「ほらね、キミも素敵な色を隠してた」
ダークルギア「……行くわ!」
アリス「ゆん!旋回しながらあやつの風向きを変えろ!グレアはゆんの手助けをしながら熱して少しでも水圧を下げさせろ!サンダーは上空から、ライは陸地から、メグは駆け回りながら雷のコントロールを操って誤爆させろ!フリーザーとアイスはあやつが海に逃げれぬよう水を凍らせろ!エンとスチルは陸地が浸水されないよう食い止めろ!ビアンカは適宜サポートとバリアーを!ロックはイリュージョンでビームの屈折を変えつつ隙を作り出せ!スイはオーロラで味方を守りながらあやつの気を逸らせ!」
一気に12人全員に対して適材適所の役割を遂行させて、ボク自身もゆんに乗って対空からルギアの動向を探っていく!
グレアット「Ave Mariaっ!」
モンスメグ「エレキテル☆エレクトリック!」
6号「イリュージョン!」
サンダー「雷撃の槍!」
フリーザー「えい、アイシクルマシンガン……!」
アイス「……氷像空間……」
スチル「砂鉄錬成ッ!」
ライ「雷神飛竜昇」
エン「火産霊神」
スイ「大海嘯♥」
みな一様に一斉に特技を放ちまくる図は一種のアートにも写った。
ゆん「あらあら」
ビアンカ「みんなすっごーい♪」
感心して手を叩いてる場合か、世界の破滅がかかってるんだぞこちとら。緊迫した戦況というのに緊張感がどうにも薄れてしまう、こいつらの性格の問題か?
しかし、海・陸・空・感覚と多角的方面から常に同時攻撃と遮断を試みるもルギアのパワーは想像を遥かに凌駕していた。勢いが衰えるばかりか、お返しと言わんばかりに災害級の極太ビームひとつで、一気に劣勢になってしまったのだ。
ゆんの目によると、どうやらルギアが放つ青白きビームは粒子でも波形でもない物質らしく、電子に近い性質から電流ですら軌道を捻じ曲げられてしまえるうえに、曖昧な物質のために科学的に屈折させようにも、そもそもはじめから屈折してしまっているようなものなので、一度打ってしまえば止めようがない攻撃とのこと。
また、質量がないゆえにビームそのものがルギアを護る盾の役割を兼ねており、並大抵の攻撃は掠りすらしないどころかその場で消滅してしまう堅守さもあるとか。
かつて単身でカントーを制したゆんの観察眼は卓越している、おそらくその分析に誤差はない。
アリス「みな聞こえてるか?けが人はいるか?」
無線を取り出して、11人に持たせた耳栓型の子機に通信を行う。すぐに全員から無事に返答があってまずは一安心。
グレアット『あんなデタラメなチュドーンどうすればいいんですか~っ!』
サンダー『弱音吐くんじゃないわよファイ、気合注入!』
フリーザー『き、気合万能説です……ね』
ファイって呼ばれてるのか、最期のときがきたら、φなる・あぷろーちって告げよう。
アリス「ルギアは潜水と飛空で広角に動いている、そこで東西南北それぞれに分かれて各自連携を取って迎撃するぞ」
レジアイス『……被害最小限……頭いい……』
レジスチル『アタシらは空を任せられる子と組むわッ!』
6号『グレアチームとコンビネーションしましょう』
アリス「おそらくあのルギアビームは連射できん、合間に別の攻撃を挟みながらパターンが構築されていると見た。ビームに神経を使って後はうまく隙を作り出せ」
エン『御意』
ライ『この雷切の錆としてくれよう』
スイ『ルーちゃんの相手は任せなさぁい♥』
アリス「ちょいとボクは秘策を持って戻ってくる、それまで総指揮はメグに一存を託す」
モンスメグ『新しい編成のリーダーズ☆』
ビアンカ『メグオーナー♪』
アリス「ではさらばだ!」
ゆん「ご武運を!」
ボクとゆんはぐるりと大陸側へとスピンターンして離脱を図る。
ダークルギア「逃がさん、貴様だけは」
予想通り、ルギアがボクとゆん目がけてハイドロの極大水流を放ってきたがもちろんそれは読んである。
ダークルギアの こうげきははずれた!
アリス「残念、おぬしが見ているのは幻影だ」
Type6のイリュージョン!
ダークルギア「小癪な!」
追撃を放とうとマナを溜めるルギアに向かって雷撃、火炎、氷塊が立て続けに襲いかかり、集中力を途切れさせた。
ライ『ルギア様、貴女の御相手は』
グレアット『私達ですっ!』
レジアイス『……メン限LIVE……』
ゆん「急ぐわよ、アリスちゃん!」
伝説の仲間たちの助力のおかげで、ボクは秘策を見つけにこの戦場から一時撤退に成功した。正直今のままではこれでも時間稼ぎにしかならない、決定打までに帰還せねば!
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ルギアの影響のせいか、大陸に出ても大雨が全国的に降り続いていた。台風警報が出ている日のことを思い出す。この雨がもっと強くなってしまう前にはことを終わらせなければ。
ゆん「アリスちゃん、秘策って?」
実はまだ誰にもその秘策を打ち明けてはいない、ルギアから遠く離れたところでゆんが当然の質問を投げかけてくる。
アリス「ずばりホウオウよ」
ゆん「ルギアと対を成す伝説ね。アテはあるのかしら?」
アリス「くくく……無い!」
言ってはみたものの、本当にホウオウの居場所など掴んではいない。これにはゆんも思わず素っ頓狂な声を上げた。
ゆん「ええぇっ!?」
アリス「なーに、大団円でも神話になってるんだ、キガンにいけば情報があるさ」
ゆん「いなかったらどうするつもりよ!」
アリス「メグレアを信じろ」
ゆん「もーう!」
とりあえずまずは一国の支配者たるウジヤスを頼りにキガンの方向へと舵を取った。
しかしメグとグレアがキーパーソンになること自体は間違っちゃいない、推理が正しければダークルギアを鎮められるのは確かにボクしかいないのだ。
-キガン城-
ウジヤス「おおアリス、よくぞ参ってくれた!是非とも手厚くもてなそうぞ」
堅実かつ民からの信頼の厚い内政を施している大名というのに、こういう時には恰幅の良さを見せるウジヤス。そういった一面がなお一層評判を高めているのだと思われる。
アリス「今は一刻を争う事態でな、気持ちは受け取っておく」
ウジヤス「すると、この豪雨じゃな?」
突然降り出した雷雨にやはり違和感を抱いていたか、流石は一大名。おかげで説明の手間が省けた。
アリス「話が早くて助かる、さっきルギアが目覚めて暴れてるんだよ」
ルギアの名を聞くや否や、身を乗り出すと御付きたちを手早く人払いし広間には3人だけになった。トップシークレット事案と受け取ったわけか。
ウジヤス「ほう……してこのホウジョウ三代目・ウジヤスに何を望む?」
彼の目つきが客人へのそれから一転し、もののふのそれへと鋭く切り替わった。ボクは余計な御託を抜き、単刀直入に問いただした。
アリス「ホウオウはどこにいる?」
そう問うと掛け軸の裏から施錠付きの引き出しを取り出し、懐から鮮やかに鍵を使って開けると中から書物を手に取り、厳かに答えた。
ウジヤス「うつしみのおかにおる……!」
ゆん「うつしみのおか……?」
ウジヤス「ルギアが海底に潜むように、ホウオウもまた天空に在る。古より伝わる神話の存在となっておって、実在するのかも掴めぬ」
文字通り雲をつかむような話ということか……存在自体は認知出来ていても逢う事そのものが叶わない、そう言いたいのだな。
アリス「行き方はあるのか?」
ウジヤス「普通に生きていては無理難題じゃ、然し貴女が優れたるあやつり人たれば或いは、な」
アリス「勿体ぶってないで」
ウジヤス「アリスよ、貴女の住む世界にもルギアとホウオウはおるのか?」
その質問に、何の意図が隠されているのか掴み切れなかった。しかしわざわざ誤魔化す必要もない、ボクは頷いて肯定の返答を送った。
ウジヤス「そちらではホウオウとはどうやって出逢うのじゃ」
ゆん「確か……ライコウ、もといメグちゃんとエンテイとスイクンを従えた方だけに、虹色の羽根が共鳴してスズの塔が開かれるのよね……あら?」
どうしてその奇妙な一致点に今まで気付かなかったのか。どうしてだかこっちじゃそれがルギアを呼び出すための儀式に変わっているがメカニズムは同一じゃないか。
そこから連想されて本で読んだもうひとつの神話を思い出した、ルギアは本島とは別にそれぞれ3つのうずまきじまを支配していて、その封印を解くためには眷属であるフリーザー・サンダー・そしてファイヤーことグレアットのトリプルエネルギーが必要なのだ。そして今、ダークルギアとその6人が集結している……!
ウジヤス「ファイヤーとライコウを連れておったからな、いずれこの日が訪れると踏んでいたのじゃ」
そう告げるウジヤスから、厳重にラッピングされたにじいろのはねを受け取った。
アリス「これって」
ウジヤス「この羽根が落ちていることはそう珍しくもあるまいて。じゃが、この羽根に選ばれし逸材は真に優れたるあやつり人しか居らんのじゃ……ギンノにその資格はなかった」
そうか……だからギンノはボクと同じ世界の住人でありながらあやつり人では無かったのか。あくまでも何らかの方法を用いてたびたび旅行に来ていただけだったんだな。
ウジヤス「ここから北にある霊峰、フジヤマを目指せ。さすればその羽根が貴女を導こう」
アリス「OK!」
ボクは、にじいろのはねのラッピングの穴に紐を通して簡易的なペンダントにすると首に巻いて羽根そのものはエプロンドレスの中へと隠した。
ゆん「感謝いたしますわ。ところでどうしてウジヤス殿はこの話を?」
ウジヤス「わしの国へは度々貴女のような漂流者が流れ着く……まるで誰かの道標として誘われてるようにの」
アリス「道標、ね……」
ゆん「アリスちゃん時間がないわ、飛ぶわよ!」
ゆんに腕を取られぱたぱたと中庭に出ると背中に乗せられて、空へと飛び立った。
七色の希望を胸に込めて。
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カントー地方・サファリにて
リーリエ「ツボミットさんにプラックスさん……アリスさんから譲っていただいたロトム図鑑に登録されません。こんなの論理的に解明できません!」
シロン「くーん?」
アブリボン「あぶぅ」
リーリエ「展示室にもアニモンさんとか128さんとか飾られていましたし、なんだか不思議ですね……あれ!?またほしぐもちゃんったらどこかに!」
アンズ「親父殿、マタドガスって進化したっけ?」
キョウ「片腹大激痛、先週より魔訶魔訶の連続よの」
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大団円某所:フジヤマ
上空から見下ろすその風景はどこかジョウトとカントーを跨ぐ山脈地帯、シロガネやまに酷似している気がした。恐らくはこの一帯そのものがあったかもしれないシロガネやまの姿なのかもしれない。
地上に降りると、孤独で遭難しないよう手を繋いで周辺の散策に当たった。見たことあるポケモンから見たことのないポケモンも共存しており、新しい生態系が発達していて研究のし甲斐がありそうだったけど今はそのようなことにうつつを抜かしている場合ではない、麓から洞穴の中へと臆することなくずんずん進んでいく。
てっきり暗闇となっていると思っていたが、人工的なライトも設置されていないというのになぜか洞穴の中は足元がはっきり見えるほど明るかった。その事実のおかげでここのどこかにホウオウが佇んでいるのだろうという確信を持つことができた。
ゆん「アリスちゃん、この石室怪しくないかしら?」
ゆんが見つけた先には、その辺の無機質な石とは違い綺麗な灰色に染まった石で出来た扉があった。どうにも自然に作られたとは思えない、近づくとまるで歓迎されているかのように石が静かに崩れ落ちていき、不可思議に思いながらもボクたちはその扉をくぐっていく……。
アリス「……雲?」
ゆん「わたあめみたいな道ね」
目の前に続く通路には大きな雲がいっぱいに浮かんでいた。そこまで上へ昇ってきたつもりはなかったのだが、山道というのはあなどれない、知らない間に標高の高い場所まで登山してきたのだろう。足元がよく見えなくておぼつかないので、ゆんの背に乗ってひたすらまっすぐに進む。
どれだけ飛んだだろうか、雲に包まれているおかげで方向感覚も喪失してきて昇ってるのか降ってるのかすらも分からない。24時間飛行し続けられるゆんにはまだ疲れの色は見えていなかったが、それでも変わらない景色というのは精神に来る。なんだかちょっとウトウトしてきて舟を漕いでいると、重心で気づいたのかゆんが大声でボクの名前を呼んでくれて、どうにか意識を保てていた。
ゆん「休ませてあげたいけど着陸できそうにも無いわね……」
アリス「んにゃ、こうしてる間もあいつらは命賭けてるんだ」
ゆん「そうはいってもねぇ……あ、私のローブのポケット探ってごらんなさい」
アリス「もみゅもみゅ」
ゆん「あん、バカ幼女!ポケットって言ってるでしょ」
バカ幼女って罵られた、泣いちゃう。バカじゃないもんと呟きながら彼女のローブからガサゴソと中を探ると黄色いキャンディーが出てきた。
ゆん「レモン味のアメちゃんよ、そんなのでも気休めになるでしょう」
アリス「レベルアップしたりしない?」
ゆん「ヒト用のアメちゃんよ!」
キャンディーを袋から取り出そうと、視界を下に向けるとそこにあるはずのない物が落ちていることに気がついて急いで緊急停止を掛けた。
ゆん「きゃ!どうしたの」
アリス「さっきメグのアクセが落ちてた」
ゆん「嘘、メグちゃんの!?」
Uターンして戻ってみると、確かに雲の上にメグが愛着しているアクセサリーが落ちていたのだ。もしかして、あいつここまで来ていたとでもいうのか?
手を伸ばすのも怖いのでこのままじゃ拾ってやれそうにはなかったが、ゆんがそよ風を起こして手元まで巻きあげてくれたので、無事回収することができた。
アリス「メグのやつ……ホウオウと会ったな」
ゆん「どうしてかしら……?」
その途端に、急に雲が晴れ渡り視界がクリアになったかと思えば周囲が青い青い綺麗な大空へと移り変わったのだった!
ゆん「あっちに誰かいるわ!」
聖堂のようなシルエットが空に浮遊しているのを発見し、アクセル全開でそっちへ向かうと美しい虹色の円環が広がる中心にその聖堂が出現した。
美術館でよく見かけるような神秘的な景色……そしてホウオウと思わしき麗しい御神体の輝きがあった。
アリス「……ホウオウか?」
ホウオウ「予をそう呼ぶ者もおろう。然り、ホウオウとはこの予に他ならん」
ゆん「う……神々しすぎて直視できないわ」
ホウオウから発される虹色の光が眩しいせいなのか、ゆんは反射的に彼女に対してこうべを垂れる形になっていた。目がちかちかするが、どうにか彼女と目を合わせる。
ホウオウ「して、現世の子よ。なにゆえ大団円の天上まで参った?」
天使様にはすべてお見通し、ってか。ボクはペンダントにしたにじいろのはねを掲げて見せた。するとどうだ、羽根から紅いオーラが光り出したではないか。
ホウオウ「操り人、か……ワダツミを目覚めさせたのだな」
アリス「ああ、絶賛暴走中だ」
ホウオウ「童女にはちと荷が重かったかの?」
高貴な袖で口元を覆いながらくすくすと嘲笑する天使様に、ボクは率直にお願いを試みた。
アリス「力を貸してくれ」
ホウオウ「予の力を欲するか、童女よ」
アリス「欲しいんじゃなくて、貸してもらいたいの」
ホウオウ「くす……遊び上手ね」
アリス「対価を払えとか言われても困るからな」
ホウオウ「愛いやつめ……あら?」
天使様は何かに気がついたようで、視線の先を追うとメグのアクセがあった。ボクは敢えて仕舞わずに、さりげなく見えるような位置につけていたのだ。
アリス「力を貸す気になってくれたか?」
ホウオウ「予の聖灰はどうした」
メグの痕跡を見つけたときに頭の中ではピタリと推理が完成していた。ホウオウの存在、ホウオウと三聖獣の神話、メグとライの関係性、ルギアとの会話……自分でも信じられない真実だが、実際起きてしまっているのだから信じるしかない。
アリス「ライを解放したとき、メグの再生に使わせてもらった」
ゆん「ふええぇっ!?」
導いた真実は新たなる神話に数えられるだろう、モンスメグ……もといライコウは現世のホウオウと大団円のホウオウが持つせいなるはいによって二度蘇ったのである!
それだけではない。ルギアの眷属だったグレアットと長く同居していることで、スピリチュアルエネルギーとも反応し、さらにライのレリーズで発生したエネルギー、そして大団円という世界の特性!
全てが合わさったことにより、メグはもはやライコウですらないモンスメグという新しい唯一無二の種族として生まれ変わったのだあぁー!
ぽかーんとしているゆんのために分かりやすくゲームに喩えてかいつまんで説明してあげると、マダームはカモネギの条件進化、たとえば攻撃と防御のステータスが同じでレベルアップとか、フォリキーはキリンリキにやみのいしを使って進化……といった具合に、この世界にはこの世界なりの生態系とルールが確立されていると仮定して。
メグの場合もそれに当てはめてやってあとはちょちょいと付け足せば、今回のケースだってまかり通ってしまったというイレギュラーともいえる現象なのだ。
カルマ(なんつートンデモ理論やねん)
ホウオウ(!)
カルマ(!)
アリス「ここはひとつ、メグの恩返しとしてお主の力を預けてみてはくれないか?」
ホウオウ「くす、何人もの操り人を見送ってきたが童女のような子は初めてぞ」
彼女から何か神秘的な雰囲気を感じるアイテムが、大気を介さずに直接手の内へと納められた。それは手のひらサイズの水晶玉に見えた。
アリス「これは?」
ホウオウ「その水晶は本来為れば金色と銀色に輝く代物、然し霧がかっているおかげで銀が霞んでしもう」
たしかに黄金の輝きこそあれど、もう一方は霧によって紫に変色してしまっていた。あのルギアが黒く堕ちてしまっている原因はこれか。ボクが目視したのを確認すると、すーっと手のひらから消えていった。
アリス「……交換条件か?」
ホウオウ「予は取引など好まぬ。話を戻すぞよ、予の遺伝子が混じってしまったがゆえにライの依代を正しく戻せなかったがゆえにワダツミの魂が淀んでおる」
ゆん「かんじがおおくてわかりにくいです!」
どうしたゆん、天使に触れて鳥頭になっちゃったのか?
ホウオウ「今日までこのような事例など起きようもなかったゆえな、童女の奇跡を買って予自らワダツミを止めに行ってやろう、特例ぞよ」
ゆん「わーい!」
よかったなゆん、めちゃめちゃ分かりやすい回答が来て。とはいえ、こんなトントン拍子にことが弾むとついつい裏を疑ってしまうのが人のサガというもの。
アリス「いいのか?」
ボクのそんな些末な不安など、一瞬にして一抹に吹き飛ばしてしまう太陽みたいな神秘的な笑顔を見せてくれた。
ホウオウ「自らの手で大団円をも操るあやつり人じゃ、予は惚れたぞ?」
アリス「…………」
ゆん「お美しい……」
アリス「御姉様……」
ゆん「アリスちゃん?!」
ホウオウ「では参ろうぞ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
モンスメグ「ろっくんろーる発射☆」
6号「エクスプロージョン!」
ダークルギア「小さいわ!」
スイ「わらわを見てくださいまし♥」
ビアンカ「ダイナバリアー♪」
レジアイス「……潜らせない……」
フリーザー「えと、ぜったいれいど……!」
エン「その水流、紅蓮で包んでくれる」
グレアット「津波なんて効きませんよっ」
サンダー「そんなビームなんて電解させてやるわ!」
レジスチル「この重力で満足に飛べるかしらッ」
ライ「逃がしはせん」
ダークルギア「うぐぐっ、小賢しい連中めが!」
メグの指揮のもと、なんかいい感じにルギアの動きを止めてくれていた。
アリス「おー、やっとるやっとる」
ボクはスコーンを貪りながら、ゆんの上から他人事のように観戦していると気配に気づいたグレアがおこごとと一緒に飛んできた。
グレアット「アリスさんっ!何時間も何なされてたんですか、こっちはもう満身創痍で……って、鳳凰神様ぁっ!?」
慌ただしくころころと表情を変えるグレアの身体は傷だらけで痛々しく、善戦できていた訳でもないことを一目で表していた。ゆん、あともうちょっと上までアップしてくれたら破れた巫女装束の隙間から見えそうだから浮いてくれ。
ゆん「アリスちゃん変なこと考えてない?」
グレアがホウオウの名を叫んだのに反応して、ルギアがこちらへと振り返った。
ダークルギア「ノコノコと出てきおって……何用だ、アマテラス風情が!」
おめめこわい、めちゃめちゃ怒ってはる。しかし天照大神とまで比喩されるとは大きく出されたな。明らかに最初に出逢ったときとルギアの様子が異なっている、何倍にもその身体が巨大に映って見える錯覚を覚えた。
アマテラス様はというと、一切微動だにせず上空に鎮座なされていた。キラキラと後方に光り輝く円形の虹が眩しい。
ルギアとホウオウの御対面に、応戦していた皆も動きが止まった。いや、動けなかったと表現した方が正しいか。ホウオウのプレッシャーは並みの伝説ポケモンが出すそれとは、桁という単位もおこがまじい、まさしく”格が違った”のだから。
ホウオウ「海が泣いておるぞ」
ちりん、と優しい鈴音がどこからか島全体まで響き渡り、それを聞いたとたんになんだか心が安らいでしまった。ボクたちの心だけでなく、荒れ狂っていた大波すらも安らいだようで、元のさざ波へと静かさを取り戻したのだった。
ゆん「すごいわ……鈴ひとつでルギアの能力が全部止まった」
ダークルギア「邪魔をするな!この海は私の領域、何人たりとも踏み入れさせん!」
ホウオウ「ほう……そう命じたのはこの予だということを忘れたか?」
アリス「!?」
グレアット「なん……ですとっ!?」
その爆弾発言にあたまがまっしろになって思考停止してしまった、ルギアが海神として君臨していたのは、ホウオウの命令だったのか?
ホウオウ「戻れ、ルギアよ」
Part17へつづく!