Wonderland Seeker

スマホの子はTOPを見てね

《Ride On The City》 五人娘編 Part9

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アリス「なあ、ポケモンに乗って海を渡るのは良いんだけどさ」
グレアット「はいっ」パタパタ
アリス「ヒトに乗って海を渡るのって絵面的にどうよ」
うゅみ「降ろすぞぉ?」バシャバシャ

グレンタウンを目指すべく、うゅみに乗って海旅をしている。
さすがに1人が限界ということで、仲間達はボールに入って外出自粛。
ちなみにグレアットは飛べるというのでボク達の周りをぱたぱた。
ただ彼女の翼は消えない炎に包まれているから、乗れば最期だ。ざんねんながらお空の旅とはいかない。
うゅみ「アンタあたしがなみのりできなかったら困るでしょぉ?」
アリス「これもこれで困るわ」
例のごとく、人抜けの術を使っているおかげで視線を注目することがないのが救いか。
心なしか、しょっちゅう飛びかかってくるメノクラゲも出てこない気がするのだが。
グレアット「くすくす、仲良し姉妹みたいで微笑ましいですよっ」
アリス・うゅみ「どこがぁ!」
などとやり合っているうちに、見慣れ……ない人工的な島が見えてきた。
どうしようかなぁまさかアレがグレン島だったりしないよなぁ。ひょっとするといつの間にやら6号の帰郷心が叶ってホウエン地方のニューキンセツに迷い込んだのかもしれない。うん、そうに違いない。ボクの知ってるグレンっていうのはもっとこじんまりとした、大きな建物なんてジムしかないような……。
グレアット「グレンタウンって看板が見えますっ!」
アリス「そうだと思ったよちくしょう!」

グレンタウン

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アリス「魔族特区とか呼ばれてない?大丈夫?吸血鬼とか出ない?」
うゅみ「いいから上がれぇ」
うゅみから降りようとすると、先に上陸したグレアットが手を伸ばしてきたのでその手を取って地に足を着ける。直後に水を背中に振り撒きながらうゅみも上がってきた。つめたい。

ロケット団員「おう、うちのシマに上がり込んできたのはお前か!」
なんか黒ずくめに絡まれた。ああそういえばエリカ様が陽動作戦を執ってたっけ。
ぱっと見治安が悪いように見えて、実は全員エリカ様の息がかかっているから安全大作戦という寸法だ。ん?それってかえって危険じゃね?
アリス「はい。そのお前ですよー」
財団職員なら新人でもマニュアルで叩き込まれる幹部専用の勲章。が付いたバッヂを見せる。さながら葵の紋所を目に入れさせてやってる気分だねこりゃ。
ロケット団員「失礼しやした!幹部のお嬢様でございましたか、お許しくだせえ!」
アリス「いい、いい。ところで此処に来るの久しぶりでさ、いつの間にこんな大掛かりな島になったのよ」
ロケット団員「ひと月ほど前でありんす、なんでもカツラ様が旧友を偲んで木を隠すなら都会だとかなんだかで一年かけて大々的に開発されたようで」
旧友、というのはかつて共に研究していたフジのことだろう。
なるほどトップシークレット中のシークレットだ、徹底的に秘匿するべくセキュリティが厳重であっても不自然でないように敢えて都心っぽく作り替えたわけか。
確かに以前のように田舎の島にぽつんと意味ありげな屋敷があるままじゃ此処に秘密がありますよと公言してるようなものだったからな。
アリス「ボクはその木を探しに来たんだ、エリカ様直々の命令でね。知っているなら教えてほしい」
ロケット団員「あっしは下っ端なもので何も知りません。カツラ様にお伺いするのが一番の近道かと思いやすがカツラ様のジムはロックがかかってやがります、代わりと言ってはなんですが財団管理の研究所へ案内しやす」

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モンスメグ「わー、おっきいねー☆」
6号「アポカリプスを感じます……。凄まじいテクノロジーを」
カルマ「これでも本命じゃないんね、この島狂ってんよ」
アリス「キミたち勝手に出てきてはしゃがない」
グレアット「はーい、みんな整列ですよーっ」ピピー
元あったグレンタウンとどこを照合すればいいんだ。あ、もしかしてアレか?
あの現人神・エラーイ博士がいらっしゃる研究所か!?
くそ、それだったらおつきみやまで規定違反してでもカセキを拾っておくべきだった。あのお方にかかれば正規に存在しないポケモンであっても復元できるというのに!

???「なんやなんや、こないな辛気臭いとこに女の子らがきゃーきゃーしとったら目立つで自分ら」

6号「どちら様ですか!」
モンスメグ「およー?なんだか懐かしい言葉遣いだねー☆」
このジョウト弁使いはもしや……。
マサキ「ポケモンのパソコン転送やっとるマサキ銀次郎いうモンですわ」
アリス「いつもお世話になっています。トレーナーのアリスです」

ポケモントレーナーの間で知らない者はいない有名人・マサキの姿があった。
ハナダの岬にある小屋にひっそり住んでるのだが、今回の任務ではブリッジを渡れないので会うことは叶わないと思っていたがこんな形で会うことになるとは意外。
マサキ「おおきに!姐さんおもろい子たち連れてんな、みんなポケモンやないか。それも伝説か幻クラスの上物ばかりや」
グレアット「わ、私たちの正体を一目でっ?」
カルマ「ただ者じゃないんね。研究者はみんなこんなヤツばかりか」
さすがは、実物現実のポケモンを仮想現実のパソコンで通信転送を実現させた凄腕プログラマーなだけあって、仮初めの姿であっても改造された姿であっても一目瞭然って事か。自分とポケモンを融合させようとしたマッドサイエンティストはスケールが違う。
アリス「お褒めに預かり光栄です、ところでマサキさんはどうしてここへ?」
マサキ「あーあー畏まらへんでかまへんで!わいそういうんムズ痒いさかいな、自然体の方が姐さんは素敵やで」
アリス「だったら、なんでマサキはこんな辺境に来たんだ?」
マサキ「姐さん、財団の人間やろ。それもえらい上層部の。ポケモンを、ましてやそんなレジェンズレベルを人に擬態させてまうなんてエリカ姐さんくらいしかありえんわな」
カルマ「……お前も、エリカのグルか?」
マサキ「ちゃうちゃう、わいはただの技術屋や。ただエリカ姐さんにはようお世話になっとるさかい耳に挟んだだけやで。せや、ここに来た理由やったな。わいの後輩がトラブったゆーからナナシマ行きの船が出とるここで待ち合わせしとってな、まだ時間あるからちょっと見学しに来ただけや!」
グレアット「ナナシマ、ですかっ……」
6号「なんだか怪しいですね。ですが科学と科学は惹かれあうもの、通じるもの同士が出会ったということですね」
アリス「そういえばマサキはここでも顔が利くか?」
マサキ「わいはカントージョウトやったらどこでも顔パスやで。やろうと思うたら財団の本部で泊まれるやろうな」
アリス「それはよかった。実はエリカ様に頼まれて、フジ博士の屋敷を探してるんだ。教えてくれない?」
マサキ「フジ博士!えらい名前が出てきよったな。確かに知っとるけど、なんの用があるんや?」
アリス「カツラのジムに入りたいんだけど、どうせカギかかってるだろ?屋敷にあるんじゃないかって目星付けててな」
マサキ「ほーん。ええけど、タダでとはいかへんなあ。世の中ギブ&テイクで成り立っとるんやさかいな」
マサキレベル相手に引き合いに出せるようなモノか……一筋縄じゃいかないな。
納得のいきそうな情報でもエリカ様から聞き出すか?
などと次に出す言葉に悩んでいると

うゅみ「あたしでどうよぉ」
モンスメグ「うゆゆー!だめだよ簡単に自分を売っちゃ☆」
うゅみ「売ったりしないよぉ。でもぉ、こいつはポケモン研究の一線に立つ科学者だしぃ、あたしの遺伝子研究なんてのどから手が出るほど欲しいだろぉ?」
確かにうゅみの言う通りだ、伝説級のポケモン調査ってだけで心躍るというのに全てのポケモンの元祖たるミュウだ。命と引き換えにしても釣り合わない破格の条件だろう。
マサキ「乗った!カギだけやあらへん、屋敷の全貌もぜんぶ吐いたるわ!」
お、流石のエリカ様ですら知らないどころか掌握したいであろう情報まで付いてきた。これはいい。
カルマ「ちゃんと無事に返せよー」
6号「私達の大事な仲間なんですからね」
モンスメグ「むむむー!」
グレアット「お願い致しますね、マサキさんっ」
マサキ「なんや信頼されてへんなぁ。せこい真似なんかせえへん、なんやったらお土産持たせて返したるさかい。ほなありすちゃんあっちや、付いてきて」
うゅみ「腕で持つのはやめてぇ。荷物じゃないんだからぁ」
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マサキ「ここがフジ博士のおった屋敷や、ここだけは手つかずのままやさかい安心してな」

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こっちもリフォーム(匠の技)されてるんじゃないかと内心ビクビクしていたので、見慣れていた風景で胸を撫で下ろす。よかったぁ。
アリス「助かったよ。じゃあ終わったらうゅみ返してくれよな」
マサキ「モチのロンや。先にコトが済んだ方はポケモンセンターで待っとこうか。ほな!」
6号「うゅみさん、何かあったらぶちかましていいですからね」
カルマ「そのモジャモジャをハゲにしたれ」
こっわ。もしそんな事になったらパソコン通信も出禁になるからマジ勘弁なんですけど。
モンスメグ「よーし、じゃあしゅっぱーつ☆」
アリス「だから先に行くなって!」
グレアット「ふふっ」

マサキ「ええんか?あんさんの事、あそこにぜーんぶ残ってるで」
うゅみ「いいさぁ。エリカの手に回るくらいならあいつが持っていたほうが安心だしねぇ」

マサキ「さよか。ほなこっちはこっちでやりまひょか」

ミュウツーを模った石像のスイッチを駆使しながら奥へと足を運ぶ。
屋敷自体は広いようで、その実2階立てしかなく、ありがちな地下室もないようだった。何人かチラホラと隙間から忍び込んだであろうグラサンの空き巣も居るらしく、人抜けの術を扱って慎重かつ大胆に進んでいった。

6号「うーん。なんだか変な書類が落ちてますね、この地方で主流のアンノーン文字でも、私の地方で主流の点字でもない変な言語で書かれていて読めません」
カルマ「時渡りしてその文字を使っていた時代に飛べばワンチャン読めるかもしれないじゃんね」
モンスメグ「いっぱい散らかってて、こけちゃうよー!つまんなーい」

アリス「後にしろ、目的はジムのカギなんだから」
後ろから、恐怖と不安の交じった儚げな指先でボクの袖を掴まれる。
グレアット「なんだか気味が悪いですっ……」
アリス「暗いしカビまみれだもんなあ」
モンスメグ「グレアたんこわがりだもんねー☆」
6号「安心してください。緊急事態には私がドカンと一発」
アリス「不安になる台詞をありがとう、そうしたらドカンと海に投げ捨ててやるよ」
6号「仕打ちが酷過ぎませんか!」
グレアット「もうっ、6号ちゃんってば困らせちゃダメだよっ」
カルマ「おい、なんか光ってるぞ」
カルマが指さす方、テーブルの向こう側にひっそりと佇む観葉植物の真下に鈍く光る代物が見えた。さすがくさタイプの神、植物の近くにあるものであってもなんでもござれ。
アリスは ひみつのカギを てにいれた!

アリス「よーし、戻るか」
今来た道をそのまま引き返すのも億劫なので、溜まりに貯まった悪行ポイントであなぬけのヒモを支給してもらうことにした。他のトレーナーに影響を与えないためにショップでの買い物や道端に落ちているアイテムを拾うことは禁じられているが、こうやって自分の功績と引き換えに支給してもらうことで任務を円滑に進められるのだ。
まあ自分というよりかはほとんどこいつらの勝手で貯まった不本意なポイントなわけだが。おかげで毎日の食材や、野生避けのスプレーに困らないのでお互い様だ。

グレンポケモンセンター

モンスメグ「まだいないみたいだよー?」キョロキョロ
アリス「そう急ぐなって、1時間やそこらで終わる事じゃないんだし」
???「あれー、おかしいなここをこうやって……」
ドンッ
カルマ「おい気を付けろ」
???「わーすみません集中してて」
カルマにぶつかったのは白衣を羽織った科学者のような風貌の青年だった。
ん?そういやさっきマサキが後輩とかなんとか言ってたような。
グレアット「大丈夫ですかっ?」
グレアットがカルマをかばうようにして彼に駆け寄る。
???「はい!お嬢さんごめんね。忙しくててんてこまいで」
6号「あなた、マサキのお知り合いですか?」
おお、さすが勘の冴える爆発っ子。
ニシキ「そうっす。ニシキって言います。マサキさんをご存知で?」
アリス「ああ。今ちょうど待ち合わせしててな」
ニシキ「そうだったんすね!マサキさん、ぼくだけじゃなくてこんな可愛らしい子まで待たせるなんてとんだ先輩だなあ」
モンスメグ「あの人、仲間を拉致したんだよー!」
誤解を招く言い方をするんじゃない。
ニシキ「えぇ!あ、でも欲しいもののためならあくどいこともするから不思議じゃないかも……」
マサキよ、後輩にすら信頼されていないみたいだぞ。
6号「やはり悪人だったのですか。こうなったら私の爆裂魔法で……」
アリス「待て早まるな、そしてメグちゃん言い方が悪い。単純にボクの仲間に調べたいことがあるって言うから貸しただけだよ。終わったらここに戻ってくる」
ニシキ「なるほど。自分のことになると長いからなあ、ぼくのトラブルシューティングはいつ解決するやら……」
グレアット「トラブルってなんですかっ?」
ニシキ「ああ!ぼく、ナナシマでマサキさんと共同でネットワークマシンっていう新しい通信システムを開発してて。ほら、あそこ離島でしょう?だからパソコン通信すらままならなくて、それで電波を必要としない装置を作ろうとしてるんっすよ」
なるほどネットワークマシンね……。あ、いいこと思いついた。
アリス「なあ、それだったらボクに任せてくれないか?」
カルマ「お前そっちの技術もあるのか?」
ニシキ「えっ!手伝ってくれるのは嬉しいっすけど、アレはマサキさんにしか動かせない高等プログラミングっすからムリっすよ」
アリス「あーそれはマサキに任せる。たださ、セキエイのポケモンリーグってネットワークマシンと連動する予定だろ?」
ニシキ「ゆくゆくはそのつもりっす!あ、ひょっとしてリーグの関係者なんすか?それなら完成したら連絡をありすさんにしてもらっていいっすかね?ナナシマから伝えに行くのも一苦労っすから」

 

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アリス「ああ、こっちからセキエイに伝えておくよ。だからマシンを開発することに集中してほしい」
ニシキ「オッケーっす!いやあこんな場所でマサキさんとリーグ両方に交流のある人に会えるなんてラッキーっすねえ」
モンスメグ「えー?ありすちゃんって別にモガモガ」
アリス「メグちゃんここで待ってても退屈だろー?お外で遊んでおいでー」
カルマ「おいなんでぼくまで」
6号「わわわ」
余計なことを口走られる前に3人をポケモンセンターから追い出す。
怪しまれたらジエンドだからな。

《悪行ポイントが加算されます》
グレアット「アリスさんっ……」ジトー
マサキ「ごめんごめん待たせてもうて!興味深いデータがてんこ盛りやったわ!」
ニシキ「あ、マサキさん遅いっすよ!」
マサキ「おぉニシキやないか。どや、調子は。見せてみぃ」
ニシキ「はい、ここなんですけど……」
2人は到着するや否やネットワークマシンが不調をきたしている話を始める。
と思いきや腕にうゅみを抱えながらこっちへ来るとひそひそ声で
マサキ「せや。ありすちゃん、その子わざの命令を与える神経にダメージあったやろ。ちょちょいと遺伝子組み換えて治療したさかいこれで体が言うこと聞くと思うで。ささやかなお礼や」
アリス「マ?めっちゃ助かる~……あ。あとお礼ついでにニシキがボクについて変なこと言ってても黙って聞き流してくれないか?」
マサキ「どういうこっちゃわからへんけど、貴重なサンプルもらえたんや。お安い御用やで。ほな、わいは忙しいさかいまたな!」
グレアット「おかえりなさい、うゅみちゃんっ♪」
うゅみ「んあー、疲れたぁ」
ぐったりとした様子で呟くうゅみ。実はメグ以上にフィジカルお化けなのだが、遺伝子そのものをいじられたことがよっぽど堪えたのだろう。
しかし、これで彼女も戦力としてカウントできるようになれる訳だ。
マサキ、あんたの功績は偉大だよ。
うゅみ「あたし寝るからぁ、あとよろしくぅ」
アリス「カツラとやるとき起こしますからね」
うゅみ「わかったわかったぁ……Zzz」

次回に続く!

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