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《Ride On The City》 五人娘編 Part16

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ミュウツー『忌まわしい人間の姿……。
誰が生めと頼んだ?
誰が作ってくれと願った?
私は私を生んだ全てを恨む。
だからこれは、
攻撃でもなく。
宣戦布告でもなく。
私を生んだお前達への、
逆襲だ。』


すくむほどのプレッシャーが降りかかる。
ミュウから生まれた唯一のポケモン
組み替えられた遺伝子の改造と実験の結果、
完成したのは”破壊するもの”であった。
サカキ「この世で別の命を作りだせるのは、神と人間だけだ。
お前は人間に造られたポケモンだ。
ほかに、なんの価値がある?」
その言葉の直後、大きな念波がこの場を襲った。
ミュウツーは。怒っている。
怒りに身を任せ、破壊衝動のまま暴れていた。
サカキ「そう急くな。お前の願いは最初に叶えてやると言ったろう」
いつの間にやら、うゅみがフィールドに浮かんでいた。
そうだ。ミュウツーの願いはうゅみを超えること。
だからこそ、サカキ様の手元へと渡ったのだ。
アリス「うゅみ」
ミュウツー「我が母よ。奇しくも、互いにこの忌まわしいヒトの姿で再会してしまったな。だが致し方なし、同じ条件で力を振り回せるということ。今度こそ最強を我が手に掴む」
サイコショックが撃ち込まれる。だがうゅみは軽々とそれをかわす。
ミュウツー「ふん。相も変わらずすばしっこい」
うゅみ「あんたさぁ。そんなことあたしが教えたかしらぁ?」
うゅみが口を開く。最初の言葉は母親としての一言だった。
ミュウツー「お前に教えられたことなど、なにもない」
強力なサイコキネシスを放つ。それもなんなく避けるうゅみ。
その後に間髪なくサイコキネシスサイコショックが立て続けに撃ち込まれるも、障害物レースのようにひょいひょいと避けていく。ただの一発も、かすり傷すら入っていなかった。
ミュウツー「くっ。ならばこれならどうだ」
無数の星が起爆しながらうゅみへ放たれる。必中技のスピードスターだ。
しかしそれすらもわずかな隙間をかいくぐりながら全て回避するうゅみ。
もはや攻撃そのものが届いていなかった。
うゅみ「きれいなお星さまねぇ。子供たちに見せてあげたら喜んでもらえるんじゃなぁい?」
けたけたと笑いながら言う。その人間へ気遣う言葉が癪に障ったのかミュウツーは更なる怒りを露わにした。
ミュウツー「人間に見せてやるものなど絶望だけだ!私が全てを否定してやろう!」
超能力を帯びた紫色の星がうゅみ目がけて飛び交っていく、サイコキネシスとスピードスターの合わせ技。名づけるならサイコスター。
うゅみ「なぁんも分かってないわねぇ」
うゅみはその星屑の集まりを跳ね返してミュウツーへとぶつける。デオキシスからコピーしたサイコブーストの使い道だろう、専用技は既に自分のオリジナルとして昇華されている具合だった。次元を超えたエスパーバトルに息を呑むしかなかった。
グレアット達も黙って見守っている。相反する親子の対決を。
気になって、うゅみが習得している技をステータスから確認してみる。

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サイコブーストだけではなく、霊力をテレキネシスで球体化させ撃つシャドーボールも習得しているようだった。なるほどエスパーの弱点であるゴーストタイプ、こいつで海底宮での2匹の戦いを止めていたわけか。
しかしうゅみには戦う意思が全く感じ取られない。
娘相手に手を出したくないのか、それとも別の目的があってのことか。
今はただ立ち尽くすしかない。サカキ様も見上げて2匹の動向を窺っていた。
ミュウツー「どうして刃を向けない。なぜ闘おうとしない。私が怖いか」
エネルギーを練って溜め込むミュウツー。うゅみはふよふよと空を浮きながら
うゅみ「ばかねぇ。自分の子に攻撃する親がどこにいるのよぉ。そんなことする奴は親じゃないわぁ、ただのバカよぉ」
それは全国の親御さんへ訴えかけているのか。うゅみの発言は愛情に満ち溢れていた。自分の娘が反抗して全力をぶつけているというのに、気に留めることもなく安らかで穏やかな声色なのだ。
ミュウツー「愚かなのは人間の肩を持つお前の方だ。奴らは醜悪で心を弄び、平然と裏切る。自分の都合でポケモンの自由を奪っている」
何度もサイコキネシスやスピードスターを撃ち、その度に全ての攻撃を避けられる。
次第にイラつきに変わり、声のトーンが高ぶり粗ぶってくる。
ミュウツー「ええい、腹が立つ!私を愚弄しているのか!」
八つ当たりが如く、こちらが居るほうへ攻撃が放たれる。それを見たうゅみは瞬時にバリアーを張ってこちらの安全を確保してくれた。サンキューうゅみ。
最初は伝説としての風格と威厳を見せていたミュウツーだったが、今は自分の思い通りにならずわがままを振りまいて辺りに気を散らす子供のようにしか見えない。
その姿はどこか哀しくも、愛らしくあった。
少女の姿をしているから尚更であろうか。そんなボクの気持ちを知ってか知らずか、うゅみはミュウツーの間近へと寄り添っていた。
ミュウツー「なんのつもりだ」
うゅみ「あんたさぁ、自分のことしか見えちゃいないんだねぇ。ごめんねぇ、気づいてやれたのに放っておいちゃってぇ」
あまりに近すぎるためか得意のサイコキネシスも放てず、距離を取ろうと身をよじらせるがうゅみの力かなにかでその場で踏みとどまるミュウツー。明らかに戸惑っていた。彼女の生き物らしい挙動を初めて見たかもしれない。
ミュウツー「離れろ!」
うゅみ「あたしねぇ、あたしの遺伝子を直接引き継いでる子だったらなぁんにもしてあげなくても勝手に自立して気ままにやってくれるかなぁって思ってたんだぁ。でもそれは間違いだったねぇ。人様に迷惑かけちゃうモンスターを作っちゃっただけだったみたいだわぁ」
語りかけるように、娘を生んだときの境遇を話し出すうゅみ。
放任主義なのはイメージがつく。うゅみが丁寧に子育てをするようには思えない。
だが優秀な遺伝子を持っていても教育を受けていなければ、それは悪戯に力を誇示して暴れるだけだった。なまじ自分と変わらないエネルギーを持っているから誰も止めることができずにその虚栄心が肥大化していったのが彼女なのかもしれない。
うゅみ「還ろう。ミュウツー
うゅみがミュウツーとおでこを合わせるとまばゆく光りだす。あれはシンクロの持つ最大特性だ。
ミュウツー「やめろ!私は人間を許してなどいない!いつか取り返しのつかない間違いを犯す!その前に根絶やしにしなければならないのだ!」
うゅみ「間違いを犯したのはあんたの方だよぉ、それとそれを生んだあたしさぁ。あたしもねぇ、人間は好き勝手な生き物だと思うよぉ。でもねぇ、この星を本気で守ろうとしてくれてるのも事実なのよぉ。だってぇ、こんなあたしたちでも愛してくれてんだからさぁ」
ミュウツーが最後の抵抗を起こす。うゅみもろとも、おきみやげにこの地に自爆で爪痕を残すつもりだ。そんなことされちゃ何が起こるか分からない!
ボクは気が付いたら、走り出していた。
グレアット「アリスさん、待ってくださいっ!」
モンスメグ「だめだめありすちゃーん!」
カルマ「おいばかやめろ!」
6号「爆ぜるのは私だけでいいんです!止まって!」
仲間たちの声も聞かず、ボクは無我夢中にうゅみとミュウツーの元へと駆け抜ける。
サカキ「馬鹿なガキだ……」
《アクセス……認識完了》
アセンブラを世界とリンク》
《任意コード実行を発動します》
《本当によろしいですか?》
アリス「なかよしバッヂ、コードオン!」

 

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《悪行ポイントが加算されます》

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ミュウツー「愚かな……ただの人間が私達を止めただと?」
うゅみ「ほんとおもしろい子だねぇ」
うゅみとミュウツーのエネルギーは無力化された。
不正なデータと改ざんさせることで、エラーによってフリーズを避けようとした世界そのものが2人を止めたのだ。
いわば、世界に防衛本能を働かせてやったのだ。
ボクは、バッヂを片手に2人の間で倒れこんでいた。眼前にはボクを見下ろすうゅみとミュウツーの姿があった。
うゅみ「おいー、生きてるぅ?」
つんつんとしっぽで頭を突かれる。意識ははっきりとしている。
むしろ視界がクリアーだ、綺麗な天井と吹き抜けの青空が映って見えるぜ。
グレアット「アリスさんっ!」
駆けつけてきたグレアットに思いっきり介抱される。
熱い熱い。暖かいを通り越して燃えそうな抱擁だわ。
グレアット「もうっ、無茶なさらないでくださいっ」
アリス「あのままじゃ、どうなるか分からなかったからさ」
手を伸ばして、そっと髪を撫でてやる。美しい灼熱の色だなぁ。
ミュウツー「呆れた。だが、この目でしかと見届けた。アリスよ、お前の行動を認めてやろう。人間というのは、この娘の言う通り愛に満ちた生き物なのだな」
グレアットが少し照れた様子でミュウツーを見る。
ミュウツー「しばしの間は傍観しよう。手を出さないことを約束する。だが危害を加えるようであれば、私は今度こそ容赦も躊躇いもなくこの地を破壊してやる。くれぐれもその愛とやらを忘れるなよ」
そう言い切ると踵を返す。納得してくれたようでなによりだ。
うゅみ「あんなばか娘だけどさぁ。ちょっとは成長してくれたようであたしは嬉しいよぉ」
サカキ「アリス。きみは勇敢な人間のようだ。称賛に、いや尊敬に値する。よくぞミュウツーを食い止めた。その功績は後世に語り継がれるだろう」
アリス「ははは……そんな功績いらないんで、バッジだけくださいな」
グレアットに支えられて立ち上がると、サカキ様の元へと歩んでいく。
サカキ様が胸ポケットからリーフを象ったグリーンバッジを取り出す。
サカキ「俺に勝った証として望み通りこれをやろう。こいつがあれば、カントー中のトレーナーはきみに尊敬の眼差しを送るだろう。そしてどんなポケモンもきみに付いていく。そう、どんなポケモンでもな」
サカキ様がミュウツーに目配せをする。
……え、まさか。
ミュウツー「貴様。まさか私に同行しろというつもりか」
サカキ「俺の手には余る。それに俺の部下でお前に指揮を執れる奴などせいぜいエリカかナツメくらいのものだがあいつらはバトルを嫌うからな。それなら適度に暴れられるアリスの下で世界を見てこい」
ミュウツーが、睨みにも似た、しかし若干の困惑の入った鋭い瞳でボクを見つめる。
よく見ると泣きぼくろがあって綺麗だね。
一瞥されると、鼻で笑われた。ひどい、ショック。
ミュウツー「ぬかせ。私は誰の下につくつもりもない。だがこの姿になってしまった以上は嫌が応でも順応しなければならんからな。ナツメと言ったか、私を満足させられるエスパーの使い手かどうか見極めに出向いてやろう」
あーあ。フラれちゃった。
ミュウツー「だが……私の力が必要ならいつでも来い。我が母のために貸してやる」
うゅみ「素直じゃないんだからぁ」
そう言い残し、彼女は次元の彼方へとワープしていった。
ナツメ様であれば、いいようにしてくれるでしょう。
正直ボクの手にも余るから内心ちょっと安心しました。
サカキ「さて。俺はアジトへ戻って一度組織内を再編成し直すとしようか。じゃあな、アリス。幹部の座はいつでも空けておいてやるから気が向いたらエリカに告げておけ」
アリス「前向きに検討させていただきます」
サカキ様は窓に向かって飛び降りると、ドンカラスに着地して空を駆けていった。
なんちゅーアクションじゃい。役者にでも転じたらどうですかサカキ様。

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モンスメグ「おつおつー☆」
カルマ「やったな」
2人から腹を小突かれて賛辞を贈られた。
お前らちったあ敬え。
6号「ここ寝心地いいですねぇ、むにゃ……」
うゅみ「ういういー」
寝ようとする6号をシャボン玉の中に閉じ込めて運ぶうゅみ。
今日は疲れたから運送代行任せた。
グレアット「これでジムバッジ全部揃いましたねっ!」
腕を組んで、ボクのバッジケースを眺めてくる。
カントージムバッジ8つ、コンプリート!
ミッション9/15達成!

トキワポケモンセンター

皆が寝静まった夜。エリカ様へ報告を行う。
《おめでとうございます、サカキ様よりお聞き致しましたわ。素晴らしいご勝負をなさったようですね、あれだけ素直にあのお方がお褒めなさるなんてそうそうありませんわ》
アリス「ありがとうございます。ここまで来れたのはエリカ様のサポートあってのことですよ」
《あらまあ。今のは素直にお受けしますわ、ありちゃん》
アリス「その呼び方はやめてください。それでこれからなんですけど」
《もちろんポケモンリーグへお挑み頂きますわ。それがこの任務最後のお勤めですの》
ついにここまで来ちゃったよ。
しかし案ずることはない、セキエイへネットワークマシン完成の連絡はしていないのだ。つまり平時のレベルと手持ちで相手をなさってもらえるって寸法さ。
《そういえばあれからポケモンリーグからのご返信がありませんわね……お忙しい身ですから、こちらの連絡をまだご覧になっていないのかしら》
ね?
アリスちゃん大勝利~
アリス*「それでしたら、明日直接向かいますよ。なに、サカキ様を退けたのです。どんな敵だろうとボクの敵ではございません」
《お願いいたしますわね。あら、そういえばエプロンドレスに戻したのですね。先ほどの格好も可愛らしかったのに》
アリス「まああれは景気づけですよ、こっちのが落ち着きます」
《どちらもお可愛いこと。そうそう、ナッちゃんがミュウツーから超能力をレクチャーしてもらってるというお話を伺いましたの。仲良きことは美しきことですね》
打ち解けるのはっや!つい数時間前までやり合ってたっていうのに。意外とミュウツーが人と溶け込める日も近いかもしれないな。もしくはナツメ様の成せる業なのかもしれないけれど。どちらにせよ、大事になっていないなら何よりです。
アリス「それはそれは。エリカ様もご教授してもらっては如何です?」
《私が?ポケモンから?うふふ、ご冗談が上手いですね》
アリス「あ、あはは~……」
こっわ。エリカ様こっわ。この手の話はもう出さんとこ。
《そうですわ。サカキ様へご勝利なさったあなたへ支給品を贈っておきますので、ぜひご活用くださいませ》
アリス「マジっすか?助かりますー」
エリカ様との通信もそこそこに切り上げると、ボックスに届いている支給品とやらを確認してみる。

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おお、回復アイテム一式じゃないか。
なるほど、確かにポケモンリーグは連戦になるからな。
いつでも万全の態勢で戦えるように、という配慮なのだろう。
あとエリカ様はたぶん強化された四天王と戦うと思ってるから、それもあってレベル差から考慮してくれたのかもしれない。
大切に使わせてもらいます!

 

 


???「うひゃひゃ!標的発見だア!」

 

 


次回に続く!

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