※本作品はRide On The City-桜花の虹彩-編を読了してからお読みになっていただくとよりスマートに読み進められます、でも読んでいない方でもポケモンへの知識があれば大丈夫です。
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1･2･3で飛び込め！
いつか描いた未来が
ボクのポケットにあるから
はじめましては いつだって初めてさ
ためらうことなど
ナイ！トライ！
登場人物の紹介コーナー
グレアット「きゃっ、なんですかいきなりっ！」
モンスメグ「まみむめぐ☆」
6号「ちょ、コスチューム中なんですけど！？」
ゆん「騒がしいですわよ？」
ビアンカ「も、萌え萌えキュン？」
アリス「どうしたの、また撮影ごっこ？」
モンスメグ「ばっちぐー☆みんなの無意識いただき！」
ハンディカメラ片手にはしゃぐ彼女、そこでその一部分で反射交感されていた恋しい意識が、次第次第に遊離して、空想、妄想と凝り固まった挙句、執念の蛇式の夢中遊行を初める感覚に微睡んだような気がした。
6号「ヴィエ？！ととと撮ったんですか！私のは絶対口外しないでくださいよ！！」
焦っているのだろう、紫咲色で統一されたベビードール姿のまま憤慨する6号。
モンスメグ「えー？魔力魅力不可抗力じゃなーい？メグちゃんには美少女無罪が適用されますけど☆」
6号「ごめんなさいが聞こえません！粛聖爆裂エクスプロージョンしますよ！」
わーわーきゃーきゃー
グレアット「もうっ！お祈りに集中できないじゃないですかっ！」
2人の騒ぎによって、巫女装束を纏う灼眼灼髪の少女が文字通り飛んできた。
ますますヒートアップするじゃれあいにいよいよストップがかかる。
ゆん「皆さんクッキーが焼けましたわよ、お席について」
ビアンカ「ティータイムだよ～！」
ふっくらした胸元が覗くほどゆったりとしたローブをゆらめかせながらテーブルに香ばしさを提供するゆんと、本業のウェイトレスっぷりをプライベートでも発揮するビアンカの呼び止めによって3人とも着席。とばっちりグレアット。
これがボクたちのいつもの日常。毎日が朝からフェスティバル。
あれから一人の新米トレーナーとして始まったボクの冒険はまるで御伽噺のような日々だった。
"ゆん"とニックネームを付けたオニスズメだけを連れてカントー地方を駆け巡るうちに彼女は気がつけばなぜか美しい女性の姿へと進化を遂げちゃってみたり、
決して挫けず、負けないこと逃げ出さないこと投げ出さないこと信じ抜くことという信条を掲げて、二人で手を合わせてポケモンリーグを殿堂入りしてみたり、
そういった経緯がきっかけなのかボクはカントー地方ではちょっとした有名人になっていて、今ではタマムシマンション2階の全ルームまるまるボクたちの居住地にさせてもらっている。
これに関してはエリカお姉様からのご褒美という側面もあるけどね。
そして漁夫の利といわんばかりに元々アイドルへの憧れがあったメグと、6号の妹アイスとスチルは配信者デビューを果たしてみたり。さっきのメグの一連の行動はきっと配信に使うためのネタなのだろう、あんまり知らないけど。
ちなみにアイスチルの2人組は「うるさいから」のシンプルな理由でボクたち6人の共同ルームから離れた端っこのルームで暮らしている。
スチル「っくしゅん！朝はまだ冷え込むわねッ……」
アイス「……ファンからの……うわさかも……」
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ビアンカ「リースお姉ちゃん、支度してる？」
アリス「やば。まだかも」
グレアット「私がお部屋に用意しておいてますよっ」
アリス「ほんと？さんきゅー」
ビアンカ「もー……」ゆん「ふふ、姉妹みたいね」
支度というのは、ビアンカがウェイトレスを務めているカフェの制服やらなんやら。
殿堂入りを果たしたあとに、クチバで立ち寄ったカフェで知り合ったビアンカからの提案で引き抜かれるかのような勢いで現在はボクも一緒にウェイトレスとして日々を送っている。
あの時のビアンカの強引さときたら、まるで昔読んだ絵本のようだった。
９歳同士で同い年なのだけれど、なぜか彼女からはお姉ちゃんって慕われている。エリカお姉様の周りからずっと妹のように可愛がられて過ごしてきたからなんだかこそばゆい気分なんだよね。
朝食を済ませる頃にはルームにはビアンカとグレアットしか残っていなかった。ゆんはカントー地方のひきゃくとして郵便配達のお仕事をしていて一番早く家を出る。
メグは「メグの成長速度はパラガッサをも凌駕する！」などとイミフな発言とともに外出している、まあ配信者は自由に見えて自由に縛られるお仕事だからね。
6号ことロックはコスプレイヤーとしてヤマブキでナツメお姉様プロデュースのもと雑誌のお仕事に勤しんでいる。
グレアットは送り火を舞える巫女としてシオンタウンで慰霊事業に取り組んだりと各々充実したリアルを送っています。家にまだ残っているのは、彼女いわく全員をひとりひとり最後まで見送ってから行くほうが落ち着くとのこと。
そんなわけでボクはリボンチェーンフリルハートスタッズリュックに荷物を詰め込むとビアンカとふたりでクチバへと向かった。
グレアット「行ってらっしゃいっ」
ビアンカ「行ってきまーす♬」アリス「ごきげんよう」
1階に住んでいる管理人のおばあさんとペットのニャース・ピッピ・ニドラン♀への挨拶もそこそこに外に出れば、清々しい空気漂う見慣れたタマムシシティが広がった。
この繁華街のジムリーダー・カントー最大規模を誇る大学の教授・他地方でもメジャーな香水会社の代表・生け花教室・弓道師範などなどを務めるエリカお姉様の影響が最も色濃く出ていて、許可が下りない限り大都会ヤマブキにはアクセスできないこともあって、実質カントー地方では一番の都市に位置しているこの場所には揃わない文化はないって言われている。
いくら伝説のトレーナーと称されているボクであっても所詮9歳の子どもに過ぎないから実を言うとまだまだ知らないところがたくさんあるのよね。
エリカお姉様の妹って立場が通じるとこもあるけど、それゆえに逆に止められてる場所もあったりするし。
とは言ってもボクはタマムシなら《みんなの妹アイドル》的ポジションらしいから、クチバへ向かう途中だけでも道行く人たちからひっきりなしに話しかけられまくる。
そういう事情があるから、出勤より1時間以上早くマンションを出ているのだ。
マユミ「あらアリスちゃんおはよう、今日はメイドさんの日？」
エリカお姉様の一番弟子であり、ボクのことをこよなく面倒を見てくれたマユミちゃんに引き止められる。
アリス「マユミちゃんおはよう～」
ビアンカ「マユミさんおはようざいまーす♬」
アリス「メイドじゃなくてウェイトレスね」
マユミ「何が違うのよー」
そんな何気ない疑問にビアンカは目を輝かせて語り出した。
ビアンカ「ウェイトレスは、お食事のときにメニューを出したり飲食のお世話する人で
メイドさんはお食事を作ったりお掃除お洗濯したりする人よ！」
マユミ「ああんくやしい！わたしってばそんな違いも分からないなんてエリカお姉さまに合わせるお顔がないわ！」
自分より7つ年下の子に教えられてじたんだを踏むマユミちゃん。彼女もエリカお姉様を師匠としてお姉さま呼びしているけれども、ボクとビアンカと同じように実はマユミちゃんもエリカお姉様と同じ16歳同士だったり。奇妙な一致点だね。
アリス「マユミちゃんってば大げさ～」
ビアンカ「お勉強、しましょ？」
別れのあいさつ代わりにすれ違いに得意げなウインクを送ると「リースお姉ちゃん間に合わなくなるよー」と大きく手を振るビアンカの姿を目で追いかけていく。
マユミ「そうだ。アリスちゃん、なんかね……お姉さま朝早くから慌ただしい様子だったのよ。何かあったのかしらね？」
なぞなぞですその答えは何でしょう？
アリス「んー、わかんない！」
ちょこっと気になったもののあの人が忙しいのは毎日のことだし、とりあえずこの地方に何かあれば港の見えるカフェという施設は案外いろいろなニュースが入り込んでくる。ということでレインボーパスでヤマブキへのゲートをくぐって、ヤマブキシティを経由せずにクチバシティへの直通地下通路を渡って職場へと足を運んだ。
---クチバ・カフェ[Dear]---
すべてのお客様に「笑顔、元気、癒しを与える」をモットーに、今日も明るく元気で可愛いウェイトレス達が、お客様のご来店をお待ちしております♪
ビアンカ「いらっしゃいませー♬」
アリス「しゃーせー」
ビアンカ「ご注文は何になさいますか？本日のおすすめはベイビィハニーカレーとなっております♬」
アリス「おいしいみずいいっすよ」
ビアンカ「もーお姉ちゃん！！」
アリス「ただの水じゃありません、200円するシロガネやまの水ですが？！」
店内からドッと笑い声が集まる。
というのも、勤務先ではボクとビアンカは姉妹キャラとして売り子をしていて、
ボクの気だるげな応対と対照的に真面目で明るい彼女の接客のギャップと漫才じみた会話が癒しになっているらしい。中にはそれ目当てでジョウトやホウエンから船旅に寄る客までいるくらいだ。
話によればビアンカは元々ここではなく遠方にある別のカフェで看板娘をしていたらしいけれど、直接聞いたこともないし特段興味がある訳でもないから明るくはない。
でも実際彼女の働きぶりは近くで見ていてもハイレベルそのものだ、出会ったきっかけもメグがバズってるウェイトレスがいるとの噂を聞きつけて入店したときになんか猛アタックされたのが縁の始まりだし。
そいえば、メグとかロックとかも普段はあんなかしまし娘だけどお仕事は有能だったりするんだろうか？ゆんとグレアットは性格的に誠実で真面目なのは想像にたやすいけどどうもあの2人は結び付かない。
今度機会があったら抜き打ちで見に行こうかしら。
なんてのんきに思いを巡らせてると、ボク個人に指名が入った。
マスターからミックスオレの入ったグラスを受け取ったら流れるままに指定テーブルへ。
普段着は丈の長いエプロンドレスだから、裾を軽く持ち上げて挨拶できるんだけど、どうにもここの制服はミニスカ丈だから慣れない。
アリス「ﾗｯｼｬｲ」(イシツブテの鳴き声マネ)
渾身のカスタマーファンサを送ると、返ってきたのはボクと歳が変わらなさそうな幼い笑い声であった。
？？？？「ふふ」
※スズラン @すず様より
アリス「ここは初めて？」
話を切り出しながら、向かい合わせに座ってミックスオレをひとくち。溌溂とした返事が秒でキャッチボールされた。
？？？？「はい！話題になってたんで！あ、私スズランって言います！よろしくアリスたん♪」
たん。
鈴蘭というとシンオウ地方あたりに咲き誇ってる小ぶりな百合の花だ。お姉様いわくもしも、スズランのポケモンが発見されたら草と毒タイプらしいからナゾノクサに近い品種なんだろうか。
スズラン「オニドリル１匹で殿堂入りしたトレーナーがウェイトレスをしてるって聞いたからどんな人なんだろって思ってたら、私と同じくらいの女子でびっくりしちゃいました！でもお人形さんみたいですっごく可愛いですぅ～！」
ひとりでどんどんマシンガンぶっ放してくるよこの子。モンスメグ系女子かさては。
カジュアルなスポーツウェアに身を包んでるけど、よく見ればものすごい上質な素材を使ってるっぽいし割といい所のお嬢様かもしれないな。
アリス「そんなお見逸れされるほどじゃないさ」
スズラン「はう～！それなのにラフな喋りかた！高まってきちゃいましたアリスたんお持ち帰り～♥」
ラウンドテーブル越しから密着まで秒速5センチメートル
6号「こらそこ、脈絡のない行動を取らなーい」
グレアット「いきなり従業員をお持ち帰りしてはいけまーせんっ！？」
およ、よく聞き慣れた声がスズランの一方的ハグ越しから。
スズラン「はッ！ごめんなさいつい！……アリスたんのお友達ですか？」
お友達というか実はポケモン、とは言いだしにくい。
ゆん「あらあらアリスちゃんファンサービス旺盛なのね」
そう言いながらちゃっかりとすり寄るゆんまで現れた。
スズラン「わ！本物のゆんちゃんー！会いたかった会いたかった会いたかったです！すごーいどうやってお一人でポケモンリーグ勝ち抜いたんですか、それとどうして人間の姿をしてるんですかそれとそれと」
えーい！ボクを巻き添えにゆんにハグするんじゃない、前からも後ろからもクッションみたいな圧で押しつぶされるっちゅーねん。
ゆん「禁則事項です♡」
グレアット「ビアンカちゃん、私はベイビィハニーカレーでお願いしますっ」
6号「オーダー、アズール湾産ヤドンのしっぽのブラショーレ エクストラバージンオレンオイルをぬりたくったオカルト少女を不安げにみつめていたゴースのウタンのみフリッジをそえ忘れて、で」
ビアンカ「かしこまりです♬」
なんかめっちゃ普通にランチ頼んどる。君たちお仕事休憩に来たの？あれ、そういえばこういうパーティごとなら絶対いるであろうエレキネットの姿が見当たらない。
アリス「メグはいないのか？」
6号「アイスとスチルと3人コラボ配信してますよ。せっかくでしたらコメントでお呼びします？」
お呼びじゃないです。
ここにあいつまで混ざったら化学反応起こしてカフェが爆発する。
6号「爆発？」アリス「思考を読むな」
スズラン「ふふ！みんな面白い～」
暫定単独１位で面白いのはお前だよ。
それにしても、一堂揃ってうちのカフェに来るなんて意外とありそうでなかったから珍しい。なぜだか胸騒ぎがする。
グレアット「Dearの日替わりカレー美味しいですっ、と」
うん？グレアよ一体誰に発信してるのかな？
ひょっとしなくてもひょっとするかな？かな？
モンスメグ『「ライブで来た☆」』
スチル『早すぎるわよッ！？』アイス『……これだから……メグとのコラボはやめられない……』
ロトムスマホ越しから聴こえてくる生配信中のおそらくタマムシマンションにいるであろうレジ姉妹、そして音速で現場に駆けつけてきやがった聖獣一名。
あとハウリングしてますよ。
6号「メグさん、無許可撮影はメッですよ」
モンスメグ「この腕章が目に入らぬか☆」
ゆん「コミケじゃないのよ」
ビアンカ「メグちゃんだったら宣伝してもらってるしオッケ♬」
モンスメグ「ＯＫ！不安なんて食べちゃおう☆彡」
グレアット「食べるならベイビィハニーカレーですよっ」
スズラン「はわ～～～～～～！！！」
ボクの仲間たちが織り成す怒涛のやり取りに目をキラキラさせて大興奮なスズラン。
客席だけでなく、お店の外も行列が並んでオーバーヒートしており、こいつらが帰った後も忙しそう～……と感じてただただため息をつくしかなかった。
スズラン（ﾁﾗｯ）
うゅみ「・・・あらぁ？」
