Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-桜花の虹彩- Part11

某日某所

ー先生。彼女の容態はどうなのでしょうー

ーまだ目覚めんようじゃのうー

ーそうですか……もう季節は周ったというのにー

新月と満月。同時に巡り合わせた時に居合わせてしまったからのー

ーああ。どうか今回でわたくしの願いが届きますようー

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キサラギが繰り出している竜はなんだ?まさかポケモンか?

……いや、ポケモンであればボクの能力が反応するはず。一切感知しえないということは、あれは超生命体。おそらくは、マサキが創った新たな生物か?

見れば、状況は拮抗していた。6号の幻影は通じず、メグの落雷は届かず、グレアの聖火は喰われていた。爆裂魔法を詠唱しようにも、あの超生命体に一切の隙を生じさせない機敏かつ熾烈な一撃一撃がその動きを封じているように見えた。
キサラギ「諦めな!オレ様の操るラグナロスにはポケモンなんざ旧時代の生物の攻撃は通用しねえんだよ!」

ラグナロス。
アレがそいつの名前だろうか。聖戦を意味する神の領域に踏み込むなんてとんだ化け物じゃないか。
どうにかしてこの状況を打破してやりたいが、あいつら3人とも完全に目がイっちまってる。ボクの声ですら届くかどうか……。
ビアンカ「ど、どーしよ」
慌てた様子で助けを求める。これじゃどっちが介抱されてるか分からない。
ホムラからレクチャーされた時を思い出してみる、しっかりとポケモンの動きを見ろ。目線を追え、一挙一動を見逃すな。一歩でも心が退いた方が負けると。
だからボクはあきらめるわけにゃいかないし、尚の殊更目を離さなかった。
必ずどこかに勝機はあるはずだ。
それに数でいえば3対1、戦局はこちらが有利に違いない。
ビアンカ(お姉たん、すごく必死に考えてくれてる。でもどうしてだろ、なんでこんなにも現実味がないのって……?)
グレアット「ダークファイアっ!」モンスメグ「ブレイジング☆ソウルビート!」6号「エクスプロージョン!」
おお、アレは三位一体の合体魔法!
正面・背後・上空から同時に叩き込まれれば、野末の土に還るに違いない!

キサラギ「甘ぇんだよ!ラグナロス、ぶちこわす!」
アリス「!?」
聞いたこともない技名、それも安直な動詞!その命令を下されたラグナロスは、まるでパルキアが如く目の前と周囲の空間をガラスのように割っていくではないか!
当然そんな空前絶後の攻撃に対応できるわけもなく、損傷を負いながら大地へと落とされる三人。
ビアンカ「お姉さん!!!」
キサラギ「おいおい。もう終わりか?ったく、まだ奥の手も見てねえってのに、大したことねえ奴らだな。ま!このオレ様が天才だということだ!!アーハッハッハッハア!!!」
余裕綽々と腰に手をやって大笑いするキサラギ。その笑い声は壁を反響して二重にこちらの耳へと響いてきやがった。

??「正気を失った者を斃した程度で油断か。つくづく救えん男だな」

そのとき、ホールへと繋がる唯一の通路から紫咲色の闇がオーラとなってキサラギとラグナロスを襲った!
ビアンカ「マナお姉さん!」
マナ「サイコショック!」

キサラギ「油断?なんのことだよ」
巨大かつ絶大なエネルギーがラグナロスの前で綺麗さっぱりと泡のように弾けた。
マナ「!!!???」
そして、マナに向かって彼女が放ったサイコショックと同等のエネルギーを持った漆黒の球体が跳ね返り、彼女は一気に端へと追いやられてしまった。
キサラギ「これはよ、余裕ってやつだぜ」
ビアンカ「むかつくー!」
キサラギミュウツー、てめえは元々破滅を願ったダークサイドの奴だからよ、ぜってえ奇襲を仕掛けてきやがると思ったぜ。だからあらかじめミラーコートを全面に貼らせておいたんだ」
ぼろぼろに破れた白衣を脱ぎ捨て、パーブルのカッターシャツ姿となってキサラギを強く見据えるマナ。だが、まだ戦意は喪失などしてはいなかった。

マナ「言ったそばからまた油断とはな」
マナの はめつのねがい!
ラグナロス「キシャアアッ!」
よし、いいぞ!マナもあらかじめ破滅の願いを未来に託していたのか!
そしてサイコショックを撒き餌として、本命を確実に急所へと当てた!
キサラギ「やるじゃねえか。ミュウから受け継いだ超能力なんかじゃなく、あくまでも自身が心の奥深くに宿した信念こそが最強の奥の手。アリス!感謝するぜ、あの時の願いを叶えてくれてよお!」
感謝される筋合いなんかないっての。
しかし、マナの登場で一気に戦況は変わった。隣のビアンカのねがいごとが間に合えば、マナですらも時間稼ぎとさせて回復した三人で戦わせてやれば、最終的に4対1と大きく有利に立ち回れる。
それに一番の収穫は、決してラグナロスは無敵なんかじゃないということがはめつのねがいによって証明されたこと。
……と思うことで、ビアンカはボクの心を読んで行動に出てくれる。
ビアンカ「…………うん!」
目を瞑って、両手を合掌し星へと導きを始めるビアンカ
……そういえば、うゅみがさっきから見当たらないけどどこに行った?

~~~

ニシキ「どうっすか?さしものミュウさんでも伝説の三鳥がトリニティクロスしたこのレイの前では、手も足も出ないっすよね」

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うゅみ(こいつをぉ、あの子たちぃ……特にファイヤーにだけはぁ、見せるわけにはいかないわぁ)
ニシキ「まさか単騎でネットワークマシンまで行きつくなんて、さっすがミュウさんと思ったッスけど、あっしが創り出したとは思わなかったっすよね」

マサキの後輩であるニシキこそが、ポケモンの遺伝子を基にして新たなる生命体を考案した張本人だった。
技術こそマサキに頼ったものの、ニシキはグレンでかつてフジとカツラが残した負の遺産を独自に研究を進めていき、ナナシマからすら遠く離れた異次元空間・24ばんななしまにて実験を行っていた。と、ここまでうゅみがニシキを口走らせて割らせた証言。

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ニシキ「そしてあっしが今の学会に代わって、新たなポケモンの世界を創り上げるんすっよ!もう二度とロケット団なんかに悪用されたり支配されないような、屈強な地方を育て上げるっす!このレイやラグナロスを使って!!」

レイの トライアタック!
うゅみは、そんなニシキの野望を聞くとくすくすと笑いが堪えられずに、くるくると宙を舞いながら笑い転げてみせる。
ニシキ「何が可笑しい!!!」
うゅみ「おかしいわよぉ。だってそれってぇ、結局アンタが新しいサカキになるってだけじゃないのぉ」
ニシキ「一緒にするなあ!あっしは平和を望むために、まずは付け入れられる隙を徹底的に消して!圧倒的な武力をもってこのカントー地方を守るだけっす!
安全とは、それを脅かすもの全てを排除して始めて成立するんすよぉ!!」
怒りに身を任せたニシキからレイが繰り出す強烈な属性攻撃を、軽々しくかわしていきながらすっとレイの懐にまで忍び寄った。
うゅみ「浅いわねぇ。あの子が今見ている夢よりも、ずぅーっと浅い」
うゅみの メテオビーム!
ニシキ「しまっ!ほのおにこおり、そして3重のひこうを兼ね備えたレイは岩タイプの攻撃が32ば……!」

~~~

うゅみ「あたしがあーんま出張りすぎちゃうとぉ、あの子たちの出演がなくなっちゃうのよねぇ」

~~~

ビアンカの ねがいごとがかなった!

6号「うぅん……あれ、なんだか体が軽い。こんなしあわせな気分で戦うなんてはじめてです」
モンスメグ「solti ola i
amaliche cantia masa estia
e sonti tolda i
emalita cantia mia distia~♬」
6号「その曲だと私、首から持ってかれるんですけど!?」
グレアット「……マナさんっ」
起き上がった3人は、先ほどまでと打って変わって平穏に満ち足りた、それでいて覚悟を決めた瞳をしていた。これもビアンカから成る癒しの願いによるものだろうか?

マナ「復活が遅い。ようやく目覚めたか、この舞台のキャスティングはお前達が主役だ。さっさとカタを付けろ」
そう告げるマナは棘のある言葉とは裏腹に、ラグナロスとの膠着状態に持ち込むために死闘を繰り広げ、既に瀕死寸前まで追い込まれていた。
正直なところ、ボクもハッキリとどういう戦いをしていたのか理解が追い付いていなかった。キサラギのいう旧世代ミュウツーと、便宜的に新世代ラグナロスの頂上決戦とでも形容すべきか?

キサラギ「決戦ーーー第二幕、だな」
キサラギは ラグナロスにかいふくのくす
モンスメグ「させません☆」
メグは電光石火の速さで俊敏にキサラギの手から回復薬を奪い取り、同時にマナへそれを投げてやった。
マナは たいりょくがかいふくした!

6号「フフ、もうとっくに解放奥義は準備できていますよ!
蒼ざめし永久氷結の使徒よ。威き神が振るう紫電の鎚よ。気高き母なる大地のしもべよ。大いなる暗黒の淵より出でし者よ契約者の名において命ず、我が前に連なり、陰の力と化せ!
エクスプロージョン!

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もはやその威力は、爆裂と呼ぶにはあまりにも生易しすぎた。
言うなればーー超新星ーー

ビアンカ「掴まってえぇ!」
その粒子の光があまりにも大規模すぎることを本能で感じ取ったビアンカは、ボクを強引に引っ張ると遥か大空へとフライハイしていく。
どういう原理か考えたくもないが、メグもまた、重傷のマナを抱えて空中を蹴って走りながら駆け抜けていた。
グレアット「いけません!島ごと崩れ落ちるかもっ……!」

エクスプロージョンによって、文字通り島は半壊。
だが、なぜか、どうして、やはりというべきなのだろうか。
研究施設は、ほとんど崩れてなどいなかった。
急いで彼女を回収するため、戦場へと戻るとキサラギとラグナロスは倒れていた。
6号も、満足げな表情で伏せていやがった。
アリス「……ちょっとやりすぎじゃないか?」
さすがに不安になって、ライバルの顔を覗き込むとその目は死んでなどいなかった。
キサラギ「あー、くっそ……今度こそ実力で負けちまった」
ラグナロスに目を向けると、それがなんとも目を疑いたくなる様子だった。
ただ倒れているだけではなく、身体が少しずつ空中へと光の粒子のように消えていくではないか。
いったい、どういう体の構造を……?
グレアット「アリスさんっ」
ぽんと肩をたたかれ、聞き慣れた声がするほうへ振り向く。
ビアンカ「やったね!」
モンスメグ「功績が増えるよ☆」
やめい。
グレアット「さあ、障壁も無くなったことですしこの施設をっ」

キサラギ「待て」
これから証拠隠滅と事件解決に図ろうとしたところを呼び止められる。
6号をおんぶしたメグが、怪訝そうにキサラギに返事を返す。
モンスメグ「タイムイズマネー☆さっさと黒幕を引きずり出して名探偵アイドルがぱぱっと」
キサラギ「ここに居るのはマサキの後輩だけだ、それにあいつ程度じゃてめえらに歯が立たねえだろうよ。望みの男はいねえぜ」
アリス「……詳しいな」
キサラギ「このラグナロスもニシキからさっき貰った実験体にすぎねえ。それにあいつは研究者の端くれ、きっと今頃ミュウあたりが潰してんじゃねえか?」
グレアット「うゅみちゃんっ!」
道理でうゅみを見かけないと思ったよ。あらかじめこうなることを見越して、二手に分かれて単独行動してくれてたってことか。
6号「うーん……だったらマサキはどこに」
キサラギ「ってゆーかよ、フロア・ファイヴがあるオレ様はともかくアリス、お前どうやってここに来た?」
モンスメグ「マチス司令官であります(`・ω・´)ゞ」
…………フロア・ファイヴ?
そんな名前が飛び交うってことは、もしかしてここは……。
ああ、そうだ。そもそもナナシマって名称なのに24ばんななしまってどういうことだよ。ナナどころか三倍以上じゃねえか、なんならここには何もない島。
とすれば、ここはいわば現世から隔離された場所。いわば異次元。
そんな次元のはざまに、普通の船なんかで来れるわけが……。

キサラギ「ハハッ!……なぁアリス、何でお前マサキを追いかけてるんだ?」
アリス「え?そりゃ、マサキが……マサキがこの事件の引き金で」
キサラギ「なんの事件だよ」
アリス「……………………?」
なんの、事件?
決まってるじゃないか、それは……エリカお姉様から……

??????????

ボクは慌てて周りを見渡した。
グレアットも、モンスメグも、6号も、ビアンカも、ボクを見つめて微笑んでいる。
ああ、そうだ。こいつらが笑って過ごせればそれでいいんだ。

…………

マナはどこにいった?
いくら振り向いても、見つからない。気配もない。

うゅみとはいつ別れた?確かに船の中ではいた気が……いや、見かけたか?
最後に会ったのはタマムシシティじゃなかったか?

というか、カルマはどうした?
あいつに至っては、タマムシから姿すら見せていない。エリカお姉様のお仕事に付き合わされているんだったっけ?

キサラギ「~~~~~~」

こいつこそ、フロア・ファイヴなんて代物はとっくに回収されて破棄されたんじゃなかったか?
待て。それはどうとでも説明がつくとしても、なんでこうしていきなりここに現れた?
何のために?ただボクと戦いたいだけだったらこの状況じゃなくていい。
あんな訳のわからない生命体でなくとも、こいつには相棒のピジョットがいる。

ーーーというか、こいつはキサラギという名前か?ーーー

いつ最初に出会った?
22ばんどうろで、ゆんと再会したとき。
ゆんと再会?
ゆんとは、とっくに別れを告げたはずじゃないか。
どうしてあの時、タイミング良く、まるで都合よくボクのことを慕ったままの姿であの場所にいたんだ?
というか、ボックスから逃がしたのだ。直接あの場所で逃がしたんじゃない。
ボックスから逃がしたポケモンはどうなる?

永久にその個体とは出逢えない

つまり、あのゆんは……ゆんであってゆんじゃない。
そしてそれまで脈絡もなかったこいつが、急に突然出てきやがった。
あの試合はどうした?
気が付いたら一瞬で、ゆんが勝利を収めていたではないか。
だが、その後のポケモンリーグじゃピジョット1匹にうゅみやマナですら到底敵わなかった。もしあの時、エリカお姉様が来ていなければ……











都合が良すぎないか?










そして、ホウエン地方に出向いた際。

うゅみは居たか?カルマは居たか?
いいや、二人とも最初はいなかった。
それに、キサラギは一度も姿を見せなかった。
なぜ?
なぜか?
なぜなの?
なぜなのか?

答えは明白。都合が悪かったから、ただそれだけだ。

ゆんが一人で斃したにも関わらず、キサラギより遥かに劣るであろうポケモンに苦汁を舐めさせられてたのだ。そんな折、こいつが出てきてゆんが一人でやっつけるとどうだ?

キサラギといえば、こいつはオーキドの子供だ。
しかしながらそこで思い出した疑問があった。
なんで、オーキドは一切姿を見せない?いいや、存在自体の知覚こそは出来ているのだが、実物はおろか写真も声も見ていない。というか、オーキドという名前自体、こいつ以外にはエリカお姉様しか口にしていない。
その理由はどうしてだ?

そして本題。
カルマは、うゅみは、そもそもグレアット達と交流をとっていたのか?

別にこの2人が居なくとも、成立しえた物語ではなかったか?

確かに交流をとっていないといえば嘘になるが、カルマから直接コンタクトを取るか、もしくはその場に居合わせてはじめてあいつらはカルマと接していなかったか?

なぜならボクがカルマと再会する日まで、あいつらはカルマの名前一つ自発的に出さなかったからだ。

それでは、うゅみは?

なるほど、うゅみが力を失ったことがきっかけでホウエンの旅は始まった。
しかし、ボクからうゅみの名を出さなければ、あいつらから、うゅみという名前は、いったいどこに登場した?
6号も、メグも、ゆんも一切出さなかった。ビアンカなど知る由もないだろう。

いいや、たったひとりだけ例外が居たじゃないか。

 

それも、カルマの時渡りの影響を受けていながら、

 

パラドックスを引き起こすはずでありながら、そこに平然と微笑む春が。

 

さらに、旅の最後に唯一、直接接触までした決定的な証拠つきでな!

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

どのくらい自問自答が続いた?

 


だんだんと、しかしゆっくりと微睡んだ自我が回帰してきた。

うゅみとカルマは、この2人だけは本物の記憶。
だから、ここにいない。
エリカお姉様は当然のこと。

残りの存在は、すべて、何もかも、例外なく!
ボクの物語に都合を合わせて出てきた存在という事実が残った。

もう一度目を開けば、そこは殺風景な景色ではなかった。
そして、エキセントリックな少女も。エクスプロージョンな少女も。サイキックウェイトレスな少女も。自信過剰なライバルも、そこには居なかった。

ああ。思えば、思えば……初めに会ったのもこの子じゃないか。
そしてこの子だけが、たった一人明確かつ鮮明に好意を示してきた。
ほかの存在は、自身の存在理由こそ示してきたが好意と呼べないだろう。

好意によく似た、消されたくないという一心。
夢か幻か妄想か、その具現化に意思が芽生えただけ。


夢日記ですの?ー
ーうむ。それもただの夢日記ではないのじゃよ。なんと眠りながらにして、いつの間にやら、監視すらすり抜けて朝になればページがうまれておった!ー
ーなんと面妖なー

ー更に不思議なことは、違う筆跡で2人の……いいや、よく似た筆跡で3人の文字が混在していてのー
ー……読んでもよろしくて?ー
ー無論じゃー






ー目覚めなさい。目覚めなさい。アリスー

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

グレアット「あら。アリスさんっ」
アリス「!……グレア……」
目の前には、、、姿のグレアットが佇んでいた。
どうしたことか、彼女から目が離せない。
いいや、正確にははっきりと自分の意思で身体が動かせるのだが、何らかによって操られているわけでもなく、かなしばりのような感覚でもなく、ただなぜか、ずっと見つめていたかったのだ。

グレアット「ちょっと、アピールしすぎちゃいましたっ?」
かわいらしく小さな舌を出してウインクする。
アリス「手記は書くべきじゃなかったんじゃないか」
グレアット「人の作品って、自分の手を加えたくなるでしょうっ」
アリス「そういうの世間じゃ厄介なんだぜ」
グレアット「なるほど……次からは気を付けましょうっ」
口元に手を添えながらふむふむと納得したように頷く。
アリス「次か……」
グレアット「ええ。アリスさんの次の情報をくださいっ。それが、私にとってのエネルギーですからっ」
アリス「だったら、この螺旋から抜け出してみる話なんてどうだ?脱出劇は盛り上がる展開だよ」
そう切り出すと、一瞬眉間をひくつかせながらもすぐにふふんと自信ありげに微笑んでころころと表情を変えながら返事を返してきた。



グレアット「でしたら私に任せてくださいっ!一度、人間の物語というものを脚本してみたかったんですっ♪」



それは

それは

それは

それは

それは


ボクは、この瞬間に気づいてしまった。
いいや、気づいていながらも気づかないフリをしていた。

彼女の客観的な言葉だけでなく、この物語にはーーーーー

彼女の正体を抽象的に表現した演出があったことを。

彼女自身が記した文章があったということを。



せめて!せめて今ならこれだけでも、この名前を……!

アリス「(グ(レアッ……ト……!))」

彼女の口は、牙を剥くようにして、得意げに笑っていた。

NEXT

「ねぇ。飛び降り自殺した人は、地面にぶつかる1ミリ前まで生きてるんだよね?1秒前まで、生きてるって意味では飛び降りてない人と同じ。でも、違う。生きてるけど、もう確実に死んでるの。」