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《Ride On The City》-桜花の虹彩- Part2

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ーキキョウシティー

ハヤト「こちらキキョウ組。申し訳ございません、襲撃に失敗しツクシは火傷の重症、俺もただじゃすみませんでした」
病院の外でポケギアを使って、悔しそうに連絡を行うハヤト。
ヤナギ「それはよいわ。して、相手はどんな奴じゃった?」
そう返され、先ほどまで翼を交っていた相手を頭に浮かべると、思考が止まってしまい体がすくみ、思うように言葉を発せなかった。
沈黙の長さと、ハヤトから聴こえる荒い息遣いから状況を察したヤナギは
ヤナギ「お前ほどのポリスがメンタルをやられるほどか……充分に分かった。療養が終わったらツクシとともに戻ってこい」
そのまま一方的に通話が終了され、耳元には無機質な電話音だけが残った。
彼は病院の医者が来るまで、ただ呆然と立ち尽くしていた……。

ーコガネシティー

モンスメグの断言にも近い推理を耳にして、衝撃が走る面子。
内通者がいると仮定すれば、その人物こそアリスを目の敵とする人物になる。
となれば、彼女たちがこれまで出会ってきた人物の中に容疑者がいると考えられ、それぞれ思いつめたような顔をしていた。

ミカン「そ、そんな話……私聞いてませんの」
ゆん「ヤナギさんの味方であるミカンさんですら知らされていない……そうなれば、いったい幹部会ではどのようなお話をなさっていたんですか?」
ミカン「……それは」
言いよどむミカンを見て、半ば脅迫するように炎を起こすグレアット。それを見てますます恐縮してしまう。
6号「グレア。大事な証人です、それに捕虜は丁重に扱うものですよ」
グレアット「ラチがあきませんっ」
アリスがいる場所では物腰の低い彼女であるが、そうでなければ元々は地方を超えて語り継がれる伝説のポケモンである彼女は非常にヒトを低く見ている。
暴走させまいと、6号は新たな監視役としてグレアットに讒言する。
モンスメグ「メグ的には~、サカキかエリカあたりのことをもっともらしい理由をつけて動かそうとさせただけじゃないかな~って」
ミカン「!」
メグの予想は的中していた。ミカンの反応からして図星である。
ゆん「どういうことです」

モンスメグ「ポリスメンのハヤトは言ってみれば秘密警察みたいなポジっしょー?動きやすい立場になることでマフィア相手に牽制球を送れるしー。ツクシきゅんは財団の保護って建前で無差別に歴史的資料を好き勝手されちゃぷんすか!ってなるしー。マツバはたぶんメグがホーちゃんをボコったのが気に食わないんだろーね。ホーちゃんとバトった時なーんか様子おかしかったしサカキあたりが手を加えたんじゃない?」
普段のメグとはイメージもつかない、聡明とも言える的確な推測に皆が息を飲む。
かまわずメグは続ける。
モンスメグ「んで、リーグっていま財団のものじゃん?じゃあシジマとイブキはおししょーさまをコキ使われるのがムカムカ~ってカンジ?で、ミカたんは」
ビシっと人さし指を立ててミカンへ向ける。
モンスメグ「エリカとおともだちのミカたんからすれば、何かの間違いかも?でもほんとにそうだったら止めなきゃ!っていうジャスティスハートがビビってきたんでしょ!」
ミカン「……す、すごい……ヤナギ様が仰ってた通りです」
モンスメグ「どや☆」

6号「なるほど。それが本当だとしたら、ヤナギという男は人の心を掌握する術に長けていますね。厄介な相手ですよ」
ゆん「でもエリカの企みが分からない以上、なんとも言えませんわね」
グレアット「……アリスさんの口ぶりとあの信頼心を見るに、エリカではなくサカキに刃を向けて謀反した……という方が自然ですっ」
ミカン「そ、それにしても……メグさん、でしたっけ……よくこの地方のリーダー達をご存知ですね」
モンスメグ「ん~?ありすちゃんがたまーに口走ってること暗記してるからね☆」
グレアット「むっ……」
6号「抑えて。メグさんはああ見えて、よく周りを見ていますからね。だからこそ命中率がフィフティ・フィフティの攻撃を正確に当てられるんですから」
モンスメグ「メグちゃんの株爆上がり~☆彡」
ゆん「とにかく、出方を窺うしかありませんわね。無闇に動いたところでありす様を窮地に追い込むだけですわ」
会話が終わり、ミカンはアリスの家で面倒を見させることに決まって帰路へついた。
力を持つ彼女たちは、虎視眈々とただマスターの帰りを待つことしかできなかった。

ーヤマブキジムー

ナツメ「じゃあ手筈通り、マナとカルマのふたりは動いてちょうだい」
マナ「了承した。だが、本当にいいのか?」
ナツメ「覚悟はとっくに決まってるわよ、エリちゃんは私の親友だもの」
カルマ「しゃーねえじゃんね。じゃ、いっちょやるか……」

ナツメ「エリカの計画通り、グレアット・モンスメグ・6号・ゆんの4人を見つけ次第確保。不可能ならば…………抹殺なさい!」
うゅみ「ビアンカはどーすんのよぉ」
ナツメ「マチスが向かっているわ、ぬかりはない」
うゅみ「幸福とは、誰かの犠牲の上に成り立つもの。なーんてよく言ったものねぇ」

カントー地方某所・海上

イブキ「ふふ。遂にこの時が来たようね」
キングドラの背に乗って優雅に大陸を見つめるイブキ。
シジマ「これからはヤナギの親っさんの時代よ!」
ニョロボンと共にシャドーボクシングをしながら返す。

キョウ「こわっぱめ、させんわっ!」
どこからともなく、音も起こさず颯爽と登場する一人の忍び。

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カントーロケット団直系・セキチク組リーダー
三幹部・キョウ

キョウはモルフォンベトベトンマタドガスをくりだした!
イブキ「あら。向こうから来るだなんて親切じゃない、手間が省けたわ」
イブキはハクリューハクリューハクリューをくりだした!
シジマ「首の骨引っこ抜いて土産にしてやらあ!」
シジマはオコリザルチャーレムキノガッサをくりだした!

キョウ「貴様らにはカントーの土を踏ませんわ!」

ーグレンタウンー

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ビアンカ「いらっしゃいませー!」
開発されたグレン島で、ウェイトレス姿に身を包んで客寄せに励む白髪の童顔の少女。
彼女が勤務するレストランは人気スポットとして、船を使って離島まではるばる来客してくるトレーナーが非常に多かった。
ビアンカ「ふふ。お兄ちゃん、ビアンカがんばってるよ」
首に吊り下げたこころのしずくのペンダントをぎゅっと握る。失った兄・クオーレと唯一ぬくもりを繋ぐキーアイテムであり、片時も離さずに持っていた。
そんな折、ひとりの軍人がグレンへと上陸する。

マチス「ヘイ!プアリトルサイキックガール!」

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カントーロケット団直系・クチバ組リーダー
三幹部・マチス

ビアンカはその容貌と雰囲気から、瞬時にロケット団と見破った。
しかし笑顔を絶やすことなく、元気に接客を試みる。
ビアンカ「いらっしゃいませ!おひとり様でしょうか?」
にやりと不敵に笑いながら、数十センチ差のあるメイドを見下ろすマチス
マチス「イエッサー。お嬢ちゃんひとりだぜ」
ビアンカ「え」
レアコイルの強力な磁場を用いて、ビアンカを宙へ浮かして見せた。
その異様な光景に、ギャラリーも続々と集まってきた。
マチス「ここじゃエキストラが多い、クルーまでガイドするぜ」
そのままふわりと、自分の軍艦まで運ぼうとする。
ビアンカはサイコパワーで抵抗するも、エレキフィールドによって無力化されそのまま拉致されてしまった。

ビアンカ「離しなさいってば!」
マチス「素直に言うことを聞きゃなんもしねえ」
軍艦内の小部屋へ連れていき、マチスビアンカとふたり施錠された空間で話し合いを始める。
マチス「お嬢ちゃん、アリスとフレンドだろう?」
聞きなれた名前が出て、ハッとするビアンカ
ビアンカ「そ、それがどうしたっていうの!」
マチス「オレさまもアリスとはグッドな関係でね、何度もガイドしてやったことがあるのさ」
その言葉を聞き、密かにマチスの心の内を覗くビアンカ。その言葉は本物であり、アリスとは友好的な人物であることが分かると少しだけ肩の力を抜いた。
ビアンカ「ウソじゃないみたい。それがビアンカと何の関係があるの?」
しかし心の深い深層まで覗くには、条件が必要であり、その条件を満たせない現状では思考の浅い箇所を見るのが精いっぱいであった。
そこで、ビアンカはしたてに出て動向を探ることにした。

マチス「このままじゃアリスの命がやべえ」
ビアンカ「ええっ!?」
大声をあげて驚く、無理もない。死んでも死にそうにないような彼女が命の危機に直面していると聞かされれば素っ頓狂な声をあげてしまうだろう。
マチス「詳細まで聞かされちゃいねえんだがな、アリスを狙ってる奴がいることはトゥルースだ。しかしラッキーなことにアリスのことをまだ洗い出せてねえ、分はこっちにあるだろうよ」
ビアンカ「……それで?」
マチス「そうなりゃ相手は全力をあげてカントーまでウォーをけしかけてくると予想がつく、エリカと密接な関係にあることだけがあいつらの手がかりだからよ。だが、もういっこだけ手がかりが見つかっちまう恐れがある」
ビアンカ「もしかして!」
マチストークの速ぇお嬢ちゃんで助かるぜ。そこで……協力してくれねえか、オレたちにとってもアリスをロスすることは痛いからよ

ビアンカ「……考えさせて」
マチス「わりぃがもうそんなタイムはねえ。最悪キルしちまってもいいと命令が出てる」
脅しではなく、事実であることを証明する軍人の目で持ち掛ける。
その殺気を全身でびりびりと感じ取ったビアンカは、脅えることも屈することもなく、クオーレ譲りの精悍な目つきで見つめ返す。

ビアンカ「お姉ちゃん……お兄ちゃん……今度はビアンカが助けてあげるね……。分かった、軍人のお兄さん。連れて行って」
マチス「オーケー。カントートップの大都市までご招待するぜ」
ビアンカ(あの人……辛そうな、寂しい目をしていたな。きっと……すっごくいい人)

カントーロケット団本部ー

「ご報告致します!三幹部がひとりキョウ様は、トージョーの滝付近でタンバ組・フスベ組と抗争。戦況は有利であるとのこと!そしてナツメ様は何やらマナをジョウトへと派遣させた模様、詳細は一切不明であります。わかり次第追って報告させてもらいます!マチス様はそのナツメ様とコンタクトを図っておられるご様子、恐らくこのおふたがたは画策なさっていると思われます!」
サカキ「御苦労。エリカはどうした?」
「それが全くもって情報が見つからず……このままでは”レジェンズ計画”に支障をきたすかと」
サカキ「タマ張ってでも見つけ出せ。ヤナギとの交渉に必要なのだからな」
「はっ!」

サカキ「やれやれ。俺の手を煩わせるなよ……くれぐれもな」

タマムシ旅館ー

真っ暗な部屋のなか、着物が着崩れることも厭わずアリスを強く抱きしめてベッドで横たわるエリカ。一切の通信を断ち、まるで逃亡生活でも送っているかのように。
そんな空間に、紫咲に光るエネルギーが出現する。
うゅみ「みぃつけたぁ」
エリカ「……うゅみですか、お久しぶりですこと」
うゅみの存在そのものは一般には感知されず、彼女が起こした行動ですら別の処理として扱われて認識される超存在、ゆえに隠蔽しているエリカは唯一接触を選んだ。

うゅみ「その子、またやっちゃったのぉ?」
エリカ「わたくしの失策ですわ。ですから自分の手で守り抜きますの」
彼女の思惑は、ここでは語らないこととする。
知っているのはこの世界で彼女たちだけだからである。
うゅみ「勝手にしたらいいわぁ。失敗は成功の母だものぉ」
エリカ「……他愛ないお話をしに来たわけではないのでしょう?」
うゅみ「マチスが元凶となったその香水を求めてるわぁ」
エリカ「なるほど。まずは一匹、といったところですわね」
エリカは着物の裾から、香水が入った小瓶を取り出す。
地方随一の香水商人である自分自身が手がけたオリジナルである。
その色は、虹色に輝いてた。
うゅみ「あとぉ、サカキは躍起になってアンタを探してるわぁ。ま、あたしがいる限りぜーったいムリだけどねぇ、くすくす」
エリカ「ええ、絶対にあのお方だけには渡らせませんわ」
ぎゅっとアリスを抱く力をさらに強めて抱擁する。
彼女は眠りに落ちており、目を覚ます気配すら感じない。
うゅみ「それでぇ、次はその子をどうするつもりよぉ」
核心を突く質問を投げるうゅみ。うゅみといえども、全知全能ではない。
エリカは、月があるであろう方向に顔を向けてぼんやりと返す。

エリカ「わたくしはただ、この子に幸せになってほしいだけですの」

ーコガネシティー

モンスメグ「You Wanna So So☆いーつーもすぐそばにーあるー♪」
6号「嵐がほんとに巻き起こっちゃ困るんですよぉ!」
のんきにツッコミトークを交わす2人を置いて、翼をもった少女2人が再び衝突を繰り広げていた。
ゆん「本当にあなたというお方は話が聞けませんわね!お耳を琵琶にでも落としてきたんですか?」
グレアット「その羽根ちぎり落としてあげましょうかっ?だぁいすきな人間風情とそっくりになれますよっ!」
ゆんの ふぶき!
グレアットの はなびらのまい

ミカン「おやめなさいっ!!!!!!」
そこに割って入るひとりのトレーナー。
捕虜の身でありながら、今ではすっかり彼女たちの保護者を務めている。
2人が大の苦手とするストーンエッジを当てて喧嘩を止めるハガネール
そしてはじまるミカンからのお説教、もはや日常風景と化していた。
傍目から見れば、敵同士とは思えない関係だろう。

6号「はー……自由にお買い物にも行けませんし退屈ですねえ」
お茶をすすりながらまったりとくつろぐメグは、両腕を伸ばして伏せる6号をつんつんと突きながらにこにこと笑う。
モンスメグ「ろっくんもネットアイドルやってみるー?」
6号「なんですかその魅力的な響きは!」
モンスメグ「ルッチーから教えてもらったんだー☆」
などとわちゃわちゃしている最中に、ハウスのドアを蹴破る勢いで何者かが侵入してきた。即座に臨戦態勢をとる4人とミカン。

マナ「相も変わらず、平和ボケした阿呆だな。貴様らは」
マナの姿を見て、構えを解くメンバー。その隙を逃さず強力なサイコショックをお見舞いした。
ゆん「っ!」
6号「あっぶな!なにするんですか!」
慌てふてめく6号、動けずにいるミカン。対してメグとゆん、そしてグレアットは敵意を露わにしてマナを見据えていた。

マナ「今すぐにナツメの元へ来い。さもなくばーーー」
指先から氷点下の冷凍光線を繰り出し脅迫する。
マナ「殺す」

ゆん「このお方がマナさん……」
話に聞いていただけであり、実際に対面するのはこれが初めてであったゆんは冷や汗を拭いながら対峙する。
モンスメグ「どったのマナっち~?ありすちゃん絡み~?」
軽々しい口調とは裏腹に、牙を剥いてバチバチと帯電するメグ。

グレアット「マナさん。私は機嫌が悪いのです、口の利き方には……

気をつけろおぉっ!!」
グレアットは、深紅のオーラと焔をプレッシャーとともに放つ。

マナ「まともではあるまいな……強硬手段と行こう」
カルマ「ばーか。そいつは最終手段だっての」
ふわふわと気配を現すカルマ。エメラルドグリーンの新緑色に輝くオーラを纏い、マナの戦意を削ぐ。
モンスメグ「かるるーん☆」
6号「カルマさん。話が通じる相手が来てくれて助かります」
ゆん「カルちゃん、いったいこれはどういう事です?」
グレアット「…………」
カルマ「とりまあいつのルームいこーぜ、あそこなら邪魔はいらねえし」
そう言うと、アリスの部屋へと舞うカルマ。後に続く一行。
話が読めないミカンは悩んでいたが、常に見張っていけないことと、話を聞いてもらいたいという一言によって一緒に入ることとなった。

カルマ「んじゃぁ、順追ってしゃべるじゃんよ」
モンスメグ「あー、ありすちゃんナゾノクサの等身大ぬいぐるみ持ってるー!キュート~」
マナ「黙れ」

カルマ「あー、メグはそのままでいいじゃんね。で、あらかたはアカネから聞いたはずだろ?」
ゆん「ええ。その後に、メグさんの独自の解釈も」
6号「仮定の域は出ませんが、筋は通ってました」
一応補足にと、カルマとマナにその推理を話す。

カルマ「おー、まぁそんなとこじゃね?けどぼくがこれから話す内容はあいつの事そのものだ、心して聞けよ?」
モンスメグ「心した!」
ミカン「心構えってそういうものなんですか?」
グレアット「……うるさいなぁっ」
6号「グレア抑えて……んっ」
グレアット「んぅ、、、ぷぁ」
マナ「話が一向に進まんな」

カルマ「こいつら束ねてたあいつってすげえじゃんね……でだ、直球にいうと
ア……あいつの命が狙われてるじゃんよ」
モンスメグ「しってるー」
カルマ「最後まで聞け、やどりぎ植えんぞ。厳密にいうと、ヤナギは別に裏切ったわけじゃねえ」
ゆん「ほう?」
6号「で、でも実際アカネさんは襲われて」
カルマ「ナツメらとエスパーしあって見出した話だから信憑性はあるじゃんよ。どうもヤナギは逆にサカキに話をけしかけたらしい」
ミカン「そ、そんな……」

カルマ「詳しくはエリカから口止められてるから言えねえけど、サカキはヤナギのその話を呑み込んで手を組んであいつの行方を捜してるじゃんね」
グレアット「それで、アリスさんはどこにいるんですかっ?」
彼女の脳内にはアリスのことしか無い。彼女にとってロケット団同士の身の内事情などどうでもよかった。
カルマ「たぶんエリカと一緒じゃね?エリカからすりゃあいつの安全を確保するには自分のそばに置いとくことが最善手だろーから」
グレアット「でしたらすぐにでもっ!」
カルマ「そーも行かねえだろ、ぼくらがエリカと接触したりすればサカキとヤナギに居場所を教えるのと同義じゃんよ」
モンスメグ「はいはーい!ずーっと不思議に思ってたんだけどー、別にそいつらメグたちでぶっぱなしてやればまるっと解決じゃないのー?」
手を挙げて、解決策を口に出すメグ。おそらくはメンバーみなが思っていたことだろう、その心底の気持ちを彼女が代わりに代言した。
マナ「そう簡単な話ではない」
カルマ「それが出来りゃとっくに終わってるっつーの。この話を裏で糸を引いてる黒幕がいんだよ」
6号「……黒幕?」
そういう語句に対しては過剰に反応する。
マナ「認めたくはないが……私たちであっても適わなかった奴がいるだろう」
グレアット「…………っ!」

モンスメグ「★キサラギ★」

ポケモンリーグでの最終戦を思い出す。
ピジョット1匹に一切の歯が立たず、マナやカルマ、うゅみであっても真っ向勝負では勝てない相手。エリカの協力とアリスの認識改変がなければ、勝利は掴めなかっただろう。
言ってみれば、この世界最強のポケモントレーナーである。

グレアット「ですが!アリスさんのお力があれば、勝てるはずですっ!」
カルマ「あれば、な」
6号「えっ」
ゆん「まさか……」
カルマ「あれはあいつにしか扱えねえ代物じゃんよ。それにあいつは……いま眠りについている」
モンスメグ「おねんねしちゃってるなら起こせばいい☆」

カルマ「意識不明っつー意味じゃんよ」

6号「そんな!どういうことですか!何があったんですか!」
ゆん「大怪我でもなさって……?」
マナ「知らん。原因は分からんが、それからエリカが匿っている」
カルマ「そーいうわけじゃんね。エリカは全力であいつが目を覚ますように陰で隠れてがんばってるじゃんよ」

グレアット「…………そうですかっ」
6号「ぐ、グレア!お気持ちは分かりますが落ち着いて」
グレアット「キサラギに勝てるお力を身につけて参りますっ!」
モンスメグ「修行回Ktkr!」
ゆん「そんな事をなさってはヤナギさん達に見つかってしまいますわ」
カルマ「そこの鳥さんは賢くて話が早いじゃんね」
グレアット「あ?」
6号「グーレーアッ!」

マナ「要は大人しくしろ、ということだ。しかしいずれ此処が見つかるのも時間の問題だろう、ハヤトとツクシが回復すれば再び攻め入る。そこでだ、貴様らに提案をしに来たのだ」
ゆん「提案?」
マナ「私たちはナツメからの指示でここに来ている。その指示とは、貴様らからアリスに関するすべての記憶の抹消だ」
グレアット・モンスメグ・6号・ゆん「!!!!」
その突拍子もない提案に、動揺が走る。
一瞬何を言われたのか分からず、立ち尽くしてしまう。

カルマ「さっき言った通りヤナギのじいさんはあいつの情報をほとんど持っちゃいねえ。そしてそれはサカキも一緒だ、あいつはロケット団という組織にいないカタギである以上エリカに一任している。知ってることといりゃおまえらと一緒に戦ってきたことくらいだろ」
ゆん「ですが、旅の経路は辿られるはずでは」
カルマ「それがさっきの記憶の抹消に繋がるじゃんね。エリカもエリカで自分しか持っていない特別なモンを持ってるのよ、それがエリカの経験と技術の総結晶・《メモリーズ・アロマ》じゃんよ」

6号「め、メモリーズ・アロマ?」
カルマ「この香水を吹きかけられた相手はその量に応じて、レインボーバッジに仕込んだプログラムを用いることで特定の箇所だけ都合よく記憶が消える」
モンスメグ「わーお、レッツ背徳~」
カルマ「そいつを使ってあいつが旅してきて出会った奴等から、あいつの記憶を消していってたんよ」
グレアット「ですが、そのような夢のような代物があったとて、現にアリスさんのことを記憶している方たちがいらっしゃいます、それは不備ではっ?」
カルマ「あー……結論から言っちゃあいつをこの世界で今覚えているのは、ここにいるぼくらとエリカにアカネ。まーこれは理解できるわな?それとエリカが信頼しているらしいナツメたちカントーロケット三幹部にうゅみと一切の実害がねえからってことでルチアとアカネの側近のアスカ。ここまでは良いんだけど……」
マナ「サカキとヤナギには一切の隙がなく、カツラとフジは特殊な遺伝子をぶち込んでいるからかまったく操作が効かん。そしてキサラギとマサキは消息を絶っているのか全く見つからん」
6号「むむ……上手いこといやーな相手だけ覚えてくれちゃってるんですね」
グレアット「ビアンカちゃんはどうしたんですかっ?」
カルマ「…………ビアンカマチスに協力して、あいつへの恩返しだからってことで記憶を消したよ」
グレアット「そう、ですかっ……やっぱりっ」
モンスメグ「つまりありすちゃんのことを知ってる21人、この狭いセカイ系でこのお話は進んでるってことだね☆」
ミカン「くす、お伽噺みたい」

カルマ「あいつと居るとなんもかんもファンタジーになるじゃんね」
ゆん「承りましたわ」
モンスメグ「ゆんゆーん?」
ゆん「いずれアカネさんとアスカさんもその処置を行うと思いますわ、それにルチアさんも。最終的にはナツメさん、キョウさん、マチスさんも任務を遂行次第自ら記憶を消すことでしょう、あのお方達はプロですから。そうなれば、残る証拠はありす様と共に冒険をしてきたわたくし達だけになりますわ。わたくしはありす様の枷になるくらいでしたら、喜んでこの思い出を差し上げます」
ミカン「ゆんちゃん……私も、エリカちゃんが悪いことをしていない気がする。ううん、どうしてかは分からないけれど、ヤナギ様とサカキ様の良い様になってしまえばこの世界から平和が消える気がします。だから……私も、エリカちゃんの為に行きます」
ふたりは、覚悟を決死したまっすぐな瞳をしていた。
その眼光を向けられたカルマは、本気で受け答えようと決心する。

カルマ「おまえらはどーするじゃんよ」

モンスメグ「ありすちゃんのコト忘れるとかぶっちゃけありえなーい」
6号「ありすさん無くては、アイスとスチルにも顔向けできません」

グレアット「…………」

カルマ「ま、そーいうと思ってたわ。で、グレアット。おまえは?」
グレアットは、すーっと息を吐くと顔を上げる。
その表情は、怒りでも哀しみでもない。ゆんのように覚悟を決めたわけでもない。
それはーーー憎悪であった。
瞳から光が消え、表情から感情は落ち、真っ赤な翼は徐々に黒く塗りあげられた。

グレアット「これが私の答えですっ!」

マナ「やれやれ……同胞の命を奪うのは不服だが、仕方あるまい」
カルマ「マナ、頼んだじゃんよ」
カルマは、ゆんとミカンを光で包みテレポートの準備をする。

マナ「来い、伝説最強と謳われた私が全力で相手をしてやる」
モンスメグ「じゃあマナを倒したらメグが最強☆」
6号「爆裂魔法を撃つに最も相応しいですね」

グレアット「伝説?それは低俗な人間が決めた愚そのもの
…………私は…………
天界の神ですっ!

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マナ「ならば神とも戦うまで!」

次回に続く!

NEXT

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ビアンカのイラストは、救星の明るい夜Part21においても触れましたが
冷水ゆき様より、直接許可をいただいて載せております。
この画像については、保存はOKですが無断使用はなさらないでください。