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《Ride On The City》救星の明るい夜 Part8

競技巡回編Ⅶ


ミナモシティ

陸地の最果て、海の始まり。

モンスメグ「目的地に一番乗り~☆テッテレテッテッテー♪テーテーテーテー↑テッテレテッテッテー♪デッデッデェン♪」
グレアット達をポケモンセンターに預け、ゆんを看病係に置いてくると、ボクははしゃぐメグとふたりでコンテスト会場へと向かうことにした。
それにしても、広大な港町だ。想像していたよりも発展していた。
デパートに、美術館まである。どうしてジムがないのか不思議なくらいだ。
金色に輝くコンテスト会場の前まで辿り着くと、ふわふわキラキラした衣装を着飾った蛍光カラーのエメラルドグリーンに染まった髪の女の子がチルタリスと並んでなにやらイベントを催していた。テレビカメラで撮影しているレベルだ、本物のアイドルだろうか?

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???「ミラクル☆ルチアのコンテストスカウトー!」
「ルッチー!オレをカレシにスカウトしてくれー!」
恐ろしい盛り上がり具合だった。
ステージに立っているわけでもないのにこの歓声と熱狂的なファン。
ボクも、彼女の魅力に釘付けになっていた。
メグは、その熱視線がルチアに向いていることが気に入らないのかボクの履いているブーツをぐにぐにと踏んできた。
ごめんて。
そのやり取りを見られたのか、ルチアの視線がこちらに注目していた。
あ、邪魔だったら帰りますんでどうぞお手柔らかに~。

ルチア「キラキラ~!くるくる~?突然の出会い!ミラクル☆アイドルスカウトってカンジだね!」
はい?スカウト?
あれですか、ティンときた!ってやつですか?
しゃなりしゃなりと、ファンの間をかいくぐってボクのもとへと近づいてくるルチア。
その綿のように白い手はメグの手をとってぎゅっと握手を交わす。
モンスメグ「およ?メグちゃんをプロデュース?」

ルチア「キミ、ダイヤモンドみたいにキラキラしてるね!わたしはキミのようなポケモンを待ってました!」
アリス「ルチアさんはなんの人なんですか?」
ルチア「ルチアちゃんでいいよ☆もっとフレンドリーにイこ!わたしは、ホウエン地方のNo.1コンテストアイドル!本職はコーディネーターだよ!」
モンスメグ「つまりトップアイドル~☆」
アイドルマスターはじまっちゃう。
ボクの着ている、トランプをイメージとしたアリス衣装をまじまじと見つめるルチアちゃん。アイドルにみられていると思うと途端に緊張してきたな。
ルチア「とってもワンダーチック☆なんだかおとぎの国から飛び出してきたみたいな子だね!お名前なんていうの?」
アリス「アリスだよ、こいつの……メグのトレーナーやってる」
ルチア「アリスちゃん!素敵なネームだね。この子はメグちゃんかぁ!ふたりお似合いのキュートコンビだね☆」
メグはアイドルになったらパッション属性一択だろ。
キュートなのはグレアットとうゅみ、異論は認めない。
モンスメグ「ルッチーもコンテストに出るのっ?☆」
ルチア「わたしはマスターランクだから、一緒には出れないな」
アリス「ランク?」
ルチア「コンテストには4つのランクがあるの。最初はノーマルで、そこで優勝できたらスーパー、ハイパーって参加できるようになって最後がマスターランク。ここで優勝できれば全国レベルのアイドルね!」
なるほど、順序をたどって勝利を重ねて頂点を目指すわけか。
モンスメグ「えー、めんどっちー」

ルチア「メグちゃんならすぐに追いついてこれるよ☆わたしが推薦しておくから、早速行っておいで!」
アリス「今日1日だけでマスターまでいけるの?」
ルチア「ハイパーランクまでは、毎日お昼から夜まで時間おきに開催してるよ!つぎのマスターコンテストは、来週かな」
来週、か。時間がおしているこっちとしては乗り気になれないな。
だがメグがここまで頑張ってくれているのは、このコンテストがあるからだ。この先も彼女のチカラなしには進めないだろう、ここは意味のある1週間として尽力してあげよう。
アリス「よし、じゃあメグ。まずはノーマルランクに挑むか」

モンスメグ「ありす(C)さっすがー!ラジャ→であります☆」
おいおい、もうその気になってるYO!
ルチア「コンテストは覚えているわざをアピールして審査員に見てもらうの。ふだんバトルに使うような構成だったら、勝ち上がるのはむずかしいよ!」
なるほど、つまりこだわりを捨ててアイドル用に習得させないといけないと。
モンスメグ「おけ○~!なんだってこなしちゃうぜ☆」
おぉ、本気だ。真剣と書いてマジと読む。
まあそうだよな、それくらいの気持ちじゃなきゃここまで来ないもんな。
ボクも一肌脱ごうじゃないか。
撮影の続きがあるルチアと別れると、コンテストに挑戦するにあたって必読本を目に通しておくことにした。
わざの出す順番と、タイミング。そして前の番に出したわざと組み合わせて連携することでアピールポイントが高まるらしい。
さすがに今のメグだと全然コンボはおろか、注目してもらうことすら難しい構成。
持ち出してきたわざマシンでも使って、なにかひとつでもコンボを……。

モンスメグ「ありすちゃん任せて☆メグ、いーっぱいスキル覚えてるから!」
アリス「は?」
メグのステータスを確認してみる。すると、習得技の項目が4つだけでは収まりきらず
文字に文字が重なってバグっているように映し出されていた。
アリス「ちょっと待てぃ。お前まさかいつものはワザとか?」
モンスメグ「個人的なバトルは自分のバイオリズム乗っかって思い過せばいい☆彡」
あーよく考えれば、シークレッツ☆デュアルだって、れんぞくパンチとの複合と取れるしエレキテル☆エレクトリックだってでんげきはとの複合技だもんな。そもそも自分が使える技同士の合体魔法ということだ。
またメグのことをひとつ知れたね!

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ミナモ・ノーマルコンテスト

かくして、ボクとメグはルチアちゃん推薦のもと初出場することとなった。
見渡すと同じくはじめてなのか、緊張しているコンビやずいぶんと場慣れしているコンビまでさまざまなポケモンとトレーナーが居たがみな一様におしゃれに着飾っていることだけは共通項目だった。
こっちなんて普段着のままだけれど、いいのだろうか。
審査員のうしろには、応援してくれているルチアの姿が見えた。おおきく手を振ってくれている。
「それではミナモポケモンコンテスト・ノーマルの部を開催します。実況はわたくしチャットがお届けします!」
いよいよ始まった。ファイト、メグ!

↓イメージ図

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~~~

 

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結果から言うと、圧倒的勝利を収めた。
メグちゃんの数あるいくつものタイプのわざの数々に、他のポケモンは唖然呆然。
あっさりと、初出場初優勝を飾ってしまったのである。

ルチア「すっご~い☆パーフェクトだったよふたりとも!」
モンスメグ「ぶいぶいっ♪」
バイブスぶちアガりすぎてイーブイになってるぞ。
ボクは審査員から授与されたトロフィーと、リボンをリュックに仕舞うとルチアと一緒に3人で裏手のベンチに座った。
ルチア「メグちゃん、いくつ技覚えてるのかな?」
あ、当然の疑問が投げかけられてきた。
悪びれもせずに、メグは率直に元気よく答える。
モンスメグ「100個以上!」
100個以上じゃねーんだわ。普通のポケモンはその1/25なんだわ。
ルチア「ユニークとは思うけど、ルール違反はちょっとねー」
アリス「ですよねー」
ルチア「はじめてってことでわたしから言って大目に見たげたけど、スーパーランクからはしっかりね!」
やまいったね、どうもこいつらはどこに行ってもトラブルメーカーにならないと気が済まないらしいね。
モンスメグ「しょうがないにゃぁ……☆」
なんで上から目線なんですかね。
ほんとすんません、ルチアちゃんウチの若いのが。
ルチア「んでも、メグちゃんの才能はホンモノだったよ☆わたしの目に狂いはなし!」
モンスメグ「いぇい☆」
なんだかんだ、この二人は相性◎ってとこだな。

~~~

それからボクとメグはコンテストで快進撃を続けた。
特に《みずあそび》《リフレッシュ》や、《のろい》《みちづれ》のコンボが絶大で、瞬く間にスーパーランク・ハイパーランクと優勝を果たしトロフィーをかっさらっていった。
マスターランクしか眼中にないとのことで、そのトロフィーはパソコンに転送されリボンはボクのアクセサリーに変わった。
メグが自主練をしている間、ボクはボクでミナモシティで気になることを見つけたのでグレアットを引き連れて訪れることにした。
グレアットの体調はすっかりよくなり、毎日のミサも行えるまで回復していた。
今回は、そんな彼女のリハビリも兼ねての用事だ。

グレアット「6号ちゃんとゆんちゃんはよかったんですかっ?」
アリス「あいつらはデパートでショッピングだとよ、6号ひとりだと散財しかねないからな。ゆんに見張らせてりゃ安心だろ」
ぬいぐるみやらドールをコンプするとかほざいてたが、そんなかさばる物をどこに置いておくつもりなんだ。ボクのパソコンは貸してやらねえからな。
グレアット「つ、つまりふたりっきり……っ!」
アリス「ざんねんながら華のある場所には行かないぞ」
グレアット「えーっ」
目的の場所は、ミナモシティの海岸に建てられている厳つい施設だ。

ーアクア団アジトー

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見張り「お、アリスさん!おつかれさまです!」
アリス「イズミかウシオ居る?」
見張り「SSSの方達ですかい、ご案内しゃっす!」

グレアット「うわーっ……」
アリス「そんなジト目でにらみつけるな」
グレアットの視線をよそに、団員のガイドで複雑そうな仕掛けの反対側にある関係者専用の通路を通って奥へと進んでいく。
あのワープ床、ナツメ様の技術でもお借りしたのか?などと邪推しているうちにSSS、もといアクア団幹部のルームへと辿り着いた。
中に入ると、イズミの姿があった。ウシオは出払っているのか。
それと一番奥には立派なデスクがあるので恐らくこの組織を束ねている最高幹部・アオギリのものだろう。

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イズミ「ん、アリスか。なんだい連絡してくれれば出迎えにきてやったのに水臭いじゃないか」
アリス「一度アジトの視察もしておきたくて」
イズミ「立派なもんだろう?立ち話もなんだ、座りな」
ボクとグレアットは、ウォーターベッドのような質感のチェアへ腰かける。おお、めっちゃ涼しくて快適。自室にほしいなこれ、エリカ様にお願いしておくか。
対してグレアットは、ちょっとだけ窮屈そうだった。ああ、炎の翼が弱まるもんな。こんな些細なとこで種族差が出るとは。

イズミ「それで何の用だい?アタシにできることならなんでも手伝うよ」
アリス「それはボクがロケット団の中枢だからですか?」
一応聞いておくことにした。ビジネスか個人的かで裏切りの可能性が変わるからだ。
そうすると、イズミは噴き出して笑い返した。
イズミ「ぷっ、はは!アンタこどもなのに面白いね。そういうトコが気に入ってるのさ、アタシらは組織だけど絶対的な主従はアオギリ様への忠誠だけよ。べつにロケット団なんて上司と思っちゃいないし、ただの利害関係。アンタのことは立派なトレーナーって認識さ」

場が和んで、緊張感も和らいだ気がした。この人は悪人じゃないと思えた。
アリス「安心しました」
イズミ「ただしアオギリ様がアンタを黒と決めたら容赦しないよ」
そっちの方がやりやすい。逆に言えばアオギリを手籠めにすればアクア団はボクの融通を利かせてくれる、ひとつの戦力となる。
アリス「さて、用件でしたね。実はこないだ、おくりびやまでマグマ団と接触しまして」
イズミ「あんだって?!」
身を乗り出すイズミ。反してグレアットはどこか落ち着かない様子になった。
アリス「ホムラという男が、べにいろのたまという霊具を持ち去っていきました」

????「それは聞き捨てならないな」
イズミ「アオギリ様!」

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ダイビング用のウェットスーツを模した服装をした、髭面の日焼け男。
この人がアクア団を束ねる統率者:アオギリか。

アオギリ「すまねえ、紹介が遅れたな。オレはアオギリ、SSSのトップにしてこのアクア団のリーダーだ。全ての生き物の源である海を広げることが俺の夢よ、よろしくな」
友好的な握手を交わすと、アオギリは大きなチェアにどっかりと座る。
イズミ「……それで、さっきの話は本当なのかい?」
アリス「グラードンだの時間がないだの言ってましたし、ボクのグレアットを一瞬で退けたあの実力からして本気でしょうね」
グレアット「許せませんっ……!」
蒸気が出てると勘違いするくらいに、熱く怒っているグレアット。
信仰者からすると、霊力のある道具を勝手に持ち出したうえに悪事に利用するなど到底許せないことだろう。

アオギリマツブサのやつ、なにを企んでやがる」
アリス「マツブサというのが、マグマ団のボスですか?」
アオギリ「あぁ、オレらでいうSSSと同じように三頭火とやらのトップがマツブサだ、ホムラのほかにカガリっつー女もいるらしいが俺はカガリとは会ったことがねえな」
なるほど、アクア団におけるSSS。マグマ団における三頭火。それぞれ3人の高位役職が協力しあって束ねている組織というわけか、これは偶然ではなさそうだ。思い切ってボクは踏み入った質問を訊ねた。

アリス「アオギリさんは、マツブサと親交が深かったのですか?」
グレアット「アリスさんっ!」
イズミ「ちょっとアンタ!」
女性陣から制止がかかる。だがアオギリはなんのその、豪快に笑い飛ばした。
アオギリ「はっはっは!察しのいい嬢ちゃんだな。そうだ、オレとあいつは友と呼べる関係だった」
ビンゴ、どうも奇妙な共通性が引っかかっていたからね。
だとすれば、アオギリの狙いはグラードンを対をなすポケモンカイオーガという事だろう。べにいろのたまがあるのならば、あいいろのたまとでも名付けるべきか、カイオーガを呼ぶアイテムも存在していておかしくはない。
どういう方法で入手するのか、はたまた入手したのかは定かではないがその手口によっては早々に手を切ったほうが得策だろう。
などと脳内で画策していると、イズミがムスッとした表情で話に割って入った。

イズミ「アオギリ様、必要以上に話す必要がありますか?」
クールビューティーな姉御肌なビジュアル通り、頭が切れる参謀ポジションと見た。
だったらガハハ笑いのウシオは猪突猛進な軍師か。そして、イズミの意見をあっさりと片手ひとつで遮ったアオギリ。信頼されているのか、それとも試されているのか?
どっちにしろ腹の中が分からない以上は、ボクもあまり下手に出られない。
アオギリ「嬢ちゃん、マツブサとやり合うんだろ?そこの相棒を見りゃわかるぜ、ぜってえに許しちゃおけねえって顔をしてやがる」
普段は優しく温かな微笑みを溢すグレアットが、珍しく昂りの感情を表に晒している。

アリス「ボクはロケット団である前にトレーナーです、手持ちの願いはボクの願いですから」
そのひとことで、イズミの顔が一転して和らぎ柔らかなものとなった。
そのひとことは、アオギリの水の如く揺蕩う心を確かに揺れ動かした。
アオギリ「イズミが見込んだ通りだぜ。そうだ、アクア団の目的は海を広げることよりも自然を保護しよりよいポケモンの環境を作ってやることが重要。マツブサの強引なやり方は正直気に食わねえのよ、共同戦線といこうじゃねえか嬢ちゃん」
アリス「それは願ってもない申し出です」
アオギリ「タダでとは言わねえ。オレらが裏切ることでも気にしてんだろ?そんなことができねえように、こいつを預ける」
自分のデスクから、厳重に保管している金庫を取り出しその中の代物を見せる。
ボクは、その眩い煌めきに目を奪われてしまった。

グレアット「このスピリチュアルは、あいいろのたまっ……!」
目を丸くして、感嘆するグレアット。
アオギリ「海底都市・ルネシティに流れ着いてな、そいつを回収したのよ。けどな、こいつだけじゃカイオーガは呼び起せねえ。どうも各地に言い伝えられている遺跡の封印を解かねえといけねえらしくてな。オレらは海以外のことは専門外!だからもしその遺跡とやらが現実にあったら協力してくんねえか」
要は都市伝説みたいなモノか。途方もない話だが、だからこそうゅみのエネルギーと対抗できうる可能性も否定はできない。
ボクは丁重にそのあいいろのたまを手に取ると、肌身離さないようにリュックに仕舞う。
アリス「わかりました、お時間を取らせて頂いてありがとうございます」
スカートの裾を軽く持ち上げて挨拶。
アオギリ「なるほどエリカさんとよく似てるぜ」
そう呟くと、アオギリはルームから退出していった。
エリカ様と似てるって、褒められてるのか?
場に残ったイズミが、口元を緩めて目を合わせると「黒ずくめには勿体ないぐらいだね」と言い残して退散していった。
グレアット「これでよかったんでしょうかっ?」
アリス「これから先、大がかりな出来事になるだろうからな。地方の権力者と縁を持っておくに越したことはないさ」

~~~

モンスメグ「おっそーい!メグちゃん、ボーカルダンスビジュアルテンションマックスアップだよー☆」
アリス「マジ?Sランクアイドルも夢じゃないな」
あれから数日、変わった動きはなくボクはメグのプロデュースに専念していた。

そしてついに訪れたマスターランクコンテスト当日。
まだ時間があるというのに、賑わう観客に数々のカメラ。
インタビュアーも大勢集まって、場の盛り上げに貢献している。
そんな中、ルチアのオープニングトークが始まった。

ルチア「やっほーみんな☆キラキラくるくるぶちアガってる~!?」

『わああああああぁっ!』

耳が張り裂けそうになるほどの大歓声がドームを包んだ。
昨日までは、一緒に切磋琢磨レッスンしてきてくれたが今日は最高のライバルとしてのお出ましだ。思わず身震いしちゃうね。
本物に圧倒されていないかどうか、チェックしておいた。
アリス「調子はどうだ?」
メグに冷や汗や震えも出ていなかった、完全にいつもと同じように返してくる。
モンスメグ「ロ~~~マンティックなカンジ☆」
思わず安堵のため息が出てしまった。
アリス「それでこそメグちゃん」

マスターランクは、技の出し合いでアピールをする演技審査だけではなくコンディションの美しさによるお披露目審査と、最後にコンテストライブと呼ばれる実際に歌って踊る舞台審査の三部構成で行われる。
このコンテストライブというのは、近年ホウエン地方ポケモン達が人間と酷使した見た目に変わってから作られたイベントらしく今回で第2回の開催らしい。
ちなみに第1回の優勝者は、ルチアの持つチルルことチルタリス
彼女は連覇がかかっており、ボクたちはその連覇を阻止して晴れてホウエンナンバーワンの称号を得ることが目的というわけだ。

ルチア「今日わたしとバトるライバル!コンテスタントの紹介をしちゃうよー!」
おおっと、もうステージに上がる時間か。
他の出場者が並んで登場するなか、ボクはメグにリードされてステージに上がる。まるで舞踏会に出るお姫様になった気分だ。
観客席には、グレアット・6号・ゆんの姿が見えた。目を合わせないようにしておく。
ルチア「まずは、わたしの叔父さんで師匠でもあるコンテストマスター・ミクリ!知性と美しさを兼ね備えた伝説のコーディネイターだーっ☆」

ミクリ「なんとワンダフル!憎らしいほどエレガント!だけどとってもグロリアス!」
隣のミロカロスとともに決めポーズで大歓声の嵐を受けるミクリ。
そんな大御所が相手になるのかよ、こりゃえらいことになったな。

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ルチア「そして4人目ラストは、わたし推薦のニュースター☆想像もつかないおとぎの国のトリックスター・アリスちゃーん!」
おとぎの国のトリックスターと来たか。
慣れない拍手を受けて、ぺこりと頭を下げて一礼。
モンスメグ「ルッチーもミクミクもメグちゃんのトリコにさせて痺れさせちゃうからねー☆」
ルチア「おおっと、わたしへの挑戦状だー!受けて立つよ☆」
ハードルを上げるな。
いや、それくらいの気迫がなければ到底勝てないか。ボクも気合入ってきた。
紹介が終わると、早速審査員のもと第一審査・お披露目審査のスタートだ。
特別審査員として、なんと世界を股にかけるトップ女優・ナツメ様と世界最高のコーディネイター・マーシュが呼ばれていた。
意外な再会に、余計心が躍ってしまう。これは失敗できないぞ。
第一審査は、うつくしさのミロカロスにかっこよさのメグちゃんで接戦と思いきや、そこにかわいさ、かしこさ、たくましさも全て兼ね備えていた才色兼備のチルタリスが審査員のハートを掴んでいった。
さすがはルッチー、そこに1ミリの隙も存在しなかった。
そして技を出し合う第二審査は一度見れば頭から離れないミロカロスの華麗なる水のアートが最も評価された。
総合ポイントでいえばルチアとミクリに次いで三番手のボクとメグは、最終審査で決めるしかない。
ミクリとミロカロスは”静”に関しては世界レベル級であったが、”動”を苦手としていた。これはうってつけのチャンスだ。完全においてけぼりの残る一枠さんは必死のあまりミスを多発してしまっていた。ご愁傷さまです……。

さあ残すは3番のルチアとトリを飾るボク。
ルチアとチルルのふたりがマイクを持って、ダンスを始めだした。

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~~~♪~~~

アピール☆ラブ


作詞・作曲:佐藤仁美
歌:折笠奈緒美(ルチア)

とまらない あなたに エキサイト
コイのキラメキ アピールとどいて
うつむいて 目をそらした
だけど気づいて! スイートな タメイキ……

トツゼン出会った かれんなるしょうげき
ひと目で メロメロなの マスターランクな アナタ
すれ違うだけで あしもと ぐらぐらグラウンド
せめて今日は「おはよう」言えるかな

みだれる ココロは きらめきのラプソディ
今夜も ねむれないの 夢でも 逢いたいのに
思い浮かべるの 瞳は ダイヤモンドラブリー
お月様に「オヤスミ」つぶやくの

とどかない あなたに エキサイト
ふたりでいると うまく話せない
ごまかして 目をふせても
なぜか くれるの スマートな ほほえみ

 

アナタの隣で 毎日が スイートバースデイ
きっと明日「スキなの」伝わるわ

とまらない あなたに エキサイト
おさえきれない きもち あふれるの
うつむいて 手をつないだ
勇気を出して! 今だけは

ああ あなたに エキサイト
アイのトキメキ アピールとどいて
近づいて 目をみつめた
そっと伝える スイートな タメイキ

 

そっと重なる スイートな タメイキ……

 

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普段のファンタスティックで明るい彼女とは全く異なる、大人しいバラード調の曲。
繊細かつダイタンに揺れ動く恋ゴコロを、見事に歌い上げていた。
会場が水色のサイリウムに染めあげられ、歌唱中沈黙だった客席はメロディーが終了すると少しばかりの余韻のあと、見たこともない熱量と声援が支配した。
ボクも完全に見惚れてしまっていた。トップアイドル・ルチアという女の子に心を奪われそうになってしまった。

審査員たちも、グレアットたちも、出場者もスタッフもみなルチアに釘付けになっていたその瞬間。
モンスメグ「ん……」
アリス「っ」
小さな世界が静止した時を、メグは見逃さなかった。

モンスメグ「ーーーありすちゃん。次はメグちゃんの番。わたしだけを見て、お願い」
メグの顔つきは、ルチアにも負けないアイドルの顔をしていた。

ルチア「みんなサンキュー☆さあラストを飾るのは、アリスちゃんとメグちゃん!どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、注目でーすっ!」

アリス「行こう、メグ」
モンスメグ「みんなー!一番後ろの席まで、ちゃんと見えてるからねー!」

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