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《Ride On The City》五人娘編 Part26

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キサラギ「ははは!ひゃはははっ!あーっははは!勝った!勝った!勝ったあああ!アリスなんかに負けるオレ様ではなーい!ま!ポケモンの天才・キサラギ様相手にここまでよぉく頑張った!褒めて遣わす!うひゃははははははーっ!」

\ちょーっと待ったぁ!/

キサラギ「あん?なんだよ、せっかくオレ様が勝利の余韻に浸ってるっていうのに」
扉越しに鳴り響いた声に、ボクは顔を上げた。
そして、ポケモンリーグ・王の間の扉が開かれる。
本来四天王を全員認めさせなければ誰であろうとも入れない、いわば聖なる地だ。
そんなことを易々とやってのける人物など、
そして聞き慣れた声と諦めた時にかかるあの台詞。
ひとりしか思い浮かばなかった。ボクは、扉が開くや否や、その人物が見える前に声に出して名前を呼んだ。


アリス「エリカ様……」

エリカ「勝利の余韻には、まだ早くてよ」

 

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しゃなりしゃなりと、堂々たる歩みで近づくエリカ様。
キサラギ「あー、あれか?オレ様がこいつに勝って真っ先に来てくれたのか?ひゃはは!仕事が早くて助かるぜ、んじゃ早速幹部にでも……」
彼を無視して、ボクのもとへと寄ってきてくださった。
エリカ「あらあら、泣いていらしたんですの?お姉さんに抱いて泣きついてもいいんですわよ」
アリス「冗談はよしてください。……どうしてこちらへ?」
エリカ様のご登場に、脳をフルスロットル回転させ姿勢を正そうと膝を伸ばそうとするとスッと、肩に手を伸べられてそのまま見上げる形でエリカ様を見据える。
エリカ「正攻法であの方に勝利など、初めから期待していませんでしたわ。ですのでご安心なさって」
えぇ……。
最初から無理難題を押し付けてたんですかあなたは。
カルマ「かぐや姫かよ」
6号「悪魔ですね(その手を離せ……)」

キサラギ「おい!またそうやってそいつばっかり構うのかよ!」
エリカ「私がこうして直接駆けつけたのは、時代に選ばれし者を直接見に来ただけですわ」
キサラギ「へっ!だったらオレ様の時代到来だぜ!たった今こいつの主力をこのピジョット1匹で片づけたところだからな、もうオレ様に敗北はない!」
エリカ「そうですわね、真っ向勝負となればこの子に勝ち目がないことなんて火を見るより明らか。当然の結果と言えますわ」
だからなんでいちいちディスられてるのボク。
いやまあ確かにどう考えても勝てないんだけどね。あとエリカ様いい加減その手を離してください、なんか6号がすごい目つきで見てるんですけど。くろいまなざしでも覚えたのかな?
エリカ「ですので」

オリジナルのレインボーバッジを取り出すと、高らかに言い放つ。
エリカ「ここから先は、トレーナーとしてではなく財団として勝負をなさっていただきますわ」

キサラギ「財団~?」
アリス「それってどういう」
エリカ「アリス、あなたの戦闘中におけるどうぐの使用を解禁致しましたわ」

それはめっちゃ助かります。とは言っても回復薬をふんだんに使ったところでそもそもの実力のレベル差はそれだけじゃ到底埋まらないんだが……。
エリカ「すべてのどうぐの解禁ですの」
……すべて……?
今持っているどうぐ……回復アイテム……マスターボール……。
なかよしバッヂ……。
アリス・キサラギ「まさか!」
エリカ「さあ、善の心と悪の心を調和しなさい。お手持ちがいなくなった方の敗北としますわ!」
言い終わると、エリカ様はレインボーバッジを仕舞いバトルフィールドのそばへと動いた。そして、片手をまっすぐと空へ掲げる。
ボクとキサラギは、フィールドへ入った。そして対峙し合いながら、エリカ様の手が宙を切る。


エリカ「はじめ!」

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ボクは迷わずリュックからマスターボールを取り出した。
キサラギ「おい待てよ!うそだろ!?マジかよ!!!」
アリス「キサラギ。ボクはもともと、こっち側の人間だぜ」
そして、なかよしバッヂを取り出す。

《アクセス認証ーーー完了》
アセンブラを世界とリンク》
《任意コード実行を発動します》
《本当によろしいですか?》

キサラギ「させるかよ!」
キサラギもフロア・ファイヴを取り出す。

『アクセス認証ーーー完了』
『アイテムを世界とリンク』
『任意コード実行発動準備』
『本当によろしいですか?』

ーD983hへジャンプしますー
ーD123hへジャンプしますー

アリス・キサラギ「壊れろ、世界!」

アリスは マスターボールを つかった!
『アリスのボックスへハッキング。ニックネームを変更準備』
キサラギの手持ちへハッキング。メノクラゲニャースをセレクト準備》
頼む、間に合え!間に合ってくれ!
6号「いったいなにが起こってるんですか……2人とも止まりましたけど」
カルマ「さあ。ありゃ次元が違うんよ」

間に合った!
ボクのパソコンは遠隔操作までに時間がかかるけど、キサラギポケモンならすぐそこの腰につけているモンスターボール!回線の速さが違う!

『---アクセス違反---予期せぬエラーが発生しました』
02022AACへアクセス。
戦闘モードをノーマルエンカウントに切り替えます》

キサラギ「やめろお!」

やった!ピジョットをつかまえたぞ!
ピジョットのデータが あたらしくずかんにとうろくされます。
ずかんをもっていないため スキップされました。

エリカ「お見事な手さばきですわ」
キサラギ「ちっくしょう!オレ様の相棒が……ッ!」
アリス「これでお前の残りは1匹だな」
カルマ「うっわぁ」
6号「最低ですね」
おかしいなあ、味方のはずの外野からブーイングが飛び交ってるぞ。
そういえば、ボクの本業を見せたことなかったっけな。
あいつの使うフロア・ファイヴは手持ちのうち4匹をアクセス認証に用いる旧世代の認識改変アイテム。そしてそいつらは当然本来のポケモンとしては機能しちゃいない。
つまりピジョット無き今、あいつに残されたポケモンは実質1匹ってわけだ。

キサラギ「てめえだけは生かしちゃおけねえ!」
キサラギは リザードンを くりだした!
来るか!エース!

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6号「黒いリザードン!?」
カルマ「イロチじゃんよ」

いや、違う……。確かに見た目こそリザードンを模してはいるがアレはまさか……!
キサラギ「ひゃははははははっ!禁忌のポケモンを使えるのがてめえだけと思ったか!?こいつはてめえがオレ様のドアを改造しやがった時に捨てられてあった奴だ!」
しまった、おきみやげのつもりじゃなかったんだが邪魔だから逃がしたのがここで敵に化けて出るなんて……!
っていうかなんだったら、それだとあいつアネデパミですらねーじゃねーか!
リザードンを模したアネデパミを模した、
いゃゾ」Aじゃねーかよ!

しかしそれならこちらに分がある。あいつらの生態系をよーく知ってんのはこのボクだ。もういっちょマスターボールで保護してやって……。
ん?なぜだ、どうしてなかよしバッヂが起動しない?
エリカ「同じ手ばかり眺めるのもどうかと思いまして、先ほど育て屋様へ電話を入れておきましたわ」
なんでぇ!?
あなたは味方なんですか敵なんですか!?
キサラギ「なんかトラブってんのか?そいつぁ都合がいいぜ、時代の風はやっぱオレ様に向いてるってことだ!」
アリス「それはどうかな?バイナリエディター発動!」

なかよしバッヂを介さずとも、直接スタートアップすりゃいいんだよ!
キサラギ「あ!こら!オレ様がちょっと油断したスキに……くそう!」

0x02023550hにアクセス

アネデパミの戦闘不能が検知されました。
メノクラゲの戦闘不能が検知されました。
ニャースの戦闘不能が検知されました。
ゃパの戦闘不能が検知されました。
てヨめののの戦闘不能が検知されました。

エリカ「勝負ありましたわね」
キサラギ「……ばかな!ほんとに終わったのか!全力をかけたのに負けた!せっかくポケモンリーグの頂点に立ったのによう……もう、オレ様の天下は終わりかよ……そりゃないぜ!」
アリス「キサラギ。なぜ負けたかわかるか?」
ボクはメグとうゅみ、マナをボールへ戻しグレアットを直接運び上げて問いかける。
アリス「お前が、ポケモンへの信頼と愛情を忘れたからだよ」
キサラギ「……しょうがねえ、てめえの勝ちだ。認めたくねえけど」
背中を向けて、荷物を背負うキサラギ
6号「なんか気がついたら決着ついてたんですけど」
カルマ「あー……ま、案外。時代を決める戦いなんてこんなもんかもな」

ミッション15/15達成!
ミッションコンプリート!


エリカ「お疲れさまでしたわ。今更表彰も必要ないでしょう、タマムシへお戻りましょう」
アリス「……そうですね。帰りましょう、ボク達の街へ」
カルマ「なあ」
アリス「ん?」
6号「私たちはどうすれば?」
2人からの質問に、エリカ様へ目配せする。彼女はただ笑顔を見せるだけだった。
つまり、ボクの判断に委ねる。ということだろう。
アリス「6人まとめて、マサラタウンにあるボクの実家で待ってろ。財団の誰かに送ってもらうよう頼んどくから。あとで迎えに来てやるよ」
カルマ「りょうかーい」
6号「分かりました!あ、キサラギのお宅を爆裂させても?」
アリス「ダメに決まってんだろ。あそこはまだまだ使えるんだ、置いておけ」
キサラギ「今なんつった!?」

かくして、ボクとこの素晴らしい仲間との冒険は幕を閉じた。
いつの日か、伝説として刻まれることだろう。
エリカ様が勝手に。
















タマムシシティ
エリカ「アリス、お久しぶりに一緒にのんびりしませんこと?」
アリス「どうせ拒否権ないんでしょう」
エリカ「よくお分かりで。賢い子は好きですよ」
アリス「ナツメ様もご一緒だったりしません?」
エリカ「まあ、それはいいアイデアですわね」
しまった。自ら墓穴をあなをほるしてしまった。
あなをほる、ひでんマシンだったかもしれねぇ……。
エリカ「どうされました?」
アリス「いいえ。ただ、あいつらこれからどうしようかなって」
エリカ「私の管理下に置くよりもあなたの元で面倒を見らした方がいいでしょう。ただ、ミュウとミュウツー、それにセレビィは返却させてもらいますよ、あの子達には価値がありますので」
アリス「どうぞご勝手に。残りは価値なしって事ですか?」
エリカ「はい」
にっこり笑って鬼を斬る女・エリカ様顕現。
まあそう思われたほうが自由に幅が利くからいいんですけど。
エリカ「ゆん、と言いましたか。あのオニドリルもあなたが面倒を見てあげなさい。野生で自由を謳歌するよりもあなたの自由で飛翔している方が幸せですよ」
アリス「そう見えます?」
エリカ「あら、私に何か落ち度でも?」
アリス「ま、グレアと6号にメグ。それとゆんはボクが責任持ちますよ。なので彼女らには絶対不可侵ってことでひとつ」
エリカ「うふふ。では、それを今回の任務の報酬としましょう」
アリス「ありがとうございます」
ふと、エリカ様が立ち止まる。ボクも合わせて立ち止まると、彼女はタマムシシティの夜景を眺めて
エリカ「あぁ、素晴らしい景色ですわね。自然と都会が、善人と悪人が、ポケモンと人間が、心と心が調和しあう。素敵な世界が見えるようですの」
彼女の着物姿がライトアップに照らされ、綺麗な横顔が映える。
ボクは見惚れてしまう前に、ジムがある方向を向いて返答をした。
アリス「あなたが作ったんですよ」

エリカ「…………。そう、ですわね。そういうことにしておきましょう」

ぼそりと呟き、その言葉は耳に届かなかった。
アリス「え、いまなんて……」
思わずエリカ様のほうを振り向く。
エリカ「ーーー秘密です♪」
悪戯な笑みを浮かべて、おもてなしされてしまった。

最終回に続く
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