Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》-硝子色の夕空- part36

窓から見る光る海より波の中へ飛び込みたい
引き止めてる腕をほどいて
行くべき場所どこかにある
あなたの腕の鳥かごには甘い時間だけが積もる
だけど紅い実をいま探しに行く
いつかこの別れをそう悔やんでも
蒼い鳥
自由と孤独
ふたつの翼であの空へ私は飛ぶ
遥かな夢へとこの翼もがれては
生きてゆけない私だから

アリス「…………ゆん…………?」

グレアが放ったパンドラボックスを口にしたその瞬間だった。

瞳孔に映る光景が瓦解していった。
比喩表現ではない。自然発生による現象か何者かによる仕業か不明だが、空間が切断されたかのように歪んでいき、時空の進みが歪んでいるのかと錯覚するほど、極めて非現実的な事態に遭遇してしまったのは紛れもなく真実だ。

ギンノ「どういうことよ!アスフィア、あなたひょっとして私の許しもなしにコメットサマナーでも使ったの!?」
アスフィア「戯け。如何に境界が不安定であろうと、己を従えし者に反故するたるは、わたしの義に反する」

一瞬不穏な会話が耳に入ってしまったが恐らくはコメットサマナーというわざがギンノの野望を叶えられる方法なのだろうと邪推しておいた。
しかしそれどころではない。このままではボクたち全員の命が危うい!

常識の範疇を超えた出来事にギンノサイドはおろか場数を踏んでいそうなミズキにあのメグですらも一歩たりとも身動きが取れずにいた。
アリス「ここまでか……!」

何が発生したのかも分からないまま、すべては謎のまま、一生を終える羽目になっちまうなんてな。あぁ、最期にエリカお姉様と会いたかった。

すべてを諦めて流れに身を委ねていた。
仲間たちの鳴り響く悲鳴が最後に入ってきた情報だった……。









 




ビアンカ「あ。あれ?止まった……?」
クオーレ「無事か、ビアンカ

モンスメグ「なははは☆やっぱ生きてた☆もうけっ!」
オルディナ「メグ……カバッテクレテ、アリガト!」

6号「ふふふ、所詮私の爆裂魔法には到底及びませんでしたね」
リーリエ「な、なんだったのでしょう」

シロナ「……見て!あの御姿は!」
カルマ「あーあー。驚かせんじゃねぇじゃんよ」

グレアット「あのお方こそが……道標っ!」
ミズキ「久方振りでございます」

ギンノ「こんな形で会えるだなんて」
アスフィア「これもまた一興」

アリス「……」


「ここは時間も空間も越えたわたしの宇宙ーーー
すべての七英雄と眷属と出逢うーーー
あなたは見事成し遂げましたーーー
諦めなければ想いはいつか叶えることが出来るーーー
あなたの活躍はそれを表していますーーー
この世界にあなたを呼んで良かったーーー
これからのあなたーーーそしてあなたが生きていく宇宙ーーー
わたしは祝福しましょうーーー
わたしは"道標"ーーーあなたたち人がそう呼ぶ者ーーー」





清らかで澄み切った透明感のある声色で、丁寧に挨拶を交わしたその存在こそ、ほとんど成り行きだったといえ最終的な目標となっていた、道標そのものだった。

一片の淀みもない、光と同化してしまいそうなほど、白く、白く、純白という言葉は彼女の為にあるのだと思えてしまえる唯一無二のロングヘア―が美しさを際立たせていた。さきほどまで命が懸かっていた身だというのに、彼女の宇宙に連れられてから底知れない安心感に包まれてしまったからか、彼女をはじめて見た感想は事もあろうことか無意識のままに口に零してしまっていた。

アリス「一生、このアリスのおそばに居られてちょうだいませ、道標お姉様」
物心がつく前から名家出身による英才教育の賜物によって身についたカーテシーを返してあげて、自然と悠然とした立ち振る舞いと同時に、彼女へ挨拶をしてみせた。

……静寂が訪れ、沈黙が流れる。周囲から心の声が漏れて聴こえているのは百も承知のうえだ。まーた始まったよこのロリータ、ってとこだろう。
しかし、この静寂を打ち破った道標からの返答もまた意外だった。

 

「うふっ、うふふふーーー
あなたのようなお可愛い人形でしたらーーー
お望み通りにわたしの側で愛でてあげましょうーーー」

冗談が通じるばかりか冗談で相槌を打ってくれたのははじめて。
なるほど、この心の豊かさと懐の広さこそ、まさしく創造神に相応しい格の持ち主だ。

「アリス。おいでーーー」

アリス「ほぇ?」
そう彼女が呟いた直後。自分の身体だというのにその伝達に自分の意思はなく、しゃなりしゃなりと導かれるままにして、気づけば道標と密着していた。

そしてここもまた別宇宙なのか、さっきまで共に行動をしていたあいつらの姿は消えてしまっていたのだ。だがそのような疑問を持つ暇さえも与えられなかった。

「上品な香りーーー麗しい金髪ーーー
すべすべとした肌ーーー抱き心地のよさーーー
不思議ですねーーーわたしはこれまでありとあらゆる生物・物体・質量・大気・概念にいたるまで愛着を持ったことなどーーー
この星そのものにしかありませんでしたーーー
アリスーーーあなたを歓迎しましょうーーー
幾百年ぶりにわたしの宇宙へと成し得たあなたの願いーーー
このわたしが示してさしあげますーーー」

…………???
彼女の腕の中にすっぽりと納まってからというもの、あれだけ思考を巡らせることが趣味といっても差し支えないほどに好きだったはずなのに、ふわふわと頭の中までが彼女の色のように真っ白に染まっていく……

アリス「・・・あいつらは?」

「アリスのお友達ですねーーー
ご安心くださいーーーわたしの宇宙のなかでおもてなしをしておりますーーー
無下にはなさいませんーーー大切な絆なのでしょうからーーー
此処はわたしが認めた者のみが入れる空間ーーー
あなた一人だけが許された場所ーーー
あなた一人だけに作られた場所ーーー
あなた自身が純粋にーーー願いを叶えられる場所ですーーー」

透明よりも透き通った道標の声を聴いていくうちにだんだんと安らぎが増していき、頭の中がクリアーになっていく感覚がしてきた。

待て・・・考えろ・・・だめだ・・・どうしてやっとのことでここまで到達できたんだ・・・願いの前に・・・まずは次々と浮かび上がる謎を・・・
うっ・・・だめ・・・ぽわぽわと・・・チャカポコ・・・

アリス「道標お姉様と……ずっと、一緒に……」
「わたしと一生ーーーどうされたいのですか」
アリス「……ぁ」

 

 

うゅみ「遊びはそこまでよぉ」


冷水ゆき様より


「おやーーーうゅみーーー
どうしてわたしだけの宇宙にーーー」

うゅみ「その子に直接触れてくれたおかげよぉ」

「ーーーそれほどまでに心酔しているのですねーーー」

うゅみ「とぉりぃあぁえぇずぅ」

うゅみは ニュートラルシールド をつかった!
うゅみは アリスに ゲノムハック をした!
アリスは しょうきに もどった!

アリス「んぁ?……うゅみ???」
朦朧としていた意識から吹っ切れて普段通り、いや普段以上と言えるくらいまで脳内物質が過剰に分泌されているのだろうと分かるサラサラとした感覚が、頭の中に走って思考力が研ぎ澄まされている。
いつ振りかも分からないうゅみの実体との再会を果たしていることからして、どうやらうゅみが絶対必要であるほどの存在と相手をしているのだという場面に瞳を据えて姿勢をしゃんと整えた。

うゅみ「さぁどうするぅ?今こそ決断の時よぉ。死んで楽になるかぁ、生きて悲しみと戦うかぁ。自分の心で感じたままにぃ……物語を動かすときよぉ」


「うゅみが来ようともーーーわたしからの提示は変わりませんーーー
アリスーーーあなたの夢を教えてくださいーーー」

アリス「その前に」
「どういったご用件ですかーーー」
アリス「教えろ。大団円はなんなのか。今起きている天変地異の正体。それからギンノについてもだ。この世界を創造した神様なんだったらすべて知っているだろ!」

「…………小さいですねーーー
まことに小さい。幼きゆえの小ささではなくーーー
どうして人間は知りたがるのでしょうーーー
知って何を出来るのですーーー」

 

 

 

アリス「自分の手で世界を作り変える」

 

 


「ーーー」
うゅみ「あらあらぁ」

アリス「道標なんてレールの上に乗っていれば確かにずっと安全の保障はされるかもしれない。少なくとも人間とポケモンの共生という意味であれば未来永劫守られていくだろうさ。けれど、ボクは道標なんて決められた人生を歩みたくない。
人生は選択の連続だ。自分は選択をし続けてきて今の生活がある。だがそれすらも道標から決められた必然だっていうんなら、そこに本当の自由はない。
ポケモンだっておんなじだ。敢えて進化を選ばなかった種族、敢えて身の危険が多い地帯を住処に選んだ種族、種族同士のナワバリ競争による更なる進化、挙げればキリはないけど……それすら全部道標が決めてあった歴史のページをめくっているだけなんだったら!
ボクはお前を制して、この星を道標から外れさせてもらう!」

「……うふふ、面白いですねーーー
そこまで言われてしまえば愚かを通り越して面白いではありませんかーーー
ではアリスに問いましょうーーー
今この時間軸の星ではティナを制止させたことでーーー
二つの世界が崩れようとしていますーーー
わたしは星の危機を救うべく調律させてあげなければなりませんーーー
貴女ならどうしますーーー」

アリス「ディアルガの力を使って時を巻き戻してなかったことにしてしまう。だがこれは不正解。さすれば巻き戻した時間のぶんだけこの歴史そのものが大団円となってしまい、2つの世界の整合性が取れなくなってパンクするから。
パルキアの力を使って空間そのものを切り取ってむりやり分離させてしまう。これも不正解。結局のところ何も解決されないばかりか、現実世界に切断した空間の継ぎ接ぎというエラーが残ってしまい両方の世界ともども大団円に吸収され星が消えてしまう。
次元レベルの選択ですら不正解なら、ギィの大地を動かす力も役に立てんしホウオウやらルギアやらカルマやら自然の力も同様意味をなさぬ。
残るキュレムは真実と理想を司るレシゼクの抜け殻ゆえに虚無を用いて未来を守る役割を担っている。なるほど確かに便利そうに思えるが……星がひとつ消えたところで非情にも未来は訪れるんだよ。ボクたちの住む星がない未来という、な。
とすれば、最早打つ手なしか?
どうにも今のボクは冴え渡っている。なんせ仮説が当たっているかもしれないからな」

「仮説ーーー聞きましょう」

アリス「道標よ。前提からして常識から抜け出す必要があった。
非常識な体験をこうも往々とされちゃ否が応でも気づかされたけどな。
ボクが標なき道を進みたい理由の一つにもつながるんだが……

この世界はもう、とうの昔から現実じゃないんだろ?」

「ーーー」

うゅみ「くふふ」

アリス「だったらすべてに説明がつく。異世界を飛び交っているギンノを放っておいてる理由もな。大団円だのやぶれたせかいだの仰々しくもうひとつの世界として括っているけど、そうだとすればあっちにメガジュペッタやらダークルギアやら……そもそもこっちの世界と同じような文化や建築物があることがそもそもおかしい。現実に出なかったアイデアが投げ込まれているんだったら、もっと混沌とした、とてもじゃないが人とポケモンが共存できるような世界じゃないはずだ。それにこっちの世界でもミコンやら128やら流れ込んだりして異変だの言ってるが、まずそもそもにしてポケモンがボク達人間のような姿をしていること自体がまず常識じゃなかったんだ」

「その仮説ーーー結論まで続けなさいーーー」

アリス「お?ようやく認めて、ボクみたいな少女ひとりが辿り着いた真実の答え合わせをしたくなったのか?
話を変えようか、最初に感じた違和感はギンノを筆頭にして何人かのトレーナーはヒト形ではない、ペットみたいな動物の姿をしたポケモンを繰り出していたところ。しかしどうだ、ヒト形よりもよっぽど機能性に優れた身体の構造をしているじゃないか。そこで思った、恐らく元々はあの姿が本来あるポケモンだったんだろうと。
それから、どうにもボクには不自然に記憶が抜け落ちているんだよ。正確にはボクのそばに誰かいたはずであろう生物。思い出してみてもなーんか都合のいいように記憶を整理されている気がしてね。普通だったら整合性が取れているから気にも留めないだろうけど、ギラティナでいうイレギュラーが発生しちまった。

グレアは全部覚えていた。きっとあの悪趣味な赤い空間は道標の影響すら受けつけない特別な切り離された宇宙なんだろうな、グレアだけは唯一記憶改変の認識をされなかった。なぁ、うゅみ?」

うゅみ「うっふふぅ、ほ~んと目ざといんだからぁ。それも絆なのかしらぁ?
そうよぉ、その子のいうとおりあたしはルールを違反した存在を道標から追放してやったわぁ。だってこの次元自体がアルセウスのお遊戯なんだからぁ、意に添わない存在はぽいっちょしてあげなきゃねぇ」

「わたしに付き合ってもらって日々感謝していますーーー
ですがーーーわたしの永きに渡るお遊戯もーーー」

アリス「話を勝手に終わらせんなって。べつにボクは道標……アルセウスの、いいやここまで来たらボクがあとで名前を付けてやる。グレアたちと一緒にボクのお茶会に参加してもらうよ」

「おやーーー意外にも反発しないばかりかーーー
うふふーーー貴女のお茶会に興味がそそられましたーーー」

アリス「そういう態度を取るってことはもうボクが言った戯れ言は信じたくないけど本当なんだな……まぁいい、うゅみ、ことが済んだら記憶を戻せ」
うゅみ「はいは~い」
「お手は煩わせませんーーーこの後のアリスの言動によってはーーー
わたしそのものが道標を解き放ちましょうーーー」

アリス「そうか。だったらいい加減お前の質問に答えなきゃな。まぁわざわざボクに聞くってことは、歴史ごっこの中でギラティナが倒されたりうゅみにカルマがここまでひとりの少女に肩入れすること自体がもう初めての経験で、案外実はどうしたらいいのか分かんなかったりするんじゃないか?」

「むーーー失敬ですねーーー
わたしには既に手はありますーーーただーーー
確かに七英雄たちを掌握したあなたの意見がーーー
ほんの少しばかり気になっただけに過ぎませんーーー」

アリス「あっそ。思うにボクの予想だったら、この異変に乗じて大団円側と思い込んでいる奴等が絶好の機会だと踏んで現実世界と大団円を逆転させようと企んでいそうだし、なんならもう誰かは気づいているのかもな……
この世界のシステムと違和感の正体に」

「どうでしょうねーーー先ほどお伝えしたようにわたしは箱庭の中には愛着はありませんからーーーそれによしんばアリスのように真相に辿り着けたところでわたしと直接コンタクトを取ることは叶わない以上ーーー努力むなしくピエロになるだけでしょうーーー
あなたのお友達でもあるギンノとアスフィアのようにーーー」

アリス「愛着ないわりには関心あんのな。ま、そうだな。そろそろまとめるとしようか。
お前が最も避けたいであろう争いごとから遠ざけるべくして作り上げたこの世界。のはずだったにも関わらず歴史が積み重なるにつれて、アークが巻き込まれた兵器戦争だったり、ホウエンで発生したとされる大震災、大団円ですらキガンを巡る領土争いに、七英雄というシステムに反発したルギアの発生……思い返せばボクはその真っただ中にいたにしろいなかったにしろ、その経験者と接近する運命すらも、数奇なことにボクが道標と出逢うべくして出逢うための布石であり物語だった。
きっとボクは、生まれた瞬間から、道標を終わらせるために生きてきたんだろうな」

「アリスーーー」
うゅみ「女優ねぇ」

アリス「この世界を、在るべき宇宙へと戻そう。
ボクたちでいう現実世界じゃなくって、本当の現実世界へと戻すのだ。
……おそらく、そうなればボクはポケモンではなく……ポケモンに限りなく近しいナニカのヒト形の知性生命体を従えるトレーナーとなっているだろうな。
仲間たちと再会はできたとしても……いったいどこまで概念が変わる、いや戻るかまで途方にも想像つかんが」

「ーーーよろしいのですか?」

アリス「ああ。これがボクの道標……はじめて刻む、人生はじめての、自由な選択なんだからな!
…………都合がいい話かもしれないけど、ボクだけは思い出をそのままにしてもらえないか?もちろんそれで取り返しのつかないトラブルがあったら監視役としてボクを存在ごと抹消してもらっていい。その代償と引き換えに」

「やれやれーーーいまいち最後まで格好のつかない子ですねーーー
ええ、もとよりそのつもりでしたーーー
貴女が美しく見えるのはーーーそのずるっこい一面ですからーーー」
うゅみ「褒めてないわよぉ?」

アリス「さて……ボクの使命は永遠に後始末役なんだろうな。戻ったらいったい何が起きてるか分かったもんじゃない……トラブルメーカーばっかに好かれるせいでよ」

「そうでなくてはーーー物語の主役に抜擢されませんからねーーー」

うゅみ「これはぁ、あんたの物語よぉ」


 

海に風が朝に太陽が
必要なのと同じように
君のことを必要な人が
かならずそばにいるよ

森に水が夜には光が
必要なのと同じように
君のいのち壊れないように
誰かが祈っている

どんなに遠く長い道のりでも
いつかたどり着ける
歩き出さずに立ち止まってしまえば
夢は消えてゆくだろう

恐れないで 勇気捨てないで
君はひとりぼっちじゃない
いつかふたりで追いかけた星は
今でも輝いてる



Part37へつづく!