Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part51

君と見た世界
さあ 始まりの鐘が鳴る
We are fantastic dreamer!

無邪気に手渡された 理不尽な未来を
遊び尽くせる 覚悟が出来たかな?

時計の針は見ない
心が刻むリズムだけ信じてみてよ

弾むリズム for Life 繋がってくんだ
ほら ココを信じていいんだよ

素晴らしき世界!!
さあ 始まりの調べを鳴らせ
全力で今を使い果たせば

色付くのさいつだって
限界さえも追い越して 君の手だけ握って
そうさ We are fantastic dreamer!

-Ride On The City-

使命も、物語も、導もなくなった世界の下。

アリス「ゆん!行くぞ!」
ゆん「よくってよ!」

ゆん HP334/334

スズラン「……おいで!」
パティエ「こーんっ!」

ろこん HP214/430

アリスとスズランの試合は熾烈を極めた。
互いに残る戦力は、パートナー1人のみ。

ボクにとってははじめての自分の戦い、
スズランにとってははじめてのボクとの戦い、
どちらにも負けられない信念があった。

今ここに決着の火蓋が切って落とされる!

アリス「集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!飛翔せよ、ゆん!」
大いなる風に導かれた翼で羽ばたいてパティエへと流れていく!
スズラン「百鬼果てまで、その先までも!パティエ!」

あいての パティエは じこさいせいした!

ろこん HP429/430

ちっ、アークが身体を張ってまで与えてくれたエクスプロージョンをたった1ターンで癒されてしまったか……だがそれも想定内よ。
ゆんが十八番とする疾風を吹かせてやるだけ!

アリス「トライアタックだっ!」

ゆん「砕ッッッ!」
ゆんの トライアタック-氷の型-!
こうかはいまひとつのようだ……
ろこん HP427/430

スズラン「そんな攻撃……、っっ!」
ろこんは こおりづけになった!

トライアタックにはでんき・こおり・ほのおのエネルギーが含有されており、そのうち氷のエネルギーだけを多めに引き出してやることで、炎であっても凍結させてしまうほどの冷却性を持った風を吹かせることに成功した。

スイとのVTRで培ったノウハウは最後の最後まで活用させなきゃね。
わらわに跪きなさぁ~いん♥なんて空耳まで聴こえてくるみたいだぜ。

スズラン「パティ!体温を上げて!」
あいての ろこんは こおりづけでうごけない!
スズラン「まだダメね……!」

アリス「勝機!」
ゆん「遊撃の羽根よ、舞い上がり堕ちなさい!」

ゆんの ドリルダイブ!
きゅうしょにあたった!

ろこん HP369/430

ゴッドバードと大差ない攻撃力じゃこれくらいしか削れないか……これ以上のダメージを望むには弱点を突くかメグのエレエレクラス、グレアのおくりびクラスの絶大な威力が要求される。後者は不可能として、前者だったら選択肢が残されている。

ゆんには可能な限りドリルダイブで頑張ってもらいたいところだけど、ろこんの氷が溶けて自己再生されたら全部水の泡になってしまう。
いちかばちか、一縷の望みに託すしかないか……!

スズラン「パティ!」
あいての ろこんは こおりづけでうごけない!

アリス「ゆん!貫けぇ!」
意を決したボクはゆんに命令を下す!
ゆんは2枚の翼を一枚に折り畳み、翼の先をドリルのようにして高速で捩れば、台風と思い違いそうなほどの風圧が巻き起こり、その翼の刃を大地へと突き刺した!

ゆん「鳥と天使の2つの道が!捻って交わる螺旋道!
昨日の敵で運命を砕き!
明日の道をこの羽で掴む!
私を!!!
誰だと思っているのかしらあぁぁっ!!!」

ゆんの ドリルライナー!

きゅうしょにあたった!
こうかは ばつぐんだ!

ろこん HP198/430

ゆん「天元突破よ」
パティエを的確に突き破ったゆんは静かに翼を翻して上空の定位置へと帰っていく。

スズラン「すごい!すごいすごいすごい!ほんっと~にすごすぎるよアリスたん!!こんなに追い詰められたのはいつ振りだろ……私いま、とってもトキメいてる!!ね、パティ!」
あいての ろこんの こおりがとけた!
パティエ「こぉ~んっ!」

ボクの成長に感動してくれているスズランは本当に最高のトレーナーの姿だった。悔しがったり怒ったりして我を忘れることは決してなく、どんな状況だろうと理知的で情熱を宿しており、自分自身を見失ったりしない心を持ち合わせているのだから。
なんだかこっちも胸が高鳴ってきた、萌えもん勝負ってこんなに楽しいんだって教えてくれたから!

アリス「泣いても笑っても次の一撃で終わらせるさ」
スズラン「できるかな?」
ゆん「やってみせるわ!」
パティエ「こんっ!」

あいての スズランの 9ほんのしっぽ!
基本エネルギー18種類のうち半分の9種類のエネルギーが凝縮された結晶体の波動が光球となって、ゆんに乱射されていく!
エイムは完璧で、今度こそ回避できるまぐれは起こり得ない!

ゆん「キャアアーっ!!」
アリス「ゆん!」

スズラン「これでも……まだキミたちの絆には足りないか」

こうかはばつぐんだ!
ゆんは アリスを悲しませまいと もちこたえた!

ゆん HP 1/334

1ターンで戦況は逆転された、一気にHPMAXの状態から瀕死寸前の1まで体力を奪われるほどの破壊力は、素人の数発よりも玄人の一発なんて故事成語を造りたいくらいお見事な攻撃だった。

その猛攻に負けじとゆんは再び天空から双翼を織り成す!

ゆん「因果の輪廻に囚われようと!!
残した想いが扉を開くわ!!
無限の宇宙が阻もうとも!!
この血のたぎりが宿命を決める!!

天も次元も突破して!!
掴んでみせるわ!!

私の道を!!

No.22!!
オニドリル!!!

私たちを!!
誰だと思っていましてっ!!!

ゆんの ドリルライナー!
きゅうしょにあたった!
こうかは ばつぐんだ!

ろこん HP7/430

パティエ「こぉん……っ!」
悶え苦しみ方が変わった。明らかにさっきまでと違って致命傷を受けたパティエ・ローレルは地面にぱたぱたと這いつくばって尻尾を力なく揺らしている。
ここまで痛みを伴えばもう自己再生をしたところで三度目のドリルライナーを耐えることは不可能だろう。

スズランは駆け上がってパティエを抱きしめた。
スズラン「パティ……安心して。私がついてるから」

尋常ではない様子にゆんも地上に降りたまま空を飛ばずにふたりを見守っていた。

アリス「なに戯れてるんだ?……まだ勝負はついてない」
ゆん「ちょっと!」
スズラン「いいの。アリスたんが言う通り……まだパティは戦える」

アリス「バトルが終わったらパティたちを治療してあげなきゃいけないよな。……だから、今聞いてもいいか?」
その訴えにグッと涙をこらえたスズランは頷いて、パティエを抱きかかえたまま昔話を始めてくれた。

スズラン「どこからお話しようかな……あれはまだ、私がトレーナーになる前のことだった」

ーーーーーーーーーーーーーーー

-回想-数年前のできごと

私はブルーさんよりも少しだけ早く、この宇宙この星のタマムシシティで生まれたの。パパもママも毎日萌えもんの研究とか鍛錬に明け暮れてたから忙しくってね、私はいつもひとりぼっちだったわ。

そんななか、パパとママに褒めてもらいたい一心で私はある日、勇気をもってタマムシの外れにあるお屋敷に入ってね。そのお屋敷はもう使われなくなった廃墟みたいな場所なんだけども、噂で色違いのピカチュウが眠っているって聞いたんだ。
目を盗んでパパのお部屋にあったモンスターボールをいくつもリュックに詰めこんで、そのピカチュウを捕まえて帰ってきたら褒めてくれるって期待してね。

いま思ったら本当におバカさんだったよね、だっていくつもの迷路を進んでいった先に本当にそのピカチュウがいたんだけど……私には萌えもんがいなかったんだから。ピカチュウは容赦なく私に襲いかかってきて、本当にもうダメかも!って思ったその時だったんだ。
ある萌えもんが颯爽と現れて、そのピカチュウを返り討ちにしてくれたんだ。
ボロボロだったのに私ったら調子のいいお子様で、そのピカチュウをちゃっかり捕まえちゃった。あ、普通の色違いだからさっきのぴかちゅうじゃないよ?

で、そのある萌えもんっていうのが……パティ。この子だったの。
どこから迷いこんできたのか、それともお散歩中だったのか知らないけども、パティは泣いていた私に寄り添ってくれて……私と一緒についてきてくれたんだ。

もちろんその日は大目玉だったよ?
そりゃあボロボロになって帰ってきた娘が、ろこんとピカチュウを連れて泣きながらおうちのドアを叩いてたんだから。

でもおかげで、私はひとりぼっちじゃなくなった。
それから私は両親の勧めでタマムシのスクールに通って、トレーナーとしての知識を身につけて、パティと旅をすることを決めたんだ。
あぁ、ピカチュウはお留守番することになったよ。なんでもあのお屋敷で何かを守っているみたいだから離れられないんだって。

それから私はトントン拍子でジムバッジを集めてセキエイリーグまで一か月もかからないで制覇しちゃった。セキエイ学園からもっと色んな地方を回って世界を見てきなさいって、パスポートとかチケットを受け取った私はさまざまな地方中の萌えもんを図鑑に登録して、リーグも制覇して、伝説の萌えもんだって全部捕獲してきた。

もう私の前に敵は居なかった。
どこに行ったって私を見れば、みんなが尊敬のまなざしを向けてくれたしファンクラブだって出来上がってて、悪の組織も私には近寄りもしなかった。

でもね、私と対等に相手をしてくれる人はいない、その意味と同義だったんだよ。
私にはパティがずっと一緒にいてくれてるし、寂しくはなかった。

けど……お友達が欲しかった。
尊敬とかファンとかじゃなくって、ただお友達が欲しかったの。

まるで人生の教科書があるみたいに歩んできたつもりだったけど、裏を返せば私にはすべての萌えもんと出会える才能しか神様は与えてくれなかったのかも。

そんなときにね、ひょんなことからこの星には最初の血族が生まれる前から生きていた萌えもんの存在を知って、そのひらがな萌えもんを追っていくうちに、萌えもんだけじゃなくてきっと人間にもおんなじような生き残りがいるんじゃないかなって思ったんだ。

ひらがな萌えもんの強さがデフォルトだった当時だったらさ、現代以上にハイレベルなトレーナーなんだって思わない?
それに、そんなに強い人だったら、きっと私を格上としてではなく平等か、プライドが高かったら格下に思ってくれるかもしれない。

妄想だっていいからお友達を作りたかった私は七英雄の話を聞いていろんな宇宙へと渡り歩いてきたわ。そしてようやくその情報が真実だって掴んだ。

うん。私はアルセウスにお願いをしたの。

……あとは知っての通り、ね。私はアリスたんと出逢って、アリスたんがもっともっと成長して才能を開花してもらえるように物語の脚本を立てた。

そしたらアリスたんったらイメージしてたよりもす~~~~~っごく天才なんだもん。この星でもたった1週間足らずでうゅみちゃんとかメグちゃん達と出会ってからすぐにリーグ制覇しちゃうし、あっちでもあっさりとやぶれたせかいで七英雄に認められて……私なんて、凡才に過ぎなかったんだって思い知らされちゃった。

え?この星で冒険した記憶とかグレアちゃんたちとの初対面の記憶が無い?……ちょっとそれは私にも分かんない。でもわかんないことはわかんないままでいいと思うんだ。ぜんぶ知っちゃってたり、ぜんぶ覚えちゃったりしてても……切ないだけ。

人はね、忘れるから生きていけるんだから。

ーーーーーーーーーーーーーーー

ゆん「……そうね。もし思い出したのがきっかけでアリスちゃんが消えたりなんてしたら……」
アリス「んなわけあるかい、って言いたいけどこう何回も常識を逸脱してきてるとあながち有り得そうだからな。……お前らとの出逢いはそっと仕舞っておくさ」

スズラン「……ごめんね、アリスたん。私のわがままで」
スズランはパティを撫でながらうつむいて謝罪をしてきた。そんな彼女に対してボクはありのままに素直な気持ちを返してあげた。

アリス「いーよ。むしろ感謝してる。こんなにも素晴らしい仲間たちと世界に出会えたんだからな、スズランが居なかったら生まれてこれたかどうかすら分からなかったんだし」
ゆん「アリスちゃん……!」
ボクから感謝されると思ってなかったのかスズランはとうとう目を潤ませる、きっと長い間萌えもんマスターの頂点として弱音を吐けなかった立場だったんだろう、二筋の涙を流して立ち上がると、ボクの方へ歩み寄ってきて腕を差し伸べてくる。

スズラン「最後のわがまま……ううん、私のお願いを聞いてくれますか?」
シロに願ったのは、願うための願い。
ボクに願うのは、本当のお願い。

スズラン「私の、お友達になってください」
そんなの断る理由がなかった。それどころか大歓迎だった。
だって……だって、ボクにとってもはじめてのお友達なんだから。
アリス「それくらいの願いのために宇宙を動かすなよ。……ほら、ボクと今日から。いいや、出会ったあの日からもう、お友達だよ」
ボクとスズランは、手を取って握り合った。

スズラン「えへへ。うん!ありがとうっ!アリスたん♡」

彼女の笑顔は、ナナの太陽よりも、アークのエクスプロージョンよりも、シロの光よりも……ずっとずっと、かけがえのない尊い眩しさでいっぱいだった。


ふたりはトレーナーの定位置に戻った。
今度こそ決着を付けよう。お友達として。

アリス「ゆん。準備はいいな」
ゆん「えぇ、よくってよ」
スズラン「パティ。もう1人じゃないよ」
パティエ「こーんっ!!」

アリス・スズラン『行くよっ!!』

あいての ろこんの エボルブフレア!
パティエは目にも映らない速さで火炎とともに突っ込んでくる!
…………よりも、速く。

ゆんの ふいうち!
敵の攻撃本能に察知して背後から回り込み一撃を与えた!
とっておきとして秘蔵していた4番目の技を繰り出してやったのだ。

ろこんは たおれた!
ろこん HP0/430
-ろこんの 戦闘不能が検知されました-

スズラン「……うそぉ」
アリス「ボクのポリシーは相手の虚をつくこと。お友達なのにそんなことも知らなかったのか?」
スズラン「あはは……ほんと。ほんと、敵いっこないや」

ボクとスズランは握手を交わして、勝敗の幕を閉じた。

-勝者:アリス-

シロ「美しい試合でしたーーー
お二人ともお見逸れしましたよーーー」

後ろからずっと観戦をしていたシロが、深雪よりも白い純白のローブにミルキーウェイの星屑を散らせながら、透き通ったとか透明感があるといった比喩ではなく透明そのものの声色を響かせて割って入ってきたことでいよいよボク個人としてのはじめてのバトルは終わりを告げたのだと実感させられた。

アリス「ゆん、帰ろう」
ゆん「そうね」
スズラン「私も一緒に帰る~!」
アリス「帰る場所あるのか?」
スズラン「なに言ってるの。私のおうちで寝泊まりしてる癖に」
アリス「……なんですと?」
ゆん「あら。あの空き家ってスズちゃんが引き取ったあとのお屋敷だったのね」
スズラン「Exactly(そのとおりでございます)」

……つまりボクが眠っていたやたらファンシーなあのお部屋ってひょっとして、スズランのお部屋だったのか。スズランのベッドで寝ていたってこと……?

スズラン「今夜は一緒に寝ようね~♡」
アリス「ちっくしょ~!!!」

かくしてボクの物語は終わりを迎え、使命と希望、そして愛と勇気の大作戦に満ち溢れた冒険も幕を閉じるのであった……。

ーーーーーーーーーーーーーーー

一方その頃

ギンノ「どういうことよ?アスフィアが居ないじゃないの!」

この私が危険を冒してまでスフィア遺跡を探索しに来てあげたっていうのに、レディーへのおもてなしが成っちゃいない腹立たしいギミックを超えてきてみれば、アスフィアが眠っているなんて伝承は白々しい真っ赤な嘘だったって訳?

ブーツで地団駄して憤慨していると、ビアンカとクオーレのふたりが何かを見つけたらしくて目を丸くしていたわ。

ビアンカ「ギンノちゃん見て!」
クオーレ「なにか文字が刻まれているな」

ギンノ「そんな高い場所見えるわけじゃない。ネクロシア、乗せてちょうだい」
ネクロシア「ブーーーーーーーーーン…………」

私はネクロシアの大鎌を逆刃にしてもらってそれに乗ると、ふたりが見つけた石碑まで空高く運んでもらったわ。
ちゃっかりとオルティナも膝元にくっついてきてて興味津々の様子ね。
石碑に書かれた文字を解読してみようと試みるけども、現代では失われたスフィアシティの独自言語で書かれていて、当時を思い出しながらゆっくりと解き進めていく。

ビアンカ「もしかしたらアスフィアさんの居場所が書いてたりして!」
クオーレ「不在の理由が分かるかもしれないな」
オルティナ「ナンダカオモシロソウ!」
ギンノ「お黙りなさいな。ええっと……」

こころのしずくは にひきのなみだなの

われわれのせんぞは こころのしずくに
ひめられたパワーを ラティをつかって
ひきだす そうちを つくりあげました
このしまをまちをせかいをまもるために

あしきものがこころのしずくをつかうと
こころは よごれ うしなわれるだろう
このしまと まちと せかいとともに…

そしてまもりがみのこころのしずくとは
     の たましいそのものなのだ

アルトマーレとスフィアシティで読んだ本の内容とほとんど一緒じゃないの。でもなんだか微妙に内容が食い違っているわね、それに最後の一行……。

ギンノ「肝心なところが読めないじゃな……きゃあっ!?」

私は掠れている文字の部分に手を触れたその瞬間に、赤い、紅い、赫い、ルビーだかハンコックレッドだかの宝石みたいな色をした光が発生して、私と周囲にいるみんなも包み込まれてその光に吸い寄せられてしまったわ!

これってひょっとして、アスフィアの残留思念か何かかしら!?
まばゆく暖かい光を浴びていくうちに、走馬灯のような風景が頭に直接流れ込んできて……徐々に思い出していたわ。

どうして……忘れていたのかしら?
強くなっていく光と対照的に意識がだんだんと微睡んでいったわ……。

ーーーーーーーーーーーーーーー


やがて たちまち しずまりかえり
 おもいえがいて たどっていくのは
びっくりどきどき ふしぎの せかいを
 ゆめの 子どもが どんどん ゆくさま
とりや けものと おしゃべりしながら――
 じぶんでも なんだか ゆめうつつ

するうち ものがたり いきづまり
 おもいつきも そこついて
そこで へとへと ふらふらのため
 なんとか ひとまず うちきろうと
「つづきは またこんど――」「いまが こんど!」
 と おおごえで はしゃがれる

かくして ふしぎのくにの おはなしが うまれ
 こうして ゆっくり ひとつずつ
へんてこな できごとが ひねりだされて――
 そして ここまで はなしは おしまい
ふねを おうちへ むける にぎやかな いちどう
 うしろで おひさま しずんでいくよ

アリス! おとぎばなしを どうぞ
 それから やさしい おててで そなえてほしい
おもいでという ひみつの いとで
 ぬいこまれた こどものときの ゆめに
いまはもう しおれてしまった
 はるかとおくで つんだ はなわ

その話は、遠い昔のふしぎの国のゆめそのものだったり?

すなおに悲しむその子たちのそばで、自分もと、すなおにはしゃぐその子たちにかこまれ、楽しかったと気づくのかな、

自分の子ども時代の思い出、あの幸せな夏の日々に。


ーーーーーーーーーーーーーーー


-タマムシシティ一角-

スズランが住んでいたお屋敷のなか。

ゆん「そっちがグレアちゃん、そっちがろくちゃんね」
モンスメグ「はーい!メグはプライベートルームと配信ルームの2部屋を所望☆」
ゆん「えぇ?……だったらアリスちゃんとスズちゃんは相部屋でもいいかしら?」
スズラン「くふふ~♡大丈夫です!!」
アリス「ぜったいやだ」
ゆん「じゃあ相部屋ね。メグちゃんはその部屋使っていいわよ」
モンスメグ「やったぃ!」
アリス「ボクの意思はないんですか?」
6号「さっそく魔法陣を張っておきましょう」
グレアット「私も神棚と結界を用意しなくちゃっ」
アリス「置いていくなぁ~~~」

あれから間もなくして、この導なき原初の星で生きていくためにスズラン本人からの許可を得て、タマムシジムの西側に位置するお屋敷を居住地とすることになったボクたちは部屋割りからリフォームの準備、DIYやデコレーションの買い出し等々をしている最中だった。

決定権はすべてゆんとスズランにあるため、ボクはそんな独裁パーティでなぜかカースト最下層に位置付けられて全部言われるがままであった。
9歳の子どもに権利も主張もないんだ。はやく大人になろう。
大人になったら思う存分やりたい放題してやるんだ、にひひ。

そんな想いを胸に秘めて、泣く泣くスズランと相部屋にされたルームへ入ろうとした矢先にインターフォンが鳴り響いてきた。

ゆん「あら?こんな廃墟に誰かしら」
スズラン「廃墟!?」
アリス「ボクが出ていってやろう」
ゆん「いたずらしちゃだめよ」

ボクはゆんと一緒に玄関へと出て、背伸びしてようやく届く高さにある扉のノブに手を伸ばして開けてみると……目の前には見覚えのあるパーティの姿があったのだ!

アリス「勧誘だったらミズキで間に合ってま……」
ビアンカ「リースお姉ちゃ~んっ♪」
アリス「ぴにゃ!?」
ゆんが後ろからドアを押した瞬間にその隙間からビアンカが飛び出してきた!
ビアンカはいつも通りウェイトレスの格好をしていて、キラキラとした銀髪と黄色いつぶらな瞳が目の前で輝いていた。

ギンノ「失礼でしょうビアンカ。メルヘンロリータ相手であってもマナーと敬意は守らなきゃ」
なんかさりげなくDisられてる?

クオーレ「急な訪問で申し訳ないな。お前らの痕跡を追っていたらここまで辿り着いた」
ゆん「(ドキッ♡)いい、いいえ。おかまいなくってよ。ギンノさんお久しぶりね、まだ荷造りの途中だけれどリビングはティータイムの支度ができているから、上がってちょうだい」
ギンノ「いいのかしら。だったらお話も色々しておきたいし、お邪魔させてもらうわ。ほらビアンカ、おどきなさい」
ビアンカ「ちぇ~……リース、あとで2人になろうね
クオーレ「ビアンカ
ビアンカ「分かってるってば~」

そうしていそいそと合流を果たしたボクたちは、10人単位の規模であってもまだ広々とゆとりのあるリビングで大集合して、アスフィアのことからこの星に渡ってからのことなどを情報共有をしながらティータイムに現を抜かした。

さすがは聡明かつ理解力の高いギンノで、夢見話にしか思えないような話であってもしっかりと自分なりの理論や推測を展開してくれるおかげで非常に話が弾んだ。

これまではライバル関係だったから敵視し続けていたものの、味方になってくれれば心強い存在だ。それにお嬢様あるあるなんていう限られた者にしかできないトークもできてちょっぴり嬉しい。

青空が夕焼けへと色うつろい、ディナーも共にしたところでギンノ達は踵を返す。どうやら彼女たちギンノサイドも、この星に認められた以上は衣食住を育むための場所を探すついでにトレーナーとして更なる腕前を磨きに各地方を渡り歩くらしい。
ギンノのことだから色々上手くやっていけるだろう。

ビアンカはどうするか迷った結果、どっちを選んでもクオーレが迎えに来れるようなのでビアンカひとり居残ることに相成った。

アリス「さてと……」

ギンノ達を見届けたのちにまた慌ただしく部屋中のセッティングの駆け回るみんなをよそに、ボクはひとりバルコニーに出てタマムシシティのしずむ夕陽を見送って眺める。思えば冒険をしてきた日々は数カ月くらいのもので、まだ10の誕生日も迎えていなかった。

でもその道のりは平坦な方が少ないくらいの険しい山道みたいなデコボコの連続で、数多くの出逢いと別れを繰り返してきたんだ。頭の中にいろんな奴らの顔が思い浮かんでくる。

……はじめて、はじめてボクは後ろを振り向いていい気がした。
振り向きたくなっても、振り向いちゃいけない旅を選んできたから。だから、ボクは夕陽をバックにして首だけを後ろに……
振り向こうとしたその刹那。

目の前にはビアンカがいた。

ビアンカ「リース」

幼さが残るその声はとても甘美で、後ろを向くのを躊躇させるには充分すぎるほどの可愛い仕草を見せてきた。

アリス「……おかえり」
ビアンカ「ただいま。……リースにとったらすぐだったかもしれないけど、ボクにとったら半年以上も待ち焦がれてたんだよ?」

ああ、宇宙が違えば流れる時間も違うんだから当たり前の事象か。ギンノから聞いてた話からしてもそれこそボクと別れてから随分と時間が経っていたに違いない。

アリス「……ボクもそれくらい待ち遠しかった」
ビアンカ「ふぅ~ん?リースは2,3日くらいしか経ってないのに、そんなにボクと会いたくて会いたくて震えてたんだ?」
アリス「ゆんと別れた時なんてほんとうにだいぶ待たされたからな」

まぁ、ゆんの場合は記憶そのものが消えていたおかげで意外と一瞬で再会できた感覚でもあったが。
ゆんの名前を出すと露骨に不機嫌そうにじと~っと見つめてきた。

ビアンカ「うわサイテー。恋人と話してるときにほかの女の子の話するなんて」
アリス「だれが恋人じゃい」
ビアンカ「がーん!ボクとは遊びだったの!?」
アリス「そうかも」

ビアンカ「マジで最低。もうボク帰るね。ばいばーい」

ジェット機のような垂直に伸びる翼を背中から広げてフェンスから飛び出そうとする彼女を背中から抱きしめて引き止める。

ビアンカ「きゃ」
アリス「勝手に行くんじゃない」
ビアンカ「ギンノちゃんと旅しま~す」

これまでの過ごした時間から比較しても本当にギンノの処へ戻りそうだったから、ボクはぐいっと力を精一杯込めて引っ張ると両肩を掴んで、その瞳をジッと一点に見つめた。

アリス「お前はボクのモノだ。一緒にいろ」
これ以上パーティを離脱させたくはない。その一心でビアンカを引き留めてやると、ボクの言葉に心を射抜かれたのか、瞳の中にハートを作って思いっきりハグしてきた。

ビアンカ「リースのもの……ボクはリースのもの……♡」

アリス「うん……?そうだけど、どうした……?」
ぎゅっと抱擁されたまま萌えもん特有の力強さで離れようにも離してはくれず、どうにか距離を置こうと動くとスカートの裾で足を滑らせてしまって、ビアンカが咄嗟にボクの後頭部に両腕を回してかばってもらうと、彼女側から押し倒される体勢になった。

ビアンカ「もう……ボクがずっとず~っとそばにいなきゃダメなんだから。
あの時言ったでしょ?……リースが大好きだから追いかけてきたんだもん」

あの時っていうのはギンノとの戦いにおいて、ボクに対して掛けていた心理定規を解いて、実はビアンカラティアスだったことが判明した時のこと……。そういえば確かに、ビアンカはわざわざ単独でボクと会いに駆けつけてくれたんだったっけな。思えばあの頃から愛されていたのかもしれない、な。

改めて彼女へ想いを伝えようと口を開こうとすると、あっさりと主導権を奪われてしまった。

アリス「ビア……っ、ん……ちゅ」
ビアンカ「ちゅぅ……チュ……大好き、ちゅ」

夕陽は傾き、星がまたたく夜空の下、ボクたちはリライブを交わした。
今度はもう、彼女から視線を逸らさないように願いをかけた。

道標にも、千年彗星にでも、ましてや星座の導きにでもなく……。
ビアンカのこころに直接。

最終回へ……

















ギンノ「ひとつだけお願いがあるわ。
いなくなってしまった人たちのこと、
消えてしまった世界のこと……。
もしもみんなが別々の世界で、別々の道を歩んでもね、
ここに来るまでの物語だけが思い出じゃ、ないでしょう?
だから……時々でいいから……、
思い出してあげてちょうだい。」