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《Ride On The City》五人娘編 Part22

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グレアット「ごめんなさいっ、私にばかりお薬をっ……」
アリス「なに言ってんだよ、それだけお前が貢献してくれてるってことなんだから。次も期待してるぜ」
グレアット「……はいっ、えへへっ」
かいふくのくすりはまだ12個もある。ほかの回復薬は15個をキープしたままだ、このまま順調に行けば有り余るくらいだ。
そう、順調に行ってくれれば……。
ふと蘇るゆんとの冒険の思い出。何度挫折したことか、何度涙を流し、絶望を見たことか。もう絶対に、あれだけは避けないといけない。
自由気ままでわがままなこいつらの、笑顔を曇らせたくないから。
グレアット「どうしましたっ?」
きょとんと、見つめてくるグレアット。
アリス「次の相手はゴーストのエキスパートだからな、お前が怖がらないかどうか」
グレアット「こ。こここ怖くなんてっ!あくりょーたいさんっ!」
どこからか取り出した幣をぱさぱさと振りかざす。
カルマ「いつまでいちゃついてんだ、はよ行くぞ」
モンスメグ「こわがりグレアた~ん」
うゅみ「マナ、あれが愛よぉ」
マナ「ふん」
6号「お幸せにー」
ボクとグレアットをよそに、さっさか先へ進みだす一行。
グレアット「ちょっとからかわないでくださいっ!」
紅潮させながら、みんなの間に割って入りだすグレアット。
……ああ、平和だな。

ポケモンリーグ・霊の間

お墓が立ち並ぶ不気味な空間が広がっていた。
しかし装飾は紫を基調とした毒々しいカラーリングであり、一層その異様さを引き立たせている。予想通り、グレアットはボクの手を痛いくらい強く握りしめてぴったりくっついて離れなかった。
今から真剣勝負なんだけどなー、しょうがない子やなー。

キクコ「あたしは四天王のキクコ。アンタ、エリカに可愛がられてるんだって?あの小娘、急に何をしでかすかと思えば全国を組織のモンにしおって、いい刺激になるよ全く」
アリス「キクコさんは、ロケット団とは無関係なんですか?」
キクコ「あたしゃ今更この年でどうこうする気はないよ。ワタルの奴は幹部気取りで乗り気だがね、まああたしは戦いの場さえ用意してくれればそれでいいさ」
ワタルさん財団職員なんすね、なんとなく読めてた。
キクコ「さて話はおしまいだよ。その子ら全員伝説のポケモンなんだろ?
なら、あたしを満足させてみな!」

13戦目:キクコ

使用ポケモン 特性 備考 習得技 
ゲンガー ふゆう Lv.54 シャドーパンチ あやしいひかり どくどく かげぶんしん
ゴルバット せいしんりょく Lv.54 あやしいひかり どくどくのキバ エアカッター かみつく
ゴースト ふゆう Lv.53 さいみんじゅつ ゆめくい のろい くろいまなざし
アーボック いかく Lv.56 ヘドロばくだん いやなおと アイアンテール かみつく
ゲンガー ふゆう Lv.58 シャドーボール ヘドロばくだん さいみんじゅつ あくむ

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キクコ「行ってきな、ゲンガー!」
してんのうの キクコは
ゲンガーを くりだした!
カルマ「ぼくがやる」
うゅみを制して、カルマがフィールドへ立つ。
カルマ「あの手のヤツは、隙を与えたら掌握されるんよ。ぼくが毒を以て毒を制す」
アリス「だとさ」
うゅみ「好きにやらせたらぁ」
だが、今回に限ってはカルマが正しい。壁を貼って交代させてる合間に混乱や毒を食らえばたまったもんじゃない。影分身を積ませちまったら絡める前に絡め取られるからな。さて、久しぶりのカルマの戦いだ。期待してるぜ。
キクコ「ゲンガー、かげぶんしん!」
先に動いたのはゲンガー。さすがは黎明期を支えた高速の呪詛師、身のこなしが違う。

 

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あいてのゲンガーはかいひりつがあがった!
カルマ「見えてんよ」
カルマの やどりぎのタネ

 

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よし、いいぞ。出だしは順調だ!
キクコ「ほっほう!あんたもそっちの戦術かい」
気が合うのだろう、キクコはカルマの搦め手に好印象を持っているようだ。
6号「ぐぬぬ
6号はゲンガーを見て憤り立っている様子だった、ああお前の爆裂魔法ニュートラライズド化されちゃうもんな、同情しておこう。
マナ「ふん。長引きそうだな」
モンスメグ「それがかるるんのやり方~☆」
キクコ「じゃけど、甘いっ!」

 

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グレアット「あれは、キョウさん秘伝のっ!」
6号「あの方、忍者だったんですか!」
うゅみ「べつに誰でも覚えれるけどねぇ。ふあぁ」
カルマは もうどくをあびた!
キクコ「じわじわと苦しむがいいさ」
カルマ「そいつはどうも。もっかい見せてくれる?」
カルマの アンコール!

 

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上手い!絶好のタイミングだ、これで次のゲンガーの選択肢は実質パスとなった。
キクコ「やるじゃないか」
ゲンガーはアンコールをうけて再びどくどく!しかし、カルマはすでに毒を浴びている!
カルマ「そんな同じ手ばっか見せんじゃねえよ」
カルマの いちゃもん!
ゲンガーは いちゃもんをつけられた!
6号「これで、かわりばんこにわるあがきモードに入りましたね、しかも与えられた技は意味のないどくどく。いわば自滅誘導モードです!」
なんじゃそのネーミングは。
あと説明ばかりに気合を入れるとかつてのグレアたんみたいになっちゃうぞ?
カルマは たべのこしでかいふく。
キクコ「見事なトリッキープレイじゃないか。だが回復よりどくどくのダメージが上回っていく、先に自滅するのはどっちかガマン比べと行こうじゃないか」
確かにキクコの言う通り、やどりぎとたべのこしでの回復は合計20、どくどくはターンを重ねるごとにスリップが倍となっていく。さらにキクコの手にはかいふくのくすりが見えていた、先に音を上げるのはどちらか明白だった。
カルマ「せいぜい強がってなよ。うゅみ、バトーン」
うゅみ「はいはーいっとぉ」
おお!協力プレイを嫌がっていたぼっちかるるんが、自ら連携を……!
成長したなあ、おねえちゃん嬉しいぞ。
キクコ「このタイミングの交代は悪手じゃろうて」
ゲンガーの どくどく!
うゅみは もうどくをあびた!
うゅみ「あぁー?」
うゅみは ラムのみで じょうたいいじょうがなおった。
まさかのラムのみ、大活躍の巻。
なんならボクもうゅみがラム持ってんの忘れてました、ごめんなさい。
キクコ「備えあれば憂いなし、か。うまいじゃないか」
うゅみ「これおいしいよぉ」
そっちのうまいじゃないと思うぞ、うゅみよ。
などとツッコミを心で入れていると、シャドーボールがゲンガーめがけて飛んで行った。
こうかは ばつぐんだ!
ゲンガー 戦闘不能
うゅみ「いっちょあがりぃ」
マナ「それでこそわが母」
キクコ「あんたたちのコンビネーション、把握したよ。行きなゴルバット!」
してんのうの キクコは
ゴルバットを くりだした!
うゅみ「んじゃ、貼って帰ろうかしらねぇ」
みかたは リフレクターで
だげきこうげきに つよくなった。
ゴルバットの かみつく!
こうかは ばつぐんだ!
アリス「!」
グレアット「うゅみさんに攻撃を、当てたっ!?」
それは初めて見るうゅみのダメージだった。
今まですべての攻撃をかわし続け、ひいてはミュウツー。もといマナのサイコキネシスまでも躱したうゅみが受けたはじめての被弾に驚きを隠せなかった。
キクコ「おやおや。足元がお留守のようだねぇ」
うゅみ「……油断したわねぇ」
うゅみの丸っこい瞳が、ギラリと鋭く光る。
油断などではない。ゴルバットの速さが、キクコの熟練された戦闘経験からくる的確な命令がうゅみを上回ったのだ。
マナ「あの老婆。できる」
血を引くマナも、初めて見るであろううゅみへ攻撃を当てたキクコとゴルバットを称賛していた。
脳裏によぎる。


ーーーやばい!ーーー


うゅみ「蝙蝠ぃ。その血をぜぇんぶ流してもらおっかぁ」
うゅみの シャドーボール
だが、まるで効いていなかった。

 

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ゴルバットの かみつく!
こうかは ばつぐんだ!
マナ「なぜだ!なぜ避けない!動かない!遊んでいるつもりか」
痺れを切らして、一喝を母へ飛ばすマナ。
うゅみ「……あたしは本気だよぉ」
その感情にまみれた言葉を耳にしたとき、ボクはまた勘違いをしていたことに気が付いた。
今まで勝手にうゅみのことを全知全能だと思いあがっていた、信頼しきっていた。
しかしどうだ、これまでの彼女の戦いを振り返ってみろ。
エリカ様との時は、エリカ様への気持ちがシンクロのブーストを起こしていた。
カツラとの時は、カツラの不甲斐なさと無意味な研究に憤慨し、ウインディを救うために翻弄していた。
そしてサカキ様との闘い。あれはマナへの娘を想う母としての愛、それが奇跡を起こした。
だが今は?
今、うゅみは何のためにこの戦場に立っている?
そう思い立ったとき、ボクの手はひどく震えていた。
サカキ様の言葉を思い出していた。

 


《度の過ぎた信頼は過信となって必ずどこかで綻びを起こすぞ》

 


アリス「きゃああああああああああああぁっ!」
ボクは叫び声を上げていた。
両手で頭を抱え、まるで憑き物を振り払うかのように首をぶんぶんと振りながら。
グレアット「アリスさんっ!?」
6号「どうしたんですか!」
カルマ「しっかりしろ」
モンスメグ「目イっちゃってるよー?」
マナ「……ふん」
その異様な光景に、キクコとうゅみも戦いを中断していたのだろう。
仲間たちに駆け寄られ、囲まれていた。
アリス「だめだ、だめだだめだ!だめなんだ!このままじゃ、なにもかもだめだああああぁっ!!!」
弱音らしい弱音をはじめて見せたかもしれない。
いつしか涙がこぼれて、抱きしめられたグレアットの胸で泣きじゃくっていた。
グレアット「落ち着いてくださいっ。あなたが取り乱してしまっては、私たちもどうしようもありませんっ」
優しく包み込むグレアット。
そこに、冷たく差し込むキクコの声が頭に響く。
キクコ「ありす!今まであんたがどう思ってポケモンと接してきたか知らないがね、ひとつ言っておこうか。ポケモンは戦わせるものさ、愛でるものでも集めるものでも無い、ましてやポケモンに全てを任せようだなんて考えが間違いだよ!さっきまで見ていたが、あんたは一回もこの子達に命令を与えちゃいない。全部この子達の意思だ。人と人同士ですら意思を疎通できないのに、人とポケモンが心を通わせるなんてとんだ夢物語さ!覚えときな、よしんばあたしに勝てたとしてもその考えのままじゃ殿堂入りはおろか、ワタルのガキにも適わないよ。一度見つめなおしてきな!」

胸に、脳に、心に響いた。
間違っていたのは、勘違いしていたのは、全部ボクだった。
全部ボクだったんだ。
グレアット「いいえ、違いますっ!」
グレアットがボクを強く抱きしめたまま、キクコへ反論した。
キクコ「あんだって?」
グレアット「確かに、あなたの言う通りヒト同士、ポケモン同士、ヒトとポケモンが心を通い合うのは難しいことですっ。その些細なぶつかり合いが、いつか大きなぶつかり合いとなって争いを巻き起こしたこともあるでしょうっ。でも、それでもっ!
アリスさんは、その不可能を現実に変えようとしてくれたんですっ!ただ命令を聞くだけじゃなくて、私たちを信じてくれて私たちに託してくれているんですっ!」
キクコ「とんだおとぎ話さね」
グレアット「今はまだおとぎ話かもしれません。笑われるかもしれません。ですが、私は。私たちは、アリスさんを信じています。信じあう思いこそ、私の力ですっ!」
もういい。もういいんだ、グレアット。
別にボクはそんな高尚な考えなんて持っちゃいない、ただ自由に勝手なお前らを見守ってるだけなんだ……。
キクコ「そうかい。そうやって、そいつを苦しめ続けるんだろうね」
グレアット「く、苦しめてなんてっ……」
キクコ「話はおしまいだよ。言葉も感情も、なんだって相手に伝えられるもの。あたしを理解させたいんだったら、まずは実力で超えてみな!」

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グレアットの腕が、ボクを離す。
ボクから離れて、翼が戦場へと飛んでいく。
ボクはただ、茫然とその様子を眺めていた。
6号「私が代わりにそばで見守ってあげますよ」
帽子を深くかぶると、新調したローブでボクを柔らかく包む。
どうして……どうしてそんな……。
カルマ「ボクらでカタをつけるじゃんよ」
うゅみ「あんたはそこで休んでなぁ」
前に立って、臨戦態勢を決め込む2人。
マナ「貴様は、こんなところで終わるようなトレーナーなのか?
否、わが母が認めた人間。ならばしっかりと構えていろ」
キクコを睨みながら、うゅみに傷を与えたゴルバットを見据えるマナ。
モンスメグ「べつにさー、難しく考えなくていいんだよ♪
戦いっていうのはね、絶対に誰かが傷つくもんなの。どっちが正しいとか悪いじゃなくってね、認められたものの言う通りにこのセカイは回ってんだよ。わかったかなありすちゃん☆」
珍しくまともなことを教えながら、ボクのほっぺにそっとライトキスをすると素早くフィールドの傍らに立つメグ。
6号「信じましょう、グレアを。信じてください、私達を」
ローブで巻き付きながら、ぎゅっと抱いて見つめる6号。
ああちくしょう。
ちくしょう、ボクは……無力だなぁ。
グレアット「行きますっ!」
キクコ「やってみな」

グレアットの じんつうりき!
こうかは ばつぐんだ!
ゴルバットは たおれた!
キクコは アーボックをくりだした!
アーボックの いかくで
グレアットの こうげきりょくがさがった。
グレアットの じんつうりき!
こうかは ばつぐんだ!
アーボックの ヘドロばくだん
みかたの リフレクターの こうかがきれた。
グレアットの じんつうりき!
こうかは ばつぐんだ!
アーボックは たおれた!
キクコは ゲンガーを くりだした!
ゲンガーの さいみんじゅつ!
しかし こうげきは はずれた!
グレアットの にらみつける!
ゲンガーの ぼうぎょりょくがさがった。
グレアットを はげしいひかりがつつむ!
ゲンガーの さいみんじゅつ!
しかし こうげきは はずれた!
グレアットの ゴッドバード
ゲンガーは オボンのみで たいりょくをかいふくした。
ゲンガーの ヘドロばくだん
グレアットの じんつうりき!
こうかは ばつぐんだ!
ゲンガーは たおれた!
グレアットは レベル51にあがった!
キクコは ゴーストを くりだした!
グレアットの せいなるほのお!
ゴーストは たおれた!

キクコ「ほっほう、大したもんだよ!」
グレアット「はぁ、はぁっ……!」
単騎で、残る4匹を圧倒したグレアット。
キクコは、賛美の拍手を送った。その拍手はこちらにも連動し、みなが一様に、マナも含めてグレアットへの拍手の嵐が巻き起こっていた。
ボクはその光景を、見ていることしかできなかった。
何が起きていたのか、分かっていなかったから。
未だに心は自責の念で埋まっていたからだろう。
グレアットを直視することなど出来なかった。

キクコ「顔を上げな」
近寄ってきたキクコに、襟元を掴まれる。
体勢を整えた6号はすぐ隣に立っていた。
キクコ「いいかい、あの子はグレアットといったか。グレアットに言うことはなにもない、あの子はあたしの自慢のポケモンをしっかりと焼き払っていった。言葉だけでなく、行動で示してくれたよ。あれはあんたへの信頼と信仰に近い気持ちから表われた力だろうね、あの子は強くなるよ」
アリス「……ありがとうございます」
キクコ「だがね!あんたはもっと報いないといけない。グレアットだけじゃない、ここに居る仲間達にね。この信じる力は言ってみれば愛だ、一点の曇りもない愛情さ。
あんたは何をしてやれる?これからそれを省みな!」
そう言い告げると、ボクから手を離し、代わりに手を差し出してきた。
無意識のうちに、その手を握り握手を交わす。
その手は、老いながらもただ老いただけではなく、様々な過去や思いを背負って繋いできた熱い掌だった。


ミッション13/15達成!

アリス「キクコさん。次に会うときは、もっと強くなってきます」
キクコ「精進しな、あたしがくたばるまでにもうひと試合といこうじゃないか」
ボクは、濡れた目を袖で拭うと6人の仲間たちに宣言をする。
アリス「お前ら、ここで待っていてくれ!」
モンスメグ「ほよー?」
カルマ「あー?」
6号「ありすさんっ?」
マナ「なんの真似だ」
アリス「ちょっとさ、自分を見つめなおしてくるわ。棄権って見なされねえようにお前らにはここで待機しておいてもらう。いいっすかね、キクコさん」
キクコ「勝手にやりな。あたしゃ負けたんだ、何も言わんよ」
うゅみ「はやく帰ってきなさいよぉ」
ママかお前は。
ボクは、みんなに手を振るとポケモンリーグの非常階段から外へと駆け出した。
この答えはボクひとりで見出さないといけない。
グレアット「あ、待ってくださいっ」
うゅみ「心配なのは分かるけどぉ、これはあの子の問題よぉ。信じてあげなぁ?」
グレアット「……わかり……ましたっ」

次回に続く!
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