……」
いじらしく照れながら自己主張をしないビアンカ。ボクは、彼女の手を取ってあげてにこりと微笑んで差し上げます。

アイリス「ビアンカには普段から先輩として習っていますわ。たまには一緒に寝てもよろしいですの」
ビアンカ「お姉たん……!……(どやあああああああああっ)」←悪い顔
モンスメグ(コロス★)
6号(泣かしたろ)
グレアット(6分ごとに指の爪ひとつずつ剥がしていって、1時間タイマーにさせてやりましょうっ♬)
うゅみ(一人だけ格が違うわねぇ)

閑話休題。ボクはぽんぽんと両手を叩いてみんなの意識を戻すと、話の議題をボクのことからマサキのボックス怪事件へと戻していきますの。
アイリス「お話を遡りますわよ。ポケモンに関することで、変わったことはなくって?」
モンスメグ「
1,バグ系の裏技を使って道具の「やめる」より下に行けるようにする。

2,ハナダシティの洞窟へ行く。
3,エスパーポケモンを一番はじめに置く。
4,道具の83番目でセレクトを83回押し、Bを押して元の画面に戻す。
5,ラッキーが出てきたらポケモンコマンドでエスパーポケモンを選びAを押す。
6,逃げる。
7,道具の11番目でセレクトを1回押す。
8,戦闘に入る。
9,サイドンが出てきたら、たたかうコマンドでいらない技でセレクトを押す。
10,サイドンを瞬殺する。
11,ポケモンセンターに行ってポケモンを預ける。
12,1~11をもう一度、別のエスパーポケモンを使ってする。
13,2匹をパソコンから引き出し1番目と6番目に置く。
14,道具の12番目でセレクトを押す。
15,戦闘に入る。
16,ポケモンコマンドで6番目のポケモンでAを押す。
17,逃げる。
18,道具の12番目でセレクトを押す。
19,戦闘に入る。
20,ポケモンコマンドで1番目のポケモンでAを押す。
21,逃げる。
22,道具の12番目でセレクトを押す。
23,1番目と2番目のポケモンを入れ替える。
24,戦闘に入る。
25,ポケモンコマンドで6番目のポケモンでAを押す。
26,野生ポケモンの息の根を止める。
27,6番目のポケモンが《いしへび》になっている。

f:id:Alice_Wreath:20211116032918p:plain

★☆《いしへび》完成☆★


ビアンカ「Why?」
ああ、遂にビアンカのツッコミがB級洋画の三枚目キャラのように……!

とにかく先ほどから入ってくる無駄な情報が多すぎてパンクしてしまいますわ。
ボクは助けを求めるように、流石に変なことを口走らないであろうと期待して6号に視線を送りました。
6号「んーと。そういえば、ミツルさんのラスピアスってポケモン……気になりませんか?」
ラスピアスとは、一年以上前にミツルとホウエン地方チャンピオンロードでお手合わせした、スピアーとは別のコクーンの進化形態のことです。
鋼の騎士道精神を持った、ご立派な槍使いの蜂でしたわ。まぁ、グレアットってば虫ケラ呼ばわりした挙句に完膚なきまでに燃やし尽くしてしまいましたが。

f:id:Alice_Wreath:20211117021107p:plain

グレアット「ああ、そういえばいましたねそんなのっ」
アイリス「口を慎みなさい、グレア。確かに6号の仰る通り、滅多に見かけることのないポケモンでしたけれど、それがどうかなさって?」
6号「あぁいえ、案外私たちが知らないだけで世界には新種のポケモンが他にもいるのではないかと思っただけです。財団の元施設を壊して回っている時にも、見たことのない形を模したアンノーンが壁画にいたこともありましたし……」

顎に手をやって、ふむふむ一人で頷きながらいつになく真剣なお顔をなさる6号。
奇形のアンノーンというお話も大変興味深いですこと……ですが、彼女の推測する通りまだ見ぬ地方だけでなく、灯台もと暗し。この地方にもまだまだ隠された神秘がおありかもしれませんわね。

モンスメグ「おニューのポケモンちゃんに、銀次郎の失踪!点と点が小惑星、ぶつかって溶けた存在感☆」
銀次郎?ええと、マサキのことでしょうか。最早それ以外の言葉は電波に乗って毒を浴びたおかげで解読できませんが……。
ぽかんとしているボクを見かねたように、チッチッと指を振るメグ。なんだか腹立ちますわね。
そう思っているうちに、メグはビアンカの腕をとってぎゅっと抱きしめると服装だけでなく顔も赤くするビアンカをおいて続けた。

モンスメグ「どーしてヒトにする必要があったのかな?」
ーーーそれは、触れてはならない核心を突いた発言でしたの。

ビアンカ「……」
その言葉一つで、すん、と感情がさざ波のように消えていくビアンカ
そして発言者からも、普段のおどけた口調は消え去っていた。

モンスメグ「あーたんだけじゃない。メグたちも」

トリックスターに振る舞う彼女は、神妙な面持ちでボクたちを見据えています。
グレアットも6号もビアンカも、口を噤んでただ目を合わせるだけ。
なにか知っているのではないかと、ちらっと目配せをしてみましたがいつの間にか、うゅみは姿を消していました。即ちこれはボク達が見つけ出さねばならない答えということ。

アイリス「そうですね……ですが、今はそのような」
遮るようにバンッ!とテーブルを両手で叩いて威嚇され、思わず体を反らせてしまいます。
モンスメグ「問題オオ\アリだー!!/なんだよ、あいりすたん!」
いつになく牙を剥いて押し進めるように話と主張に拍車を加えるメグ。
モンスメグ「ホウエンの子たちがヒト型なのって、太眉さんの話がホントならあっちで権威のあるオダマッキーが仕組んだエクスペリメントでしょ?みんなが当たり前みたいに受け入れてるのはこの際おいといて、だとしたら星の危機ってときにどうして姿を現さなかったのさ?」
非常に鋭い指摘。あくまでもセンリから聞いたに過ぎないお話ですが、確かにオダマキ博士からしてみれば、苦労して手掛けた実験体をみすみすと見逃すのはおかしな道理です、筋が通りません。どれだけ多忙であったとしても、様子くらいは見に訪れることでしょう。
モンスメグ「それに去年の一大決戦のとき、この地方の命運がかかってるっていうのにユッキーも連絡すらよこさなかった。おかしくない?笛のおじいちゃんは財団を嫌ってるし一線を退いてるからちかたないけれど、それでもカツラに前線へと行かせたわけだしマナマナも一緒にバトってくれた。でもユッキーは言っちゃったらエリカのサポートを影から徹底してカントーポケモンとかスナッチボールなんて研究もしてきたくらいのズットモなのに、あんな大事な局面で出てこないなんて」
メグの推測する通り、オーキド博士はお姉様への助力を尽くしてくれたいわば裏社会のキーパーソン。そうでなくともカントーを代表する権力者である以上、実権を握っていた者同士の決闘に赴くことは有り得た話でしょう。

ビアンカ「んー。じゃあビアンカがぱぱって心覗きに行こっか?」
さらりととんでもない事を言い出しますのねこの子ってば。ですが、確信を持てない現状でそのような危険行為を侵すわけにはいきませんの。
6号「落ち着いてください。それで、ふたりの博士の不可解な行動は掴めましたけど、それと今回のマサキさん失踪とどのような結びつきがあるんです?」
状況を飲み込もうと、話の整理とその行く末を促す6号。
そこに持ち掛けたメグではなく、グレアットが割って答えます。

グレアット「新たな研究……っ!」
ハッとした表情で、強張りながらも鮮明に張られた声が響きました。
新たな研究というワード。それはオーキド博士オダマキ博士か、いずれにせよ壊滅したロケット団とはまた別に暗躍の動きがありそうな雰囲気が漂います。
代弁されたその言葉に納得した表情で、
モンスメグ「銀次郎はチョー卍なプログラマーっても、そのマネーとか設備はおっきなバックがなきゃデータの海のまんまっしょ。そのバックを割らない限り、トレーナー達はパニクったまんまじゃない?」
そう結論づけて、最後の決定権をボクへと譲ってきました。

アイリス「情報が少なすぎますの。それにボクは修行中の身、お姉様の許しもなく動けませんのよ」
そう言い切った瞬間、背後から首筋へとちくりとした刺激が襲いかかって両腕を伏せてしまいましたわ。
グレアット「アイリスさんっ!」
6号「いったいだ、れ……」

エリカ「お行きなさい、アイリス」

所業の犯人はお姉様でした。
ボクはどうにか振り向くと、いつものような不敵に微笑んでしっかりと立ち振る舞っていました。
ビアンカ「エリカお姉さん!」
モンスメグ「今のはロゼリアのトゲ……メグじゃなきゃ見逃しちゃうね☆」

アイリス「お姉様……ですけども、手がかりがないと」
エリカ「この一連の事件はこの地方の未来に関わる問題ですわ。可及的速やかに解決しなければ、数多ものトレーナーが路頭に迷ってしまい確実に混乱してしまいます。実際問題、マサラへ出向いてもオーキド様の消息が攫めませんの。消えたマサキとの密接な関係性があると見越して間違いありません」
お姉様のおっしゃる通り、全国のパソコン通信が不通になっている現状を放置してしまえばトレーナー人生に多大な影響が及んでしまいます。
いずれ第二のロケット団が発足してしまう可能性だって否めませんもの。

エリカ「ですがマサキ本人は大掛かりなプロジェクトの為その場を動けないはず。彼の隠れ家をニシキから吐き出させましたわ、場所はここより遥か南に位置する諸島の集まり、ナナシマでしてよ!」
ナナシマ!
カントー本土から離れており殆どの通信が行えず気軽に通えないために、独自の発展と自然環境により、いわば陸の孤島と化したシーアイランドですわ。
エリカ「マチスに連絡船は手配させております、クチバから出港なさい。あそこはわたくしであっても、電波通信が届かないことと今回によるパソコンの遮断によって援軍を送って差しあげることは叶いませんが……唯一マナであれば来てくれることでしょう。わたくしも陰ながら応援しますわ」
アイリス「……お姉様」
ぽふ、と優しく陽だまりのような手のひらをボクの頭へ置くお姉様。
エリカ「気をつけなさい、わたくしや財団の観測からすら逃れた場所です。無法地帯となっていてもおかしくはありません。ですので……」
つん、とボクの唇へ人差し指を当てて髪を撫でてくださります。
エリカ「わたくしの真似事ではなく、アリスとしての言葉遣いで気丈に振る舞いなさい。相手から下に見られれば最後です」
アイリス「お姉様……ううん。わかった!ボクがやってきます!」

パン!自分で自分の両頬を思いっきり叩くと、リボンを結びなおし、やすらぎのすずを整え、リュックを肩に掛けると、みんなへと号令をかけた!

アリス「行くぞ!おまえら!」

モンスメグ「それでこそありすちゃん☆」
ビアンカ「どこまでもついてくよお姉ちゃん!」
6号「向かうところ敵なしですよ、ありすさん」

グレアット「付いて参りますっ、アリスさんっ」

~~~


f:id:Alice_Wreath:20211216220559j:plain



次回に続く!

Do You Have The Courage To Open The Next Door?