海の化身・カイオーガ
水を操り、大雨や大波を引き起こすことで海を広げていった。その力によって干ばつに苦しむ人々を救ったが、同時に大津波や洪水を引き起こしてしまう。
グラードンと争い、戦いの果てに深海の奥深くに眠りについた。
原始回帰編Ⅰ
アクアだんアジト
アオギリ「嬢ちゃん、カイオーガが目覚めちまったみてえだな」
経緯を話そうとアジトへ駆け込むと、すでにアオギリは事情を把握しているようだった。
アリス「どうしてそれを!」
イズミ「昨日の夜にルネで大雨が発生したのさ」
グレアット「ルネっ?……あそこは海底です、大雨なんて起こるはずっ」
アオギリ「忘れたのか。カイオーガは雨を降らすだけじゃねえ、海そのものの神なんだよ」
そうか、海底まで渦巻くほどの巨大なうねりを起こせば海底都市であるルネであっても雨が発生する。そんな桁違いの波を出せるポケモンはカイオーガしか存在しない!
ゆん「ルネの方は無事なんでしょうか」
ウシオ「ガッハッハ!自然を守るのがオレらの役目よ、遺跡を守るために一夜明かしたぜ!」
モンスメグ「あくたん、かっこいいー☆」
アリス「それで、いまカイオーガはどこに」
イズミ「奴は目覚めると同時にグラードンを呼び覚ますために喧嘩をふっかけにいくのさ、いずれここにも記録的なスコールが降るだろうね。そしたらグラードンが大地を守るべく雨を止ませようと太陽を巨大化させてお出ましだよ」
6号「大雨と日照り……そんな異常気象が同時に発生すれば」
アオギリ「この地方は破壊されちまう。ヒトも、ポケモンも、木々も海もなにもかもな」
グレアット「そのようなことは許しませんっ!」
袖元から幣を取り出すと、忌竹に神縄引き回し神籬刺し立て……などと祝詞を唱えだすグレアット。神様相手に神頼みとは滑稽な話だ。
しかしグラードンが現れてしまってからではもう遅い、天変地異が起きる前にどうにかカイオーガの居場所を突き止めて保護に回らねば。
ウシオ「ガッハッハ!レーダーによると、巨大な渦潮の発生地はめざめのほこらみたいですぜ!オレらが引き上げた後のスキを突いてルネへと入れ違ったんでさあ!」
アオギリ「よし、さっそく向かおう」
アリス「ですがアオギリさん、あの中へ入るには真空に耐えうるような……」
ロッカーから取り出されたウェットスーツのような服を投げられ、ぴょんとメグがそれをキャッチする。
モンスメグ「なにこれー?」
イズミ「アクアスーツさ、あたいらの技術を結晶して作り上げた深海用のスーツだよ。そいつを着ればどんな衝撃でも耐えれるのさ」
なんと。アクア団の技術力はデボンより上をいっていたのか、いや水に関することだけでいえば世界一クラスだろう。
ボクはメグからそれを受け取るとリュックへ仕舞い、ルネへ向かうための支度をした。
ウシオ「オレらが潜水艦を出すからルネまで直行するぜ、ガッハッハ!」
ゆん「恩に着ます、行きましょう皆様!」
ルネシティ
一度はメグが全力のレールガンで町全体を半壊させてくれたが、この短い間に復旧が進んでおり、住民たちは工事や従事にいそしんでいた。
めざめのほこらに唯一つながる陸路であるジムがある場所には、ジムリーダーのアダン
とその一番弟子であるミクリのふたりの姿があった。
ミクリ「おや、キミも来たのかい」
アダン「アンビリバボーなことが起きてワールドクラスなデンジャラスですよ」
とりあえず、こんな緊急事態くらい薔薇を手放しませんか二人とも。
だがいまは、会話をしている場合ではない。
アオギリ「アクアスーツは2つしかねえ、オレらアクア団はサポートに回るから嬢ちゃんと嬢ちゃんの相方ひとりを連れて行ってくれ」
アリス「わかりました、だったら……」
カイオーガはみずタイプであることは容易に推測できる、恐らくこおりタイプの攻撃も使ってくることだろう。メグを連れていくのがセオリーだが……。
6号「私に行かせてもらえませんか」
アリス「6号」
6号「もしかすると、私が頼んで封印を半端に解かせたことでママ……レジギガスが冥土の土産にこの騒動を起こしたかもしれないんです」
ゆん「それは些か飛躍的な話では」
6号は、ゆんの口を遮って続ける。
6号「不可解なんですよ、闘争心の強いママがどうしてあれだけ素直に帰ったのか……おそらくありすさんが本当に平和を維持できるかどうか試練を与えたのではないでしょうか」
実はそれについてボクも疑問視していたのだ。センリさんがあれだけ注意をしていた割に、少し暴れて6号の正体がわかった途端にあっさりと去っていったことが不思議だった。本来なら騙されていたことに怒りをあらわにして暴走してもおかしくはない。
しかし彼女が、自身の持つ力を用いてグラードンとカイオーガを目覚めさせたというのであれば筋が通る。ボクへの試練とこの地方の崩壊、どちらかは必ず達成されるからである。
アリス「分かった、6号ついてこい。お前らはサポーターになっていてくれ」
モンスメグ「あいあい☆」
ゆん「任されましたわ」
グレアット「アリスさんっ!……お気をつけてくださいっ!」
めざめのほこら
宇宙服のような青いスーツを着用すると、霧がかった洞窟を進んでいく。
中はよく見えないが、何者かが掘り進めて作り上げられたような造りになっていることはなんとなく感じられた。6号とはぐれないように、腕を掴み合ってゆっくりと奥へと入っていく。次第に視界が開けていき、それと比例するように足元は水で覆われていった。
6号「シェルターのようなものがありますよ」
岩でできたかまくらのような造りがあり、そこには人工的な階段があった。
確定的だ、人の手によって作られた建築物に違いない。ボクと6号は希望と勇気を胸に抱いて、勇ましくその階段を一段ずつ下っていく……。
最奥地
空気が通っているみたいだ。ボクはおそるおそるスーツを脱ぐと、酸素があることを確かめると、若干湿り気のある空気を吸い込んだ。
どうやらここだけが、地上と繋がっているのかもしれない。
6号「……泉……?」
目の前には、2~3メートルほどの土の足場。その先は綺麗な澄んだ泉だけが広がっていた。上空から光が射しており、幻想的な風景を醸し出していた。
アリス「ここに、カイオーガがいるのか?」
そう口に出すと、底のほうからアルトのボイスが反響してきた。
?????『あたくしを呼んだのはヒューマンかしら?』
泉の奥底から、津波が発生した。ボクと6号は押し流されないように階段とは逆の壁側へと体勢を変え頭部分のスーツを瞬時につけて溺れないように努めた。
しかし驚くほどその波はすぐに引いた。これだけの水量を自在に操れる存在など、もうカイオーガしかいない。
アリス「けほっけほ……カイオーガ、お前を捕まえに来た」
カイオーガ「おほほ!あたくしと勝負なさる気?あいつが来るまでの時間つぶしにでもなってもらうかしら、ヒューマン!」
やせいの カイオーガが おそいかかってきた!
6号「凄まじいプレッシャーですね……」
カイオーガ「あらレジロック?いいえ、獣の匂いがするわ、あなたゾロアークね」
レジギガスすら欺くほどのイリュージョンを瞬時に見破られた。こいつは文字通り格が違うぞ……それにマスターボールを投げる隙もない。投げられたとしても瞬時に波を引き起こされて流されちまうだろうな。
あいつが来るまでの時間つぶしとか言っていたな、あいつっていうのはグラードンで間違いないだろう。その前にせめてパワーポイントだけでも削っておく!
6号「はあああああああっ!!!」
あ、そうだった。こいつ爆裂魔法しか打たないんだったわ。さっきは情に流されて選んだけれど、よくよく考えれば素直にメグを連れてくればよかったかもしれない。
待てよ、ここは海底にある晶洞。だとすれば……!
アリス「6号、詠唱キャンセルするとどれくらい威力が落ちる?」
6号「そうですね、タマムシで起こした爆発の半分程度でしょうか!」
あの合体魔法の規模の半分も出せるのかよ、それならどうにかなる。
カイオーガ「まずは様子見かしらね」
カイオーガの アクアブレイク!
水を一か所に集めて組み出した衝撃波をぶつけてくる。
6号はその衝撃波を俊敏に飛び交わしていく。
まだだ、まだ足りない。もっと水を起こしてもらわないと。だがさっきのような津波級まで及ぶと放つ前に押し潰されてしまう。その塩梅を見極めるのが大事……!
アリス「6号、いつでも撃てるギリギリまで溜めろ!」
6号「了解です!」
カイオーガ「もっと楽しませてちょうだい」
カイオーガの れいとうビーム!
水の温度を急速に氷点下まで引き下げると、冷凍された光線を放つ。
やっぱりな、水を自在に操れるってことは凍らせたり熱湯を出すことも容易だろう。
6号は少し攻撃を食らってしまったが、まだ支障はないみたいだ。順調に魔法陣が構築されていっている。
カイオーガ「うふふ、何か面白いことをしてくれるのかしら」
カイオーガの アクアリング!
円状にできた水の輪をいくつも纏うと、それらは彼女の身を守る盾のようになった。
ざんねんながら、そんな程度のバリアじゃ防ぎきれないぜ?
6号「ありすさん、いつでもオーケーです!」
アリス「よし!零時の方向へ撃てぇ!」
カイオーガ「させないわよ」
カイオーガの こんげんのはどう!
青白く輝く水の光線を無数に形成するカイオーガ。
よし、狙い通り!
これだけの水素があれば、6号の爆裂によって中性子が出来上がる!
6号「エクスプロージョン!」
カイオーガ「……!ま、まさか!?」
気づいた時には、もう遅い。
イズミ「なんだい、今の轟音は!?」
ゆん「ろくちゃんですね……!」
グレアット「福音を……っ」
アオギリ「おい、現れやがったぜ!」
~~~
6号「ハァ、ハァ……やりましたか?」
アリス「さすがのカイオーガでも、ありゃひとたまりもないだろ」
めざめのほこらは完全に崩れ落ちていた。爆発と同時に巻き起こった大波によって、ボクと6号はルネシティのどこかへと押しやられていた。遠目にはアクア団の帆がうっすらと見えることがその証拠だ。
カイオーガ「なんて事してくれるのよ、まったく!」
目の前の水辺から、カイオーガが浮上してきた。
その目は先ほどまでの余裕のあった目つきではなく、殺気を帯びた視線に変わっていた。だが、その刃はボクたちに向けられてはいなかった。
6号「ありす、さん……!うしろ!」
アリス「え?」
壁と思ってもたれていたその表面は、焼け焦げるほどの温度を帯びていた。アクアスーツを着用したままでなければ確実に燃え尽きていたことだろう。
背中に感じる威圧感、この熱さ。ひょっとして……
グラードン「あらあらお嬢さん、私のおなかが気に入ったのかしら」
頭に直接入り込んでいるかと錯覚するような綺麗で透き通ったソプラノの声。丁寧で気品を感じるその口調。しかし相対するかのように、見たものを気絶させるくらいの威圧感をも放っていた。
絶体絶命の危機。
今ボクは、カイオーガとグラードンに挟まれている状況にあった。手持ちは近くにおらず、唯一近場にいる仲間は瀕死の状態。これを絶体絶命といわずして何が絶体絶命か。
カイオーガ「久方ぶりね、グラードン」
グラードン「ええそうね、1000年振りかしら」
まずはこの状況からどうにか脱却しなければ。ポケナビで援助を願いたいがあやしい動きを見せれば、先ほどまで敵対していたカイオーガが容赦しないだろう。
水素爆発の影響と、グラードンの体温に直接触れたことでこのアクアスーツにはもう防御の意味は成していない。次に当たれば、絶対に死ぬ。
カイオーガ「決着をつけようじゃないの」
カイオーガの あめふらし!
おおあめが ふりだした!
グラードン「そうねぇ、遊ぼうかしら」
グラードンの ひでり!
ひざしが つよくなった!
お互いの視線は、何刻か見つめ合ったあとこちらへと向けられる。
やめてくださいダブルプレッシャーされたら死んじゃいます。
カイオーガ「そこのヒューマン」
グラードン「そこのお嬢さん」
『邪魔よ』
ですよねぇ!
それに人間を劣等種と思ってるような伝説のポケモンに、安全な場所へと放り投げるみたいな心遣いなんてあるわけありませんものね!
こうなりゃいちかばちかだ、ボクは思い切って指笛を吹いた!
届け、グレアット!
カイオーガ「邪魔って言っているでしょう!」
カイオーガの アクアブレイク!
グラードン「大人しくしてもらえないかしらぁ」
グラードンの かえんほうしゃ!
頼む、間に合ってくれ!
グレアットの じんつうりき!
カイオーガは ひるんだ!
グラードンは ひるんだ!
アリス「……!」
グレアット「乗ってください、アリスさんっ」
アリス「ごめん腰抜けちまった、手伸ばして」
ボクは、グレアットへとどうにか腕を掲げるとしょうがなさそうな笑みを浮かべて、ボクを引き上げて背中へと乗せてくれた。
彼女の翼から温かみを感じると、失われていた勇気と希望が養われてきた気がした。
グレアット「さてとっ」
カイオーガ「あんた誰ぇ?」
グラードン「私達と近しい存在、かしらねぇ?」
ファイヤーの伝承は、ホウエンの古代種までは伝わっていないようだ。
グレアット「あなたがたの勝手、神の写し身である私が罰しますっ!」
ふと見上げると、空を写す水面は、巨大な雨雲と太陽だけでなく同時に一筋の虹も映し出ていた。彼女は、天変地異のさなかにあっても奇跡を起こしていたのだ。
アリス「グレアット」
グレアット「はいっ」
アリス「6号を連れて逃げるぞ」
グレアット「はいっ?」
アリス「勝てる相手じゃない」
グレアット「はいっ……」
グレアットは少し残念そうにしょぼくれながらも、素直に命令をきいて横たわっている6号を回収しようと高速移動で翼を広げる。
カイオーガ「ふーん、わきまえのいいヒューマンじゃないの」
グラードン「案外かしこいのかしら」
6号の爆裂魔法を直に食らっておいて、あれだけピンピンしてる相手なんて勝ち目ないっつーの!
ここは一旦立て直す、好きなように泳がせておくのが得策とみただけだ。
ボクは6号をボールに戻すと、そのままルネシティの中心地まで帰還していく。
アオギリ「ご苦労、嬢ちゃんの見立てじゃどうだった」
アリス「解決のビジョンが見えませんね」
モンスメグ「ありすちゃんめずらしく弱気~」
アリス「エクスプロージョンを真に受けてあんだけ動けてんだ、真っ向勝負じゃかなわねえよ」
ゆん「恐ろしいお相手ですわね……」
大雨と陽射しがどんどん強くなっていった。
海底都市のここですら、はっきりと太陽の光を感じるのだ。いま地上がどうなっているかなど筆舌に尽くしがたい。
長い対峙が終わり、グラードンとカイオーガの殺し合いが始まった。
互いに大地を削り海を割る、神話のような戦いの幕が切られた。
もはや立っていることすら適わない、ボクたちは一瞬のうちに飲み込まれ遥か地上へと押しやられてしまった……のだと思う。
~~~
アリス「こ、ここはっ……?」
熱い、暑い、あつすぎる。砂漠のど真ん中に放り出されてしまったか?
水を……せめて、冷たいものだけでも……
そう思ったのも束の間、バケツをひっくり返したかのようなどしゃ降りが襲った。
いきなりプールに投げ込まれた感覚だ、溺れてしまいそう。
このままだと高温と海水にこの身を砕かれてしまう。
せめてどこかに落ち着ける場所は……
人はどうしようもなくなった時、自然と両手を天へと仰ぐという。
やはり神様の存在を誰であっても求めているのだろうか?
ボクも例外ではなく、腕を空へと伸ばしたーーーその瞬間。
グレアット「アリスさんっ!見つけましたっ!!!」
ボクには、奇跡の女神が付いていた。
上空
グレアット「大丈夫ですかっ?!」
アリス「どーにか」
彼女の背中に掴まると、両手両足を伸ばしてうなだれる。地上はまさに地獄絵図だった。身をもって実感した。海の神と大地の神がもたらしたものは天恵ではなく天災だったようだ。
グレアット「あの後みなさんどこかへ飛ばされてしまったご様子で、どこにいるのか皆目見当もつかない状況ですっ」
だとすると、偶然ボクとグレアットが出会えたことは奇跡に等しかった。
グレアット「あ、アリスさんのことは、このやすらぎのすずに消えない炎と神通力を掛けておいてお導きをしておいたので、すぐに見つけられましたっ」
いつの間にそんな細工をしていたんだ。まぁ今回はそれがGPS代わりになって功を奏したからいいものの。ボクがどこにいるか彼女には常に筒抜けってわけかよ。
アリス「ここどこだ?」
下を見ても、一面海が広がるばかりで町らしき陸地は見当たらない。
なんならボクはどこまで流されたんだって話だが。
グレアット「さあっ……そう遠くまでは来ていないんじゃないでしょうか」
アリス「とにかく西に向かうか」
グレアット「そうですねっ!」
アリス「にしても元気だな」
グレアット「お天道様のおかげでしょうかっ!」
ああ、ほのおタイプにとって日本晴れは天恵だもんな。
ボクからすると、喉はカラカラ汗はダラダラ、頭はスッカラカンになるからたまったものじゃないのだが。
晴れと雨が交差する天変地異の中、ボクとグレアットの仲間探しの旅は始まった。
~~~♪~~~
チャーミングな翼を引き下げて登場
無敵で素敵な衝撃 刺激的な少女
誰もが自然と回りだす神様だって踊りだす
揺れる会場燃える会場ほら案の定
Peace Enjoy!
僕ら時々日々の隙間に彷徨うことだってあるだろう
そんなときパッと目の前そっと照らしてくれるある光
つまらないネタばっかり寄付してちゃつまらない
そんなにハマって抜け出せなかった昨日までの僕ら
爪なんてなくてもいいのさ
空なんか飛べなくていいのさ
僕らこのパーティがあればそう何にでもなれるのさ!
Magic 君の紡ぐ魔法は
Burning 僕を熱くする
Playing それはちっぽけなんだ
だけども世界に花を咲かすさ
Ride On 闇を駆け抜けてく
Supreme 愛と空すべて
受け取るすべてがまるでメッセージ
照らしていてよ最後まで
握った手のひらから伝わるのさ君が好き
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