Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》 五人娘編 Part13

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ナツメ「うゅみは、たんじょうのしまにいるわ」
たんじょうのしま
カントー地方の南に位置する諸島・ナナシマよりも更に南。
どの地方にも属さない、一説には幻とも呼ばれている島。
海底に眠っているのではないとも噂されー海底宮ーとも。
アリス「都市伝説は実在したんですね」
カントー地方にも様々な都市伝説が囁かれているが、どれも信憑性の薄い笑い話や怪談ばかりの類だ。たんじょうのしまもその一つと認識していたんだが。
ナツメ「DNAポケモンと称される幻のポケモンはご存知かしら」
首を振る一行。ボクもいまいちピンと来ない。
ナツメ「レーザーを浴びた宇宙ウイルスが突如遺伝子に突然変異を起こして生まれたとされるポケモンよ。その名はデオキシス
デオキシス
見慣れない名前に困惑。図鑑で確認しようにも持ち合わせていない。
ナツメ「その遺伝子は超能力を操れるとされていて、オーロラに反応すると言われているわ。もしその遺伝子に、うゅみが共鳴したと考えたならどうかしら」
アリス「それが本当なら無くは無いですね」
ナツメ「もしかすると、ミュウツーと勘違いを起こして引き寄せられたのかもね。デオキシスはフォルムチェンジを兼ね備えていて、そのエネルギーはミュウツーにも匹敵するとされてるの」
6号「そんな怪物、実在するんですね」
カルマ「おとぎ話にしちゃ具体性がありすぎるねぇ」
ナツメ「たださすがにミュウともあろうポケモンが、自分の子と間違えることはあり得ないでしょうね。さしずめミュウツーが自身の持つ破壊衝動を抑えられずにその力を余すことなく発揮できるデオキシス相手に腕試しに行ってそれを追いかけた。この線が濃厚かしらね」
知らない間にそんな劇場ばりの超展開が繰り広げられてたとは。
グレアット「たんじょうのしま、でしたっけ。どうやって行けばいいんでしょうっ?」
ナツメ「オーロラチケットを見つけなさい。たんじょうのしまにあるトライアングルがそれに反応して船のレーダーで検知できるはずよ」
またしても知らない名前が。普通のチケットや、オーロラではダメということなのか。
モンスメグ「なにそれー、どこにあるのさー」
ナツメ「私だって知らないわよ。今話したのは全部伝承。ただミュウの遺伝子の中にデオキシスとされるDNAは発見されているし、オーロラの日に膨大なサイコパワーが確認されていることは事実よ」
あながち嘘じゃないってことか、燃える展開だ。
アリス「ありがとうございます。早速エリカ様に報告しましょう」
ナツメ「私も混ぜてちょうだい」
ぐいっと食い気味に身を寄せてくる。なかよしバッヂに搭載されたエリカ様専用通信装置で連絡を図ってみた。
《よいお天気ね……あらナッちゃんごきげんよう。その様子ですと、バッジはお渡ししたようですね》
ナッちゃん。レインボーバッジもよこしてください。
ナツメ「ええ、こっちは順当よエリちゃん。この子大した力量じゃない、私の劇団にお迎えしてもいいかしら」
エリちゃん。あとそのお誘いはお断りします。
《ご自由になさって。ところで何か御用ですかありちゃん》
アリス「ありちゃんって何ですか、働きアリのつもりですか。エリカ様は、オーロラチケットの行方を知ってます?」
《またご大層なネームを出しましたのね。確かに財団に保管しておりますわ》
おとぎ話が身近にあった件。さすが財団と称するだけはある。
ナツメ「それなら話が早いわ。エリちゃん、この子にそのチケットを貸してもらえないかしら」
《ナッちゃんのお願いなら断れませんわね。明日にでもレインボーバッジと一緒に輸送しておきますの》
あ、バッジのこと忘れてなかったんですね。よかったよかった。
しかしそんな幻のアイテムと一緒に送られるとレインボーバッジも同じように神々しく思えてくるな。まさかそれが狙い?
アリス「お手数おかけします。デオキシスが見つかったら捕獲して送っておきましょうか?」
《助かります、よりよい繁栄のためにお願いしますわね》
マスターボールを余剰にもらっているのはこうした場面に備えてだったりするのだ。伝説・幻のポケモンは代替の利かない一品もの。財団からすれば手の内に置いておきたい存在筆頭格である。
ナツメ「そうそう、この件が落ち着いたらお茶会にしない?エリちゃんと、またこの子も入れて三人で」
死ぬほどイヤだけどイヤと言うと死ぬイベント開催決定☆
《まあ!良いですわね。アリス、あなたには問いただしたい事が積もるほどありますからね、楽しみにしていなさい》
たすけて
《色よい報告を待っていますよ、では御機嫌よう》

ナツメ「ね。私が要ればスムーズに済んだでしょう、感謝なさい」
アリス「あ、はい、ありがとうございます。さすがナツメ様」
6号「苦労なさってるんですね」
カルマ「くく、いい気味だ」
モンスメグ「もっと貢げー☆」
グレアット「もう、みなさんってばっ」
お前ら3人、今日の晩飯抜き。
~翌朝~

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エリカ様からレインボーバッジと
オーロラチケットが届いていた。
よくよく考えると、チケットがあったところで場所は離島。
船も必要なはずだが、その手配は行き届いてるのだろうか。
と思いながら、ポケモンセンターを後にすると
『ヘイ!プアリトルガールズ!』

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6号「マチスさん!」
そこにはロケット3幹部がひとり、マチスの姿。
あといつからさん付けするようになった6号よ。
あ、アレか、ナンバーシックスの名付け親だからか?
マチス「聞いたぜ。船が必要なんだってな!」
アリス「回るの早いっすね。まさか出してくれるんすか?」
マチス「あたぼうよ!俺様の軍艦は砲撃はもちろん、索敵から潜水だってこなせるパーフェクトシップよ!」
おお、さすが元大佐。味方にすると心強い。
マチス「ついてきな!クチバの港に停めてある。フワライド、こいつらを乗せてやれ!」
グレアット「やーんかわいいですっ」
モンスメグ「ふわふわ~」
カルマ「付和雷同……なーる」
6号「かっこいいですマチスさん」
アリス「よぉ連れてきたな……」
クチバシティ

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グレアット「相変わらずのどかですねっ」
モンスメグ「お、ワンリキーくんおひさー☆」
アリス「遊びに来たんちゃうぞ」
マチス「カムヒア!船はこっちだぜ」
6号「か、かっこいいです。素敵!」
カルマ「おー、戦艦じゃん」
マチス「さあ乗りな、操縦は任せろ。海底宮だろうとアローラだろうとニューアイランドでも飛ばしてやるぜ」
船を飛ばすって言うか。なんなら空も泳ぎそうだな。
到着までかなりの時間を費やすらしいので、揺れの少ないVIPルームで休憩させてもらうことにした。
ゲームから映画鑑賞、疑似ポケモン勝負と娯楽が尽きない場所だ、ベッドも広いし。
6号「見てください、私の修行場があんなに小さく見えますよ」
カルマ「あんま乗り出すと落ちるじゃんよ」
ディグダのあなは別に修行場じゃねえ。
モンスメグ「しれぇ、メグは巡回にいってまいりまーす☆」
だれが司令だ。巡回という名のジョギングだろどうせ。
グレアット「凄いですね、海がこんな青くっ」
眺めると、カントー大陸を一望できる絶景だった。みずタイプのポケモンもよう跳ねとる。
アリス「任務とはいえ、旅行気分が味わえるなんてエリカ様冥利に尽きるな」
最初に任務を聞かされたときは、あくせくと地味な苦労ばかりかかると思っていたけど意外にもバトルは順風だし、こいつらと一緒だと退屈しない。
グレアット「この景色、うゅみちゃんにも味わってほしかったですっ……」
仲間を想う横顔は、海色に魅せられて切なくも情景的に映っていた。
うゅみの奴、帰ってきたら怒る前にグレアたんからの1日ハグの刑に処さないとな。

数日間、船旅を味わってのんびりしているところにアナウンスが入る。
マチス「ヘイ、プアリトルガールズ!エマージェンシーだ、今夜はストームが巻き起こるぜ」
なんだなんだ、身体中に風を集めて巻き起こすのか?
ぐおん、と響き渡る音とともに船が荒れた。
6号「うわわ、すごい圧です!」
カルマ「津波に飲み込まれたみたいな衝撃じゃんよ」
モンスメグ「おめめぐるぐる~」
グレアット「きゃあっ」
グレアットがしがみつく。ルギアがエアロブラストでも撃ったんじゃないかと思うレベルの水圧を船内全体に感じる。
アリス「詳しい報告を頼みます!」
マチス「目的地は近いぜ!だがサイコパワーがビッグ過ぎて迂闊に近づけねえ、上陸が難しい有様だ!」
アリス「ちっ、しゃあねえな!いっちょやるか!」
ボクは、なかよしバッヂを取り出すとパソコンに登録してあるプログラムコードを書き換えていく。エリカ様から一目置かれている実力を見せてやんよ!
《アクセス……認識完了》
アセンブラを世界とリンク》
《任意コード実行を発動します》
《本当によろしいですか?》
アリス「奇跡は、起こるから奇跡って言うんだよ!」
ーーー

ーーー

ーーー
マチス「おう?どういうわけか舵が取れるようになったぜ!まるでこの船だけが切り離されてるような感覚だぜ!」
アリス「そいつはよかった、直進してくださいな」
グレアット「ど、どうなってるんですかっ?」
モンスメグ「むぅ?景色がさっきとかわんなーい」
6号「まるで先ほどの景色が窓に張り付いてるような」
カルマ「スクリーンを見てる気分じゃんね」
こいつらは、こういった認識のズレを感知できない。感知できるのは実行者のボクと
なかよしバッヂの影響阻害をプロテクトしているエリカ様くらいなものだ。
あぁ、もしかするとうゅみも案外いけるかもな。
《悪行ポイントが加算されます》
ただ乱用するとエリカ様が怒るからこういったトラブル回避のためだけに抑えてるんだけどね。やろうと思えばカントーの完全掌握も出来るし。

 

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マチス「アリス!着陸するぜ!」
アリス「よしお前ら、出発だ」

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マチス「俺様は待ってるからよ、ケリつけてやりな!」
アリス「感謝します。しっかし何もないなここ」
6号「ありすさん、あれ!」
モンスメグ「ひゃー、どんぱちー☆」
島に上がると、そこは戦場となっていた。
全身が震え上がるほどのエネルギー、光っていてよく見えないがおそらくは
ミュウツーと、例のデオキシスが戦っているのだろう。
グレアット「うゅみちゃんっ……」
カルマ「きっといるんよ」
なぜだかうゅみはそこに居ると直感が伝えた。
もしかすると海に被害を与えないようにバリアーでも張っているのかもな。
波こそ立てど、島はえぐれたりしていないからだ。
非現実的な光景の中にあるその不自然さが証明しているのだ。
アリス「迎えに行くぞ」
戦場に立った瞬間に、異物混入を感知したかのように2匹同時からの爆撃で招待される。わざと外してくれたようで、そこに理性と同時に威圧を感じる。

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デオキシス『貴様は誰だ』
ミュウツー『私の邪魔をする気か』
アリス「そんなつもりはないさ」
肩をすくめて2匹に返答をする。プレッシャーに負けそうになるが、隣でグレアットがボクの手を強く握りしめてくれるおかげで怖くない。
デオキシス『ならば立ち去れ。人間の来る場所ではない』
アリス「立ち去るさ、うゅみを返してくれたらな」
ミュウツー『キサマ、我が母のマスターか』
予想通り食いついてきた。単純な構造よな。
アリス「ボクの用事はそれだけだよ。いるんだろ?」
指先からサイケ光線が足元に飛んできて、思わずよろめく。
ミュウツー『ならん。私の目的は母を超えること、その絶好の機会に宇宙から邪魔が入ったのだ。まずはこいつを仕留めてから、それから母を倒す』
デオキシス『邪魔をしてきたのは貴様らの方。何人たりともこの地を脅かさん』
なるほど。デオキシスの住処がここなんだろう、デオキシスからすればミュウ親子こそ侵略者だから排除したいわけだ。
アリス「オーケーわかった。ミュウツー、アンタの最初の願いは叶えてやる」
ミュウツー『なんだと?』
姿を現したのが運のツキよ、デオキシス。ボクはなかよしバッヂを駆使してマスターボール自体の認識を異次元に送ってデオキシスめがけて発射してやった。
デオキシス『な、これは……』

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どんなもんだい、ちょろいもんよ。
いかに幻といっても野生で出てきてくれればこっちのもん。
さ、これは貴重なサンプルだからエリカ様に転送しておこうか。
ミュウツー『貴様、何をした』
アリス「これで親子水入らずだろ?」
しかし無用な手助けをされたのが気に入らないのかミュウツーは踵を返す。
ミュウツー『興醒めだ。貴様のような者がいるから、ポケモン達はその特性、知恵、習性を十二分に発揮できず人の思うがままに支配されていくのだ』
グレアット「そんなことありませんっ!確かに悪い方はたくさんいます、自分の都合のいいようにポケモンを扱うようなそんな方も……でも、この人は違うんですっ!私達に希望を与えてくれましたっ!」
ミュウツー『なんだと……希望?貴様、人間の姿に変えられたというのに何故そのような事が言える?ポケモンとしての誇りを失ったのか!』
グレアット「いいえ。私はポケモンですっ、伝説の守り神・ファイヤーとしての心を宿したままのポケモンですっ!」
ミュウツー『ならばなぜ人にくっつく?なぜ戻ろうとしない?なぜ復讐をしない?』
グレアット「人の姿になった時は確かに戸惑いましたし、怒りもしました。この眼光で睨みを効かせて何人かの研究員達を気絶させたりもしましたっ」
自分よりも強大な存在であるミュウツーに対して臆せず続ける。
グレアット「ですが、人の姿になって分かった事があるんです。ポケモンの姿だった時は、人はなんて弱いんだ。寄り添わないと生きていけないか弱い存在だと思っていました。でもそれは間違いでした。人はどんな生物にも、生物ではない物質にでも、作り出した概念ですら等しく愛を注ぐことの出来る愛情に満ち溢れた存在なんですっ!ポケモンと違って、種族の異なる相手にだって愛をつぎ込める、素晴らしい存在が人なんですっ!」
愛に生きて、愛に死ぬ。それは人間の真理かもしれない。
ミュウツー『くだらん!愛などいっときのまやかしに過ぎん、気が変われば簡単に捨てられるのも人間だ。そこまで落ちぶれたかファイヤー!』
グレアット「ミュウツーさん。今のあなたには憎しみと怒りしか見えていない、悲しい子供にしか思えません。あなたを産んだうゅみちゃんは、きっとそんな事は望んでなんてっ」
ミュウツー『ふん、付き合いきれん。母も人間の姿に堕落して失望した。そんな母を倒したところで、私は満たされん。ありすよ、母は返す。次に会う時はあるべき姿に還してかかってこい』
そう言い残すと、ミュウツーは空に穴を開けどこかへ去っていった。捕獲してやりたかったが、何故かさっきのマスターボールを認知していたようで同じやり方が通用しないと踏んだ。ふとあいつが居た場所の下に視界を移すとぐったりと横たわっているうゅみが居た、急いで駆けつける。
アリス「うゅみ、しっかりしろ!」
グレアット「うゅみちゃん大丈夫ですかっ!」
エネルギーを使いすぎたんだ。あの2匹の被害を最小限まで食い止めていたんだ、その消費量は命に関わるレベルかもしれない。
マチスの船へ運ぶと、医療チームに担ぎ込まれ緊急治療が始まった。
ポケモンセンターと同様かそれ以上のヒーリング能力を持ってしてもギリギリの状態らしい。
それにしてもミュウツーが言っていたことが気にかかる。
今やヒトとポケモンは共存しているのが当たり前だが、かつての6号のように兵器として使われたりグレアットのようにテイのいい扱いをされていたのもまた事実。
だが、グレアットが言うように等しい慈愛を与えられるのも事実でエリカ様の真の目的は地方の平和を守り続けること。ポケモンを擬人化するなんてとんでもない実験だと思っていたけど、そういった真理に気づいてもらうために考えていたのかもしれない。
だとすれば究極の幻想、理想郷のような世界を……。
マチス「アリス!もう落ち込まなくていいぜ、ミュウは無事だ。ミラクルみてえな生命エネルギーのおかげで、あっさり回復しちまった。明日には元気だろうぜ」
アリス「リアリィ?そりゃ良かった!ったく、心配かけさせやがってこいつー」
まぁいい。今はうゅみの無事を祝おう。
落ち着いたら、任務再開だ。いよいよサカキ様と対面できるんだからな。

《経験値が加算されます》

 

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次回に続く!

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