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《Ride On The City》 五人娘編 Part10

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・7月5日:ここは南アメリカギアナ。ジャングルの奥地で新種のポケモンを発見
・7月10日:新発見のポケモンをわたしはミュウと名付けた
・2月6日:ミュウが子供を産む。産まれたばかりのジュニアをミュウツーと呼ぶことに…
・9月1日:ポケモン ミュウツーは強すぎる。ダメだ…私の手には負えない!

こっそりと拾っていた日記に目を通す。フジのじいさんが現役だった頃の文字で書かれていて、参考文献としても歴史的価値を跳ね上げていた。
あのうゅみはタマムシデパートで釣られた個体と言ってたが、そもそもにしてミュウはひとつの個体しか存在しないポケモンだ。これは不変の理。
恐らくタマムシに来ていたところを財団の技術によって見つかったのが彼女だろう。

だとすると、このミュウツーを産んだのはうゅみ本人に違いない。しかし直接聞いたところで上手いことはぐらかされるのがオチ、そもそもミュウツーが今どこに居るかすらも知らないだろうから聞くだけ溝を深めるだけだし。
ん?この5枚目の日記は……?

グレアット「なーにしてるんですかっ?」

え?おいおい待てよ、これがマジだったらもうあの屋敷を隠蔽する理由なんて無いじゃないか!あの厳重なセキュリティーすらも大がかりなカモフラージュって事か……。
そうか。だからフジはあれだけ財団を敵視していた訳だ。なるほどハナダに団員を派遣しているのも合点がいった。もうあの洞窟にミュウツー
アリス「んぐ」

グレアット「ん……あんまりにも構ってくれないのでっ。ベーッ」
思考を中断して、橙髪灼眼の赤翼少女に意識を移す。
アリス「ちょっと面白い事を見つけてな」
グレアット「その紙、なに書いてるか読めないんですもんっ。一人だけずるいですっ」
アリス「カツラに会う理由が出来た」
グレアット「理由もなにも、バッジを貰いに行くんじゃないですかっ」
アリス「それはおまけだ。こりゃサカキ様に会う時が楽しみだぞ」
身体を起こすと、ジムへ向かう準備のためにポケモンセンターに預けているみんなを呼びに足を歩む。
グレアット「あ。みんなは待ち切れなくて先にジムへ向かいましたよっ?」
アリス「あいつらぁ!」

グレンジム

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モンスメグ「あ、やっと来た来たー」
カルマ「この洞窟開けるのにカギがいるじゃんよ」
6号「私の爆裂魔法で開こうかとしていたところです」
アリス「お前らマジで言うこと聞いてくれ。って、なにこの洞窟。ほんとにジム?」
グレアット「この石板に、グレンジムと彫ってありますけどっ」
どうやらさっき拾ったカギは嵌め込むタイプのようだ。試しにくぼみに入れると、ゴゴゴと重く壮大な音を立てて人工洞窟の科学的なゲートが開いたようだ。
いよいよファンタジー染みてきたな。
中に入ると、露払いされているのかトレーナーはいない。ただ人の気配は感じるので、おそらくクイズかなにか出題されて間違えると忍者よろしく飛び出してくるといったギミックなのだろう。
予想通り、石板のパネルからホログラムでポケモンに関するクイズがいくつか出題されてきたのでさっさと解き進めて最奥地に辿り着くと美しい泉が広がっていた。

グレアット「わぁ、きれいっ……」
6号「心が清められますね」
モンスメグ「かるるんの淀んだ心もきれいさっぱりー?」
カルマ「ぼくは悪魔なのか?」
うゅみ「ふぁ……この匂いぃ……まさかぁ?」

???「うおおおーす!よく来た、挑戦者よ!」

泉はソリッドビジョンらしく、その上を歩いて白衣の好々爺が声を上げながら近づく。

カツラ「わしは、グレンジムリーダーのカツラ!お前さんがアリスか!」

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アリス「はい。エリカ様より命を受けてそのクリムゾンバッジを頂戴しに来ました」
カツラ「よくこんな陸の孤島まで来た!そして、ほう。わしが昔、生体科学を生業としていた頃のノウハウがここまで進展したようじゃな」
カツラはグレアット達を一瞥すると、ある1人に目が留まり声色を高める。
カツラ「ミュウ!おお、探し求めていたミュウがわしの目の前に……よくぞ」
うゅみ「ふわぁ……ねむぅ」

アリス「屋敷の中、見させてもらいましたよ。カツラさん、あなたには聞きたいことがあります」
カツラ「ほう、お前さん古代語が読めるのじゃな。ならばまずは力量で超えて見せろ!全ての生体の遺伝子を持つミュウと、全てを焼き尽くすわしのウインディ、どちらの伝説が本物か実験させてもらう!やけどなおしの用意はいいかー!」

7戦目:カツラ

使用ポケモン 特性 LV:性別 習得技
ガーディ いかく Lv.42 かみつく ほえる とっしん だいもんじ
ポニータ もらいび Lv.40 ふみつけ ほのおのうず とびはねる だいもんじ
ギャロップ もらいび Lv.42 ふみつけ ほのおのうず とびはねる だいもんじ
ウインディ いかく Lv.47 かみつく ほえる とっしん だいもんじ

《経験値が加算されます》

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カツラ「行けぃガーディ!」
アリス「メグ!獣の王たる風格を見せつけてこい!」
モンスメグ「あいあいー☆」
カツラ「ふむ。ライコウか、雷は火を兼ね備える属性。面白い!」
モンスメグの ほたるび!
モンスメグの とくこうが ぐーんとあがった!
ガーディの だいもんじ
56のダメージが入った!
カルマ「半分持っていくなんてとんでもねぇ火力じゃんね」
6号「あれでまだ進化前なのでしょう。切り札のウインディは進化体、私の爆裂魔法に匹敵するやもしれません」
アリス「メグ!ぜったいに絶対にぜーーーったいに外すなよ!」
モンスメグ「まっかせてー☆」
カツラ「その発言、精度の低い技と見た。疾風のごとくかわしてくれよう!」
モンスメグ「いっけーっレールガン☆」
モンスメグの でんじほう
しかし こうげきは はずれた!
アリス「おいいいいいいいっ!?」
カルマ「フラグ回収おつー」
カツラ「わしの先鋒たる所以は速さ以上にその忠実さ!命に代えても必ず命令を遂行する忠誠心こそガーディの強さよ!」
ガーディの だいもんじ
モンスメグは やけどをおった!
モンスメグ「あっつーい!(>△<)/」

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カツラ「三聖獣とは名ばかりのようじゃな。せめて火傷で苦しまずに倒れるがよい」
火傷のダメージを負って瀕死になるその刹那、メグの様子が一変する。
同時に、キラキラとずれたピントがあるべき場所に光ったように見えた。
モンスメグ「かわいいメグちゃんに……爛れた傷……さない」
グレアット「あ……抑えてちょうだいメグちゃんっ!」
モンスメグ「許さない許さない許さないコロスコロスコロスコロスコロス……!
コロス☆」
カツラ「その憎悪に燃えた情熱、素晴らしい!風前の灯こそ、その最後の熱こそがリミッターを解き放つ最高の炎なのじゃ!」
ああ。この人もやっぱり、ロケット団幹部なんだな。ボクは痛く実感した。
そしてメグちゃんも軽快明快に振る舞っていても、やっぱり伝説なんだな。

モンスメグ「☆神の裁きーエル・トールー☆」

きゅうしょにあたった!ガーディはたおれた!
きゅうしょにあたった!ガーディはたおれている!
きゅうしょにあたった!ガーディはたおれている!
きゅうしょにあたった!ガーディさいきふのう!

アリス「でんじほう4連撃……!?いや、もういい止めろメグ!」
モンスメグ「あっはー☆勝った勝ったー!メグちゃんさいきょー☆」
6号「ふえぇ……」
カツラ「さすがは雷神と言うべきか、だがこの騎馬はどうかな?」

カツラはポニータをくりだした!
アリス「グレアット、真の神力見せてやれ!」
グレアット「はいっ」
カツラ「ファイヤーか!惚れ惚れする美しい炎よ……間近で見れたこと、光栄に思うぞ」
グレアット「人の心を捨てた方に、天誅をっ」
グレアットのじんつうりき!
きゅうしょにあたった!
ポニータはとびはねた!
6号「高い!」
カルマ「馬が跳んだところで鳥の飛びには適わねぇじゃんよ」
グレアットを はげしいひかりが つつむ!
ポニータの とびはねるこうげき!
カツラは ポニータに すごいキズぐすりをつかった
グレアット「
Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,

benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria mater Dei,
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.
グレアットの ゴッドバード
きゅうしょにあたった! ポニータはたおれた
アリス「アヴェ・マリア、か」
カツラ「エクセレント!やはり本物の翼を持つ炎へは偽りの火では油が足りぬかっ、ではわしも本気を出すとしよう。ペガサスの角を生やし暴れ馬よ、行け!」
カツラは ギャロップを くりだした!
グレアット「あの角、ギャロップ本来の角じゃありませんねっ……私、あの人キライですっ」
珍しく悪態をついて彼女は全身で睨み付けると引き下がった。
やる気はあっても憐みから闘争心に火が付かないのだろう。
だが悲しいかな、これが人の殻を破った科学者なんだよ。
アリス「6号。やってやれ」
6号「いいんですね?まだ最後の真打じゃありませんよ」
アリス「うゅみならフィールドが無くなっても戦えるさ。それに相手も同じ、完全に常軌を逸したサイエンティストだ。お互いクレーターの上でも平然とやりあうぜ」
6号「分かりました!参ります」
カツラ「レジロック。かつて戦争の兵器として投入されし被爆をもたらすポケモンか。その熱放物線。どれほどのものか実に気になる」
6号「癪に障る物言いですね。あなたごと爆裂魔法の塵にしてあげても構わないんですよ」
カルマ「言うねぇあのじいさん」
6号「一刻の猶予も与えません。詠唱キャンセル!」

ギャロップの だいもんじ
こうかはいまひとつのようだ
6号は やけどをおった!

モンスメグ「やー!またやけどだー!」
グレアット「まずいですっ、やけどは攻撃力が半減してしまいますからっ」

6号『エクスプロージョン!!!!!!』

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アリス「やった!」
カツラ「やりおるわい。やはり核爆発こそ芸術なり。炎の真髄、しかと見受けた」
6号「ふふ……120点でしょう?」親指グッ
どさっと倒れこみながら、こっちを向いて親指を立てる。
アリス「250点だ。上出来すぎるぜ」親指グッ
カツラ「クックック……」
カツラは ウインディを くりだした!
周りの岩がまるで、溶岩のようにマグマの如く炎を噴き出す。
ウインディの咆哮と剣気が、冷たい岩石すらも燃える溶岩に変えてしまった。
グレアット「きゃっ!」
モンスメグ「わわ、すごーい♪」
カルマ「こ、焦げるじゃんね……」
アリス「これが……図鑑にもでんせつポケモンと言わしめたウインディか」
カツラ「余興は終いじゃ。さあ来るのだミュウ、一騎打ちと行こうぞ」
うゅみ「んーぅ、ひますぎて二度寝してたわぁ」
緊張感のない気の抜けた声が場の空気を一転させる。
アリス「見せつけちゃってくださいよ」
うゅみ「だるぅ。つかウィンディって風だしぃ、炎タイプとかウケるぅ」
微妙に思ってたことをヌケヌケと言っちゃったよこのお方。
カツラ「安い挑発になど乗らん。よもやミュウは口から生まれたか?ならば世紀の大発見となろうな」
うゅみ「あたし、アンタに興味ないしぃ。ここで終わっちゃえばぁ?」

カツラ「真のだいもんじとは、送り火と呼ぶのじゃ。ウインディ、全力のカグヅチを見せてやれ!」

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うゅみ「ほいっとぉ」
うゅみの なみのり!こうかはばつぐんだ!

カツラ「躱されたか。なんの、もう一撃!」

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うゅみ「ねっむぅ」
うゅみの なみのり!こうかはばつぐんだ!

カツラ「ちょこまかと素早い奴め。さすがは最高の遺伝子様じゃ」
ウインディの だいもんじ

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うゅみ「だっさぁ」
うゅみの なみのり!こうかはばつぐんだ!
カツラ「なぜじゃ!どうして当たらん!」

まるでパフォーマンスか舞台でも見ているような気分になった。
ガーディやギャロップとは比べ物にならない一輪の火焔なのに
まるでおもちゃと遊んでいるがごとくひらりと躱すうゅみの軽業。
それはあたかも舞台装置のようだった。
うゅみという主演女優を引き立てるためのだいもんじという舞台装置。
幻のポケモン。ひいてはこの世界の創造神たる姿がそこにあった。

うゅみ「どーでもいいけどぉ、ウインディ怯えてるよぉ」
完全に戦意を喪失していた。あぜんぼーぜん。
伝説の武将たる威厳を誇っていたウインディはそこには居なかった。
ご主人様を見失って寂しげに佇む子犬同然であった。
うゅみ「ほらおいでぇ」
母性の溢れる甘い声色に、つい先程まで敵だったウインディが子供のようにじゃれついてうゅみに懐いて尻尾を振る。
アリス「勝負ありましたね」

カツラ「わしは燃え尽きた!お前さんにこそこのクリムゾンバッジは相応しい!」

ミッション7/15達成!

カツラ「わしはやはり間違っておったようじゃ。一度は人の心を捨てて限りなく修羅に近づいたのじゃが、それが大きな過ちであったことに数十年もの間気づけなかった。どうせ元ロケット団。隠居の身!わしは残りの余生を静かに送ろうぞ」
アリス「その前に、聞いておきたいことがあります」
カツラ「なんじゃ?いまさら紅蓮の炎に包み隠すこともあるまい、お前さんの力になれるなら話しておこう」
アリス「ミュウツーは、ロケット団の手に渡ったんですか?」
うゅみ「……」
カツラ「屋敷の話を持ち出してきた辺りからその手の話じゃないかと思っとったわい。左様、お前さんの読み通りじゃ」
アリス「やっぱりそうでしたか」
カツラ「つい最近のことでな。その強大なエネルギーゆえにフジの手にも負えんでの。満足にポケモンが力を出せない磁場の広がるハナダの洞穴に閉じ込めておったのじゃが……そいつを掘り起こしおった輩がロケット団の新生組織、要は財団じゃ」
アリス「だと思いましたよ。この日記を見てティンと来ました」
フジ博士が残したであろう最後の日付のレポートを見せる。
7がつ 6か
ここに たちいる にんげん が
ふたたび あらわれると すれば
こころ やさしきひとで あらんことを
いまここに その ねがいを しるし
この ちを あとにする

アリス「フジ博士の願う心優しき人は現れました。
いえ、正確には心優しかった人とでも言いましょうか」
カツラ「……彼女の博愛と慈愛ぶりは全国的に知れ渡っておったからの、さぞかしフジも喜んだろう」
アリス「カツラさんが組織を離れたのはフジ博士と同時期ですか?」
カツラ「わしが離脱したのは財団が出来上がってからじゃよ。ほんの数年前に過ぎん」
アリス「意見でも対立したんですか?」
カツラ「むしろ理念はサカキと違ってわしの思うところと一致しておった。陽動のR団に隠密の財団。それによってカントーの発展と治安は一気に向上したことは間違いない」
アリス「だったらどうして」
カツラ「和平主義のわしが科学と実験に没頭するようになったのはフジが怨恨を残して去ってからじゃ。それからというもの狂うように遺志を念願させようと後継した。フジの幻影を見ておったんじゃろうな、それほど友情という縁がわしにとっては全てだったのだ」
アリス「……ミュウツーの件。ですか」
カツラ「左様。アレでわしの中の何かが灰のように消え去っていった。表面上は今でも取り繕ってはおるが、今はフジ同様わしも財団敵対派じゃよ」
アリス「今のは聞かなかった事にしておきます。ありがとうございました」
カツラ「最後に……老獪からひとつ。ミュウの子は、ロケット団の誰かに渡っておる。大方トップじゃろうが奴らは徹底的な秘匿主義。そう見せかけて灯台もと暗し、やもな」
うゅみ「あのさぁ、人に任せることが罪滅ぼしのつもりぃ?」
アリス「おい、うゅみ」
うゅみ「アンタ結局なにもやってないじゃないのぉ、本職すらお家に鍵かけてサボっちゃってさぁ。お友達からしたらその研究だって大きなお世話よぉ」
ふだんは飄々として感情を押し込めているうゅみから静かな憤りを感じた。
自分の唯一のDNAを分けた子に関することだからだろうか。
カツラ「痛いところを突く娘よのお。しかしわしも年老いすぎたし失敗を重ねすぎた。今から出来ることなどせいぜい供養かブリーダーの真似事よ」
うゅみ「それだってお友達の真似事っしょぉ?アンタのことね、思考停止って言うのよ思考停止ぃ。しかも肝心のミュウツーを取り逃がして居場所が分からないってさぁ……」
ゆっくりと動いているように視えた。その実あまりの俊敏さに視覚がゆっくりと流れているように錯覚しているだけだったことは秒速でカツラの襟元を掴む彼女の姿を目視して脳が理解したようだった。
アリス「待てうゅみ、手荒な真似はよせ」
カツラ「い、いったい何を」
うゅみ「アンタの脳をシンクロして全部の記憶をあたしに流し込むだけよぉ。隠してること、あるでしょぉ?」
言い終えたとたんに、念波のような波動が空間全体を襲い頭痛と耳鳴りで立っているどころか意識を保つのすら困難を極めた。グレアット達も同様かもしれない。
カツラの悶える苦しそうなしがれ声が最後の記憶だった。

 

うゅみ「…………みーつけたぁ」

 

次回に続く!

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