Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》 五人娘編 Part14

f:id:Alice_Wreath:20210808005453p:plain

f:id:Alice_Wreath:20210808005506j:plain

《そうですか。ミュウツーと対峙したのですね》
アリス「激おこぷんぷん丸でしたね」
いつもの近況報告フェイズ。
《ご安心ください、ミュウツーも我が軍門に下りましたので》
アリス「そうなんですか、それは……って、マジっすか!?」
いやいやあんなかっこよく去っていったのに、何やってんですかミュウツーさん。
ボクはてっきりまた人知れぬ僻地で再会したり、人々や街を襲ってる所を止めに行ったり、そんな展開を期待してたんだけどね?
《あなたが例によって次元の挟間からデオキシスを捕獲なさったでしょう?偶然にもその異次元からの隙間とミュウツーのテレポーテーションの原理が一致していたらしく、こちらで突き止めることが出来ましたので無事に保護が完了しましたの》
わーお。そりゃ道理であの方法じゃマスターボールが当たらないわけだ、あっちも同じ手を使えるんなら能力持ちのほうに分があるからね。
というかよくそれだけで捕獲できましたね、財団恐るべし。
アリス「なるほど。今ミュウツーはどちらに?」
《人間への反逆心・敵対心・猜疑心があまりにも強すぎましたので、可愛らしい女の子に変えておきましたわ。うふっ》
うふっ、じゃねーんだわ。よりによってあれだけヒトを忌み嫌ってた奴をヒトの姿に変えるとかとんだ鬼畜の所業じゃねーか。痺れないし憧れない。
アリス「それでいいんですか」
《はじめは抵抗してぴゅんぴゅんサイコキネシス放ってきましたけれど、次第に大人しくなって従順な子になってくださいましたわ》
そりゃ従順になったんじゃなくて無駄だと悟って諦めたんだよ。財団の技術力と人員の前では無力だって分かったんでしょうな。同感するぜ。
アリス「ははは、また会える日を楽しみにしています」
《時にアリス、遂にジムバッジを7つ手にしましたね》
急に重苦しい声色に変わる、空気まで重くなって呼吸が苦しくなってきた。
《先ほど、サカキ様が本部からトキワへと向かわれました。
サカキ様がお待ちしております、ご支度なさい》
遂にその時がやってきた。エリカ様の唯一の上司にしてロケット団を束ねるカントー地方最高の権力者・サカキ様とのご対面ってわけだ。
アリス「ならボクも……それ相応の準備をして謁見しますか」
変身システムを用いて、この地に降り立った時の格好に早着替えする。

f:id:Alice_Wreath:20210808074932p:plain

《あら。とってもお似合いですよ》
アリス「そりゃどうも。では、行って参ります。」
《ご武運をお祈りしますわ》
~~~
グレアット「おかえりなさいっ……あ、そのお姿っ」
カルマ「えらい可憐じゃんね」
モンスメグ「わーお、ちょべりぐきゅーと☆」
6号「変身能力というのは本当だったんですね」
うゅみ「懐かしいカッコねぇ」
そういえば、うゅみ以外は普段のアリス衣装しか知らなかったか。
カントー地方の雄と会うのだ。やっぱ様にならないとな。
アリス「お前ら、エリカ様の時よりも気を引き締めていけ。これから会う相手は、サカキ様なんだからな」
うゅみに乗って、トキワへと翔ぶ。
開発されたビルや施設が立ち並ぶタマムシを超えると自然豊かな木々が生い茂っていた。サカキ様のはじまりの地であるトキワだけは、財団の手は加えられずどこか懐かしい気分にも浸った。
うゅみ「……居るねぇ」
アリス「そりゃ居るでしょうよ、ワープしてるあちらさんの方が早いんですから」
うゅみ「違うよぉ。あたしのバカ娘さぁ」
アリス「ふっ。そんな気はしてたさ」
エリカ様から聞いて薄々感じてはいた。ミュウツーが財団に渡れば、誰の手に行くのかなんて明白だった。


トキワシティ

f:id:Alice_Wreath:20210808080954p:plain

アリス「サンキュうゅみ。ここに来るのも久しぶりだな」
降りるとボールから4人を出してやる。
モンスメグ「あはは、ちっちゃーい♪」
カルマ「そりゃ感覚麻痺してんよ」
6号「終わりの地は始まりの地、ですか。ウロボロスのようで燃えてきますね」
グレアット「……っ」
アリス「大丈夫。この素晴らしい仲間たちと、ボクがついてる」
グレアット「はいっ!」
未だに酔っぱらって寝ているおじいさんを素通りして、トキワシティの東方にひっそりと佇む苔のかかった建物へと進む。
トキワジム、ここであのお方が待っているのだ。
『挑戦者の方ですか?ジムバッジを拝見させて頂きます……はい、確かに!開錠を許可します、どうぞ』
入口に立つチェッカーの案内で、ジム内へと足を踏み入れる。
そこは、まるでアジトのように入り組んだロジック仕掛けのダンジョンのような風景が広がっていた。
6号「わっと、なんですかこの床、滑りますよ!」
モンスメグ「あははー、くるくるしておもしろー☆」
グレアット「遊びに来たんじゃないですよっ、めっ」
パズルで遊ぶ2人を咎めるグレアット達をよそにこそっと話しかけられる。
カルマ「お前、ぶっちゃけ勝算あんの?」
アリス「無い」
言い切ってやった。勝算なんてなくたって構わない。
相手はあのエリカ様を手懐けたこの地方のトップだぞ、本来はボクなんかが挑んで勝てるような相手じゃない。
カルマ「そこまで潔いと笑えてくるね」
うゅみ「まぁ、なるようになるでしょぉ……ふあぁ」
アリス「ああそれと。サカキ様は悪行こそえげつないが、ポケモン勝負に関しては非常に高潔で真摯なお方だ、これまでのような手は通用しないと思え。いいか」
グレアット「そう聞いて、なんだか安心しましたっ」
6号「てっきり何十匹も出して一斉包囲したり、汚い手を使うとばかり思ってましたからね」
アリス「むしろそういう行為は徹底的に嫌う、団員の何人かは追放されたり処刑されたらしいからな。Byエリカ様談」
カルマ「ふーん、武骨だねぇ」
モンスメグ「自分に嘘をつかない姿勢、ばっちこーい♪」
そうこう談笑を続けながら、パズルを解き進めていくうちにいよいよサカキ様の待つであろう最奥の扉へと辿り着いた。
緊迫感が全身を襲う、緊張感が精神を襲う。恐怖にも似た存在感が扉越しに威圧となって、冷や汗が止まらない。
グレアット「アリスさんっ!」
ハッと、我に返る。
グレアット「私だって、この子達だって怖いんですっ。うゅみちゃんはどうか分かりませんけど……ここに来るまでおしゃべりをしていたのはそれを紛らわすためでしたから。でも、マスターのあなたまでその恐怖と不安に飲み込まれてしまったら、誰が私達を導いてくれるんですかっ!」
勘違いしていた。今の今までこいつらは身勝手で自由奔放で、怖いもの知らずだと無意識のうちに思ってしまっていた。
そんな都合のいい存在がいるはずない、伝説と謡われるこいつらだってみんなが連れているポケモンと同じなんだ。
アリス「そうだな。目が覚めたよ、ありがとう。っしゃ!行くぜてめえら!付いてこい!」
黒く重い扉をギギギィ、と開く。
眼前に広がったのはオフィスのような空間だった。
それも、何十メートルあろうかという広い広い……。
ボクらに背を向け、窓からトキワの景色を一望しているスーツ姿の男がひとり。


サカキ「遅いぞ、アリス」

f:id:Alice_Wreath:20210808084158j:plain

アリス「申し訳ございません。お久しぶりです、サカキ様」
不思議と落ち着いていた。
それは、彼の根底にある優しさが醸し出しているのかもしれない。
サカキ「よくぞここまで来た。歓迎しよう」
革靴の足音を立てながら、こちらへ近づいてきた。
3メートルほどの距離まで来ると立ち止まって目を合わせる。
サカキ「きみはこの地方をどう思う」
なんとまあ答えづらい質問が来た。一度も疑問にしたことがないからだ。
アリス「都会と自然、悪人と一般人、ヒトとポケモンが共存して調和のできている豊かな場所だと思います」
とりあえず当たり障りのない回答を返してみる。
皮肉にも平和を脅かす存在であるマフィアが、その実平和を維持しているという事実は現実だからだ。
サカキ「なるほど。それがこれまで旅をしてきて見出した答えか。俺もそう思う、このカントーは俺の作り上げた組織と俺の考え出した理想で成り立っているからな」
口元が少し緩む。どうやら納得のいく言葉だったらしい。
サカキ「どうだアリス、俺の部下にならんか。さすればエリカと同等の地位と権限を約束しよう、お前にとっても悪くない話だろう」
それは命令と同義の提案であった。エリカ様からではなく、設立者からの勧誘なのだ、重みが違うしなによりも下手に断れば立場が危うい。
カルマ「それってさ、こいつに悪の手助けしろって意味?」
後ろから仲間の口が開いた。
6号「戦争が起きたら、ポケモン達を使役させるおつもりですか」
モンスメグ「じっけんなんてつまんなーい♪」
グレアット「アリスさんにその様な事はさせませんっ」
アリス「お前たち……」
サカキ「きみはポケモンから慕われているようだ。そしてきみもポケモンをとても大切にしている……そんなきみに俺の考えは理解できないだろうな」
うゅみ「こいつは一人で自分のやりたいことをするのがお似合いだしぃ、あたしらもアンタらのとこに戻りたくないってことなんでぇ、おしまいよぉ。交渉決裂ぅ」
サカキ「残念だ。エリカからの窮愛を受けているようだから黙って見過ごしていたのだがね、この瞬間きみと俺は敵になった。ポケモン勝負で分かってもらうしかないようだ」
サカキ様がポケットからリモコンを取り出しボタンを押すと、フィールドがオフィスから公式のコロシアムのような場所へと早変わりする。
足元には雑草や土が広がり、それはさながらトキワの森と酷似していた。
サカキ「決戦のバトルフィールドで、やり合おう」


9戦目:サカキ様
手持ちデータ・UNKNOWN

アリス「行け、グレアット!」

グレアット「はいっ、がんばりますっ!」

f:id:Alice_Wreath:20210808091642p:plain

サカキ「俺は地面を司るトレーナーだが、こいつは格別だ。ともにトキワの森で育ったパートナーなのだからな」
グレアット「レベル70……ですかっ」
タイプ相性では格段に有利とはいえ彼女はレベル45。
更に特防も高いポケモンだ、いささか分が悪い。
グレアット「私、負けませんっ!」
サカキ「いいぞ、それでこそ伝説の風格というものだ。スピアー、やれ」
グレアット「天にまします我らの父よ。
願わくは御名をあがめさせたまえ。
御国を来たらせたまえ。
みこころの天になるごとく、
地にもなさせたまえ。
我らの日用の糧を、
今日も与えたまえ。
我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、
我らの罪をも赦したまえ。
我らを試みにあわせず、
悪より救いいだしたまえ。
国と力と栄えとは、
限りなく汝のものなればなりっ
Amen」
グレアットの じんつうりき!
こうかはばつぐんだ!
6号「むむ、あまり効いていませんね」
カルマ「あと2、3回ってとこか」
サカキ「信仰というのはその程度のものなのか?」
スピアーの ダブルニードル!
こうかはいまひとつのようだ
グレアット「あつぅっ……」
モンスメグ「わぁ、いったそー……」
効果が今ひとつだって?あのダメージで半減っていうなら、本来はいったいどんなパワーだってんだよ。
サカキ「相性で有利だからと侮ったか?力で捻じ伏せればよいのだ」

f:id:Alice_Wreath:20210808093037j:plain

グレアット「(あれっ?でも致命傷は外してる……2回連続で突くことで1度目で弱点を見つけ2度目で刺す技なのにっ)」
勝負の最中、それも手痛い攻撃を食らったばかりというのになぜかきょとんとしているグレアット。蜂の毒でも回っておかしくなっちまったか?
アリス「おい、ムリはするな!ダメそうなら交代するからな」
グレアット「いいえ。見つけました、光明をっ」
グレアットを激しい光が包む!
サカキ「ゴッドバードの構えか、天より祝福されし鳥のみに許される最上級の飛行技。面白い、どちらの空中戦が上か思い知らせてやろう!スピアー、シザークロス!」
さっきからダブルニードルだのシザークロスだの横文字が大好きですね。
だったらお次はアクロバットかドリルライナーでも撃つんですか?
などと下らない事を思い浮かんでるうちに、スピアーが両腕の針を交差し素早く空を羽ばたきながらグレアットを襲う。当たるかどうかの間際に天使のように真っ白な大きい翼がグレアットから生え、聖なる光とともにその翼がスピアーを包み込んだ。
グレアット「祝福のお知らせに参りましたっ、アヴェマリア様っ……!」
グレアットの ゴッドバード
きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ!
スピアーは ひるんだ!
サカキ「ククク、追い詰められても挫けない意思と勇姿こそが真の信仰心という事か。いいものを見せてもらった。これ以上は無意味のようだ、戻れスピアー!」
スピアーの戦闘不能を検知しました。
アリス「いよし!よくやったグレアット!」
グレアット「ピース、ですっ……」
小さくピースサインを見せると、微笑みながらこちらへ戻ってくる。
決して浅くはない刺し傷がスピアーの強さを物語っていた。
6号「はーいこちら治療班でーす、手当しますよ」
ボクが悪行ポイントで買っていた、どくけしやらなんでもなおしやらの薬品を片手に6号がグレアットを手招きする。ええい勝手に持ち出すな、別にいいけど。
サカキ「こいつはどうかな?行けペルシアン

f:id:Alice_Wreath:20210808101528p:plain
サカキは ペルシアンを くりだした!
アリス「ビーストにはビーストだ、行ってこいメグ!」
モンスメグ「あいあいー☆」
サカキ「こいつも地面タイプではないが、俺の愛玩するお気に入りだ。舐めてかかると痛い目に遭うと思え」
ペルシアンが爪を立てて勢いよく飛びかかってくる、『きりさく』の構えだ。
対してメグちゃんは、きあいをためてはりきっている様子。
モンスメグ「いったぁい!」
サカキ「俺のペルシアンは的確に急所を切り裂けるプロフェッショナルだ。それも並の威力ではないぞ」
見れば痛々しい血が流れていた、グレアットが思わず目を伏せる。
モンスメグ「やったなあ!食らえーゴッドハンドスマッシャー☆」
轟音と共にばくれつパンチが入る。効果は抜群だ、混乱する間もなくそのままペルシアンは気を失った。
ペルシアンー戦闘不能
サカキ「ほう。ライコウはその目にも止まらない逃げ足から成る脚力が持ち味、その要となる前足部分が人の姿になり両腕となったことで瞬発力と膂力に化けてばくれつパンチを撃つことが可能となったのか。面白いデータだ!」
自分の愛玩動物がボコられたというのに、冷静に分析をするサカキ様。
一般人の噂通り、ポケモンを道具としか見ていない冷徹ぶりは事実だったようだ。
ペルシアンをボールに戻すと、にやりと不敵に笑う。
モンスメグ「どんなもんだい!」
サカキ「だが貴様の傷も浅くはあるまい」
メグちゃんに目を移すと両足が震えていた。恐怖からではなく、肉体への損傷から来るものであるのは傷と出血量から想像するに越したことはない。
アリス「メグ、いけるか!」
モンスメグ「へっちゃらさー!んー、でもちょっと休もっかなあ」
ふらふらとこちらへ戻ってくる、6号が声掛けをして医療班の簡易治療を受けにいった。あの怪我では今日一日は走り回れないだろうな。
サカキ「勝敗こそ俺の全敗だが……きみのポケモン達も瀕死に近い致命傷を負っているようだな。ここからが本番だ」
サカキ様がさっきまでの2匹を入れていた赤いモンスターボールではなく白いボールを持ち出す、プレミアボールということはよっぽどのフェイバリットか。ということは……。
サカキ「さて、地面タイプのジムリーダー・サカキの本領と行こう」
まさに怪獣と呼ぶに相応しい
巨大な体躯と毒々しい針を持つポケモンニドキングのお出ましだ。
雄叫びと地鳴らしが、ジム全体に響き渡る。とんでもないプレッシャーが全身を襲う。
カルマ「ぼくに任せな」
カルマが飛び出す。力VS技の組み合わせという対比的なカードになった。
アリス「信じてるぜ、カルマ」


次回に続く!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の話はこちら→ NEXT