Wonderland Seeker

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《Ride On The City》-硝子色の夕空- part32

「最後はもっと私を見て燃えつくすように」


アルトマーレ

アルタイル/シリウス攻略wiki様より


ギンノ「んっ……久しぶりねぇここの空気!私の第二の地元なだけあるわね」

マダームの背中から地上へと降りた私はぐっと背伸びをして快晴の空を眺める。ほかの地方じゃ冬に差し掛かっているけどもこの場所は常に温暖な気候のおかげでさっきまで旅行のために着込んでいた私からすれば少し暑くてのぼせるくらい。

私はこのアルトマーレでジムを建設してジムリーダーを担っている……のだけどもどの地方にも属さない此処じゃリーグから公認を降ろしてくれないから挑戦者も滅多に来なくて正直なところ暇を持て余しているわ。
だからこそ空いた時間を利用して私はシロナへのリベンジを果たすべく日々鍛錬を積んで色々な地方へ旅行がてらジム破りを日課としているけど、ふと故郷の大団円に帰りたくなってお土産を見繕っていた最中で出逢ったあのメルヘンロリータ……もといアリスとバトルをしてからどうも普段のポケモン勝負に飽き飽きしてしまっていたの。
一度でもこの私を打ち負かしたその鼻を挫いてやりたくてクオーレと共にハイレベルと評される各地のポケモンリーグを見て回ったけれどもみーんな拍子抜け。特にパルデアなんて学校でごっこ遊びをしてる程度の娯楽に過ぎなかったわ。

ポケモンリーグといえば嫌でも忘れられない……
シンオウ地方のチャンピオンことシロナとのあの勝負!
やれあなたには愛情が足りないだの正義が無いだの志が低いって……もう本当にサイアクな気分にさせられたわ。
でも事実あの時は何も分かっていなかった。今になって理解し始めたわ。アリスとの出会いで気づかされたってわけじゃない、あの子と会ったときにはもうそれに触れ始めていた。もちろんあの子に触発された部分もあるわよ。
そのきっかけになった子を引き取るためにわざわざ時間を費やしてアルトマーレまで戻ってきたのよね。

私は町を行き交う人たちとの挨拶や日常会話もそこそこにジムの先にある工事中のフェイク札と人工的に設置した硝石が飛び交う地帯へと向かい、町のトレーナーですらほとんど知り得ないトップシークレットな場所へと歩んでいく。

クオーレ「やれやれ、久々に帰ってきたと思ったらそこに行くつもりか?」
ギンノ「当然よ。私のとっておきなんですから」
シークレットエリアは2つあって、まずはお手軽に事が済むほうへ辿り着いた。
一見ただの壁にしか見えない所へ手を突っ込んでそのままずぶずぶとすり抜けていけば私が楽園と呼んでいる綺麗な花が咲き狂うガーデンに到着できちゃうわけ。工事中の札と落とし穴のような床がいくつもあるおかげで一般人はここの存在に知りようもない。

ふたりで楽園へ入るとお望みの子と再会すべくかくれんぼをこなしていく。
ものすごく人見知りなおかげでほぼ唯一その存在を認知している私相手であってもまるで儀式かのようにかくれんぼをしてあげなきゃ姿を現してくれないのよね。
そんなところも可愛いんだけどね。

ギンノ「はい見つけた。日に日に隠れるの上手くなってるじゃない、賢いわよ」
?????「アッ……ミツケチャダメ!」
ギンノ「観念なさいオルディナ。あなたが必要なの」

クオーレ「オルマリアに進化しても変わらないな、ふたりとも」
ギンノ「なによ。オルディナはオルディナよ。種族名なんて博士が勝手につけただけ。私にとってはずっとオルディナなんだから」
オルディナ「ア……クオーレ……キョウモカッコイイ!」
クオーレ「そりゃどうも」

ぬいぐるみを持つようにして抱きかかえたこの小悪魔のような存在はオルディナ。もともとは人間の少女だったけれど、ネクロシアという怨念のような魔物の影響でこのような姿に変えられちゃったとかなんとか都市伝説が風評しているらしいわ。今となってはネクロシアも私の大事なパーティーだしもう仲直りしてくれたからなにも無いのだけれどもね。そのときに何故だか進化をして人間の姿に少し近づいたことでオルマリアっていう名前を教えてくれたわ。

きっと本名がマリアなのかもしれないけど、私にとってはオルディナの時に出逢ったんだからオルディナよ。それにこの分じゃきっと戻るつもりもなさそうだし、だったら尚更人間だった時代を思い出させるよりかはポケモンとしての人生を選んだ彼女の権利を優先するべき、そうでしょう?

ギンノ「クオーレがかっこいいのは不変の理、酸素を吸って生きるくらい当たり前よ。それはともかくとしてオルディナ、あんたと遊び相手になりに来たわけじゃなくってよ」
オルディナ「エ……モシカシテ、ワタシ……イラナイコ……?」
勝手なネガティブ思考でどよ~んって効果音がお似合いなくらい落ち込むオルディナ。こんなだからいつまでたっても人見知りも治らないし私のパーティと馴染めないのよね。ネクロシアだけがお友達じゃそれこそ本当にホラー展開よ。

ギンノ「ぎゃーく。その逆よ、あんたが必要なの」
オルディナ「ワァ!……ホント?ワタシ、ヤクニタテル?」
一転してぱぁーって背景にお花畑が浮かびそうなくらい明るくなっちゃって、本当に面白い子ね。見ていて飽きないのだけどあいにく私にはあまり時間がない。
心の内を打ち明けることなんて絶対にしないんだけどオルディナは特別。私はここまでの経緯とやりたいことを丁寧に伝えてあげる。話が転調するたびにオルディナは感情豊かに相槌を打ってくれるものだからついつい私も乗ってしまう。

ギンノ「っていうことなのよ。協力してもらえるかしら」
オルディナ「ワカッタ!ワタシ、ゼッタイニ、ギンノノユメヲ……カナエテアゲル!」
ギンノ「助かるわ。お礼に美味しいお店に連れていってあげる」

朝にアルトマーレへ着いたはずなのにもうすっかりお昼を回っていたわ、お昼ごはんも兼ねて私のお気に入りのジョインアベニューあたりにでも舌鼓を打ちにいこうかしら。もともとイッシュの料理なのだけど最近アルトマーレにお店を立ててくれて、イッシュで食事をしたときに私の好みに合ったこともあってときめいてしまったのよね。

……このぶんならもう一つの用事を終わらせても今日中には出立できそうね。元より弾丸ツアーのつもりだったし、今夜は久しぶりにキャンプが寝床かしら。
私はオルディナとクオーレを連れ歩いてもう一つの目的地へ進みだした。




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アリス「……」
ミズキ「……」
グレアット「おさんぽおさんぽっ♪」

どれだけ歩こうとも景色は赤、赤、赤。空と大地の境界線すらあやふやになるくらいの赤一面が広がるばかりでだんだんと精神が疲弊してくる。
せめてもの癒しはグレアが障害の影響でボクの実年齢(9歳)よりも遥かに言動が幼くなったおかげで、お姉さんの身体で無邪気に飛び回るたびにゆるくなった巫女衣装の隙間と袴の下から視線を離せないことだけがボクにとっての癒しになっている。
というよりかはとっくにメンタルブレイクしているからもう思考が停止しているだけに過ぎない。なんで諸悪の根源を倒したのにここから出れないんだよ?

ミズキ「アリス様。わたしのお膝で休みますか?」
アリス「それ三十六回目な」
ミズキ「100回でも1000回でもいくらでもして差しあげます」
アリス「じゃあ次はスカートの中にボクの頭つつんで」
ミズキ「はい、いくらでも……」
グレアット「ずるいっ!ぐれあもみずきちゃんとひざまくらっ!」
アリス「グレアは左ね」
グレアット「うんっ」
ミズキ「ふふふ。お二人とも一緒にわたしに包まれてくださいね」

などと簡易スウィートルームで36回目の現実逃避をしていたときだった。

突如として紅い空に大きな亀裂が走ったではないか?
とうとう幻覚まで見だしてしまうほど錯乱してしまった……こうなったらグレアとミズキに介錯してもらうしかない……。

マナ「陳腐な異空間だな、これしきすら己で脱出できんのか」
その声はあまりにもまさか過ぎる声で、やはり一瞬幻聴と疑ったがエリカお姉様やビアンカならともかくよりによってこいつの声など幻聴で聴くようになってしまったらおしまいだ。ボクは半ば朦朧としていた意識が覚醒され、脳が澄んでいく感覚を覚えた。

ミズキ「もしやミュウツー様……?」

ミズキも唖然茫然としながら両手を阿呆のように振り乱して現実であることを認識した。そう、この窮地を救いに来たのは破壊神の遺伝子たるマナなのだから。
マナ「目を醒ませ。この私が助けに来てやったのだからな」
慣れないことをしているからかいつも以上にぶっきらぼうな口調でボクたちへ唾を吐いてきた。なにはともあれ助かったことに違いない、ボクは立ち上がって身なりを整えるとマナのほうへと歩んでいった。
ミズキ「すんでのところでしたね、あと一刻でも遅かったら自我を失っていましたもの」
マナ「自我を失っている奴ならそこにいるようだな」

グレアット「ぽぇぽぇぽぇ~っ?」

アリス「元はといえばグレアがわけわからん奴に取り込まれたせいだ。元に戻す方法はないか?」
正気に戻る気配もなくその辺をぱたぱたと屈託のない無邪気な笑顔で跳ね回るグレアに目配せしながらマナに問う。するとどうだ、マナと来たら躊躇なく紫色の真ん丸なエナジーを掌の上に発生させているじゃないか。
ミズキ「ちょっと、ミュウツー様!?」
アリス「なんのつもりだ?」

マナ「人の決めた名で呼ぶな、私はマナと呼べ」
そうミズキに吐き捨てるや否やグレアめがけてエスパーのエネルギーが込められてるであろう複数の球体を円形にして発射しやがった!!

マナ「インボリュートスフィア・ナロー!」
グレアット「きゃあああーーっ!?」

嗚呼グレア……死を以て救済されるなんて。貴重な経験としてこの光景を一生忘れないからな……帰ったらシロガネ山かともしびやまにお墓を作ってやんよ。
などと不謹慎な思想を胸に両手を合掌させているとミズキに袖を引っ張られた。
ミズキ「あ、アリス様……奇跡が起きました」
アリス「奇跡は起きないから奇跡っていうんだ」
マナ「なに阿呆をぬかしている」

犯人が指差す方向を見れば、なんということでしょう。
グレアは倒れているどころか、虚ろだった瞳に生気が戻っており、消えかけていた炎の翼も立派に燃え盛っていてまるで見違えるようだった。

グレアット「あれ……私、誰かに襲われて……あ!アリスちゃんっ!こんな場所で再会できるなんて、神様からのプレゼントですねっ!」
思わず涙を流していた。きっと時間にしてみれば一瞬のことだったかもしれないがボクにとっては悠久に近い感覚を有していたのだ。無意識のうちに飛び出してグレアの胸元へと抱きついた。
アリス「よかった!……よかった!!おかえり、グレア」
グレアット「えっ?よ、よく分かりませんけど……ご心配をおかけしてしまいましたねっ。ただいま、アリスちゃんっ!」

ミズキ「尊い関係性ですね……本当に良かったです」
後ろからミズキの歓迎の拍手が聞こえてくる中、何に対しても気にすることなどなくボクはグレアットのぬくもりを味わっていた。
グレアット「んんっ……!?あ、アリスちゃんっ!お胸出ませんからっ……私はミルタンクじゃありませっ……ひゃぁんっ!?」

マナ「まったく手間をかける。おい、いい加減にしないと置いていくぞ」
感動の再会ムードだというのに冷血極まりないマナのせいでぶち壊しになってしまった。まだグレアのモーモーミルクを味わってないというのに、もういいや帰ったらいつもみたいにエリカお姉様の直飲みするもん。あーん怖かったよ~。
ボクがグレアから手を離すと、グレアは呆れながら巫女衣装をきっちりと整え直すとボクを特等席の背中へと乗せてくれた。
グレアの背中はやっぱり格別だ。ここから見る視界は絶景に早変わりする、こんなふざけた空間ですら最高の景色に思えてくる。

こうしてボクたちはマナの作ったワームホールへと入って緋色の世界から抜け出すことに成功した。そういえばあいつらどうしてるかな?まーた好き勝手暴れていなかったらいいんだが……。
と、ワームホール移動中にボクはあることを思い出してマナへ注文を付けた。

アリス「願いがある」
マナ「聞くだけ聞いてやる」
グレアット「はじめまして。炎の渡り守をしております、ファイヤーことグレアットですっ。以後お見知りおきをっ」
ミズキ「そういえば会話が出来たのは初めてでしたね、人々に楽しい夢を提供して回っています、クレセリアことミズキと申します」

アリス「ギラティナの居る場所へ運んでくれ」
グレアット・ミズキ「!」
無茶難題なことは百も承知のうえ提案をしてみる。マナはため息をつきながら続ける。
マナ「バカは休み休み言え。ただでさえ貴様の座標を見つけるのに幾重もの結界を壊してきたんだ、もう私は疲れてる」

アリス「ミズキ。そもそもボクを呼び寄せたのはグレアをダークライから救い出すためだろ?」
ミズキ「ええ、よもやあのような事態に陥ったのは想定外でしたが」
グレアット「そうだったんですねっ、ミズキさんに幸福がありますようにっ……!」
ミズキ「うふふ」
アリス「ボクたちが万全を期すのは前提として、それ以上に奴等に立ち向かうにはボクたちが著しく成長をする必要……スイでいうとこの修行が不可欠だったんだろ?」
ミズキ「……アリス様、流石はお鋭い洞察ですこと」
アリス「おおかたあいつらも何らかの形で修行させられてんだろうな。そんなまどろっこしいことをなぁぜなぁぜやらせたのかを考えてたんだけどな」

マナ「……答えによってはエリカのもとへ還す」
険しい口調で脅してるとこ悪いが、まぁどうせエリカお姉様かナツ姉の依頼でこっちに来たんだろうとは思ってたさ。こいつがお人好しなことを自主的にするわけないし。ホール内の動きが止まり、マナはボクの返答を待っていた。

別にあの悪趣味な赤い中でなんも考えていなかったわけじゃない。
むしろかしまし娘のあいつらがいないおかげで普段よりクリアな思考が出来て今となっては感謝しているくらいだ。

グレアット「アリスちゃんっ……考えを聞かせてっ?」

アリス「道標はボクを待っている」

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アルトマーレ・????遺跡

ギンノ「ほんとイヤになるわね、来るたびに2時間はかかるんだから」
オルディナ「ココノパズルスゴイ!カクレンボイッパイ!」
クオーレ「ここで学んだことをかくれんぼで使った日にはギンノに成仏させられるかもな」
オルディナ「キャア!」
ギンノ「戯言ほざく暇があるんだったらバトルする支度をなさい。これから会うのは七英雄から追放された天魔なのよ」

数多くの趣味悪い仕掛けを解いた先で辿り着いた最奥部。そこに私の望む最後のピースが潜んでいる。
七英雄で例えるのであれば星座の創造神とでもいったところかしら。

かつて存在したとされている球体都市・スフィアシティの主だった彼女はホウエン地方で発生した大震災の際にスフィアシティの人々を安全な場所へと導いたことで大震災の被害を最小限に食い止め、スフィアシティと周辺の人々は次元を超えて大団円へと移住をさせた。否、正しくはスフィアシティそのものが大団円へと移動したといったほうが良いのかしらね。

だって私はスフィアシティで生を受けたのだもの。
彼女について調べていくうちに、そんな子供の絵本みたいなおとぎ話は確かに実在することが判明したわ。まさかアルトマーレでクオーレとビアンカに守護神としての力を与えて新たなスフィアシティを形成しようとしていただなんて、ここでジムリーダーをしている私にとって灯台下暗しみたいな物語ね。

この場所に気づけたのは他ならぬオルディナのおかげ。さらに辿ればオルディナと会うきっかけとなったネクロシアのおかげ。もっと辿ったらクオーレとビアンカに出会ったことから既に私の手中にあったのでしょう。
そして今。この遺跡、名付けるんだったらスフィア遺跡を私一人で攻略できるようになれるくらいに私は鍛錬を積んできた。

もう、敗けたりしない。

ダイアモンドダストみたいに華やかな雪が舞い降りる中、私は圧倒的なプレッシャーを放つその龍へと声を掛けてやった。
星座を彩った、水銀色に輝く髪を靡かせる彼女へ。

ギンノ「会いに来たわ、アスフィア」
アスフィア「・・・」


この私ほどではないにしろ、美麗という2文字がここまで似合うフォルムは見たことがなかったわ。予想はしていたんだけど、やっぱり彼女も人を模した姿をしていたのね。大団円が主な戦場だった私にとってはもう見飽きていたはずなのに、どうしてだか私は彼女の人間としての造形に見惚れてしまっていたじゃないのよ。
確かにスフィアシティを守り続けた、いえ、今でも守り続けている彼女であるからこそ人間であれば誰しも惚れ惚れとしてしまう美形に納得ができるものだし、並みのポケモンであれば畏怖せざるを得ない堂々たる立ち振る舞いにも説得力があった。

アスフィア「ほう、ニンゲンか?お前は何を求める?
まぁよい、わたしは待っていたのだ。ここまで辿り着くことの出来る強き者を。
しばし相手になれ……星座の力で相手をしてやろう!」

ギンノ「クオーレ。オルディナ。もうそこに一番星よ!」

Part33へつづく!