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《Ride On The City》五人娘編 Part25

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高鳴る鼓動が止まらない。
この扉の先に居る。倒すべき相手が。ラスボスが。
そして、最初で最後のボクが直接命令を下すバトルが。
今、幕を開ける。
恐れるものはなにもない、語ることはなにもない。
始めよう、これは。
ボクの物語だ。

ポケモンリーグー王の間ー

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キサラギ「よーっ、アリス!」
チャンピオンの座に立つキサラギが声をかける。
ロケット財団を立ち上げたエリカ様の下で研究のために財団の幹部となり世界に覇を唱えるオーキド博士、その血筋を継いだ孫息子・キサラギ
ボクと同じく、世界の認識をずらすことが出来るアイテム・フロアファイブを持ち、ゆんとの旅では認識改変を用いて苦しめてきた。
その実力から財団の特級幹部として地位も確立した男。
まさしく、このアリスのライバルだ。
キサラギ「オレ様は最高のポケモンと旅をしてきた。最高権力の財団で地位を手に入れた。最高峰のリーグで名声も手に入れた。最高のトレーナーだ!」
モンスメグ「さいこーさいきょー☆」
メグがボクの腕をとって、高く振りかざす。
キサラギはその様子が気に入らなかったのか、態度が豹変する。
キサラギ「なのに!認められたのはてめえ!エリカから可愛がられてるんのも、ポケモンから愛されてんのも、トレーナーから敬愛されてんのも、全部てめえだ!オレ様はてめえを許せねえ!のうのうとぼんやり過ごしてきただけのてめえがすべてを手に入れてることをよ!」
それは、恨みにも似た憤怒の言葉だった。
そこにはあまりにも高すぎるプライドと意地がひしひしと感じられた。
マナ「この男か?私と戦いたいというのは」
呆れたような目でキサラギを見ていた。
キサラギ「だから教えてやる!このオレ様が!せかいでいちばん!つよいってことなんだよぉ!」
カルマ「ご高説どーも」
6号「世界最強がだれか教えて差し上げますよ」
アリス「キサラギ。強さならくれてやる。けどな、ポケモンを粗末にすんのは許さない」
キサラギ「てめえが言えた義理かよ!てめえの方こそポケモンも、あまつさえこのカントーすらおもちゃ扱いしてんじゃねーか!」
それは、本当のことだった。
一般人には到底理解できないであろう、実験や禁忌に近いことに手を出し続け、その結果うゅみと出会い、財団にスカウトされ、今に至るわけだからな。
うゅみ「あんた喋りすぎぃ。最強っていうんならもっと堂々とどっしり構えなぁ」
キサラギ「ちっ」
グレアット「キサラギさん。あなたがこれまでどのような生き方を、経験・苦悩・人生を歩んできたかは知る由もありませんっ。ですが、間違いは正しますっ!」
キサラギ「わかった。ポケモンバトルで決める。結局オレ様達はポケモンバトルでしか語る道はねえんだよ!来いアリス!てめえの全てを否定してやる!」


15戦目・キサラギ

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手持ちデータ:UNKNOWN

キサラギ「羽ばたけ、ピジョットォ!」

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グレアット「レベル……100っ!」
キサラギ「おらさっさとミュウツーを出せよ」
マナ「言われずともそのつもりだ」
いうことを聞いたわけでも、挑発に乗ったわけではなく、これはれっきとした彼女の意志でありここまで付いてきてくれていた理由だ。
アリス「マナ、オーロラビームだ!」
マナ「私に指図をするな」
マナは はめつのねがいを
みらいに たくした!
キサラギ「あっそ、ピジョット、つばさでうつ!」
ピジョットの つばさでうつ!
光沢のある羽を広げ、威嚇すると同時にその広げた羽で風を巻き起こしマナへと風刃を切り付ける。
つばさでうつは所詮ひこうタイプの基本技だ、致命傷にはなり……。
グレアット「マナさんっ!」
マナの身体がしなるほどの風圧が起こっていた。
体勢こそ崩さなかったものの、浅くはない怪我を負っていた。
マナ「ふん。まるでそよ風だな」
マナの指先に極光が集まる。言葉では強がってはいるが、明らかに無事ではない傷だ。
微妙に指先が震えていることに気付くくらいには彼女は動揺している。
マナの オーロラビーム!
しかしこうげきは はずれた。
6号「え、どうしてですか!?」
地上にピジョットの姿は見えなかった。
キサラギ「当たるかよ、遅ぇ」
上。
ピジョットは、いつの間にか遥か上空で待ち構えていた。
そういえば図鑑で見たことがある、マッハ2で空を飛ぶことが出来ると。
マッハの次元まで入るともはやプテラなど止まって見えるレベルだ。
キサラギ「落ちろ」
ピジョットの そらをとぶ
マナは たおれた!
グレアット「マナさんっ!」
アリス「マナ!」
同時にマナの名前を叫ぶ。カントー伝説ポケモンの英雄・ミュウツーが、ピジョットに。それも一度も攻撃を当てることもなく散っていったのだ。
こちらの士気は一目で分かるほどに低下していた。
キサラギ「ひゃははは!ミュウツーを手に入れたっつーから、どんなもんか試してみようと思っていたのにとんだ雑魚じゃねーか!こんな奴のために必死になってたなんて笑えるぜ!」
その言葉に、飄々としているうゅみがプツン。と笑みを消す。
キレた。
うゅみ「あんたさぁ、むかつくわぁ」
キサラギ「ミュウのお出ましかあ!こんな雑魚の生みの親なんざ興味ねえけどよ。かかってこいよ!」
ピジョットは そらたかくとびあがった!
うゅみは そらたかくとびあがった!
カルマ「そらをとぶ合戦」
いいぞ!同じそらをとぶなら、後手が有利だ!
なんかボクの言うこと結局聞いてくれそうじゃないけど、一向に構わん!
キサラギ「甘ぇんだよ!」
ピジョットの たつまき!
うゅみは ひるんだ!
6号「空を飛びながら、別の攻撃ですって!?」
モンスメグ「ズルだズルだズルッグー!」
いや。そらをとぶから降下するタイミングはポケモンの意思ではなくトレーナーが決める。空中から攻撃する手段があるなら降ろさないのは有効な選択肢だ。
うゅみ「はぁ……だっるぅ……」
竜巻から地上に振り落とされたうゅみからは血が流れていた。
初めて見るうゅみの出血。
それは、ピジョットが。ひいてはキサラギが優秀なトレーナーであることを意味していた。
キサラギ「ぼさっとしてると落とされるぜ」
うゅみの リフレクター!
みかたは リフレクターで
だげきこうげきに つよくなった!
ピジョットの そらをとぶ
グレアット「いけませんっ!」
うゅみは立っているのがやっとだった。
そしてぼそりとなにか呟くと、こちらへ向けて声を発する。
うゅみ「もうあたしの時代は終わりよぉ。だからぁ、あんたらで新しい時代を築いてちょうだいねぇ」
うゅみの ひかりのかべ
みかたは ひかりのかべ
とくしゅこうげきに つよくなった!
キサラギ「ぐだぐだうっせんだよ、吹っ飛べ!」
ピジョットの つばさでうつ!
うゅみは たおれた!
ミュウ親子が傍らで敗北し倒れていた。
ピジョットには傷ひとつもつけられちゃいない。
覚悟を決めろ……!
ボクはここにきて、はじめて彼女達に命令を出す。
アリス「メグ!行ってこい!」
モンスメグ「あいあいー☆」
キサラギ「へー。ライコウか、ま。タイプ相性考えたらそれが妥当だよな」
引きつった口でほくそ笑むキサラギ
うゅみの言う通り、むかつく野郎だぜ。昔からよぉ!
アリス「メグ!レールガンに蛍火を乗せて、天に向かって穿て!」
モンスメグ「むちゃゆーねー!おっけー☆」
メグはレールガンを撃つ構えを取ると、ほたるびを自分ではなく雷に照らし強大な電気エネルギーが形成されていく。
ボクやキサラギ、仲間達の髪が逆立つほどに恐ろしく巨大なエレキフィールドが展開される。そして、彼女は叫び声を上げると施設の天井を突き抜けて、大空へとレールガンを放った!
キサラギ「あー?なんのマネだそりゃ」
キサラギが空を見上げた途端に、マナが残した《はめつのねがい》が天から星となって戦場に降り注ぐ。
だけではない。
その星は電磁を帯びていた。そう、これこそが狙い!
命中率の薄いでんじほうを、はめつのねがいに対して撃ち波状させることによって、必中と化したでんじほうの完成だ!
さらに、ほたるびとメグのロマンチックな夢まで特典付きだ。
アリス「焼き焦がせぇー!」
モンスメグ「ルインドリーム★レールガン!」
ピジョットに雷撃が直撃する。ひとたまりもないだろう、地面はクレーターのように粉々に粉砕され、足越しに全身へと痺れが伝わる。
6号「やりましたか!?」
カルマ「ばかおまえそれは」
煙幕が晴れ、次第にシルエットがはっきりと姿を現す。
そこには……平然と羽の毛づくろいをしているピジョットがいた……。
モンスメグ「うそうそー!?」
グレアット「そんな!完全にでんじほうが入ったのにっ!」
キサラギが悠々と語る。
キサラギ「タスキ巻いてるとな、どんな攻撃でも耐えられるんだぜ。知ってたか?」
盲点だった。いや、経験不足だった。
対戦においてもちものを持たせるのは当然のこと。
ピジョットは攻撃とスピードこそ優秀だが耐久に欠点がある、そこを補完させるためのきあいのタスキか……。完全に失念していた。
6号「ですが、あと一撃です」
キサラギ「そうだな」
キサラギは ピジョット
かいふくのくすりを つかった!
カルマ「あ」
モンスメグ「もー!やだやだやだあ!マジきしょいんだけどー☆」
アリス「回復してる間に隙が生じる!もう一発かませ!」
モンスメグ「もちのろんだよー!」
ダッシュして、レールガンを構えるメグ。
治療に専念している今なら当たる!
キサラギ「あーん?」
モンスメグの でんじほう
こうかが ないようだ……。
モンスメグ「ほえ?」
グレアット「いったいどうして……はっ!まさか薬についていたアレをっ」
キサラギ「察しがいい嬢ちゃんだな。なあ、絶縁体って知ってるか?」
よく見れば、ピジョットはガラスケースで身を守っていた。
あのケースはかいふくのくすりを入れていた代物だ、回復と同時にピジョットに被せていたのか!そして電気はすべてガラスに吸収されてしまい、ニュートラライズド化されちまうって寸法か。
キサラギ「お返しだ」
ピジョットの すてみタックル
モンスメグは たおれた!
ピジョットは はんどうでダメージをうけた。
モンスメグ「きゅ~」
6号「そんな、メグさんまで」
カルマ「……やるじゃんよ。イケ好かねえけど」
気が付けば、ピジョット1匹にパーティーの半分を崩壊させられていた。
しかもあいつの今のダメージは勝手に受けた反動だけ。
まさしく、絶体絶命の状況だった。
アリス「……カルマ」
カルマ「さすがにあの翼を受けきれねえじゃんね」
アリス「……6号」
6号「私がやってもいいですが、身体が持つか……」
カルマはそもそも相性の問題で搦め手が打てない。
6号はもう既に今日爆裂魔法を打っている。
こうなったらもう……。
アリス「グレアット。頼めるか?」
グレアット「頼られるのが、神の使いとしての務めですからっ」
太陽のように微笑んでくれた。
どんな時でも諦めない、挫けない、信じ抜く。
それが、彼女なのだ。
キサラギ「嬢ちゃんが最後の相手らしいな。つまり、嬢ちゃんを倒せばオレ様が勝者。官軍ってことだ!気合い入ってきたぜえ!」

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キサラギの瞳に炎が宿った。
それは、久しぶりに見た彼の闘争心だった。
グレアット、お前は……お前ってやつは……本当に不可能を可能に変えてくれるかもしれねえな。
グレアット「神様。私に啓示をくださいっ」
神様、か。悪くない響きだ。
アリス「ああ。ピジョットはとくぼうが低い!そこに付け込め、まずは火傷を負わせて焼き鳥を作ってやるぞ、せいなるほのおだ!」
指示を出すと一瞬でしゃがんで、お祈りのポーズを取る。
グレアット「愛の源である神よ、
限りなく愛すべきあなたを、
心を尽くし、力を尽くして愛します。
また、あなたへの愛のために人をも自分のように、
愛することができますように、
神よ、私の愛を燃え立たせてくださいっ
キサラギ「なんかの宗教か?あいにく、オレ様はオレ様が一番なんでなぁ!」
ピジョットの たつまき!
こうかは いまひとつのようだ
キサラギ「ち、まだあいつの壁が残ってんのかよ」
実はうゅみが最後に技を使ってから3ターンしか経ってないんだぜキサラギさんよぉ。スピーディな解決が仇になったようだな!
グレアット「Amen
グレアットの せいなるほのお!
ピジョットは やけどをおった!
カルマ「これで攻撃力半減」
6号「反撃の聖火です!」
キサラギ「ふーん、ちょっとはやるじゃん。嬢ちゃん、エースだろ?」
グレアット「エースとかリーダーなんて肩書き、あまり好みませんけれどっ……私がみんなを導きますっ!」
グレアットが幣をかざすと、背中の燃える翼も相まってさながら神聖的な行事を行っているような雰囲気に包まれた。
キサラギ「ちょっとは楽しめそうだぜ!ピジョット!」
ピジョットを はげしいひかりが つつむ!
アリス「あ、アレは……!」
グレアット「争いを楽しむなどもってのほかですっ。私の信仰で正しき道へとお迎えして差し上げましょうっ」
グレアットを はげしいひかりが つつむ!

  神

 の



グレアット「天にまします我らの父よ。
願わくは御名をあがめさせたまえ。
御国を来たらせたまえ。
みこころの天になるごとく、
地にもなさせたまえ。
我らの日用の糧を、
今日も与えたまえ。
我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、
我らの罪をも赦したまえ。
我らを試みにあわせず、
悪より救いいだしたまえ。
国と力と栄えとは、
限りなく汝のものなればなりっ

キサラギ神なんざいねぇ!オレ様が頂点だ!

グレアットの ゴッドバード
ピジョットの ゴッドバード

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1枚の羽根が足元に落ちてきた。
ボクはそれを拾い、じっと見つめる。
それは、赤く、朱く、紅く輝く美しい羽根だった。

グレアット「ごめんなさいっ……天は、御神体から堕ちた私を、お許しにはなりません、でしたっ……」
ぐったりと眠るように、安らかに。穏やかに。そっと倒れこむグレアット。
ピジョットも、空を満足に飛べないほどに羽をもがれ地上にへたり込んでいたが、まだ闘える様子だった。
ボクのあたまがまっしろになった。
終わった。

キサラギ「ははは!ひゃはははっ!あーっははは!勝った!勝った!勝ったあああ!アリスなんかに負けるオレ様ではなーい!ま!ポケモンの天才・キサラギ様相手にここまでよぉく頑張った!褒めて遣わす!うひゃははははははーっ!」

彼は顔を歪めて笑っていた。
勝利宣言と、けたたましい笑い声が頭に響く。
けれど、悔しいけれどあのピジョットに勝てる算段なんてない……!
もうだめだ……おしまいなんだ……。
涙をこぼしそうになる、その時だった。

\ちょーっと待ったぁ!/

次回に続く!
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