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《Ride On The City》 五人娘編 Part17

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トキワ・22ばんどうろ
ボクは朝早くひとり、トキワシティの西に位置する草村へと入る。
ここは、思い出のゆかりが深い場所だから。
アリス「会いに来たよ」
ボクの声を聞くや否や、ばさばさ!と翼の羽ばたく音が迎えてくれた。
よかった、忘れていなかったみたいだ。

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アリス「ひさしぶり。ゆん」
ゆん「来てくれたんですね」
忘れもしない出来事。エリカ様から無茶ぶりを要求された任務だ。

アリス「ここにまた来る時があったら、会おうと思ってた」
ゆん「嬉しいです。もう何か月も来ないので、わたくしのこと忘れたのかなって不安になってましたよ」
アリス「ここんとこ中々時間取れなくってさ、ごめん」
ゆん「いえ。それに貴女の噂は風で聴いていますから。また旅をしているとかなんとか」
アリス「うん。面白い連中ばかりで退屈しないよ」
ゆん「ふふ。それなら良かったです、とても満足した表情なさってますから」
アリス「そっちから逢いに来てくれても良かったんだよ?」
ゆん「わたくしの役目は終わりましたから。それに今は未来を担う新しい羽根を大空へ羽ばたかせてあげることがわたくしが今出来ることですので」
アリス「そっかそっか。そっちも充実してるね」
ゆん「貴女が希望を作ってくれたおかげですよ」
他愛のない談笑を交わす。近況報告から、ゆんの日常にボクの旅の話まで。
一瞬で楽しい時間が過ぎていった。出会ったときは夜明けだったのに、もうすっかり空は青く雲が白く流れ、あいつらも起きてくる時間になった。

アリス「ゆん、最後にお願いしていいかな」
ゆん「はい。他ならぬ貴女のお願いであればなんとでも。あ、でも一緒に冒険は出来ませんよ。わたくしにはわたくしの生活がありますから」
アリス「それは分かってる。……ひとめ姿が見たい」
実は草陰に隠れたままゆんが出てこないのだ。
シャイな所も大好きなのだけれど、やっぱり寂しい。
ゆん「もう。少しだけ、ですよ?」

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アリス「ああ……綺麗になったな」
ゆん「あ、ありがとうございます」
彼女もまた、少女の姿をしていた。
財団の手が入ってるのだから不思議ではなかったけれど、
あまりの美貌と可憐さにうっとりしてしまう。
それにこの燃えるような赤い髪に、立派な翼……。
物腰柔らかな、穏やかな性格と口調……。
輝く翅を集めて、時間の空を渡った。
それは、瞬間風速最大ブーストだった。

ゆん「これっきりですからね……あら?」
ゆんがボクの後ろへ視線をずらして、何かを見つけた顔をする。
気になって振り向くと
グレアット「じーっ……」
…………。
見たことないようなジト目でこちらを見ているグレアたんがいました。
こらこらトレーナーにそんな目をしちゃダメだぞ☆
ゆん「お知り合い、ですか?」
アリス「えーっと……」
グレアット「アリスさんっ」
アリス「はい」
グレアット「起きたら姿がなかったので、町中を探していたんですっ」
アリス「はい」
グレアット「そしたら草むらのほうから声がしたので飛んできたんですがっ」
アリス「はい」
グレアット「どーゆーことか説明してもらってもよろしいですかっ?」
ゆん「あの。あなたはこの方の……えっと、グレアットさんでしょうか」
グレアット「あ、はいっ。どうして私の名前をっ」
ゆん「お話を聞いていましたので。恐らく私と似た格好をなさっている方がグレアットさんではないかなって」
グレアット「はいそうですっ、ということは貴女がゆんさんですねっ?」
ゆん「あら。私のお話もしてらしたんですね、うふふ。悪いお方」
そっちのけで事態が進んでいく。
いやー、すぐに仲良くなれていいことだねー。
さすがゆんゆんとグレアたん!
グレアット「さぁアリスさん、お姉ちゃんとお話の続きしましょうかっ」
にっこり笑いながら、ボクの襟元をぐいっと絞めてくる。
やめてくるしいですもっとやさしい子でしょキミは。

アリス「ち、ちなみにいつここに?」
グレアット「……そ、それはっ……その~っ……」
目を逸らして赤らめるグレアット。あ、やばいわ。やばいとこ見られてますわこれ。
グレアット「とにかくっ!ゆんさんと深い間柄という事は聞いてましたけど、私という子がいながらいったいどういう事なんですかっ!もしかして私へ言った事は全部嘘だったんですかっ!?」
デジャブ。なんかヤマブキシティでも見たなあ似たような光景。
助けを求めようと、ゆんの方へ目を寄せる。
ゆん「失望しました。大切な方は大事にしなきゃいけませんよ。ね?」
あ、詰んだ。
うゅみ!メグ!カルマ!6号!エリカ様!
わりぃ、ボク死んだ!
グレアット「ねぇアリスさん。ゴッドバードとじんつうりき、どっちがお好みですかっ?あ、そういえば最近聖火にも目覚めたんですっ♪たったいまお見せしちゃいましょうかっ?」
わー聖火ってせいなるほのおの事かなー?すごいなーグレアたんへの信仰心は留まることを知らないねー。アリスちゃんパートナーが成長してくれてうれしいぞー。
だから身体を光らせながら、神様へのお祈りを呟くのやめてくれないかな?
もうだめだと覚悟を決めて目を瞑ったその時だった。

???「ひゃはは!見つけたぜ!」
悪役ボイスのイケメンがこっちに勢いよく飛びかかってきた。
え、なに。誰ですか。
その声にグレアットも祈りを中断して、そっちへ身体を向ける。
ゆんも臨戦態勢に入っていた。
キサラギ「よーっ!ボンジュールアリス!久しぶりだなあ!」
解放されて視界を開くと、そこにはキサラギがいた。
ボクと同じマサラタウン出身で、オーキド博士の孫息子でもある。
なんでか知らないが、勝手にライバル視されてんだよな。

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グレアット「どちら様ですかっ?」
あーそっか。今回の旅だとこいつと会う機会もなかったもんな。
アリス「キサラギ。ボクの幼馴染で、見てのとおり悪人面の悪い人だ」
そう説明するとささっとボクの後ろから身構えるグレアット。かわいい。
ゆん「あなた。またありす様に何かしでかすおつもりですか」
するどいめでキサラギを見据えるゆん。苦い経験を飲まされたこともあって、敵対心がすごい。
キサラギ「おまえどうせリーグに行くんだろ?現チャンピオンのオレ様が直々にご挨拶に来てやったんだよ、ウォーミングアップも兼ねてな!」
まずい。ポケモン勝負か。確かに避けては通れない道だが、今は手持ちがグレアットしかいない、だからといって連れて戻ってくる暇も隙もない……。
どうにかして切り抜けないと……。
キサラギ「なあアリス!オレ様感謝してるんだぜ、あの日オレ様の家のドアを勝手にワープ装置にしてくれたことをよぉ!」
グレアット・ゆん「そんなことしたんですかあなたっ」
女性陣がこぞってボクへ怪訝そうな目つきで見てくる。
ほらこうなるから喋らせたくなかったんだよ。いいじゃねーか、たまたまどこかしらドアの始発点にちょうどよかったんだよ。

キサラギ「そのおかげでオレ様は色んな世界を見て回れた!こんな片田舎じゃお目にかかれないような面白いもんや、ロケット団の秘密までもな!」
まずい。こいつ財団を知ってる。いやそれはどの道時間の問題だったか、今やセキエイポケモンリーグはロケットシンクタンク所属の権限組織と化したからな。そこのチャンピオンであるこいつは恐らくエリカ様と内通していてもおかしくはない話だ。
キサラギ「聞くところによると、おまえその女の恰好した伝ポケ達と旅して回ってんだって!?はは、いいご身分だな、タダで強くて珍しいポケモンのハーレムが付いてきてよ!」
グレアット「なんですかあなたっ!チャンピオンかなにか知りませんけど、この方を悪く言うのは許しませんよっ!」
キサラギ「悪く言ってねえよ、むしろ尊敬してるんだぜ。こいつには色んなモンがあるんだからよ、例えば」
キサラギがポケットからなにか取り出すと、聞き慣れた音声ガイドが流れてくる。
《アクセス認証ーーー》
《手持ちとアイテムのコードを連携しました》
《任意コード実行を発動しますか?》
アリス「おま、それは!」
キサラギ「ひゃはは!アリス、おめえの専売特許とでも思ってたか?オレ様も使えるんだぜ、この《フロア・ファイブ》でよ!」
あいつの言うフロア・ファイブとはボクのなかよしバッヂと同じく世界の理と認識をずらすことが出来るアイテム。ボクがボックスの通信システムを使うのに対し、アレは手持ちのポケモンと所持しているどうぐを照合することで、オフラインであっても任意コード実行を行うことが出来るタイプだ。
キサラギ「おめえ、ポケモンリーグで殿堂入りをしたときデータには記録が残っているのに、リーグの施設内だと四天王の奴らがまるで初対面かのような反応をとってくることに疑問を抱いたことねえか?」
ある。常々思ってる。しかもリーグの外であれば、その影響は受けず普通に接してくるからこそますます際立って怪しいとは思っていた。

キサラギ「そのまさかだ!リーグを制した人間には代々このフロア・ファイブが渡される!そして最初に行うことは、施設内に限り挑戦者の記憶をすべて抹消させ続けることなのさ!だがあくまで範囲はポケモンリーグの中、それも挑戦者として訪れた奴のみ!そこ以外だったらその影響から外れて思い出す仕組みになってんのよ!」
新事実発覚。界隈の方々に激震が走る。
アリス「なるほどな、道理でゆんの事を忘れてたり変なとこだけ覚えてたりしてたわけだ」
一応ボクのトレーナーデータはセキエイポケモンリーグに登録されている。
ゆんとの二人旅からさまざまな特殊任務の際の手持ちまで。
だから四天王たちともよく顔を合わせることもあって、雑談したり共闘したり色々やってるわけだがなぜか挑戦者としてリーグで会うと初対面のように振る舞ってきていたから不思議だったのだ。
キサラギ「でだ。せっかくの再会、それも熱い決戦の祭典っていうのに向こうが忘れちゃシラけしまうだろ?そこで幼馴染のおめえには特別にこのフロア・ファイブを使わないでおいてやろうって思ってな!」
アリス「そりゃ願ってもない申し出だ。で、対価は?」
キサラギ「くけけけけ!話が早くて助かるぜ!おめえ、ミュウツー持ってんだろ?あいつ連れてオレ様んとこへ来い。一度でいいから最強と伝えられるミュウツーとやり合いてえのよ!どうだ、いい話だろ?」
ボクがミュウツーと戦ったことまで知っているのか……エリカ様か誰か財団の上層部と繋がりがあると見たほうがいいな、隠し事が通用する相手じゃなくなった。
アリス「いいぜ。ただあいつは気分屋だ。保証はできない」
キサラギ「オレ様と戦うときだけで良い!オーキドのじじいに頼んで、四天王との連戦が終わったあとに連れてきてもいいように許可を下しておくからよ!」
おいおい本気じゃねーか。それこそまた世界の認識をズラして、持ち込んでこないといけないじゃないか。
面白い、乗った。そういうスリリングな体験こそ我が僥倖!
アリス「交渉成立」
キサラギ「オーケー!ああそれと。おめえのミッションの記念すべき10戦目もオレ様だ、かかってこい!」
ちっ、バトルはやはり避けられないか……しかしここまで話を進めておいて一時撤退するのもかっこがつかないからな。しゃあない、ここはラブリーマイエンジェル・グレアたんに頑張ってもらって……。
ゆん「わたくしがやらせてもらってもよろしいですか?」
グレアット「ゆんさんっ!」
アリス「……ゆん、親トレーナーこそボクだが今はボクの手持ちじゃない。任務の公約違反になっちまう。グレアットと2人でやるからそこで見守ってくれれば……」
キサラギ「あー?いいぜ、バトりたいんだろ?オレ様が責任取ってやる。来いよ埋葬」
ゆん「むー!負けませんよ!」
そんな権限まで持ってるのか?いくらチャンピオンとはいえ、まるで財団のトップかのような物言い……なんでそんな自信ありげに。
あれ待てよ、オーキド博士ってそーいやカツラさんやフジと同期のロケット団中級幹部で……(エリカ様が最高幹部でマチス・キョウ・ナツメ様は上級幹部。サカキ様は代表なのでトップに当たる)
キサラギはそのオーキド博士の孫……あれ?
キサラギポケモンリーグチャンピオンにしてロケットシンクタンク特級幹部キサラギ、推して参るぜ!」
やっぱりお前もかああああああああああああ!!!

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10戦目・キサラギ

手持ち 特性 性別:LV 習得技
ピジョット するどいめ Lv.47 フェザーダンス つばさでうつ かぜおこし でんこうせっか
サイホーン ひらいしん Lv.45 とっしん つのドリル ロックブラスト みだれづき
タマタマ ようりょくそ Lv.45 ソーラービーム ねむりごな どくのこな しびれごな
ギャラドス いかく Lv.45 ハイドロポンプ たつまき にらみつける あまごい
フーディン シンクロ Lv.47 サイコキネシス めいそう みらいよち かなしばり
リザードン もうか Lv.53 かえんほうしゃ つばさでうつ きりさく こわいかお

タマムシ大学より出典

キサラギ「飛翔しろ、ピジョット!」
ゆん「同じ境遇の鳥同士として負けられません!」
そういえば、ゆんはあれから成長したのだろうか。
手持ちに入ったので、ステータスを確認してみる。

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ええと、ひこうタイプ一致のエアカッター。
なるほど急所に当たりやすいし今の姿だとそっちの方が色々と都合いいものね。
で、ノーマルタイプ一致のはかいこうせん
おお、これはあのハガネールを急所で乱数一発で倒せるあのエリカ様直伝の!
そして、ふぶ……ふぶき……雪女になったのか!?
ああ、でも確かにあの時こおり技があれば随分変わったもんな。
まだ気にしてくれていて、その気持ちが翼から吹雪を起こせるように……。
極めつけは、つのドリル。説明不要の一撃技だ。
今の姿だとどこから突くんだろうか……。

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ここ?
っていうか天使の輪っかみたいになったな。事実天使だが。
はぁ、ゆん天使みたいに柔らかかったなぁ……。
グレアット「なにぼーっとしてるんですかっ?」
アリス「何もないぞ!ゆんちゃんマジ天使!」
ゆん「ふぇ!?」
グレアット「ふーんっ……」
いいから首絞めないで試合に集中しようねグレアたん。
このまま2人でお茶でもしばきながら眺めていてもいいんですけどね。
だってボクが育て上げたゆんが負けるわけないし。
キサラギピジョット、フェザーダンス!」
ゆんの こうげきりょくががくっとさがった!
ゆん「攻撃力を下げようとも無駄です。これは特殊攻撃ですから」
ゆんの ふぶき!
こうかはばつぐんだ!
グレアット「すごい、イチコロですっ!」
キサラギ「ふーん、そこそこやるじゃん」
キサラギサイホーンをくりだした!
ゆん「っ……!」
一緒に旅をしていたときに、散々苦渋を嘗めさせられたサイホーンがまたしてもゆんの壁として立ちはだかった。
アリス「がんばれ、ゆん!」

次回に続く!

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