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《Ride On The City》 五人娘編 Part15

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サカキ「俺が懇親込めて育てたニドキングのツノはダイヤモンドをも砕き、尻尾は鉄塔すらへし折る。覚悟はいいか」
悠々と力自慢を語るサカキ様、よっぽどの自信があるのだろう。口元がほくそ笑んでいるからだ。
カルマ「来いよダルマ。パワーだけじゃ勝負は成立しねえってこと教えてやんからよ」
カルマの挑発にも動じず、間合いを取ってずっしりと構えるニドキング
お互いに膠着が続いた。

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6号「……長いですね」
アリス「出方を窺ってんだろうな。カルマの戦い方は後の先だ、アンコールするにしてもいちゃもんをつけるのも技を恨むのも相手が動いてくれないと意味がないからな。それにあの距離じゃやどりぎも植えつけれない、あのニドキング相当出来るぞ」
カルマは自分から手を出さないスタイル。相手も手を出さないとなるとただひたすらに待つしかない。だが、動き出せばカルマの搦め手は早い。一瞬のうちに相手をがんじがらめにしてやることだろう。
サカキ「来ないのか?なかなかに策士のようだと踏んだが、圧倒的な力の前にすくんで臆病になっただけか?」
サカキ様が煽るが、それはそれで本当の事かもしれない。迂闊に動けばカルマの華奢な身体はたちまち酷いことになる。一手先が見えているからこそ口に出せる発言だ。
あれは油断でも煽動でもなく、余裕なのだ。
カルマ「ラチがあかないじゃんよ」
ふんわりと浮いて、上空へと舞うカルマ。そうか、地面を司るプロであっても空中であればその本領は発揮できない。空からやどりぎを撒いてやろうって算段か!
ニドキングの斜め上から真上あたりへと飛ぶとタネを生成するカルマ。
サカキ「甘い、ストーンエッジ!」
地表からつららのように尖ったいくつもの岩が空へと射出される。
しまった、対空への対策もあるのか!それにまた横文字ですか!
カルマ「ちっ」
岩が体に食い込むも、しっかりとニドキングへのやどりぎに成功する。喰らったダメージを種から吸収し、ニドキングもまたじわじわと苦しんでいる様子が見えた。
そして空中を舞いながら、りんごをかじるカルマ。たべのこしだな。
サカキ「ふふ、それが貴様のやり方か。真正面からやり合わないその手口、我がロケット団に欲しい逸材だ」
おお、なんか褒められてるぞカルマ。悪の組織からすれば最高なんだろうね!
カルマ「うるさいじゃんね」
サカキの命令を無視してニドキングが再び岩を尖らせる、あれはアンコールが入ったんだな。いつの間に撃ったんだ、その手拍子の美しさは観客としても最高だぜ。
サカキ「小賢しい」
その岩をすらりと避けるカルマ。そのまま間髪を入れずにいちゃもんをつけるクレームが聞こえてきた。これはパターン入ったな。
ニドキングはどうすることも出来ず、悪あがきを始めだした。その巨躯に反動が入り、衝撃で揺れる地面とともに自傷していく。
怪獣相手に手玉を取ったカルマはにやにやと笑っているが、やはり最初に食い込んだ岩が痛いのかその笑顔は歪んでいた。
6号「いけますかね」
アリス「さあな。信じて見守るだけだよ」
メグに包帯を巻き終わって、次は自分の出番かとうずうずしながら準備運動を始める6号に淡々と返す。グレアットとメグは寝転びながら戦況を見つめていた。
うゅみは……寝てるのか。よぉ眠ってられるなこんなズシンズシン言うとるのに。
あの身体を包んでるシャボン玉みたいなのは防音機能でも付いてるんかね。
サカキ「楽しませてくれるな。だが、わるあがきは交互にしか訪れん。次の命令は確実に貴様へ突き刺さるぞ」
カルマ「やってみなよ」
ニドキングがツノを光らせる。まさか一撃必殺と謡われるつのドリルか!?
だがそれは前方に集中するあまり視界が極端に狭くなり命中精度が低い技でもある、この戦況で打つにはあまりにも賭けが過ぎる。サカキ様はそんな博打を打つようなトレーナーなのか?考えろ、ツノを使って……威力の高い……そして横文字……。
アリス「やばい!カルマ、全力で避けろぉ!」
叫び声も虚しく、既にカルマは怨みを募る行動に入っていた。
セレビィのタイプは草/エスパー。もともと弱点が多い複合だが、最も致命傷となり得る弱点タイプは……!
サカキ「やれ。メガホーン
ニドキングは巷では技の宝物庫と呼ばれるほど多彩なレパートリーを持っているポケモン、真の強さはその巨躯でも毒でもなく、どんなタイプの技でも放てる器用さにあることをボクは失念していた。
一角が鈍く輝いて、物凄いスピードでカルマへと立ち向かう。頼む、かわしてくれ!
カルマ「かかったなぁ」
カルマの足元に大きな奈落のような影が出来上がっていた。
あれはまさか……っていうかまた勝手に技覚えたのかお前ら!
ニドキングメガホーンが完全にカルマへ突き刺さった。
空中へ投げ出されるカルマ。と同時に影の手がニドキングを掴みエネルギーを奪っていきそのまま大きな音ともに倒れこむ。
サカキ「みちづれ、か。最後の最後まで狡猾だったな」

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セレビィニドキング両者戦闘不能
6号がカルマのもとへダッシュして駆け寄る。
ボクも名前を呼びながら、追いかけていく。
6号「大丈夫ですかカルマさん!」
抱きかかえられたカルマは目を瞑ったまま口元だけ微笑みながら、
カルマ「ぼくがやりたいようにやっただけだよ」
アリス「ったく無茶しやがって。似合わねえことすんなよ」
無事そうでホッとすると一緒に、気持ちが込みあがってくる。
普段は安全圏から戦うカルマですら、身を挺して対峙したのだ。
本気を出さないといけないほどの相手だということをイヤでも思い知らされる。これまでがあまりにもぬるま湯のようにあっさり過ぎたから忘れていた。
ー真剣勝負ーという感覚を。
サカキ「アリス。きみはこれまで死闘という死闘をしたことがあるか?計算づくの戦いでもなく、限られた選択肢から手札を切る戦いでもない。瞬時に読み合い、全力を以てぶつかり合う熾烈を極める死闘だ」
ニドキングをボールへ戻しながらボクに問いてくる。
オニドリルとの一騎駆けや、最少勝利試合での知能戦は経験がある。
だが確かにサカキ様の言うような血で血を洗うような激しい戦いはしたことがない。
その勝負勘の無さが招いた結果がこれだ。勝つには勝っているが、グレアットとモンスメグは瀕死の重傷を負い、カルマは共倒れまで追い詰められた。どれも避けられたはずなのだ。それはボクがトレーナーとして未熟であることを意味していた。
6号「アリスさん、私に任せてください。」
ボクが口を開こうとしたところを制される。
ああ、いつもこうだ。これまでこの旅でボクは彼女達に命令という命令を下したことがない。司令官のようにおおまかな指示は出しても結局彼女達の意思で動いて試合を形成しているだけに過ぎないんだ。ボクはいったい……
6号「何やってるんですか。あなたは今まで通り私たちを信じて見ていてもらえるだけで良いんですよ。それだけで、十分力になってくれています。難しいことなんて考えなくていいんですよ」
続けざまに6号から諭される。そうだ、これまでこのやり方で勝利を手にしてきたんじゃないか。上手くいってきたんだ……これからもきっと。
ボクは、カルマを背負うとグレアットとメグが横たわっている場所へと歩き出す。
サカキ「アリス。忠告だ、度の過ぎた信頼は過信となって必ずどこかで綻びを起こすぞ。俺との戦いで学べ。習え。感じろ。胸に刻め。今のままでは殿堂入りなど到底適わない」
それは冷徹なサカキ様がボクに初めて教えてくれた優しさだった。
アリス「……肝に銘じておきます。頑張ってこい、6号」
6号「はい。どんな相手だろうと私が吹き飛ばしてみせますよ」
6号が戦場に立って、構えを取る。サカキ様もプレミアボールから繰り出す。
サカキ「行け、ゴローニャ

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繰り出されたのはゴローニャだった。
硬い岩石の殻を持った、ザ・じめんタイプ代表のポケモンだ。
ゴローンが通信システムでの突然変異で手に入れたその岩はダイナマイトでも砕けないという言い伝えがあるくらいに、物理耐久に特化されている。
……通じるか?6号の爆裂魔法は。
6号「立派な岩盤ですね。力試しにもってこいです!」
サカキ「クク……先までの3匹は知らんが貴様の話は聞いている。その類まれなる大爆発で、数多の街で爆発事故を起こしてくれたらしいな。一度この目で見ておきたいと思っていた」
おい悪評が広まってんぞ6号さんよ。タマムシでやらかしたのが運の尽きだったねぇ。
けどそれくらい実績があるのも事実だ。今回もやってくれよな!
6号「あなたにお褒めされるとは、ナンバーシックスの備忘録に見出しが増えますね。発行の暁には表紙を飾らせてあげましょう」
そう冗談めきながら、爆裂魔法の準備を始める6号。周囲のエネルギーが6号へと集まっていくのを肌で感じる。
サカキ「授業の時間だ。特別に本当の大爆発とはどういうものかを実践してやろう」
ゴローニャが丸まって勢いよく転がりだす。坂道を駆けるように恐ろしいスピードで6号めがけて回転を繰り返している。本当の大爆発というワードから察するに切り札として自爆の術を会得しているのだろう。だが6号はいわタイプの伝説ポケモン、防御力の高さなら負けちゃいないぜ。
6号「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。他はともかく、爆裂魔法のことに関しては私は誰にも負けたくないのです!行きます!我が究極の破壊魔法!」
サカキ「砕けろ、ゴローニャ
6号とゴローニャが同時に発光しだす。
キョウとの戦いでも垣間見た大爆発合戦だ。だが、キョウのマタドガスがもしもサカキ様仕込みだとすれば威力は比べ物にならないはず。
この勝負、一瞬で決着がつくぞ!

6号「エクスプロージョン!」

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サカキ「ディストラクト!」

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6号「はああああああぁっ!」
サカキ「うおおおおおぉっ!」

目の前が真っ白になった。
激しい光が視界を覆い尽くし、轟雷と地震で立っていられなくなる。
この勝負、最後まで分からないぞ……!

6号「フーッ、フーッ!」
サカキ「ハーッハーッ!」
最初に目に入ったのは大きなクレーター。不思議なことに室内は崩れておらず、ヒビというヒビが壁に入っていたくらいだった。
これほどまでの衝撃に耐えられるなんて、とんでもない建築技術だ。
ヤマブキシティを守るバリアーと同レベルかそれ以上の防壁で出来ているのだろう。
グレアット「6号ちゃん!」
モンスメグ「ろっくん!」
カルマ「どうなってんよ」
アリス「いけたか!?」
煙が晴れていく。果たしてどっちが耐え、どっちが絶えたのか。
倒れこんでいる6号の姿と、へたり込むゴローニャが見えた。
引き分け……か?
サカキ「立ち上がれゴローニャ。先に立ったほうがウィナーだ」
サカキ様の声に反応して、ぴくぴくと足を震えさせるゴローニャ
まずい、6号は普段打ち終わると全てのエネルギーを解き放っておぶらないといけなくなる。頼む、今日は動いてくれ!
6号「あー……あはは……ダメみたいですね。力が抜けちゃって、指先ひとつ動かないや」
サカキ「こちらに根性が上回ったようだな」
ゴローニャがよろよろとフラつきながらも一瞬立ち上がった。それもつかの間であり、すぐに倒れこんだが、立ったことは紛れもない事実だ。
両者戦闘不能ー引き分けとします!
6号「すみませんアリスさん。私、負けちゃったみたいです」
涙ぐんだ声で謝る6号。何言ってんだ、機械判定は引き分けだ。お互いHP0なんだよ。
もっと誇ってくれ。小手先の攻撃を使わせずにいきなり大爆発合戦まで持ち込ませた自分の力量をさ。お前は、充分過ぎるほど、伝説だ。
サカキ「戻れゴローニャ
プレミアボールへと返されるゴローニャ。勝負こそ勝ってはいないが試合には勝ったまさしくMVPだ。底力、感服致しました。
ボクはバトルフィールドへ歩くと6号を背負ってやる。すやすやと寝息を立てていた。
ゆっくり休め。
アリス「サカキ様。あなたの考えは分かりませんが、その腕前には正直感動しました。さすがは最強のジムリーダー。ロケット団のボスを務めるだけはあります」
本心からの敬礼を送ると、サカキ様は笑いながら返す。
サカキ「当然だ。俺はこの地方を掌握した男なのだ。カントーだけではない、西のジョウト、その西のホウエン。北のシンオウに海の向こうにあるイッシュ、カロスまで。アローラでは悪の組織をすべて束ねているのだからな。強さも、地位も、全てが俺の手の内にある」
さらりとえげつない事を話す。ああ、世界を制した王と今立ち合っているのか。
みんなに自慢話を持って帰ってやれるなぁ……。
アリス「ですが、そんな貴方の手持ちを残り1つまで追い詰めたのがボクです」
もちろん他にもたくさん持っているのだろうが、この試合に連れてきているのはボールの数からして5匹。おそらくはこちらに数を合わせてくれたんだろう。
その5つのボールも残すは1つ、クライマックスだ。
サカキ「その通り。きみの実力は本物だ。カントー地方だけであれば最強を名乗ってもいい。俺が認めよう」
アリス「最強という称号に興味はありませんが、そのお言葉。光栄に思います」
サカキ「ふっ。行くぞ」
マスターボールをかざすサカキ様。あれはボクに支給されている量産型ではない。
シルフカンパニーのマークが印された本物のオリジナル。
この世にひとつしかない真のマスターボールだ。そんなボールに相応しいポケモンなどこの世に一匹しかいない。
ミュウツー『また会ったな。アリス』

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エリカ様の持つ技術によって、少女と化したミュウツーのお出ましだ。

次回に続く!
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