Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》救星の明るい夜 Part15

f:id:Alice_Wreath:20210912150209j:plain大地の化身・グラードン

大地を盛り上げることで大陸を広げ、日照りを起こすことで雨雲を払いながらその光と熱で水を蒸発させる。 この力によって洪水などの水害に苦しむ人々を救うが、その一方で過剰に水を蒸発させ、干ばつを引き起こしてしまう。

カイオーガとと死闘を繰り広げ、その末に地下奥深くのマグマの中で眠りについた。 目覚めるとそれに呼応して火山が噴火すると言われている。

原始回帰編Ⅱ

ボクとグレアットは、散り散りになった仲間たちを探してホウエンの大空を飛び回っていた。どれだけ飛ぼうとも、蒸すような灼熱の日光と押し返すような荒れた大波は続いていた。ボクは体力を少しでも温存できるようにぐったりと俯けになってグレアットの背に顔をくっつけていた。巫女服の薄い生地のおかげで彼女の肌の感触がしっとりと感じられて、余計に体温が上昇してしまうのが欠点だが。

グレアット「だいじょうぶっ……ですかっ?」
アリス「この水が切れたらだいじょばない」
携帯してあったおいしいみずは、謎の技術によって冷却性を保っていたためどうにか水分と体力を維持できているがもう心もとない本数になってきた。
民家や施設を利用できればいいのだが、この異常気象によってどこも休業中ないしはそもそも建物そのものが崩壊してるかのどちらかだ。
ポケナビは電波が一切つながらないし、なかよしバッヂの通信機能すらシャットダウンされていて完全に連絡が遮断されている危機的状況。
せめて、あいつらが無事であればそれだけでもずっとラクになれるのだが。

アリス「ここ……どこだろうな」
ぼんやりと目を開けて下界の様子を眺めるも、水没している有様だった。
グレアット「ムロ……あたりでしょうかっ」
だいぶ南まで来ていたようだ。道理で汗が止まらないはず。
こじまのよこあながあったであろう洞窟は海の浸食によって崩れていた、もしも先にアイスを救出していなかったらと思うとゾッとする。

グレアット「あらっ?あれは……っ」
視力の優れた彼女はなにか見つけたようだ、返事をするのもきついので顔をくしくしと背中に擦り付けて反応を返す。
グレアット「んっ……6号ちゃん、でしょうかっ?」
アリス「んあー?」
グレアット「くすぐったいですってばっ、少し降りてみますねっ」
そう言って、風が下へと流れていくのを感じて降下していることを感じる。

6号がもし見つかったんだったら、こいつは大きいぞ。士気に関わるからな。
グレアット「…………ッ!!」
急にストップをかけたことで、危うく振り落とされそうになった。
アリス「どうした?」
グレアット「……………………いえ、何でもありません。私のカン違いでした、他を当たりましょうっ」
そういわれると気になるのが人の性ってものだ、ボクは顔を上げて下を振り向こうとするがグレアットが大きく翼を羽ばたかせて急上昇をしてしまったので確認できずじまいだった。
アリス「ほんとうにかんち」
グレアット「カン違いですっ、私もちょっと疲れてたみたいですからっ」
そこまで強く否定されてしまっては、しょうがない。
それにかれこれ数時間は空を飛行し続けているのだ、疲労がたまっていてもおかしくはない。いくら伝説のポケモンといっても無尽蔵ではないだろうから。

グレアット「…………」
それから北上をしている間、彼女はずっと無言だった。お互いに沈黙が続く。ボクはこの雰囲気に耐えかねて仮眠をとることにした。


夢、夢を見ている。誰かを待っている夢。遠くに聞こえる雑踏の中で、小さなベンチに座って、たった一人で、来るはずのない人を、何時間も……何日も……そして何年も……。

夢、夢の始まった日。木漏れ日の光がまぶしかった。雪の感触が冷たかった。そして、小さな子供が泣いていた。その泣きが、今も思い出せない……。

夢、夢の中にいる。喧騒が聞こえる。遠くから、近くから……。さざ波のように絶え間なく響く。忙しそうに歩く大人たち……ベンチに座る小さな姿に気づくことなく……。


どのくらい時間が経っただろうか。
喉の渇きと波のさざめきで目を覚まし、残り少ないおいしいみずを飲み干して景色をぼんやり眺めると、活火山が鎮火と噴火を絶え間なく繰り返す異常な現象をまのあたりにしたのだ。
ということは、ここはフエンタウンかその近くの砂漠か……。
アリス「なぁ、グレアット」
グレアット「黙っていてくださいっ」

アリス「……グレアット?」
明らかに様子がおかしい、いつもの温厚な彼女とは全く違う。特にボクに対してそのような不興を抱くような声色などありえないからだ。
アリス「どうしたんだよ」
グレアット「無駄な会話は命を削りますよっ」
確かに彼女の言うとおり、極限状態において必要のない発声は余計なエネルギーと水分を消費する行動だろう。しかしボクにとっては、彼女との会話だけがオアシスなのだ。もちろんそれが彼女にとってのストレスであるなら我慢するがさっきまで募る心配や不安から、他愛ない会話までしていたのだ。
いったい、寝ている間に何があったというのか?
アリス「……(何か引っかかるな……)」
グレアット「……っ!!」

そこから東方へと渡り、深い叢や木々がいくつも倒れ濁流に飲まれていく光景を見た。ここはキンセツからヒマワキまでのルートか。
あれだけ巨大な都市を構えていたキンセツですら、一瞬どこだったのか分からなかった。おそらくは最も異常気象の影響を受けやすいのだろう。倒れていた何人もの住民たちのことは見てみないふりをして凌ぎ切った。
そういえば、この近くにこだいづかがあったっけか。スチルたちを先にカントーへ送り届けておいて安心した。
アリス「ん……?」

なにか、小さな洞穴が光っているように見えた。
あそこは、確か《ひでりのいわと》だったか……?
アリス「なぁ、グレアット」
グレアット「うるさいなっ……」
アリス「グレア?」
グレアット「はいっ、なんですかっ♪」
途端に、調子のいいトーンに上がって心臓が飛び跳ねた。ひょっとしてこの惨状によるうら悲しさのあまり、気が触れてしまったか?と心配になってきた。
アリス「あの岩戸、気にならないか?」
グレアット「どうでもっ……アリスさんがそう仰るなら気になりますねっ」
さっきから、妙な間があるのは気のせいか?ボクも正直体力と気力の限界だ、耳がどうかしていても気づけない。
アリス「そう仰るならって……あそこは安全かもしれない。飛んでくれ」
そう命じると、バサッバサッ!と大げさに羽根を落としながら飛行していくグレアット。頼むから安全運転だけは心がけてくれ……。

ひでりのいわと

f:id:Alice_Wreath:20210913021138j:plain


中へ入ると、奇跡的にカイオーガの影響もグラードンの影響も受けておらず、非常に過ごしやすい温度となっていた。ひんやりとしており、汗ばんだ蒸気が抜けていく。
名前こそは日照りなどと付けられているが、これは何かを祭るための当て字だろう。その証拠に、鳥居がいくつか建てられており、もしかするとこの鳥居から発せられるパワースポット的ななにかが守ってくれていたのかもしれない。
ボクは、憩いのために壁へもたれかかって座り込んだ。
アリス「グレアットもちょっと休んでいか……」

グレアット「神様なんていません……神様なんていない……神なんてぇっ!」

グレアットが明らかにおかしくなっていた。
誰よりも信仰心の強い神の写し身たる彼女が、鳥居に対して渦巻く炎を燃え盛らせていたのだ。
一刻も早く止めてやりたかったが、呆気に取られてしまったのと、それ以上に彼女から発せられるオーラがボクの身体を動かさなかった。

いったいどうしてしまったんだよ。

なにがあったんだよ。

抱えていること教えてくれよ。

だったらボクはなんでここにいるんだよ。

グレアット「……だから、あそこで止めるべきだったっ」

グレアットが、見たこともないような表情でボクをにらみつける。
どうにか、喉の奥から声を絞り出して彼女に聞いた。
アリス「止める、べき……?」

グレアット「貴様は闘わなかった。逃げ出した。諦めたっ!」
怒り狂った咆哮が、ボクの脳に響いた。
ルネシティでのこと、か……?
彼女がいつものように柔らかい口調ではなかったことが分からないくらいには、脳みそがぐるんぐるんと混乱していた。
グレアット「貴様は奇策をてらして、私たちを思いもがけない方法で導いた。だから今回も、きっと思いついているのだろうと信じて貴様に従った!」
今の任務やカントーでの作戦の数々のことだろう。

グレアット「この過ちは取り返しがつかない。大切な仲間や親友を失ってまで導いた結果なんて、私は成功だなんて思えないっ!」

仲間……親友……?

失って……?

アリス「……ま、さか……っ!」
さっき彼女が見てきたのは、彼女が怒っていたのは、全部……!

グレアット「私はもうあなたを信じることなんて出来ませんっ!」

気づくには、あまりにも遅すぎた。

6号……。
メグも……。
ゆんまで……。
みんな、この災害に飲み込まれて……。

ボクは、いまある出来事が現実と思いたくなかった。
これは、夢だ。悪夢だ。ダークライの仕業に違いない。
だって、あいつらが簡単に倒れるような……。
ははは……だから、そんなわけ……!

目の前には、翼と炎を黒く染めて猛り狂うグレアットの姿があった。
その精悍な瞳の前には、自分に言い聞かせるようなごまかしはまやかしだと、イヤでも見通されてしまう。

認めたくない衝撃的な事実と、ずっと付いてきてくれると信じていた彼女の”仇を見るような冷たい視線”で、身体も頭も凍り付いてしまい、心までもが打ち砕かれていた。
だが、間接的な原因を招いてしまったのは優柔不断かつどうにかなるだろうという根拠のない希望的観測で逃げたボクにあるのだろう。
ボクは、敵意を剥き出しにする彼女を見据える。

もう、返す言葉も見つからなかった。
グレアットは、全身に業火を纏う。その炎は、世界を焼き焦がすために生まれてきたかのような、闇に染まった炎に見えた。

グレアット「反逆者には、償いを。神の鉄槌を以て、償いを……。
その魂ごと浄化されて消え去れっ!」

 

f:id:Alice_Wreath:20210913024151j:plain

 

ああ…………でも…………
グレアットの手で殺されるのならば。


最後に見えた景色は

 

焦げて地面に落ちたやすらぎのすずだった。

ごめんな、お前らーーー。

f:id:Alice_Wreath:20210915025839p:plain



















「そのまま安らかに息を引き取るなんて、誰の許しを得たおつもりですかっ?」
アリス「…………え」
冷たい突き刺すような言葉が耳に響いたその瞬間、ボクの腹部に鋭いくちばしが刺さったような感覚が襲った。
アリス「う……っ、くはっ……!」
ドレスの隙間から、ドロリとした液体が流れていくのが感じられる。体温と同じ温度だから気づかない、とはよく言ったものだ。もしも肌に滴っていなければ気づかずに済んだというのに。視界が暗くてもはや何も見えないが、おそらくグレアットが炎だけでは収まりきらず、本来鳥類が持ちうる鋭利な武器を手にしてとどめの一撃をお見舞いにきたのだろう。それくらいに、ボクへの裏切られたショックは根強かったようだ。
「この、このぉっ!……許さない許さない、ユルサナイっ!!」

一撃だけで終わらなかった。
最期の最後まで見通しが甘かったみたいだ。視覚も意識も虚ろだというのに、聴覚と痛覚だけはハッキリとしてやがる。なんなら普段以上に感覚が研ぎ澄まされていた。
ーーー痛い、今にも死にそうだっていうのに死ねない、苦しいーーー
でも、こんな痛みなんかよりもよっぽど彼女の心のほうが痛んだに違いない。

親友である6号の亡き骸を目にした時、いったいどれだけ心が痛んだのか。
死んでも死なないようなメグの亡き骸を目にした時、いったいどれくらい辛かった?
同じ仲間のゆんの亡き骸を目にした時、いったいどれほどの苦しさだったろう。

ぐるぐるぐるぐると、走馬燈のようにかけがえのない仲間たちが頭に浮かぶ。
あぁ、結局うゅみを救ってやるどころか……ボクはすぐそばの仲間ですら守ってやれなかったな。所詮、この程度の人間に過ぎなかったのだ。
エリカ様から寄せられていた信頼もカタ落ちだな。もう、今となってはどうでもいい

「ああああああっっっ!!!」

全身が刺されては焼き焦がされ、無理やり傷口を塞がれて血を止められては刺されて血を流されて。その終わらない輪廻の炎が幾許ほど続いたのだろう。
(おいおい……血と涙まみれじゃないかよ……お前の優しさには似合わないぜ……)
もう、痛みすら分からなくなっていた。その表情は現実か幻かすら分からない。
ただ、ボクは……彼女を笑わせてやりたかっただけなんだ。

「つらいな……私、どうして不死の身体に生まれちゃったんだろう……みんなの後を追いかけることすら……出来ないなんてっ!」

f:id:Alice_Wreath:20211015233014j:plain






















「あぶねー、ギリ間に合ったじゃんよ」

f:id:Alice_Wreath:20210913024636p:plain


ーーーなんだ?
新緑の光が、あたりをまぶしく照らしていた。

「おら、さっさと起きろっての」
聞き覚えのある、生意気なこの声……。
アリス「カ、ルマ……?」
目を開けると、幻想的な緑一色の中央にカルマが浮いていた。

f:id:Alice_Wreath:20210919222831p:plain

カルマ ⇒
セレビィ、現在の仲間。
ネクラで意地が悪い性格をしているが
気は優しく、意外と世話見がいい。
得意技は《やどりぎのタネ

思いもがけない再会に、からっぽになっていた細胞が光合成したかのように活性化しだしてきてボクは自然と話し言葉が出てくる。
そういえば、身体もなんともないように戻っていた。
アリス「お前、財団で仕事してたんじゃ」
カルマ「その仕事の一環だってぇの。手っ取り早く言りゃエリカの命令で時渡りしにきてやったんよ」

時渡り、それはセレビィにだけ許されたタイムリープ
どうも、恒久の平和を保ち続けている星の神樹様だかの力を使って行うらしい。
それゆえに条件や制限があるものの、ほぼ完全に近い時間の移動を行うことができる。

アリス「エリカ様が?」
カルマ「おまえ大事なミッション任されてんだろ?だから失敗しねぇようにぼくの時渡りを使ってでもサポートされてんじゃんよ」
なるほど。ボクのためというよりかは、財団にとってうゅみを失うことは何よりの痛手。そのうゅみを救助するための方法として、うゅみのマスターであるボクがホウエンに出向いてその在り処を探しているわけだ。
カルマ「あーあー、完全にホウエンが滅亡してんじゃんね。ぼくが守り神に遣わせた岩戸以外ぼろぼろじゃんか」
アリス「そうか、あれはお前が……」
カルマ「ルネまで遡ったとこで、どうにもなんないな。こうなりゃ原始の時代、カイオーガグラードンが争う前まで渡った方がいいじゃんね」

原始の時代。
突拍子もない単語に、思わず吹きそうになった。
今から遥か数万年以上前、それこそまだレジ一族の戦争はおろかポケモンを使役する方法すら確立されていないような時代じゃないのか?
アリス「そんなことできるのかよ」
カルマ「おまえナメてんだろ。ぼくだって幻のポケモン、言うなればうゅみと同格じゃんよ」
アリス「それは悪かった。でも、どうやって食い止めるんだ?」
ボクとカルマの2人だけでどうにかなるような相手じゃないはずだ。
その圧倒的な力に淘汰されるのが見えている。

カルマ「あいつらの喧嘩そのものをなかったことにするんよ」

ふむ、そもそも根本的から解決しようってことか。

カルマ「そもそも、海を増やそうとすりゃ大地が。大地を増やそうとすりゃ海がっつー問題が発端なわけじゃんね。だったら両方増やす必要性をなくせばいいじゃんよ」

簡単に言ってしまえば、そういうことだ。

 

カルマ「愛と友情、勇気の大作戦じゃんよ」

 

アリス「はい?」
メグの言葉を借り出したカルマに対して素っ頓狂な声を出してしまった。
カルマ「要はよぉ、ケンカそのものをさせなきゃ現代に帰ってきたときに平和だろ?」

いやまぁそりゃそうなんだけどさ。
カルマ「おまえさんの得意分野だろ、愛情とかそーゆーの」
得意分野て。

アリス「あれか?カイオーガグラードンはいいやつだぞーって言ってグラードンカイオーガはいいやつだぞーって伝えりゃいいのか?」
カルマ「あいつらはそんな単調じゃねえだろーよ。ま、とりあえず時渡るから自分の存在が消えねえよーにしっかり願っとけ」

アリス「なぁ、カルマ」
カルマ「あ?」
アリス「やり直せるのか?グレアットのことも……あいつらも」

その弱音に、彼女はらしくもない笑みを作った。
カルマ「おまえの頑張り次第じゃんね」

その言葉で、少しだけ勇気が出てきた。救われた気がした。

セレビィの ときわたりが はじまった!

f:id:Alice_Wreath:20210913042734p:plain

f:id:Alice_Wreath:20210913042754p:plain

f:id:Alice_Wreath:20210913042804p:plain

 

~~~


気がつくと、何もない荒廃した……いや、逆。
まだ何も作られていない広大な大地へと放り出された。

ここが……原始の時代。
カイオーガグラードンがまだ出会っていない時間……か。

カルマ「うまくジャンプできたみたいじゃんね」
アリス「あぁ、みたいだな」

現代の開発された土地ではなく、まっさらな地が。
現代の汚染された海ではなく、透き通った水が。
そして、豊穣な自然と森林だけが支配していた。

アリス「うお、野生のカブトにアノプスがおる」
現代のホウエン地方と違って、ヒト型ではなくれっきとした元の姿だ。
まだ文明も発達していないので、みな一様に獰猛であった。
正に狩る側と狩られる側が表裏一体のポケモン世界。

カルマ「すぐ近くに渡ったはずだから……あ、いたじゃんね」
声を押し殺して囁くカルマの視線へと移すと、そこには雄に3メートルは超える巨体を纏った紅きグラードンが眠っていた。
起こさないように、慎重に近づかねば。そーっと……。

タテトプス「ごわあぁ!」
アリス・カルマ「ばかやろう!」

大地の化身が、その瞼を開いてしまった。

グラードン「キサマかしら!眠りから起こしたのは!」

いいえ違いますタテトプスです、なんて告げても無駄だろう。
そして知性の高い伝説のポケモンだけあって、やっぱ喋るんだな。とちょっと感心。してるのも寸秒、地ならしによってあたり一面に大きな揺れが起きる。

アリス「待ってください、話だけでも聞いてください!」
ポケモン相手であっても敬意を払って敬語で説得を試みるボク。
すると、珍しいものをみたような反応で直ぐに攻撃を止めてくれた。

グラードン「あら、人間かしら」
現代で出くわした時と同じ口調だった。ということはこの図体で女の子らしい。
そういや伝説級のポケモンはみなメスとエリカ様が話していたな。
ボクは埃を払って、姿勢を整えるとまずは挨拶をかわした。

アリス「お初にお目にかかります、トレーナーのアリスです」
カルマ「ぼくはセレビィじゃんよ」
丁寧に挨拶をかわすと、グラードンは機嫌よく返してきた。
グラードン「私はグラードン、大地を司る神ってところかしら」
よーくご存じあげておりますとも。

アリス「グラードンさんは、日照りを起こすとも伺っておりますが」
グラードン「よく知ってるわね。立派な大地には太陽が不可欠だもの」
アリス「海の化身はご存知でしょうか」
グラードン「ええ、会ったことはないけれど私にとっては敵ね。もし会うことがあれば殺してやろうかしら」
物騒極まりねえ。
アリス「海の化身はグラードンさんと引けを取らない力をお持ちです、恐らく均衡しあい、いつまで経っても決着はつかないかと」
グラードン「やってみないと分からないんじゃないかしら?」
アリス「そのような手間を取らずとも良い方法がございます」
グラードン「言ってごらんなさい」

ここが勝負どころだ。
アリス「実はーーーーーー」

カルマ「なにが目的なんよ」
アリス「ま、任せとけって。海のほういくぜ」

~~~

f:id:Alice_Wreath:20210913153715j:plain


真っ白な砂浜にライトブルーの大海。
汚れを知らないその青に、カイオーガは佇んでいた。

カイオーガ「人間風情がわたくしに何かあって?」
グラードンと違って、攻撃的な態度をとる。
アリス「無礼をお詫びします」
カイオーガ「ふんっ……まあいいわ。わたくしに時間を取らせるくらいなんだからしょうもないことだったら藻屑にするわよ」
物騒極まりねぇ

カルマ「お互いそっくりじゃんね」ボソッ
そこ、茶々を入れない。

アリス「大地の化身はご存知でしょうか」
カイオーガ「ああ、にわかに信じがたい話だけれど海の神たるわたくしがいるんですもの。居ても不思議ではなくて」
なんでこうもお互いプライドが高いのか。だからこそ利用できるのだが。
アリス「もし鉢合ったらどうします?」
カイオーガ「決まっているじゃない、沈めてあげるわ」

やっぱりそう来たか、ここがターニングポイントだ。
アリス「カイオーガさんのお手を煩わせずとも、良い方法がございます」
カイオーガ「あら。聞くだけ聞いてあげる」
アリス「実はーーーーーー」

カルマ「おまえ、相も変わらず性格悪いな」
アリス「おまいう」

だがこれですべきことは果たした、安泰な未来が待っているはずだ。
たったひとつの冴えたやり方でね。

アリス「未来視できるか?」
カルマ「ネイティオじゃねーっつの、ぼくは時を渡れても時を読むことはできないよ」
アリス「だとしたら、いちかばちかだな」
カルマ「ま、上手くいくまでリープさせてやんから」
アリス「性質わりぃ」
ただでさえ、希望にかける一心だけで気力を振り絞ってるというのにこれ以上メンタルに負担かけられたらいよいよ廃人になっちまう。

カルマ「やり残したことねぇか?」
アリス「もう大丈夫だ」
カルマ「んじゃ、戻るじゃんよ」

グレアット、待っていてくれよ。もうお前につらい思いはさせないからな。
ボクは、消えて無くなったはずの傷んだ場所をぐっと押さえた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

NEXT ⇒ 次の話はこちら